学 位 論 文 審 査 要 旨 公開審査日 2017 年 6 月 28 日(水)
報告番号:甲・乙 第 号 氏名:牧野 洋二郎
論文審査
担当者 主査 教授 印
副査 教授 印
副査 教授 印 審査論文の題目: Repression of Smad3 by Stat3 and c-Ski/SnoN induces gefitinib resistance in lung adenocarcinoma(Stat3 および cSki/SnoN による Smad3 転写抑制は肺腺癌ゲフィチニブ耐性を誘導 する)
著 者:Yojiro Makino, Jeong-Hwan Yoon, Eunjin Bae, Mitsuyasu Kato, Keiji Miyazawa,Tatsuo Ohira, Norihiko Ikeda, Masahiko Kuroda, and Mizuko Mamura
掲載誌:Biochemical and Biophysical Research Communications 484(2):269-277(2017) 論文要旨:
癌関連炎症下において、上皮成長因子受容体(EGFR)に遺伝子変異をもつ非小細胞肺癌(NSCLC)が、EGFR- チロシンキナーゼ(TKI)阻害薬ゲフィチニブに対する薬剤抵抗性を獲得する分子メカニズムを明らかに した。EGFR 変異(delE746-A750)陽性肺腺癌細胞株 HCC827 を用い、Stat3 を介する IL-6 受容体(IL-6R) シグナルと Smad を介する TGF-β受容体シグナルの、ゲフィチニブに対する感受性および抵抗性の違い を、フローサイトメトリー、検鏡、細胞増殖アッセイ、RT-PCR、レポーター解析、クロマチン免疫沈降 法にて解析したところ、Stat3 を介する IL-6R シグナルがゲフィチニブに対する抵抗性を誘導すること、
TGF-
とゲフィチニブが Stat3 のリン酸化を抑制すること、IL-6R シグナル下流の Stat3 が TGF-
やゲフ ィチニブによって誘導される Smad3 の発現を抑制すること、Stat3 が転写抑制因子 c-Ski および SnoN と 協調して Smad3 転写を抑制しゲフィチニブ抵抗性を誘導すること、Smad3 がアンチアポトーシス分子の 遺伝子発現抑制とアポトーシス関連分子の発現上昇を誘導することを明らかにした。このことから IL-6R-Stat3 シグナルが HCC827 のゲフィチニブ抵抗性を誘導していることが分かった。審査過程:
1. 炎症による IL-6R-Stat3 シグナルが Smad3 を抑制しゲフィチニブ耐性獲得機序を適確に説明できた。
2. 腫瘍細胞の違いによる TGF-
、IL-6 およびその受容体の発現の違いにつき、現在までの知見もふまえ 真摯に回答した。3. 腫瘍細胞や腫瘍周辺環境の違いによる TGF-
と IL-6 の相互作用の違いならびにその背景因子につい て、今後の検討事項を含んだ発展的な回答が得られた。4. 摘出腫瘍組織における炎症反応の程度と血中 IL-6 濃度の相関について、今後の研究計画も含め将来 性のある回答と方針を示せた。
5. IL-6 による Stat3 のリン酸化部位とその機能について的確な回答が得られた。
6. HCC827 細胞株における Smad3 の発現調節機構について的確な回答が得られた。
7. IL-6 によって誘導される EMT が耐性の機序にならないかという問いに、可能性を挙げ説明できた。
価値判定:
本研究は、分子生物学的手法を用いて、ゲフィチニブ感受性 EGFR 変異陽性非小細胞肺癌が、癌関連炎症 下において薬剤抵抗性を獲得するメカニズムを解明したものである。分子標的治療薬開発へと貢献する 結果であることも含め、学位論文としての価値を認める。