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−質の高い家庭科教員養成のためのプログラム開発の試み(その2)−

ドキュメント内 D.o...p_ ec5 (ページ 108-113)

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1.背景

 ICT(Information and Communication Technology) 

の進展は教育環境を急速に変えていくだろうと予想され たが、現状を見ると、変化は緩慢である。今となっては、

先進諸外国に比べ、ICTの教育利用の進み方は遅く、IC T教育後進国の仲間にさえ入りかねない。

 日本の情報技術は世界でもトップクラスと思われがち であるが、「ダボス会議」を主催する世界経済フォーラム

(WEF)が2003年2月19日、情報技術の活用度を国 際比較した結果では、日本は世界ランク20位、アジアで はシンガポール、台湾、韓国、香港に続く5位とその遅 れを浮き彫りにした1)。また、e−learningの活用につい ても、世界ランク24位、アジアでは韓国、シンガポール、

台湾、香港に続く5位と国全体のICT活用度に呼応して いる2)

 インターネットの教育利用が進めば、国境を越え、国 際的な学校間交流が活発になると考えられるが、前述し た状況を鑑みると、必ずしも、そうとは限らない。ミレ ニアム・プロジェクト3)によりICTの教育利用環境が 整っていないわけではないが、いま、注目を集め、誰も が参加できる学習のための世界的コミュニティThink  com4)にも日本の参画がなく、悲しいものがある。

 先行研究(その1)の研究代表者である山口は、2005 年6月、国際家政学会主催の会議へ出席した際、高等教 育機関で家政学関連領域が様々な形で発展してきた主要 国(フィンランド、ドイツ、オーストリア、米国、カナ ダ、オーストラリアなど)の代表的な教育・研究者たち と交流する機会を得た。その際、家政学領域出身者が国 際機関等で働くなどしており家政学関連領域が重要な領 域と認識されていること、さらに、世界共通でこの領域 の質の高い高等教育機関のカリキュラム構築が求められ ていること、その実現のために今後は教育・研究面でIC Tを用いるなどして外国とのコラボレイトが重要である ことなどが話題となったという。特にこの10年の間に 高等教育機関で家政学領域が発展し、受験者にも人気が 高いフィンランドでは、家庭科の教員養成課程がカリ キュラムの大きな柱となっていた。そこでは、周辺国と

の交換留学(例えばドイツ)が行われ、会議の際には家 庭科教員がICTを用いた授業実践例を発表していたこと が興味深かったという。これらは、家政学部の中に家庭 科の教職課程をもつ本学の発展可能性を示唆するもので あると確信した。

2.目的

 総合科学研究所における先行プロジェクト研究(その 1)では、日本(三重県立久居高校「インターネット英語」) とシンガポール(HOLY INNOCENTS HIGH SCHOOL

「家庭科」)の高校生の国際交流を、本学の教員主導で両 校の先生方と協力して実践した。方法は、メーリングリ ストによるメール交換(6月以降)、テレビ会議(2回)、 Webページの作成による交流である。テレビ会議の前 には本学教員が日本の高校で趣旨説明と指導(約1時間)、 テレビ会議終了後には両国の生徒にアンケートを実施し た。

 その他、本学の教員志望学生の4年生2名が、プロ ジェクトの基礎的な文献的研究(日本における国際交流 授業の実践例調査、日本とシンガポールの教育制度およ び家庭科教育の目的や内容の比較検討)に関与した。

 ①日本の生徒(14名)の70%以上は、このプロジェ クトへの関心および主要な内容である「食生活」への関 心を示した。シンガポールの生徒(7人)についても国 際交流および家庭科への関心が高まり、家庭科およびIC T利用を通じた国際交流の発展可能性が示された。

