博士(工学)佐々木康彦 学位論文題名
不連続ナょ壁体構造を有するコンクリートステイブサイロの 地震時挙動に関する研究
学位論文内容の要旨
食糧・酪農飼料及び鉱物資源の海外依存度が極めて高い我が国では,穀物や石炭などの大量貯 蔵を目的とした大規模な鉄筋コンクリート製サイ口あるいは鋼板製サイ口が数多く利用されてお り,備蓄規模の拡大に応じてますます大型化の傾向を見せている。この種のサイ口構造物は内容 物として大量の粉粒体を貯蔵しているため,壁面に作用する静的圧力,内容物投入時の衝撃圧,
排出時の流動現象や動的過大圧カのほか,地震時におけるサイ口壁体構造と内容物の動的相互作 用 な ど , 通 常 の 土 木 ・ 建 築 構 造 物 に は 見 ら れ ナ ょ い 特 殊 な 問 題 を 抱 え て い る 。 サイロ構造物としては種々の構造材料や構造形式のものが利用されているが,欧米では70年来 の使用実績を持つコンクリートステイブサイロ(concrete stave silo)が工業用・農業用大型貯 蔵施設として広く普及している。このステイブサイ口は,工場で大量に成型されたコンクリート プ口ック(ステイブ)を用いて,現場作業の簡易化・工期短縮をfまかった経済的で施工性に優れ たサイロであり,欧米各国では設計施工規準も制定されている。しかし,干数百個にも及ぶステ イブを円筒状に組合せて積上げ,外壁をりング状の鉄筋(フープ)で締付けるという不連続な壁 体構造であるため,特に地震多発地帯である我が国では,その地震時挙動および耐震安全性に関 する検討が望まれている。
本研究は,不連続な壁体構造を有するコンクリートステイブサイロの振動特性,地震応答特性 および内容物や不連続構造の影響を実験的に解明するとともに,不連続性を考慮した動的解析モ デルを開発して地震時挙動に関する数値シミュレーションを実施し,さらに,サイロ構造物の耐 震設計に有用な内容物の有効質量係数等の検討を行なったものである。本論文は全6章から構成 されており,各章の概要は以下の通りである。
第1章は序論であり,サイ口構造物に関する既往の研究を概括し,本研究の目的と内容を要約 している。
第2章では,コンクリートステイブサイロの基本的振動特性および地震応答特性,さらには内
容物の 有無 や物性 の相違 による 影響を 把握 するた めに, 水平振 動台 による 模型振 動実験を実施し た 。模 型 用 ス テ イブ サ イ 口 は 幾何 学的 縮尺1/6,壁 体高さ と直 径の比2.Oで, 内容 物は粒 状体 で ある 「 玄 米」 および 粉状体 とし て表面 を湿ら せた「 オガク ズ」 の2種 類を 使用し た。ま ず,模 型頂部 にお ける加 速度共 振曲線 の比較 から ,模型 用ステ イブサ イロ の基本 的振動 特性は内容物の 有無で 極端 に変化 するこ とが明 らかに なっ た。一 般的に ,内容 物の 存在は 応答倍 率を滅少させ,
共振振 動数 を低下 させる 。しか し,粒 状体 である 玄米と 粉状体 であ るオガ クズと では,内容物と しての 質量 ・剛性 ・減衰 効果に 顕著な 相違 が見ら れた。 また, 地震 波応答 時の内 容物の動的挙動 に関し て, 玄米は 壁体構 造とほ ば一体 とな った応 答性状 を示す が, 粉状体 である オガクズの場合 は壁体 構造 と全く 異なっ た挙動 を示す こと が判明 した。 なお, 模型 状態に よらず ,さらには入力 加速度 レベ ルを増 大させ ても, 壁体上 部・ 中央部のステイブには動ひずみが殆ど生じないという,
壁 体 構 造 の 不 連 続 性 に 起 因 す る ス テ イ ブ サ イ 口 に 特 徴 的 な 実 験 結 果 も 明 ら か に な った 。 第3章 で は, 小型ス テイブ サイ口 壁体 構造模 型を用 いた静 的水 平加力 実験, 地震波 加振実 験お よ び1質 点 履歴 復元 カモデ ルによ る非線 形地 震応答 解析か ら,不 連続な 壁体 構造を 有する コンク リート ステ イブサ イロの 復元力 特性に っい て検討 を行な った。 