2. 各知財庁・機関のインターネット上の発信
2.20. アフリカ広域知的財産機関( ARIPO )
191
192
動化・近代化の開発拡大における協力や共同研究の実施等、広範な内容を含んでいる
216
。
2) 中国
ARIPOは2007年1月に中国特許庁(SIPO)と協力協定(MOU)を締結し、以来、多くのARIPO
職員や加盟国特許機関職員がSIPOでの研修に参加している。2015 年7 月には両機関の間でハイレ ベルの相互訪問を強化することに合意し、併せて伝統的知識の保護や特許制度の実務と利用等に関 して知見の交換を行っていくことに合意した
217
。この一環として、同月にSIPOがWIPOと共同で開 催した「中国アフリカ・ハイレベル・セミナー」にARIPO長官・幹部が参加し、知財制度・政策に 関する知見の交換を行った
218
。
ARIPOはまた、国家工商行政管理総局(SAIC)とも2011年及び2014年にMOUを締結しており、
2017年3月にはこれらに代わる新たなMOUを締結した。このMOUは、両機関間の情報やベストプ ラクティスの交換、キャパシティ・ビルディングを通じて商標制度に関する業務の質と有効性を高 めることを目的としており、両機関における商標登録申請プロセスを整理し、商標や地理的表示に 関する問題に対処すること等も含まれている
219
。
3) 日本
2008年5月、ARIPO長官はOAPI長官と共に東京でJPO長官と知的財産分野における協力の方向性
について討議を行い、この結果、同年度より日本が創設するWIPOアフリカ・ファンド(110万スイ スフラン(1.1 億円))の実施にあたり、ARIPO・OAPIの研修センター等にアフリカ各国の研修生 を招き研修活動(講義・セミナー)を実施する等、両機関と連携を図ることを確認し、三機関間の 協力関係を今後一層強化すること等について合意した文書に署名した
220
。同合意にもとづき、JPO が協力する形で、WIPO主催の研修・ワークショップやARIPOの移動セミナー(Moving Seminar)が 実施されている
221
。
(6) 調査項目に基づく調査結果
① 「調査対象の知財庁・機関による発信情報を掲載したソースの調査」
ARIPOのウェブサイトにおいて、情報発信は以下の方法によって実施されている。ウェブサイト
は英語のみによって構成されており、国際的取組に特化したウェブページは設けられていない。プ レスルームの記事にはアナウンスメントに転載されているものもあり、両者の違いは明確でない。
また、プレスルームの記事は日付がふられていないものが大半であるため、記事内容から大凡の日 付を推定する必要がある。
216 ARIPO, Press Room, “ARIPO SIGNS MoU WITH EUIPO,”
http://www.aripo.org/news-events-publications/news/item/132-aripo-signs-mou-with-euipo.
217 ARIPO, Press Room, “ High-level SIPO Delegation Visits ARIPO,”
http://www.aripo.org/news-events-publications/news/item/66-high-level-sipo-delegation-visits-aripo.
218 ARIPO, Press Room, “ARIPO at the China-Africa High-Level Seminar on Intellectual Property System and Policies,”
http://www.aripo.org/news-events-publications/news/item/197-aripo-at-the-china-africa-high-level-seminar-on-intell ectual-property-system-and-policies.
219 ARIPO, Press Room, “ARIPO and SAIC Renew Memorandum of Understanding,”
http://www.aripo.org/news-events-publications/news/item/174-aripo-and-saic-renew-memorandum-of-understanding .
