2. 各知財庁・機関のインターネット上の発信
2.5. カナダ知的財産庁( CIPO )
CIPOのインターネット上の発信は、①年報(Annual Report)とニュース(News)によって行 われている。ウェブサイトは英語とフランス語によって構成されており、両言語で内容に差は ない。
2017年12月8日現在、閲覧できるニュースの記事がほぼ一年分に限られる。ニュース上はJPO とのバイの取組を紹介する記事は確認できなかったが、2015-206年版の年報では審査の質、電 子ファイリング、財政、料金体系に関する作業について協力していると記述されている。
(1) 政策動向や情報発信方針に影響しうる背景
カナダの知的財産権を所管するのがカナダ知的財産庁(CIPO: Canadian Intellectual Property Office) である。2017年から2022年までの5か年を対象としたCIPOの事業戦略(Five Year Business Strategy
2017-2022)が設けられている。現在のカナダの知財集約産業はGDP全体の 25.1%(3320 億カナダ
ドル)を占めるとしたうえで、5か年戦略では以下の柱が設定されている
66
。
図表 59 5か年戦略の柱
戦略の柱 取組内容
イノベーションの促進 グローバルに 活動 するビ ジネス を支援 するため 、カナダの知 財 制度を国際 標準に調 和させる
カナダの利益促進のため、グローバルな協調を強化
カナダの知財枠組みにおけるイノベーションを促進するよう近代化 高 質 で 時 宜 を 得 た 知 的
財産権の提供
顧客の期待と市場のニー ズを反映させ、公共の利益を尊重 した知的財産権とサービ スの提供
質に基づく組織として(CIPOが)認識されること CIPOの慣行、プロセス、手段の近代化 知 財 の 意 識 向 上 お よ び
教育
知財に対する意識の向上および教育プログラムの提供
イノベーションに焦点を当てたネットワークおよびコミュニティにおける CIPO のプレゼ ンスおよび協力関係を拡大
近 代 的 な サ ー ビ ス の 提 供
一貫し、かつ顧客中心的なサービスを提供
インターネット上の CIPO のプレゼンス強化、セルフサービスの促進、オンライン上の 取引の向上
CIPOの知財データへのアクセスの向上 機 敏 性 お よ び 組 織 の 業
績の向上
スキルが高く積極的に関与する労働力の確保
仕事環境の最適化と新規ビジネスと技術的解決策との統合 管理の向上
(2) 調査項目に基づく調査結果
① 「調査対象の知財庁・機関による発信情報を掲載したソースの調査」
CIPO のウェブサイトにおいて、情報発信は以下の方法によって実施されている。発信言語はカ ナダの公用語である英語およびフランス語で行われており、いずれについても国際的な取組に特化 したウェブページは設けられていない。ニュース(News)および年報(Annual Report)のいずれに ついても英語と仏語で内容に差はない。
66 CIPO, “Canadian Intellectual Property Office Five-Year Business Strategy 2017-2022,”
http://www.ic.gc.ca/eic/site/cipointernet-internetopic.nsf/eng/h_wr04283.html.
