たちは、それ(魂)を取り上げる。かれら(天使たち)は、(わが命令に)怠 慢ではない。61 それからかれらは、真の主、アッラーに戻される。裁決はか れがなされるのではないか。かれは清算する際は極めて速い御方であられる。」
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生活とイスラーム法解釈、あるいは法規範 1. アッラーの知:
1-1. アッラーは降雨(不可視界)と、現実界(可視界)について、その全容 と細部に至るまで常に知っておられる。
1-2-1. アッラーだけが知っている知には5つある。
第3回タフスィール研究会報告第6章家畜章 54 節~ 79 節
1) 現世の終末の時、2) 降雨時期と降雨量、3) 胎内に宿る生命の人生と固有の性 質、4) 未来、5) 人々の定命である。
1-2-2.アッラーの知は、1) 動と静、2) 生物(動植物)、無生物、3) 人の隠し事、
4) 本音の呟(つぶや)き、5) 心情について全てを掌握しているほどである。
1-2-3. アッラーには不視を知るに至る道ではなく、不視そのものに精通して いる。その知は彼以外にない。アッラーが不視を見せたいと望んだ者にはそれ を見せるし、不視を見せたくない者に対しては隠す。
クルアーンにはアッラーの使徒に不視に関する知を伝えていることが記され ている。
1)イムラーン家章 3 章 179 節
「アッラーは、信者たちの善い者の中から悪い者を区別されるまでは、決して かれらを今の状態で放置されないであろう。またアッラーは幽玄界(今回の説 明では「不視」としている)のことを、あなたがたに現わされない。だがアッ ラーは御心に適う者を使徒に選ばれる。だがあなたがたは、アッラーとかれの 使徒を信じなさい。あなたがたが主を信じて畏れるなら、偉大な報奨を受ける であろう。」
2)アル・ジン(幽精)の章 72 章 26-27 節
「かれ(だけ)が幽玄界を知っておられ、その秘密を誰にも漏されはしない。
26 かれの御気に召した使徒以外には。それで、かれは、前からも後ろからも 護衛して、(使徒を)赴かせられた。27 」
2. 予報、予告、占い:
2-1.アッラーの降雨についての知については、アッラーの御言葉である啓示 には記されていないが、信徒の中からアッラーに選ばれた使徒たちに伝えられ ることもある。従って、信仰のある者は、「明日、雨が降る」と不信仰者のよ うに断言せずに、断言できないが降雨の兆候が見られると告げるに止めるのが 良い。胎内にあるものを知っているという者は不信仰者である。
また断言せずに、暁の時、西方に流星を見、同時期に、それに対応するよう に東方に別の星が現れれば、それを「バナッ」であると言う。その時にはアッラー
第3回タフスィール研究会報告第6章家畜章 54 節~ 79 節
は通常、望む量だけの雨を降らせる。この言動は不信仰にはならないが、話さ ない方が良いのは、不信仰の輩の言に似ているからである。彼らはアッラーの 叡智の優しさを知らないのだ。アッラーは望むときに雨を降らせるが、バナッ
(前掲)の時もあれば、そうした兆候なしで降雨させることもある。
2-2-1. 過去と不可視についての知を「カハーナ」と言い、過去と未来の知を「イ ラーファ」というが、二つとも嘘であるのは、不可視の知はアッラー以外には 知っていないという真実に反するからである。
2-2-2. 預言者言行録からの引用(書名 サヒーフ・ムスリム)
預言者は「過去未来の占師」に占ってもらった者の礼拝は 40 夜の間、受け 入れられない」と言った。
同ハディースは、預言者の数人の妻たちが伝えている。
2-2-3. イブン・アブドル=バッル※の意見
「禁止された稼ぎには、利子取得行為、売女の婚資、詐欺取引、賄賂、服喪泣 き女の報酬、歌の報酬、占い師の降雨占いと天候予言、笛吹き、遊びなどがあ り、全て虚偽である。」
