学 位 論 文 審 査 要 旨 公開審査日 2017 年 4 月 26 日(水)
報告番号:甲・乙 第 号 氏名: 堀江 真司
論文審査
担当者 主査 教授 德植 公一 印
副査 教授 伊藤 正裕 印
副査 教授 内野 博之 印 審査論文の題目:
The aging micromechanisms of alumina matrix composite (AMC) used in total hip
arthroplasty(アルミナ-ジルコニア複合体人工股関節ヘッドのエージング試験におけ
るマイクロメカニズム)著 者:
Shinji Horie, Yasuhito Takahashi, Takaaki Shishido, Toshinori Masaoka, Toshiyuki Tateiwa, Kengo Yamamoto
掲載誌:
Journal of Orthopedic Sience (in press, 2017)
論文要旨:第4世代アルミナセラミックであるジルコニア-アルミナ複合体 (AMC) 製人工股関節骨頭の臨床的有 用性を検証するために、加速エージングを実施して、生体擬似環境下における AMC 骨頭の経時的な環 境安定性及び残留応力変化に関する検証を行った。方法は、未使用の AMC 骨頭、対照群としてイット リア含有ジルコリア多結晶体セラミックス(3Y-TZP)骨頭を用い、水熱環境下にて加速エージングを行い、
ラマン分光法を用いたラマン強度の変化からジルコニア粒子の相転移率及びそれぞれの骨頭の相転移機 序の相違点を検証し、ピークシフトの値から各結晶相における応力変化、及び圧縮応力を計算した。結 果は、3Y-TZPでは15年に相当する時期からから急速に相転移率が上昇し、40年に相当時では79%に達 し、それに応じて急速に圧縮応力が増大した。一方、AMC では相転移上昇は認められず、40 年相当時 においても相転移率は11.2%に留まった。Mehl - Avrami - Johnson理論から、AMCは相転移が核生成段階 で抑制され、圧縮応力上昇も3Y-TZPと比較して有意に抑制されるというAMCの有用性が示された。生 体環境40年に相当するエージングに対してもAMCの環境安定性は保たれ、相転移による破損リスクは 低いと考えられた。そのメカニズムとして AMC ではアルミナが三次元的にジルコニア粒子を取り囲む ため、単斜晶核生成後の成長プロセスが有意に抑制されたためと推察され、アルミナに対するジルコニ ア粒子の相対配置に関連する要素の至適化が構造安定性をもたらすと考えられた。
審査過程:
1. 相転移をエンドポイントとする場合の問題点を理解していた。
2. 加速エージングの方法論の適応範囲について正しく理解していた。
3. 本研究の適応範囲についての質問に対して適切な回答がなされた。
4. 臨床的問題点を解決するための研究としての本研究の位置づけについて適格に回答された。
5. 長期間の生態環境下での変化については、今後の研究課題であるという認識を有していた。
価値判定:
本研究は、ジルコニア-アルミナ複合体 (AMC) 製人工股関節骨頭の有効性を、加速エージング時の構造 安定性から立証した論文である。今後、長期間の使用が求められてくる中で、臨床的安定性に対する理 論的根拠を与えたものであり、学位論文としての価値を認めた。