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博士(医学)佐野 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)佐野 学位論文題名

肥大心における心筋線維化へのアンジオテンシンH の関与:

培養心筋線維芽細胞を用いての検討

学位論文内容の要旨

  心肥大 では 心筋細 胞の肥 大と問 質の 線維化 が生じ るが, 問質の コラ ―ゲン線維の蓄積は,心室 の拡張 機能に 障害 をきた すと報告されている。心筋組織に存在する線維芽細胞(心筋線維芽細胞)

がコラ ーゲン の産 生を担 ってい るが, 心筋線 維芽 細胞の 増殖因 子やコ ラーゲン代謝の調節因子に 関する 研究は これ までほ とんど 行われ ていな い。 一方, 心臓に おいて 組織レニンーアンジオテン シン 系 (R―A系 ) の 存在 が証明 され, この 心臓R―A系遺伝 子の 発現は 肥大心 におい て亢 進し,

アン ジ オ テ ン シ ンII(AngII) は血 管 収 縮 作用 以外 に細胞 の増殖 や成長 に影響 を与 え,肥 大心 筋の コ ラ ー ゲ ン 含量 は アンジ オテン シン変 換酵 素阻害 薬で減 少する と報告 され ,心臓RーA系が 肥大心 におけ る心 筋の線 維化に 重要な 役割を 果た してい ると考 えられ る。本研究では,培養心筋 線維 芽 細 胞 に お けるAnglIの 細 胞 増 殖, コ ラ ーゲン 生合成 への 影響を 追求し ,さら に高 血圧自 然 発 症 ラ ッ ト の 肥 大 心 を 用 い , 心 肥 大 の 心 筋 線 維 化 に お け るAnglIの 関 与 を 検 討 し た 。

方  法

1) 正 常 血 圧 ラ ッ ト 由 来 の 心 筋 線 維芽 細 胞 に お けるAnglIの コ ラ ー ゲン 合 成 に 及 ぼす 影 響 ゜   細 胞 培 養 ;  4週 齢Wistarラッ ト の 左 心 室 筋よ りEghbaliらの 方 法 を 改 変 して 心 筋 線 維 芽 細 胞 の 培 養 を 行 っ た 。

  コ ラ ー ゲ ン 合 成 の 分 析 ;confluentに 達Lた 心 筋 線 維 芽 細胞 を24時 間無 血 清 のDME培 地 で 培 養 し細 胞 をquiescentの 状 態 にし , 培 地 を0.ImMア スコ ル ビ ン 酸を含 むDME培地 に交換 し,

AngIIも し く はsaralasinを添 加 し8時 間培 養 し , [3HJ prolineで 標 識 し さ らに16時 間 培養 を 続 けた 。 そ の 後 ,培 養 上 清 お よび 細 胞 眉 を 回 収し ,protease inhibitorを 含む50mM酢酸に 対し て十分 透析を 行った 後, 凍結乾 燥した 。試料 の一 部は Peterkof skyらの方 法に従 ってコ ラ ゲナ ―ゼ消 化を行 い,コ ラー ゲン合 成量を 測定し た。 また, 残りは 塩酸により加水分解しアミノ 酸分 析器を 用いて [°H]hydroxyprolineの 定量を 行い, コラゲ ナー ゼ消化 法で得 られた コラ ー

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ゲ ン合 成 量 と 対 比し た 。

  コ ラ ー ゲ ン の型 分 析 ; 試 料をO. 5M酢 酸 で 溶 解し ,pepsln消 化 後,Sykesらの 方法に 従い SDS―PAGEを 施 行 し , そ の 後fluorographyを 行 った 。

  DNA合 成 の 分 析 ;AngIIで 刺 激 し た 心 筋 線 維 芽 細胞 を [aH]thymidineで標 識 し , ト リク 口 口 酢 酸 不 溶 性物 質 の 放 射 活性 を 測 定 し た。

