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2. 各知財庁・機関のインターネット上の発信

2.14. インドネシア知的財産総局( DGIP )

 DGIPのインターネット上の発信は、①年報(Annual Reports)と②ニュース(News)によって 行われている(ただしニュースは2016~17年のみ)。言語は、年報については一部(2013年版 のみ)を除きインドネシア語のみ、ニュースについてはインドネシア語と英語で構成されてい る(ただし、英語ニュースは2017年のみ)。全体として、インドネシア語による発信情報に比 べて英語による発信情報は極めて限られている。

 ニュース記事においては日本に関する言及が最も多く、内容は JICA との協力(会合、PPH、 職員研修/交換(セミナー、ワークショップ等)に関する記事がほとんどである。

 しかし、JPOに言及したものは1件のみ(2016年8月のPPHに関するセミナー)であり、他 方、JPOによるインドネシアに対する取組記事(2016年9件、2017年5件)について、DGIP がニュース記事で取り上げているものは上述の1件のみ。年報においては、JPOにおいて発表 されているいくつかの取組について紹介されている(例えば、日インドネシアIPフォーラム、

PPHパイロット・プログラム)。

(1) 政策動向や情報発信方針に影響しうる背景

インドネシア知的財産総局(DGIP: Directorate General of Intellectual Property Rights)は特許(実用 新案に相当する簡易特許を含む)、産業意匠、商標、著作権の出願受付、登録業務を行うほか、営 業秘密、半導体集積回路配置の登録業務も所管する。

特許、産業意匠、商標はいずれも実体審査を経て登録されるが、審査能力に不十分な点が多く、

往々にして審査結果が裁判に持ち込まれているという。特許については、ほとんどの出願は優先権 主張を伴うか、特許協力条約(PCT) 経由の出願であるため、他国の審査結果に追随する形で実体審 査を行っている。産業意匠と商標については、独自に審査をしなければならないため、審査の質が 度々問題にされている

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(2) 国際連携の状況

① 主要国との連携状況 1) 日本

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日本との間では2011 年4月から2015年4 月まで、JICAと協力した「知的財産権保護強化プロ ジェクト」が実施され、2015年12月からはこれを拡充する形で「ビジネス環境改善のための知的 財産権保護・法的整合性向上プロジェクト」が開始された。JPOとしても長期・短期専門家の派遣、

研修生の受入れ等、積極的な協力を行い、DGIPにおける審査官育成計画の策定、審査基準の制定、

知財エンフォースメント関連機関の連携強化等を支援している。

2014年8月に両機関で締結した協力覚書に基づき、2016年度にはJPOからの特許審査官の派遣 やGDIPからの訪問団を受入れてのマドリッド協定議定書加盟を含む商標制度に関する意見交換等 を実施、更に2015年及び2016年には日インドネシア知財フォーラムを実施している(開催地は2015 年ジャカルタ、2016年東京)。

また、2013年6月から開始したJPOとのPPHの試行プログラムを2016年7月より更に3年間延 長、JPOはDGIPに対してPPH専門家を延べ7名派遣して、その円滑な運営のための支援を行って いる。

2) EU156

欧州委員会は、ASEANに対する知財保護協力プロジェクトとしてECAP I(1993-97年)、ECAP II

(2000-2007年)を実施し、2013-17年にはECAP IIIを行った。同協力プロジェクトは「アセアン

154 ジェトロ「模倣対策マニュアル インドネシア編 20083月」4頁。

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特許庁『特許行政年次報告書2017年版』291-292頁。

156 ジェトロ「欧州連合(EU)とアセアン(ASEAN、知的財産権に係る協力プロジェクトを総括」2017221日、

「欧州委員会のアセアン知財保護協力プロジェクトが年次作業計画を承認」201436日。

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知的財産権行動計画」に沿ったもので、ASEAN 地域における知的財産の想像、保護、管理、及び 行使の観点から、ASEAN 地域の統合を支援して制度の改善や調和を進めるものである。ECAP III は欧州連合知的財産庁(EUIPO)によって運営され、ASEAN 地域における商標、意匠、地理的表 示(GI)及びそれに関連する知的財産権の保護及び行使、能力構築活動、法的・政策的枠組みの向 上等を主要な分野として実施された。インドネシアにおいても同プロジェクトの一環として工業意 匠やGIに関するセミナーや技術コンサルテーションが実施されている。

2017年2月17日のEUとASEANの会合においては2017年から2021年までの新たな協力プロ

ジェクトについても議論が行われ、同年後半より開始されるとの見解が示された。

3) ASEAN157

ASEAN知的財産協力作業部会(AWGIPC)はASEAN諸国の知財局から構成されたASEAN域内

における知財に係る課題を担当する作業部会であり、2004年より数カ年の「ASEAN知的財産権行 動計画」を策定し、取組を実施している。2011-15年の行動計画は、ASEAN経済共同体(AEC)結 成に向けた統合の加速化を見据えて、ASEAN独自の知的財産制度の確立を目指して 5つの戦略的 目標(①バランスのとれた知的財産制度の確立、②国際知的財制度への参加、③革新・発展のため のツールとなるような知的財産の形成・意識向上・活用の体系的な推進と知識へのアクセスを促す 技術移転の支援、④国際知的財産社会への積極的な参加と対話・パートナー・関係機関との関係強 化、⑤域内知的財産庁の人材・組織能力の向上を目的とした加盟国間の関係強化と協力深化)を設 定した。

これらの戦略目標の下で設けられた重要プロジェクト・取組については、加盟各国が主管国とし て指定されているが、インドネシアは「伝統的知識。伝統的文化表現・遺伝資源」分野の主管国を 担当している。

