学 位 論 文 審 査 要 旨 公開審査日2013年6月26日(水)
報告番号: 甲 第 1611 号 氏名: 河野 通秀
論文審査
担当者 主査 教授 長尾俊孝 印
副査 教授 土田明彦 印
副査 教授 印 審査論文の題目: COX-2 expression is associated with VEGF-C expression and lymph node metastasis in oral squamous cell carcinoma(口腔扁平上皮癌におけるCOX-2発現はVEGF-C発現と頸部リンパ節転移に関連 する)
著 者:Michihide Kono, Masato Watanabe, Harutugi Abukawa, On Hasegawa, Takafumi Satomi, Daichi Chikazu 掲載誌:Journal of Oral and Maxillofacial Surgery, in press.
論文要旨:
【背景】口腔扁平上皮癌(OSCC)における頸部リンパ節転移は、予後不良因子とされるが、そのメカニ ズムは未だ解明されていない。一方、種々の癌組織でのCOX-2発現がVEGF-C発現とリンパ節転移に関 連することが報告され始めている。しかしながら、OSCC におけるこれらの関連性については明らかに なっていない。そこで我々は、OSCCにおけるCOX-2発現と、VEGF-C発現、リンパ管数(LVD)、頸部 リンパ節転移、及び予後との相関を検討した。
【対象と方法】2000年〜2005年に当院口腔外科で切除されたOSCC症例 60例を対象とした。切除検体
にCOX-2、VEGF-C、及び D2-40の免疫染色を行い、それぞれの発現率と頸部リンパ節転移(初発+後
発)や予後を含む臨床病理学的所見との関連性を統計学的に調べた。
【結果】頸部リンパ節転移群の COX-2発現率、VEGF-C 発現率、及び LVDは、非転移群に比して有意 に高値であった。さらに、COX-2高発現群はVEGF-C発現と有意に相関していた。多変量解析にてVEGF-C 発現、LVD、及びCOX-2発現は頸部リンパ節転移関連因子であることが明らかとなった。また、COX-2
とVEGF-Cの高発現群は有意に予後不良であり、特にCOX-2の高発現は独立した予後不良因子であった。
【考察】OSCCにおけるCOX-2とVEGF-C発現の相関は、新たな知見であり、両蛋白の高発現は頸部リ ンパ節転移と密接に関係していた。これらの結果から、COX-2がVEGF-C発現を上昇させることにより、
腫瘍周囲リンパ管新生が促進され、リンパ節転移を促していることが推察された。また、COX-2の高発 現はOSCCの予後不良因子であったことから、COX-2発現を阻害することが、OSCCにおける頸部リン パ節転移の抑制と予後改善にも繋がると考えられた。
審査過程:
1. 癌細胞におけるCOX-2の役割についての文献的な知見を明瞭に説明できた。
2. 炎症の程度とCOX-2発現との関連性についての質問に適切な回答がなされた。
3. 組織中の癌細胞以外の細胞におけるCOX-2とVEGF-Cの発現について、適切に回答された。
4. 後発頸部リンパ節転移の予測やそれに対する治療戦略についての質問に的確な見解が述べられた。
価値判定:
本研究では、OSCCにおいて、COX-2発現はVEGF-C発現、頸部リンパ節転移、及び予後に関連するこ とを明らかにした。これらの結果は、OSCC のリンパ節転移機序の解明に繋がるものであり、また、今 後の治療にも結び付く可能性を秘めており、臨床的にも寄与するところ大である。よって、学位論文と しての価値を認める。