2) 遺 伝 的 高血 圧 ラ ッ ト 由 来の 心 筋 線 維 芽細 胞 に お け るAngllの コラ ーゲン 合成 に及ば す影響   10週 齢 のspontaneously hypertensive rat'(SHR) と 同 週 齢 のWistar一Kyotoラ ッ 卜 (WKY)の 左 心 室 よ り 心筋 線 維 芽 細 胞を 分 離 し , コラ ゲ ナ ー ゼ 消化 法 で コ ラ ー ゲン 合 成 を調 べ た 。

結 ・果

心 筋線維 芽細胞 のコ ラ―ゲ ン合成 に対す るAnglI堕生 里

  心 筋 線 維 芽 細 胞 の コ ラ ー ゲ ン 合 成 はAngn刺 激 に より 濃 度 依 存 性 に増 加Lた 。AngII濃度1 nMよ ル コ ラ ー ゲ ン 合 成 は 増 加 し ,luMで 最 大 と な り ,AngIIを加 え な い 状 態よ り 細 胞1個当 た り で み ると ,107土19%増加 した 。AnglIfま 非コラ ーゲン 蛋白 の合成 も亢進 させた が,AngI[

は コラー ゲン蛋白の合成をより強く刺激した。合成されたコラーゲンの約8596tよ培地中に存在し,

そ の 割 合 はAnglI刺 激 に て も 変 化が 認 め ら れ なか っ た 。 コ ラー ゲ ン 合 成 はAngIIを 添 加 し て8 時 間後 より増 加し始 め,40時間後 に最大 に達し た。 アミノ 酸分析 による [ H]hydroxyproline の 放 射 活 性はAnglI刺 激 で 増 大 し, コ ラ ゲ ナ ーゼ 消 化 法 に よる 結 果 と 一 致し た 。 ま た ,AngH の コラー ゲン合 成に 与えた 効果はsaralasin添加に より 抑制さ れた。

An̲g 1I竺 三ラー ゲンの 型に与 える 影響

  AnglIを 加 えな い 状 態 で は, 心 筋 線 維 芽細 胞 の 産 生 す るコ ラ ー ゲ ンの大 部分 はI型 であ り,

残 り は 皿 型とV型 と 考 えら れ る 成 分 が 占め た 。AngII刺 激 にて 全 体 の コラー ゲン量 は増加 した が ,コラ ーゲン の型 の比率 には有 意な変 化は見 られ なかっ た。

Ang lI堕DNA合成に 及ぼす 影響

  lOOpMか らlOuMのAngIIで は [ ゜H]thymidineの 取 り 込 み には 有 意 な 変 化は み ら れ な かっ た 。 ま た ,心 筋 線 維 芽 細 胞の 細 胞 数 はAngILを暴 露した24時間の 間に 変化は みられ なかっ た。

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SHRお よ びWKYの 細 胞 と もAngIIは コ ラ ー ゲ ン 合 成 を 増 加 さ せ た が , そ れ はSHRの 細 胞 で 顕 著 で あ っ た 。lOOnMのAngII刺 激 でIま コ ラ ー ゲ ン 合成 の 増 加 はSHRの 細 胞 では185土18

% で あ っ た の に 対 し ,WKYの 細 胞 で は128土 19% で あ っ た (pくO.01) 。

考  察

  従 来 の 研究 か らR―A系 が 高 血圧 性肥大 心にお ける コラー ゲン代 謝に関 与す ること が示唆 され てい る が ,AngIIが 心筋 の コ ラ ー ゲン 代 謝 に 直 接影 響 を与 えてい ること の証 明はな かった 。本 研究 の 結 果 ,AngIIは心 筋 線 維 芽 細胞 の コ ラ ー ゲン 合 成を 促進し た。合 成さ れたコ ラーゲ ンの 大 部 分fまI型 であ り , 他 にm型 とV型 が 合ま れ て い た が,AngIIは コ ラ ー ゲン の 型 に 有 意な 影 響を与 えなか った。 また, 合成 された コラーゲン蛋白の大部分は細胞内でナょく培養液中に存在し た 。 そ の 作 用 はAnglIの受 容 体 拮 抗 剤で あ るsaralasinで 抑 制 さ れ,AngII受 容 体 を 介す る と 考 え ら れ た 。 一 方 ,AnglIはDNA合 成 に 影 響 を 及 ぼ さ な か った 。 さ ら に ,SHRの 心 筋線 維 芽 細胞で はAngIIに対す る反 応性が 亢進し ている こと が示さ れた。