45
図表 60 英語ウェブサイトにおけるソース
英語 仏語
①年報(Annual Report) 2017年12月8日現在、2015-2016年版の 年 報 が CIPO ウ ェ ブサ イト に 収め られ て い る。国際 的な取 組に関 する独 立 した章は設 け ら れ て い な い が 、 実 績 (Performance) 章 の 中 に 国 際 的 な 取 組 み に 関 す る 記 載 が あ る。
同左
②ニュース(News) 2017年12月8日現在、国際的な取組に関 する記事は9件である。
同左
② 「国際的な取組に関する情報(文章等)の調査」
1) 年報
2017年12月8日現在、2015-2016年版の年報がCIPOウェブサイトに収められている。年報は英
語と仏語で作成されているが、内容は同一である。
国際的な取組に関する独立した章は設けられていないが、実績(Performance)章の中に国際的な 取組として、カナダ産業界の国際的競争力を高めるために、マドリッド議定書、シンガポール条約、
ニース合意、工業意匠に関するハーグ条約に加盟したこと、WIPO総会に参加したこと、メキシコ と中国、および米国とPPHで協力すること、中国と知財分野の協力強化のためにMOUを締結したこ と、審査の質向上のためJPOと協力していること等が挙げられている
67
。
また、年報は、国名や知財庁名を章や節等の見出しにする構成となっていない。
2) ニュース
2013年から2017年12月8日までで国際的な取組に関連する記事は英語と仏語それぞれ9件であ った。
図表 61 国際的な取組に関する記事件数
英語 仏語
2016年 1 1
2017年(~12/8) 8 8
2年間合計 9 9
出所:CIPOウェブサイトより作成
バイの国際的な取組に関する記事に登場する国および機関は以下のとおりである(英語・仏語共 通)。
欧州:EPO、ポーランド
北米:なし
中南米:チリ、コロンビア
オセアニア:ニュージーランド
中東: なし
アジア:なし
アフリカ:なし
国際機関・その他:なし
マルチの国際的な取組に関する記事に登場する機関は、WIPOである。また、北米自由貿易協定
67 CIPO, CIPO Annual Report 2015-2016, pp.2, 7-8,
https://www.ic.gc.ca/eic/site/cipointernet-internetopic.nsf/vwapj/annual-report-2015-2016-eng.pdf/$file/annual-repor t-2015-2016-eng.pdf.
46
(NAFTA)再交渉について知財章の更新に関する意見聴取を告知する記事がある
68
。
図表 62 記事の単語数に関する情報
英語 仏語
最大文字数 350 444
最小文字数 90 114
中央値 228 304
出所:CIPOウェブサイトより作成
③ 「調査対象の知財庁・機関からみた海外知財庁・機関等の位置づけの比較調査」
以下の表は、ニュースにおける国際的な取組(バイ)に関する発信状況(海外知財庁が登場する 記事件数)を示している。2016年にはバイの取組に関する記事はなく、2017年はEPO、チリ、ポ ーランド、ニュージーランド、コロンビアとの取組に関する記事がウェブサイトに掲載されている。
チリ、ポーランド、ニュージーランド、コロンビアは PPH の協力に関する記事で、EPO の欧州単 一特許および統一特許裁判所に関する説明会の告知記事となっている。
68 CIPO, “ Government welcomes Canadians’ views on the North American Free Trade Agreement,” June 15, 2017, http://www.ic.gc.ca/eic/site/cipointernet-internetopic.nsf/eng/wr04262.html.
47
図表 63 二国間(バイ)に関する情報における海外知財庁・機関等名が登場する記事件数(ニュー ス)
2017年
(~12/8)
2016年 2年間合計
米国(USPTO)
仏語 0 0 0
英語 0 0 0
欧州(EPO)
仏語 3 0 1
英語 3 0 1
欧州(EUIPO、OHIM) 仏語 0 0 0
英語 0 0 0
ドイツ(DPMA) 仏語 0 0 0
英語 0 0 0
ロシア(RUSSIA)
仏語 0 0 0
英語 0 0 0
オーストラリア(IP Australia) 仏語 0 0 0
英語 0 0 0
韓国(KIPO) 仏語 0 0 0
英語 0 0 0
台湾(TIPO)
仏語 0 0 0
英語 0 0 0
シンガポール(IPOS) 仏語 0 0 0
英語 0 0 0
タイ(DIP)
仏語 0 0 0
英語 0 0 0
インドネシア(DGIP) 仏語 0 0 0
英語 0 0 0
マレーシア(MyIPO)
