学 位 論 文 審 査 要 旨 公開審査日 2014 年 2 月 26 日(水)
報告番号: 甲 第 1618 号 氏名: 片桐 誠一朗
論文審査
担当者 主査 教授 黒田 雅彦 印
副査 教授 小田原 雅人 印
副査 教授 河 島 尚 志 印 審査論文の題目:Combination of Ponatinib with Hedgehog Antagonist Vismodegib for Therapy-Resistant BCR-ABL1-Positive Leukemia
(治療抵抗性BCR-ABL陽性白血病に対するポナチニブとヘッジホッグ阻害剤ビスモデジブの併用)
著 者:Seiichiro Katagiri, Tetsuzo Tauchi, Seiichi Okabe, Yosuke Minami, Shinya Kimura, Taira Maekawa, Tomoki Naoe, and Kazuma Ohyashiki
掲載誌:Clinical Cancer Research 19(6):1422-1432(2013) 論文要旨:
Hedgehogシグナルは胎生期の臓器形成に重要な因子として同定され、成人の正常組織に対しては影響
を及ぼしていないが、悪性腫瘍においては過剰な発現がある。また白血病幹細胞の維持、自己増殖にお いても大きく影響を及ぼしていると報告されている。BCR-ABL陽性白血病においてもHedgehogシグナ ルを阻害することで白血病の発症能の低下を認めた報告もされている。また、BCR-ABL陽性白血病にお いて、遺伝子変異によるチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)への耐性が問題となっている。特にT315I変異は 第二世代の TKI にも耐性を持ち、非常に強い治療抵抗性を示す。このような背景の中、本研究では
NOD/SCIDマウスに発現したT315I変異を伴うBCR-ABL陽性白血病細胞に対して、Hedgehog阻害剤で
あるVismodegibと第3世代TKIのPonatinibの併用効果をin vitroおよびin vivoで検証を行った。その結 果VismodegibとPonatinibの併用によりNOD/SCIDマウスに発現した白血病細胞の減少が確認された。
末梢血中の CD19 陽性細胞は両者を併用したマウスで有意に減少した。また脾臓の重量と骨髄の BCR-ABL mRNA発現量もPonatinib単剤よりも併用したマウスで有意に減少した。さらにVismodegibを 用いることで、白血病細胞の移植による二次発症の抑制を認めたことからHedgehog阻害剤が白血病幹細 胞の自己増殖能を抑制する可能性が示唆された。これらの実験結果から Hedgehog阻害剤と TKIの併用
はBCR-ABL陽性白血病の微小残存病変を抑制し、より高い治療効果が期待されると考えられた。
審査過程:
1.本研究の背景、意義、先行研究、倫理的事項に関する説明がなされた。
2.現在の臨床におけるVismodegibと第3世代TKIのPonatinibの使用について質問がなされ、適切な回答 が得られた。
3.糖代謝におけるVismodegibの影響、全身の副作用に関して質問がなされ、明瞭な説明がなされた。
4. BCR-ABLのT315I変異に関して質問がなされ、適切な回答が得られた。
5. TKIに薬剤耐性には、すべてHedgehogシグナルが関与するのか質問がなされ、適切な回答が得られた。
6. Vismodegib がT315I BCR-ABL1-陽性白血病治療薬の第一選択になるか質問がなされ、今後の臨床応用
についての展望が述べられた。
価値判定:
本研究において、Hedgehog阻害剤とTKIの併用が、BCR-ABL陽性白血病幹細胞に治療効果を示すこと が明らかになった。臨床的にも問題となるTKI抵抗性のBCR-ABL陽性白血病の治療に応用できる可能 性も強く示唆された。よって学位論文としての価値を認める。