220
特許庁ウェブサイト https://www.jpo.go.jp/torikumi/kokusai/kokusai2/africa_choukankaigoukekka.htm。
221
直近では、例えばWIPOのPCTワークショップ(2017年9月
http://www.aripo.org/news-events-publications/news/item/209-wipo-sub-regional-workshop-on-patent-cooperation-tr eaty-commences-at-aripo)や、タンザニアでのARIPO移動セミナー(2017年7月
http://www.aripo.org/news-events-publications/news/item/196-tanzania-national-roving-seminar)等。
193
図表 209 ウェブサイトにおけるソース(2017年11月17日現在)
①年報(ARIPO Annual Report) 2014年から2016年まで3冊を掲載。長官(DG)による巻頭言やキ ャパシテ ィ・ビ ルデ ィン グ、人材育成の章において 国際的取組が言 及されている。
②プレスルーム(Press Room) 2015年2月から2017年11月までで合91件の記事を掲載。うち国 際的取組に関連する記事は27件。
③アナウンスメント
(Announcements)
2017年のみ9件の記事を掲載。国際的取組に関する記事は1件。
④季報(ARIPO Magazine) 2014 年4-6月号から2017年4-6月号まで、年4冊、計12冊を掲 載 。 主 な 内 容 は イ ベ ン ト の ハ イ ラ イ ト 、 加 盟 国 ニ ュ ー ス 、 職 員 の 異 動 ・ 活 躍 、 特 集 記 事 等 で 、 国際 的 取 組 は イ ベ ン ト の ハ イ ラ イ ト で 言 及されるものが多い。
② 「国際的な取組に関する情報(文章等)の調査」
1) 年報(ARIPO Annual Report)
ARIPOウェブサイトにおいては、2014年から2016年まで3冊の年報を掲載。長官(DG)によ
る巻頭言やキャパシティ・ビルディング、人材育成の章において国際的取組が言及されている。
2016年度年報においては、キャパシティ・ビルディングや人材育成の文脈で各種会合・研修の実 施ないし参加状況が報告されている。それらは開催順に一覧形式で、タイトルと開催場所、日時の みが示されているものが多いが、特に中国の知財フォーラムへの参加については写真を掲載し、簡 単な記事を掲載している。その他、WIPO支援によるプロジェクト(デジタル化、データベース構
築)や、EUIPOによる支援・協力等を紹介する章も設けられている。
2015 年度においては、2016年と同様の各種会合・研修への参加報告の他、他知財期間とのMOU
締結(EUIPO、IPAustralia、IMP Mexico、SAIC、NORCODE、USPTO、INPI、OAPI、SIPO)、ARIPO 閣僚会議において、OAPI との議長会議で汎アフリカ知財機関(PAIPO)の設立について議論した ことを報告するとともにPAIPO設立宣言草案を提出、これにもとづき同会議にて同草案を採択した こと等が紹介されている。
2014年度においては韓国国際協力機構(KOICA)とWIPOの共同支援によるARIPO及びメンバー 諸国の ICT インフラ近代化プロジェクトの進捗に多く言及されている他(同プロジェクトは 2015 年に完了し、新IP業務システムPOLite+が稼働開始したことが2015年度年報に記載されている)、
JPO/WIPO主催の研修への参加報告なども掲載されている。
また、年報は、国名や知財庁名を章や節等の見出しにする構成となっていない。
2) プレスルーム(Press Room)及びアナウンスメント(Announcements)
プレスルームには2015年2月から2017年11月までで合91件の記事が、アナウンスメントには 2017年のみ9件の記事が掲載されている(2017年11月17日現在)。これらの中で、国際的取組に 関連する記事は28件である。
図表 210 国際的な取組に関する記事件数
英語
2017年(~11月) 10
2016年 7
2015年 11
合計 28
出所:ARIPOウェブサイトより作成
記事内容としては会合や MOU/MOC の締結に関するものが多いが、その他ではセミナー/ワ ークショップ、WIPOや他機関による支援プロジェクト等に関するものが太宗を占めている。
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バイの国際的取組に関する記事に登場する国および機関は以下のとおりである。
欧州: EUIPO
北米:米国
中南米:メキシコ
アジア:日本、中国(SIPO、SAIC)、韓国
アフリカ:OAPI、ケニア
国際機関・その他:WTO、INTA(International Trademark Association)