  AngIIが 心 筋 線維 芽 細 胞 の コ ラー ゲ ン 合 成 を促 進 す る受容 体以下 の細 胞内情 報伝達 機序は , 心筋細 胞や血 管平滑 筋細胞 にお ける従 来の・ 報告か ら, イノシ トール リン脂 質代謝の亢進,pro‑

tein kinaseCの 活 性 化お よ び 核内 癌遺伝 子や 細胞成 長因子 遺伝子 の賦活 化を 介する もので ある と考 え ら れ る 。AngIIの コ ラ ー ゲ ン合 成 刺 激 作 用はSHR由 来の 心 筋 線 維 芽細 胞で 著明で あり , SHRに お い て は ,AngII受 容 体 数 の 増 加 , 受 容体 のupregulationおよ び 受 容 体 以 下の 情 報 伝 達系 の 亢 進 が 生じ て い る と 考え ら れ る 。 心筋 細 胞 に おけ るAnglIの蛋白 合成 促進に 関する 従来 の報 告 と 本 研 究の 結 果 か ら ,AngIIは 肥 大 心 に おい て 心筋 細胞と 線維芽 細胞 の双方 に作用 し,

心筋 細 胞 の 肥 大と 問 質 の 線 維化 , す な わ ち心 筋 のremodelingを 惹 起 する と 考え られる 。従つ て,AngIIの 作 用 を 直接 的 あ る い は間 接 的 に 阻 害す る 薬剤 には, 心筋細 胞肥 大とと もに心 筋の 線維化 を抑制 する効 果を期 待で きる。

結  論

  Angllはコ ラ ー ゲ ン 代謝 を 介 し 高 血圧 性肥 大心に おけ る心筋 の線維 化に深 く関 与して いるこ と が 示さ れ た 。

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学位論文審査の要旨

  肥 大心で は心 筋細胞 の肥大 と問質 の線維化が生・じるが,問質のコラーゲン線維の蓄積は,心室 の 拡張機 能に障 害を きたす と報告 されて いる。 心筋 組織は 心筋細 胞の他 に, 線維芽細胞,血管平 滑 筋細胞 ,内皮 細胞 ,さら に問質 のコラ ーゲン 線維 などで 構成さ れ,コ ラー ゲン線維の産生はこ の 心筋線 維芽細 胞が 担って いるこ とが証 明され てい る。し かし, その増 殖因 子やコラーゲン代謝 の 調節因 子に関 する 研究は ほとん ど行わ れてい ない 。一方 ,血管 収縮物 質で あるアンジオテンシ ンu (AngII)が 心 筋 細 胞 や血 管 平 滑 筋 細胞 の 蛋 白 合 成を 促 進 す る こ とが報 告さ れ,ま た,肥 大 心 筋 の コラ ー ゲ ン 含 量 がア ン ジ オ テ ンシ ン 変 換酵 素阻害 薬で減 少す ること から,AngIIが 肥 大 心にお ける心 筋の 線維化 に関与 してい ること が予 想され る。そ こで, 本研 究では,正常血圧お よ び 遺 伝 的高 血 圧 ラ ッ ト 曲来 の 培 養 心 筋線 維 芽 細胞 を用い て,コ ラー ゲン合 成,DNA合成 に及 ぼ すAngHの 影響を 検討し た。

