6.2 レシーバ・モードでの測定の設定
6.2.4 トランスデューサの使用
詳細については、79 ページの “トランスデューサ・ファクタの使用” を参照してくだ さい。
7 デジタル変調アナライザ
R&S FSH の動作モードとしてデジタル変調アナライザ・モードを選択すると、通信
規格の信号を復調することができます。これによって、変調特性、チャネル特性、ま たは信号品質情報に関する結果が得られます。
デジタル変調アナライザは、いくつかのファームウェア・オプションから構成されて います。各オプションとも、特定の通信規格に対応し、その規格に特化した機能を備 えています。
デジタル変調アナライザの各オプションとも、結果サマリ表示があります。この結果 表示は、基地局試験に必要となる結果を要約したものです。また、一部のオプション では、グラフ結果表示など、追加の機能を備えた拡張版もあります。
デジタル変調アナライザの基本設定
結果サマリ表示には、アナライザの基本設定が含まれています。その内容は、スペク トラム・アナライザの “Hardware Settings”(ハードウェア設定)の内容と似ています。
これらの設定のほとんどは、すべての用途に利用できます。
この章は、デジタル変調アナライザのすべての用途に適用可能な基本設定に関する手 引き書となっています。
“Center”
R&S FSH の現在の中心周波数。
有効な結果を求めるためには、R&S FSH の中心周波数と信号の周波数が同じである 必要があります。
► “FREQ” キーを押します。
► “Center Freq” ソフトキーを押します。
► 周波数を入力します。
“Channel”
現在選択されているチャネルの番号。この番号は、選択している帯域(クラス)によ ります。
“Band”
選択した帯域(クラス)の名前。
► “FREQ” キーを押します。
► “Freq Mode” ソフトキーを押します。
► “Channel” メニュー項目を選択します。
LTE チャネル・テーブルまたは帯域(クラス)を選択するダイアログ・ボックス
► “Select” ソフトキーを押して、チャネル・テーブルを選択します。
チャネル・テーブルが測定に適用されます。
“Transducer”
トランスデューサ(使用している場合)の名前。
詳細については、79 ページの “トランスデューサ・ファクタの使用” を参照してくだ さい。
“Ref Level”
R&S FSH の現在の基準レベル。
基準レベルとは、予測される RF 入力でのパワー・レベルのことです。この値から、
減衰量やプリアンプの増幅量が本機内部で求められます。なお、LTE などのクレスト ファクタの高い信号の場合には、RF 入力でのパワー・レベルはピーク・エンベロー プ・パワーになります。
最適なダイナミックレンジを得るには、基準レベルをできるだけ低く設定する必要が あります。ただし、最大信号レベルが基準レベルを超えないようにしてください。基 準レベルを超えた場合は、信号パワーに関わらず A/D コンバータがオーバーロード 状態になり、測定結果が劣化する原因になります(例: EVM)。これは、測定する チャネルの近くに 2 つ以上のアクティブ・チャネルがある状態で測定する場合に、特 に顕著になります(± 6 MHz)。
なお、現在の分解能帯域幅によっては、A/D コンバータでの信号レベルが R&S FSH に表示されるレベルより大きくなっている場合があります。これは、A/D コンバータ の後段で分解能帯域幅をデジタル処理しているためです。
IF オーバーロードが発生した場合は、ダイアグラム・エリアにそのことを示す警告が 表示されます( )。
信号強度が不明な場合は、IF オーバーロードを回避するために、最大レベルをユーザ 定義するか、自動レベル調整を設定することもできます。
► “MEAS” キーを押します。
► “Level Adjust” ソフトキーを押します。
現在の信号に対して最適な基準レベルを決定するために、一連の測定が実行され ます。
なお、自動調整後の基準レベルが現在の信号レベルに対応しているとは限りませ
ん。R&S FSH は現在のスパンより広い周波数範囲を測定し、測定されたピーク
に合わせて基準レベルを調整しますが、そのピークが表示スパンから外れている 場合があるからです。
また、基準レベルをマニュアル操作で設定することも可能です。
► 分解能帯域幅とビデオ帯域幅をともに最大(3 MHz)にしてスペクトラム・モー ドで測定を実行します。
► ピーク検波器を有効にします。
トレースの最大値が基準レベルに相当します。
“Ref Offset”
現在の基準レベル・オフセット。
詳細については、53 ページの “基準オフセットの設定” を参照してください。
“Att”
R&S FSH の現在の RF 減衰量。
詳細については、54 ページの “RF 減衰量の設定” を参照してください。
“Preamp”
プリアンプの現在の状態。
詳細については、55 ページの “プリアンプの使用” を参照してください。
“Sweep”
現在の掃引モード。
以下から選択することができます。
● “Single”: 1 回だけデータを取得して結果を表示します。
● “Continuous”: 連続的にデータを取得して結果を表示します。
詳細については、59 ページの “掃引モードの選択” を参照してください。