※アブー・ウマル・ユーセフ・ビン・アブディッラー・ビン・ムハンマド・ビ ンアブディル=バッル・ビン・アースィム・アッナムリー・アルアンダルスィ・
アルクルトビー・アルマーリキー(368-463 H)。アンダルシア生まれ。
最初ザーヒリー派で、後にマーリキ派となったが、シャフィー派法学に傾倒 した。
3. 明らかな書の示すもの:
明らかな書、すなわち天に保存された書かれたものが示しているもの:天使た ちがそのことを認めるためにあるので、アッラーはそれを書かれなかったの で、忘れたのではない。
4. アッラーは人間のことについて采配する:
人間の死には二つあり、睡眠は小死、通常言われる「本当の死」は大死である。
二つの死の違い:
小死(睡眠):魂が捕らえられ、動きが停止するが、生命は残っている。
第3回タフスィール研究会報告第6章家畜章 54 節~ 79 節
大死(本当の死):魂が最終的に捕らえられ、動きが停止し、魂は身体から剥 ぎ取られる。
定命が終わると、魂は出て、生は止まり、死となる。動きも呼吸もなくなる。
5. アッラーが不信仰者たちに猶予を与えているからといって、彼らの不信仰 の罪を知らないのではない。アッラーはあらゆることを数え上げるようにして 知っている。知っており、それがどのような行為であるか断じている。しかし ながら、彼らにも恵みを与え、生活をさせているが、それには限りがある。そ れから(死が訪れて)、アッラーへと戻り、報いを受ける。
6. 定命と死(アッラーへ戻ること)の時は決まっている。また清算と報いも 決まっている。アッラーは、メッカの多神教徒たちを急いで罰しないで猶予を 与えているが、それは叡智からである。そして来世の懲罰は現世の懲罰よりも 激しく強いものであり、現世の懲罰を逃れても来世の懲罰は逃れられない。
7. 死の天使:
7-1. アッラーのために、天使たちは信徒の仕事を支え、彼らをいろいろな災い から護っている。また天使たちはそれ以外の仕事として、魂を捕らえる仕事が ある。死の天使には、身体から魂を剥ぎ取って、渡して助けてくれる天使たち がいる。
7-2. アッラーが人間の本当の死を決定し行うのであるが、死の天使がアッラー の命を受けて、人間の死を司っているように言われる。
1)天使が人間の死を司っていると解釈しがちな章 1-1) サジダ(伏拝)の章 32 章 11 節
「 言ってやるがいい。「あなたがたを受け持つ死の天使があなたがたを死なせ、
それから主に帰らせる。」」
1-2) 家畜の章 6 章 61 節
「かれは、しもべたちの上に権能をもつ方であられ、あなたがたに保護者(の 天使)を遣される。死があなたがたの 1 人に臨む時、われが遣したもの(天使)
たちは、それ(魂)を取り上げる。かれら(天使たち)は、(わが命令に)怠 慢ではない。」
第3回タフスィール研究会報告第6章家畜章 54 節~ 79 節
2)アッラーが人間の死を決め、死なせることを示す章:
2-1)集団の章 39 章 42 節
「アッラーは(人間が)死ぬとその魂を召され*、また死なない者も、睡眠の 間(それを召し)、かれが死の宣告をなされた者の魂は、そのままに引き留め、
その外のものは定められた時刻に送り返される。本当にこの中には、反省する 人びとへの種々の印がある。」
*直訳:「アッラーは生命が死に至る時に、生命に死を与える」
2-2) 跪く章 45 章 36 節
「言ってやるがいい。「アッラーが、あなたがたに生を授け、それから死なせ、
それから復活の日に、あなたがたを召集なされる。それに就いて疑いはない。
だが、人びとの多くは、これを理解しない」。」
2-3)大権の章 67 章 2 節
「(かれは)死と生を創られた方である。それは、あなたがたの中誰の行いが優 れているのかを試みられるためで、かれは偉力ならびなく寛容であられる。」
8. 審判の日での、絶対的決定はアッラーにある。そしてアッラーの清算は素 早く、即決である。