  4週 齢Wistarラ ッ ト ,10週 齢 の 高 血 圧 自 然 発 症 ラ ッ ト(SHR)と 同 週 齢 のWistar―Kyoto ラ ッ ト (WKYラ ッ 卜 ) の 左 心 室 筋 よりEghbaliら の 方法 を 改 変 し て心 筋 線 維 芽 細 胞の 培 養 を 行 っ た 。confluentに 達 し た心 筋 線 維 芽 細胞 を 無 血 清 のDME培 地 で24時 間 培 養後 , 培 地 を0.1 mMア ス コ ル ビ ン 酸 を 含 むDME培 地 に 交 換 しAnguを 加 え8時 間 培 養 し , そ の 後 [ ゜H] prolineで標 識しさ らに16時間培 養を続 けた。 培養 上清お よび細 胞層を 回収し ,プ 口テア ーゼ阻 害 剤 を 含 む50mM酢 酸に 対 し て 透 析を 行 っ た 後 ,凍 結 乾 燥 し た。 試 料 の 一部はPeterkof skyら の 方法で コラゲ ナー ゼ消化 を行い ,コラ ーゲン 合成 量を測 定した 。また ,残 りは塩酸により加水 分 解 し ア ミノ 酸 分 析 で [ °H]hydroxyprolineの 定量 を行い ,コラ ゲナー ゼ消化 法で 得られ た コ ラ ー ゲ ン合 成 量 と 対 比 した 。 ま た , コラ ー ゲ ン の 型分 析 の た め ,試 料を ペプ シン消 化後,

Sykesらの 方法で ポリア クリル アミド 電気 泳動を 施行し ,フル オ口 グラフ ィを行 った。 さらに , DNA合 成 の 分 析 の た め ,AnglIで 刺 激 し た細 胞 を [ °H]thymidineで標 識 し , 酸 不溶 性 物 質

顕康 厚       富和 畠山 部 北小 阿 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

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最大となり,AngIIを加えな い状態より細胞1個当たりでみると107土19%増加した。AngIEは 非コラーゲン蛋白の合成も促進したが,AngIIはコラーゲン蛋白の合成をより強く刺激した。

合成されたコラーゲンの85%は培地中に存在し,その割合はAngn刺激にても変化が認められ なかった。コラーゲン合成 はAnglIを添加して8時間後より増加し始め,40時間後に最大に達 した。アミノ酸分析による [ H]hydroxyprolineの放射活性はAnglI刺激で増大し,コラゲ ナーゼ消化法による結果を 裏付けた。また,AnglIのコラーゲン合成に与えた効果はAngIL受 容体拮抗剤であるサララシンにより抑制された。心筋線維芽細胞の産生するコラーゲンの大部分 はI型であり,残りはm型とV型と考えられる成分が占め た。AngII刺激にて全体のコラーゲ ン量は増加したが,コラーゲンの型の比率は変化しなかった。AnglIは[°H]thymidineの取 り込みに有意な変化を与えなかった。一方,SHRでは収縮期血圧と左心室重量/体重比は有意 に大 きか った。AnglIを加えない状態 では,SHRの心筋線維芽細胞 はWKYラットの細胞に比 べ て1.6倍 コ ラ ー ゲ ン 合 成 が 大 き く , さ ら にAngIIに 対 す る 反 応 も 亢 進 して い た。

  以上の結果より,Angllはコラーゲン代謝を介し肥大心における心筋の線維化に関与してい ることが示唆された。

  口頭発表の審査会において,小山教授により,AngIIによるコラーゲンの遺伝子発現の有無 にっいて,大動脈の圧負荷後の血管内皮細胞でのコラ―ゲン合成促進と今回のAngII刺激との 比較,運動による心内膜側の動脈性毛細血管の増加との関連,さらにAngI[がコラーゲン合成 のどの段階に影響を与えるかにっいての質問がなされた。また,阿部教授より,心筋由来の線維 芽細胞と他臓器由来の線維芽細胞の違いにっいて,高血圧自然発症ラットでAngI[刺激を加え る前よルコラーゲン合成が亢進し,さらにAngII刺激に対する反応性も高まっていたことの意 義にっいての質問がなされた。これらに対し,申請者は概ね妥当な回答を行った。その後行われ た 小 山 , 阿 部 両 審 査 教 授 と の 試 問 に お い て も , 概 ね 妥 当 な 回 答 か な さ れ た 。   本研究は,心筋線維芽細胞におけるAngIIのコラーゲン合成促進作用を示し,肥大心におけ る心筋線維化へのAngILの関与の可能性を明らかにしたものであり,有意義ナょ研究と考えられ,

学位授与に値する。

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