“Sync Not Found” / “Sync OK”
同期が確立したか否かを示します。
R&S FSH を信号に正常に同期させるためには、中心周波数や基準レベルとして正確
な値を入力する必要があります。また WCDMA 信号などの場合は、スクランブリン グ・コードを正確に入力する必要があります。
同期が正常に確立すると、 と表示されます。
同期が正常に確立しなかった場合は、 と表示されます。
“Position”
GPS レシーバを接続して有効にしている場合は、現在の GPS 座標。それ以外の場 合は、空白です。
詳細については、『クイック・スタート・ガイド』を参照してください。
デジタル変調アナライザの結果表示
R&S FSH では、すべてのデジタル変調オプションに共通して使用できる結果表示が
あります。
測定中の信号のスペクトラムの表示、解析方法として、スペクトラム概要および等方 向性アンテナ結果表示の 2 種類があります。
どちらの結果表示もデジタル変調オプションに組み込まれているため、スペクトラム 結果表示を確認するだけならモードを切り替える必要はありません。信号を詳細に解 析する場合には、スペクトラム・アナライザ・モードを使用する必要があります。
スペクトラム結果表示の画面レイアウトおよび内容は、スペクトラム・アナライザ・
モードのものと同じです。
スペクトラム概要
スペクトラム概要は、機能を限定してスペクトラムの概要を示すものです。
スペクトラム概要は短い測定時間で、
信号の周波数特性とレベル特性の概略 を把握できるようにしたものです。測 定スピードを保持するために、FFT 解析を行い、信号およびその周囲周波 数の測定結果を表示します。したがっ て、測定の確度よりも速度を重視する 場合に、この結果表示を使用します。
スペクトラム概要の使用時には、分解能帯域幅とスパンのみを設定することができま す。
► “Result Display” ソフトキーを押します。
► “Spectrum Overview” メニュー項目を選択します。
等方向性アンテナ結果表示
等方向性アンテナ結果表示も、スペクトラムの概要を表示するものです。
等方向性アンテナを使用した測定結果 は、アンテナの 3 軸からのデータを もとにしています。
等方向性アンテナで測定を実行すると きには、アンテナの各軸で測定を実行 し、その結果を平均してトレースを描 画します。測定が複数であるため、測 定スピードは低下します。
アンテナの各軸(X、Y、Z)の結果、および信号に含まれているチャネルの結果を、
ダイアグラム・エリアの上の表で確認することができます。
► “Result Display” ソフトキーを押します。
► “Isotropic Antenna” メニュー項目を選択します。
等方向性アンテナの詳細については、47 ページの “等方向性アンテナの使用” を参照 してください。
等方向性アンテナ結果表示の使用時は、通常通りに測定を設定することができます。
リミット
リミット・チェックでは、あらかじめ定義した一連の値に対して実際の結果を照合し、
測定結果が指定した範囲内に入っているかどうかを調べます。リミット・チェックの 結果は、リミット結果表示に表示されます。
結果が許容値範囲内にあれば、リミット・チェックに合格します。その結果は緑色で ハイライト表示されます。
結果がいずれかのリミットを違反した 場合は、リミット・チェックに不合格 になります。その結果は赤色でハイラ イト表示されます。
総合リミット・チェックでは、複数の 結果に対してリミットを定義します。
個々のリミット・チェックすべてに合 格した場合に、総合リミット・チェッ クに合格となり、結果表示に “LIMITS PASSED” と表示されます。リミット の 1 つにでも不合格になった場合 は、“LIMITS FAILED” と表示されま す。
デフォルトでは、デフォルト設定された各リミットに対してチェックが行われます。
これらのリミットは、規格に従ってあらかじめ定義されています。
► “Result Display” ソフトキーを押します。
► “Limits” メニュー項目を選択します。
R&S FSH4View ソフトウェアでデジタル変調リミットをユーザ定義し、R&S FSH の
内蔵メモリに転送することができます。
詳細については、178 ページの “機器の設定と測定結果の保存および読み込み” を参 照してください。
7.2 3GPP FDD 信号の測定
R&S FSH にソフトウェア・アプリケーション R&S FSH-K44 をインストールすると、
3GPP 規格に従って WCDMA 信号を測定することができます。
R&S FSH-K44E ファームウェア・アプリケーションを追加することで、機能を拡張
することができます。このアプリケーションは、3GPP 規格に従って WCDMA ダウ ンリンク信号のコード・ドメイン・パワー測定を実行します。
► “MODE” キーを押します。
► “Dig Mod Analyzer” ソフトキーを押します。
► “3GPP WCDMA BTS” メニュー項目を選択します。
信号解析が開始されます。
R&S FSH は、測定を開始すると、20 ms(すなわち、2 つの WCDMA フレーム)に
わたって信号を記録します。これによって WCDMA 信号の解析に必要な情報を取得 します。