 ②40%程度ではあるが、日本の生徒は大学スタッフの 参加に関心をもっていた。今後、高大連携への発展が期 待できる。

 ③本学学生のメーリングリストによる参加、資料研究 への参加は、家庭科における国際交流授業やICTを用い た授業展開についての関心を高めた。

 一方、これらの実践から、2カ国の現場の教員・大学 教員のスケジュール調整の難しさ、日本の学生について は語学力不足、メーリングリスト・テレビ会議・ホーム ページ作成の効果を正しい尺度で検証する必要性などの 課題が明らかになった。

CTを利用した国際交流プログラムの

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 本研究「質の高い家庭科教員養成のためのプログラム 開発の試み(その2)」では、授業で取り扱う内容、手法 の開発、さらに、交流の場となる目的別の教育実践的な プラットホーム(LMS: Learning Management  System)、特にコミュニケーションシステムの基礎研究

を行うことを目的とした。

3.方法

(1)ICTを用いた国際交流授業のための目的別LMSの 構築、特にコミュニケーションシステムを中心とした  Moodle5)の設定を行った。

(2)メーリングの内容分析結果に基づいた新しいコ ミュニケーションメニュー(Moodle Contents)の作成 を行った。

(3)国際交流のプログラムの実践研究の継続を目指し、

相手国(シンガポール)の教員と直接交流を行った。

4.結果・考察

(1)Moodle Contents 作成のためのメーリング(2006 年)の内容分析

 三重県立久居高等学校とHOLY INNOCENTS   HIGH SCHOOLのメールでのやり取りは、久居

高等学校(14名、内男子3名、女子11名)と HOLY INNOCENTSHIGH SCHOOL(7名、内 男子6名、女子1名)、そして、双方の指導教員 および本学の研究者等で、2006年6月6日に メーリングリストを設定し、2007年2月末まで の間に253通のメールが交換された。日本とシ ンガポールとの時差は1時間と小さく、双方の 授業時間帯の調整は難しくはないと考えてい  た。しかし、実際は、久居高等学校とHOLY  INNOCENTS HIGHSCHOOLとでスクール  タームが異なり、シンガポールでは、1学期が、

1月から3月上旬、2学期が、3月中旬から5月 下旬、3学期が6月下旬から9月初旬、4学期が 9月中旬から11月中旬となっており、日本の3 学期制とはずいぶんズレがあり、調整は難し かった。

 時間を問わないインターネットの特性を利用 して授業以外の自由な時間帯でもメール交換が 行われたので、予想以上に活発であった。

 双方の授業目的として、久居高等学校の設定 科目は「インターネット英語」で、英語のスキル アップ(読む・書く・話す)を中心に置いており、

HOLY INNOCENTS  HIGH SCHOOLの設定 科目は家庭科の高校レベルの「Food&Nutrition」

で、日本の食生活・家庭生活との違いを比較するが中心 であった。メールの内容でみると、学校生活に関するも のが最も多く、ついで、それぞれの国の文化や歴史、さ らに、食生活(食文化を含む)、日常生活に関することと 続く。趣味や言語(英語や日本語)、友人関係(ボーイフ レンド、ガールフレンド)は、予想より少なかった(図 1)。メールの内容別をさらに久居高等学校とHOLY  INNOCENTS HIGH SCHOOLで見ると、ほぼ同じ傾向

が見られた(カイ検定 p>0.05)。ただし、HOLY  INNOCENTS HIGH SCHOOLがわずかに「言語」に関

するメールが多く、特に「日本語」に興味を示した。

 また、期間中にスカイプを用いたテレビ会議(2007年 10月5日と11月24日)によって、双方の学校の生徒 同士が直接話せる機会を設けた。ICTの活用については、

生徒はテレビ会議よりも参加しやすいものとして「メー リングリストによるメール交換」や「Webページの作成」

を挙げており、また、今後やってみたいものとしてWeb ページの作成による情報交換を挙げている。こうしたコ ミュニケーションが抵抗感なく行えるプラットホームが 必要である(図2)。

図1 国別(学校別)・内容別メール送信回数

図2 国際交流におけるICT活用についての関心など

(三重県立久居高等学校)