(3) 調査項目に基づく調査結果

① 「調査対象の知財庁・機関による発信情報を掲載したソースの調査」

DGIP のウェブサイトにおいて、情報発信は以下の方法によって実施されている。ウェブサイト はインドネシア語と英語によって構成されており、いずれのソースにおいても国際的取組に関する 情報が含まれている。(なお、2018年1月以降、英語ウェブサイトはログインID/パスワードが要 求されるためアクセス不可能となっている。)

157 ジェトロバンコク事務所知的財産部ASEAN知的財産権行動計画2016-2025『特許ニュース』2017418日、

ジェトロ「2011-2015ASEAN知的財産権行動計画」20141月。

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図表 158 ウェブサイトにおけるソース(インドネシア語・英語)

インドネシア語 英語

①年報

Annual Report

2013年から2016年までの年報を閲覧 可 能 。 国 際 的 取 組 に 関 す る 情 報 は 、

「活動の要約」及び「2016 年日インドネ シ ア 知 財 フ ォ ー ラ ム 」 に 掲 載 さ れ て い る。

英語版はない(2013年版のみ英語を 併記)。

②長の挨拶

Director greetings

国際的取組に関する言及は特にない。 英語版はない。

③ニュース

News releases Press releases

国 際 的 取 組 に 関 す る ニ ュ ー ス は 「 広 報 レ ポー ト 」 に 掲 載さ れ て いる 。記 載 があ ったのは2016~17年のみ。

英語ニュースは2017年のみ。

これ以外に、下記政府機関のウェブ サイトにも外国パートナーとの取組に 関するプレスリリースが掲載されてい る。

- Directorate of Copyright and Industrial Design

- Directorate of Trademark and Geographical Indication - Directorate of Cooperation and

Intellectual Property Empowerment

④その他 DGIPウェブサイト(インドネシア語)には”ASEAN Patent Examination Cooperation (ASPEC) & PPH” のページ(英語)があり、リクエストフォームや 申請フォームをダウンロードすることができる。

・また、「外国協力リスト」のページにおいて、シンガポール知財庁(IPOS)との MOU2015年)、JPOとのMOC2014年)及びJICAとのMOU2015年)を公 開している。

② 「国際的な取組に関する情報(文章等)の調査」

1) 年報

年報はDGIP の二国間および多国間の国際的取組(会合、共同研究、MOU 締結等)について記 載している。2016年はWIPOとのMOU締結、日本での職員研修や職員交換等が主な内容であった が、2015 年、2014年は日本、WIPO の他、ASEAN、APEC、EU、南アジア諸国等との協力につい て言及されている。また、2013年には、ASEAN知財協力作業部会(AWGIPC)やAPECの知財権 専門家グループ(IPEC)においてDGIPが知財協力に積極的に関与したこと、WTOのTRIPS協定 交渉に参加したこと、JPOとのPPHへの参加に合意したこと等が記載されている。

また、年報は、国名や知財庁名を章や節等の見出しにする構成となっていない。

2) ニュース

2016年から2017年11月10日までの国際的取組に関連する記事は、インドネシア語12件、英語 3件の計15件であった。

図表 159 国際交流に関する記事件数

インドネシア語 英語

2017年(~11/10 5 3

2016 7 0

2年間合計 12 3

出所:DGIPウェブサイトより作成

バイの国際的取組に関する記事に登場する国は以下のとおりである。

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 欧州: 英国

 北米:米国

 アジア:日本、韓国

 オセアニア:豪州

マルチの国際的取組に関する記事に登場する機関は、WIPO及びASEANである。

図表 160 記事の単語数に関する情報

英語

最大文字数 974

最小文字数 158

中央値 568

出所:DGIPウェブサイトより作成

③ 「調査対象の知財庁・機関からみた海外知財庁・機関等の位置づけの比較調査」

DGIP の記事においては、日本に関する言及が 6 件と最も多く、WIPO と ASEAN がいずれも 3 件、さらにEU が2 件でこれに続いている。日本については1 件(法相訪問)を除けば全てJICA との協力(会合、PPH、職員研修/交換(セミナー、ワークショップ等)に関する記事である。他 方、WIPOについては、2件がWIPO単独の職員研修(セミナー、ワークショップ)、1件がEU-ASEAN プロジェクトに関する記事である。また、ASEANについては、上記の他、AWGIPC会合に対する 参加が記載されている。

④ 「調査対象の知財庁・機関からみた海外知財庁・機関等の位置づけの推移調査」

上記傾向は2016年と2017年でほぼ変わらない。その他、2016年には米国に関する記事が1件、

2017年には韓国と英国に関する記事が各々1件ずつ掲載されている。

⑤ 「国際的な取組に関する情報(写真等)からの上記③,④の位置づけの調査」

2013年から2016年の年報にはいずれも写真が掲載されている。対象となる記事は「日インドネ シア知財フォーラム」(2016年)の他、JICA、WIPO 等の協力によるセミナー/ワークショップ、

MOU締結等であるが、写真に関する説明は特に記されていない。

国際的な取組に関するニュース記事(15件)のうち写真が掲載されていたのは13件である。バ イの取組に関する記事について、英国を除く日本、韓国、米国に関する記事には全て写真が掲載さ れている。また、マルチの取組(WIPO、ASEAN)に関する記事についても、1 件を除いてすべて 写真が掲載されている。なお、こちらも写真に関する説明は特に記されていない。

⑥ 「国際的な取組(マルチ)に関する情報に関する調査」

図表 161は、ニュースにおけるマルチの取組に関する記事件数を示している。前述のとおり登場

するのはWIPO、ASEANおよびEUのみであり、EUについてはEUによるASEAN協力の一環と

して行われたものである(EU-ASEANプロジェクト)。また、年報においては、前述のとおりWIPO、

ASEAN、APEC、EUとの協力の取組が記載されている。