学 位 論 文 審 査 要 旨 公開審査日 2017 年 7 月 26 日(水)
報告番号:
○
甲 ・乙 第 1727 号 氏名: 山本 夕香論文審査
担当者 主査 教授 松岡 正明 印
副査 教授 林 由起子 印
副査 教授 伊藤 正裕 印 審査論文の題目: Dynamics and function of CXCR4 in formation of the granule cell layer during hippocampal development (海馬顆粒細胞層形成過程における CXCR4 の動態と機能)
著 者:Yuka Mimura-Yamamoto, Hiroshi Shinohara, Taichi Kashiwagi, Toru Sato, Seiji Shinoda, Tatsunori Seki
掲載誌:Scientific Reports(in press, 2017)
論文要旨:
海馬歯状回の顆粒細胞層では、GFAP 陽性顆粒細胞前駆細胞(granule cell progenitors, GCP)により顆 粒細胞が一生の間新生され続ける。胎生期の海馬形成初期に、GCP は脳室層から脳表面側に移動し、さ らに歯状回原基に移動する。最近の研究により、この過程は周辺の細胞から分泌されるケモカイン CXCL12
(受容体は CXCR4)によって調節されていることが示唆された。本研究では、GCP における受容体 CXCR4 分子の細胞内動態と GCP の移動に対する CXCL12/CXCR4 シグナルの果たす機能について解析した。実験手 段として、GCP が可視化された Gfap-GFP マウスを用いて、非リン酸化型とリン酸化型 CXCR4 の GCP 細胞 内分布を免疫組織学的に検出し、CXCR4 アンタゴニストの AMD3100 を脳室内に投与して引き起こされる 変化を観察した。その結果、移動開始部位の海馬脳室層ではリン酸型と脱リン酸化型の CXCR4 が GCP 細 胞膜上に混在発現し、移動中及び到着部位である歯状回では核周囲部や突起基部細胞質内に、主として 脱リン酸化型 CXCR4 が顆粒状に凝縮していた。予想通り、AMD3100 投与により、細胞内の CXCR4 凝集体 は消失し、細胞膜上にすべての CXCR4 発現が見られた。また、興味深いことに、AMD3100 処置により、
GCP に早熟な分化や移動の遅延が起こり、歯状回の周囲部には、異所性の GCP が観察された。以上の結 果から、GCP の移動過程で、細胞膜上の CXCR4 は、歯状回周辺部から分泌される CXCL12 が結合してリン 酸化され、細胞内の中心体などの小器官に移動し脱リン酸化され、凝集体を形成することが示唆された。
また、CXCR4 が GCP の分化、移動、最終的な到着位置を調節することが示された。
審査過程:
1)GCP が脳室層から歯状回への移動する生物学的意義について十分な議論があった。
2)CXCR4 アンタゴニスト AMD3100 の作用点、メカニズム、そして阻害作用の程度に関する質問に対し て適切な解説があった。
3)CXCL12/CXCR4 が誘導するシグナル伝達径路に関する妥当な説明があった。
4)CXCR4 の細胞内小器官への分布することの生物学的意味に関する質問に対して適切な回答があった。
5)CXCL12/CXCR4 シグナル以外へのシグナルの関与について適切な説明があった。
6)GCP の未分化性の維持に対する CXCL12/CXCR4 シグナルの関与についての質問に対して妥当な回答が あった。
価値判定:本研究は、海馬顆粒細胞層形成過程における CXCL12/CXCR4 シグナルの果たす役割を明らか にし、CXCR4 の細胞内動態について新しい知見を提示した研究である。学位論文としての価値を認める。