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(2)コミュニケーションプラットホーム・Moodleの設 定

①Moodleの概要

 Moodleは社会的構成主義(ヴィゴツキー)の教育理論 に基づき、オーストラリアのカーテイン工科大学の  Martin Dougiamas氏によって開発されたCMS(Course Management System)である。

日本では、CMSをLMS(Learning Manegement  System)とも呼ばれている。

 開発のコンセプトは、商用のBlackboard(後にWebCT を買収)と同じく、講義資料の配付、学習者同士および 授業者とのコミュニケーション、理解度テスト、予習・

復習、出欠確認、学習成果の蓄積や共有など、従来から 行われている対面教育の補完的な役割をICTによって実 現することにある。現在、商用のシステムは一社の独占 状態にあり、価格が高騰したことや、安定的に利用でき るものの、認証の連携などのカスタマイズ上の制約が多 いこと、サポート対応が必ずしも各大学の利用目的に合 わせた細かさがないことなどの欠点がある。Moodleは オープンソースソフトウェアであり、なおかつ無料であ る。そして、LAMP環境(Linux+Apache+MySQL+ 

PHP)で動作するため、高度なWeb技術を要しない点が、

導入しやすくしている。 6)

②Moodleの活用の方向性

 本学(名古屋女子大学)はWebCTを全学的に導入し、

授業科目(CMSではコース)別に構築され、担当教員が 授業の補完や資格取得支援に利用している。もともと、

授業における学習支援を行うことを主たる目的としてシ ステムが構築されており、その利用価値は高い。しかし、

授業以外の、たとえば、本研究テーマである質の高い家 庭科教員養成のための教育実践として取り上げた国際交 流による教育プログラムに対しては、必ずしもマッチし ない。いわゆる諸外国との協働研究や教育実践に関して は、状況の変化に柔軟に対応できるLMSが要求される。

Moodleはオープンソースであることと、開発コンセプト である社会的構成主義の教育理念は、本研究を支えるシ ステムとして、大きな価値があると判断した。

 また、学習者が個人でブログを作成する機能やコミュ ニティを形成するeポートフォリオシステムを有し、こ れまで情報の受け手であったユーザーが情報の発信者へ とシフトし、ネット社会におけるユーザー参加型の利用 形態であるWeb2.0の技術をも利用できる点が優れてい る。

③コースおよびコンテンツ

 Moodleで構築したコース及びコンテンツを表1に、メ イン画面を図3に示す。

(3)シンガポールの教員との打合せ 

 2007年8月6日から8月9日までの期間、マレーシア のクアラルンプールで行われた学会「The 14th  Biennial International Conference of Asian Regional 

表1 Moode Conens(計画)

□家政学

 家政学の本質、可能性、ユニークさの掲示など

□家政学のネットワーク  仲間のリスト、紹介など

□国際交流学習の意義

グローバル教育、ワールドスタディーズ、国際 理解教育など

□題材

中等学校・大学・大学院レベルの学生、研究者、

教員が作成した題材をアップする。

それらを国際交流学習時の教材として、教科を 問わず、いろいろな方法で使えるように工夫す る。

◆各国の生活をめぐる諸課題  −食

 −衣  −住

 −家族と人間発達  −消費者と環境  −家庭経済  −総合  −その他

◆各国の生活文化  −食

 −衣  −住

◆各国の基礎データ

人口、言語、教育、環境、経済、労働、女性、

など。

 例)OECDなどのデータをもとに。

□国際的視野をとりいれた実践例

教育、研究レベルで、自分たちが行った国際的 な協同研究についての情報をアップする。

 例)OECDデータを用いた大学授業    シンガポール−日本国際交流授業

□国際教育・国際的な研究へ関心のある人 国際教育・国際的な研究パートナーを募集する など、提案を受けつける教育・研究フォーラム。

□参考資料の紹介、リンク

□広く国際交流をするための掲示板

生徒、学生、教員、研究者がオープンな掲示板 を利用して交流する。

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