マルチの国際的取組に関する記事に登場する機関は、WIPO、UNDP、世界銀行である(UNDP、 世界銀行はTICAD関連)。
図表 211 記事の単語数に関する情報
英語
最大文字数 487
最小文字数 68
中央値 261.5
出所:ARIPOウェブサイトより作成
3) 季報(ARIPO Magazine)
主な内容はイベントのハイライト、加盟国ニュース、職員の異動・活躍、特集記事等で、国際的 取組はイベントのハイライトで言及されるものが多い。例えば、ARIPO Magazine 2017年4-6月号
(Vol.7, No.2)には、国際的取組に言及した記事が5件含まれている。その一例を挙げると以下の
とおりである。
タイトル:HIGHLIGHTS OF EVENTS/Symposium on Copyright and Related Rights
記載量:261語(本文のみをWord添付し、文字カウントで算出)
写真等の有無:写真の掲載あり。
記事の内容:WIPOと共同で開催したシンポジウム「アフリカにおける著作権及び関連権利シ ステムの構築」(2017年6月5~7日、ハラレ(ARIPO本部))の実施報告。著作権等に関する リソースパーソンとして、WIPO の事務次長と世界複製権機構(IFRRO)の事務局長が特に言 及されている。
③ 「調査対象の知財庁・機関からみた海外知財庁・機関等の位置づけの比較調査」
ARIPOの記事(プレスルーム及びアナウンスメント)に登場する調査対象知財庁・機関は、WIPO、
EUIPO、SIPO、OAPI及びJPOのみである。このうち掲載記事数が最も多いのはSIPO(5件)であ
り、OAPI(4件)、EUIPO(3件)がこれに続く。JPOとWIPOはいずれも2件である。SIPOとの 取組は、「知財制度・政策に関する中国アフリカ・ハイレベル・セミナー」(2017年7月)への参加 や、中国IP年次フォーラムへの参加(2016年1月)、SIPO高官代表団の訪問(2015年6月)等で ある。また、OAPI に関しては MOU調印や訪問、共同プログラム計画の策定等に関するものであ
る。EUIPOについては、同機関の意匠データベースDesignviewへの参加やMOU締結に関するもの
である。
195
図表 212 二国間(バイ)に関する情報における海外知財庁・機関等名が登場する記事件数(プレス
ルーム及びアナウンスメント)
2017年
(~11月)
2016年 2015年 合計
米国(USPTO) 0 0 0 0
欧州(EPO) 0 0 0 0
欧州(EUIPO、OHIM) 0 3 0 3
ドイツ(DPMA) 0 0 0 0
カナダ(CIPO) 0 0 0 0
オーストラリア(IP Australia) 0 0 0 0
韓国(KIPO) 0 0 0 0
台湾(TIPO) 0 0 0 0
ロシア(ROSPATENT) 0 0 0 0
シンガポール(IPOS) 0 0 0 0
タイ(DIP) 0 0 0 0
インドネシア(DGIP) 0 0 0 0
マレーシア(MyIPO) 0 0 0 0
インド(CGPDTM) 0 0 0 0
中国(SIPO) 2 1 2 5
ブラジル(INPI) 0 0 0 0
GCC 0 0 0 0
アフリカ(OAPI) 2 0 2 4
JPO(日本) 0 1 1 2
WIPO 2 0 0 2
その他合計 2 2 2 6
出所:ARIPOウェブサイトにより作成
④ 「調査対象の知財庁・機関からみた海外知財庁・機関等の位置づけの推移調査」
図表 212のとおり3年間の推移から何らかの特徴を見出すことは難しいが、SIPOについては概
ね毎年何らかの記事掲載が行われている。
⑤ 「国際的な取組に関する情報(写真等)からの上記③,④の位置づけの調査」
28件の記事のうち、25件の記事に写真が掲載されている。各記事とも写真は 1枚ずつだが、例 外的にOAPIとの取組に関する記事(2件)については、1記事につき3~4枚の写真が掲載されて いる。
⑥ 「国際的な取組(マルチ)に関する情報に関する調査」
プレスルーム及びアナウンスメントにおいてマルチの取組として掲載されている機関は、前述の とおり WIPO、UNDP、世界銀行である。WIPO については総会や地域ワークショップへの参加、
韓国との共同ICTプロジェクト等に関する記事であるが、他に日本のWIPOを通じた支援に言及し たものもある。また、UNDPと世界銀行はTICADの共催機関として言及されているものである。
⑦ 「国際的な取組(バイ)に関する情報に関する比較調査」
国際連携の形態に関しては会合とMOU/MOC、及びミナー/ワークショップ、WIPOや他機関に よる支援プロジェクト等に関するものが太宗を占めている。MOU/MOCの締結先は、SIPO、OAPI、 EUIPOの他、SAICやKOICA、ISAC(International Confederation of Societies of Authors and Composers)、 INDAUTOR(Instituto Nacional del Derecho de Autor、メキシコ国家著作権機関)といった機関である。