仏語 0 0 0
英語 0 0 0
インド(CGPDTM) 仏語 0 0 0
英語 0 0 0
中国(SIPO)
仏語 0 0 0
英語 0 0 0
ブラジル(INPI) 仏語 0 0 0
英語 0 0 0
GCC 仏語 0 0 0
英語 0 0 0
アフリカ(OAPI) 仏語 0 0 0
英語 0 0 0
アフリカ(ARIPO)
仏語 0 0 0
英語 0 0 0
JPO(日本) 仏語 0 0 0
英語 0 0 0
WIPO 仏語 0 0 0
英語 0 0 0
その他合計 仏語 3 0 2
英語 3 0 2
出所:CIPOウェブサイトより作成
④ 「調査対象の知財庁・機関からみた海外知財庁・機関等の位置づけの推移調査」
2017年12月8日現在、閲覧できる記事がほぼ一年分に限られ、CIPOからみた海外知財庁・機関 等の位置付けの推移を把握することは困難であるため、本調査項目は割愛する。
⑤ 「国際的な取組に関する情報(写真等)からの上記③,④の位置づけの調査」
国際的な取組に関するニュースの記事に写真が掲載されていたのは1件のみであった(英語・仏 語共通)。記事は、欧州単一特許および統一特許裁判所に関する説明会の告知であり、講演者(Margot
48
Fröhlinger, Principal Director for Unitary Patent, European and International Legal Affairs at the EPO)の写 真が掲載されている69。
⑥ 「国際的な取組(マルチ)に関する情報に関する調査」
1) 年報
2017年12月8日時点で閲覧できるのは2015-16年版の年報となっており、カナダ産業界の国際 的競争力を高めるために、マドリッドプロトコル、シンガポール条約、ニース合意、工業意匠に関 するハーグ条約に加盟していること、WIPO総会に参加したことが書かれている。
2) ニュース
以下の表は、ニュースにおける国際的な取組(マルチ)に関する記事件数を示している(英語と 仏語の内容は同一であるため、英語のみの記事件数としている)。WIPOは、WIPO総会への出席お よびPCTに関する記事の中で登場している。その他はNAFTA再交渉に伴う知財章の更新に関する 意見聴取の告知である。
図表 64 国際的な取組(マルチ)に関する情報における海外知財庁・機関等名が登場する記事件数
(英語)
2017(~12/8) 2016 合計
WIPO 3 1 4
その他 1 0 1
出所:CIPOウェブサイトより作成
⑦ 「国際的な取組(バイ)に関する情報に関する比較調査」
1) 国際的な取組(バイ)に関する情報
2017年12月8日時点で閲覧できるのは2015-16年版の年報となっており、メキシコ、中国、米 国PPH試行プログラムで協力していること、中国と知財分野の協力強化のためMOUを締結したこ と、審査の質の向上等のためにJPOと協力していることなどが書かれているが、知財庁名が記載さ れているのはJPOのみである(その他の国との協力状況については知財庁名ではなく国名表記とな っている)。
ニュース記事の内容では、PPHやその他(PCT等)が多く、ニュージーランドおよびコロンビア
70
、 チリ
71
、ポーランド
72
とPPH実施合意が締結された記事などがある。
69 CIPO, “ Road show on the Unitary Patent and the Unified Patent Court, September 25 to 27, 2017” August 8, 2017, http://www.ic.gc.ca/eic/site/cipointernet-internetopic.nsf/eng/wr04290.html.
70 CIPO, “ New Zealand and Colombia join the Global Patent Prosecution Highway,” July 5, 2017, http://www.ic.gc.ca/eic/site/cipointernet-internetopic.nsf/eng/wr04276.html.
71 CIPO, “ New Patent Prosecution Highway (PPH) pilot agreement between Canada and Chile,” January 4, 2017, http://www.ic.gc.ca/eic/site/cipointernet-internetopic.nsf/eng/wr04175.html.
72 CIPO, “ Poland joins the Global Patent Prosecution Highway,” January 6, 2017, http://www.ic.gc.ca/eic/site/cipointernet-internetopic.nsf/eng/wr04174.html.