まず ,正負 交番漸 増荷重を模型頂 部に加 えた 静的水 平加力 実験結 果によ ると ,ステ イブサ イロの 壁体 構造は 壁体材 料の降状以前の 段階か ら, 骨格曲 線が軟 化バネ 型であ る顕 著な履 歴復元 力特性 を示 すこと が明ら かになった。ま た,地 震波 応答時 におい ても, 応答振 幅の 増加に 伴って 履歴ル ープ の面積 が増大 し,剛性勾配が 低下す る傾 向を持 った履 歴復元 力性状 を描 き,非 線形な 地震応 答特 性を示 すこと が判明した。さ らには ,解 析モデ ルの動 的復元 力特性 に模 型実験 で得ら れた静 的復 元力特 性が適 用出来ることか ら,ス テイ ブサイ 口壁体 構造の 履歴復 元力 特性は,それほど速度依存性がないことも明らかになっ た。
第4章 でtま , 相 似 則 を考 慮 し た 縮尺1/8模型 用ステ イブサ イロお よび内 容物 として は実物 の
「米」 を用 いて, 正弦波 ・地震 波加振 実験 を行な った。 また, この サイ口 模型と 同一材料・同一 寸法の 円筒 シェル 模型に よる同 様な振 動実 験を実 施し, 不連続 構造 の影響 を検討 した,まず,両 模型の 共振 振動数 の比較 から, ステイ ブ継 目の存 在によ るステ イブ サイ口 壁体構 造の剛性低下傾 向が顕 著に 示され た。ま た,地 震波加 振実 験にお ける入 力地震 波の 卓越振 動数と 模型用ステイプ サイロ の共 振振動 数との 相互関 係がよ り重 要であ り,内 容物の 減衰 効果で 応答倍 率は必ず滅少す るとは 断定 出来な い結果 も得ら れた。 さら には, ステイ ブサイ 口壁 体構造 の履歴 復元力特性に起 因して ,入 力加速 度レベ ルの増 大に伴 って 応答倍 率が漸 次減少 し, 応答加 速度の 卓越振動数が順 次 低 下 す る と い う 非 線 形 ナ ょ 地 震 応 答 特 性 を 示 す こ と が 明 ら か に な っ た 。
203
第5章 では ,コン クリー トステ イブ サイロ の動的 挙動に 関する 解析 的な検 討をめ ざして ,゛ ス テイ ブサイ 口要素 。と 名付け た新し い動的 解析 モデル を開発 した。 ステイ ブサイ口壁体構造の主 要な 構成要 素であ るス テイブ ,フープおよびステイブ継目をそれぞれ「剛体」,「フープバネ」,
「 剛体 間バネ 」でモ デル化 し,こ れら3種類 の基 本解析 モデル から組 立て られる 円筒状 の「剛 体
― 剛体 間バネ ーフー プバネ 」系モ デル を,さ らに2っの 水平面 で切断 して 取出し た構造 要素が ス テイ ブサイ 口要素 であ る。ま た,こ の構造 要素 を実際 に使用 する上 で最も 重要な問題となる剛体 間バ ネ剛性 の評価 方法 を提案 した。 すなわ ち, 解析す べきス テイブ サイ口 壁体構造と同一材料・
同一 寸法の 円筒殻 を考 え,そ の円筒 殻と等 価な 剛性定 数をひ とっの 規準値 とし,さらにサイ口模 型実 験結果 に基づ いて 壁体構 造の不 連続性 に起 因する 構造剛 性の低 滅率を 推定するものである。
これ らの「 ステイ ブサ イ口要 素」および「剛体間バネ剛性の評価方法」を地震時挙動の数値シミュ レ ー ショ ン に 適 用 し ,前 章で 述べた 縮尺1/8模型 用ステ イブサ イ口 の地震 波加振 実験結 果と 比 較検 討する ことに より ,本解 析手法 の妥当 性が 検証さ れると 共に, 等価線 形化した地震応答解析 の適 用可能 範囲が 明ら かにな った。 さらに は, 内容物 を壁体 構造の 「付加 質量」と見なす簡便な モデ ル化に よる地 震応 答解析 とステ イブサ イ口 模型実 験結果 との比 較を通 じて,サイロ構造物の 耐 震 設 計 に お い て 重 要 な 「 地 震 応答 時 の 内 容 物の 有 効 質 量 係数 」 の 算 定 が可 能 と な っ た 。 第6章 で は , 以 上 の 各 章 で 得 ら れ た 主 な 結 論 を 要 約 し , 本 論 文 の 総 括 を 行 な っ た 。
学位論文審査の要旨
本論文 は,不 連続な 壁体 構造を 有する コンク リート ステ イブサ イ口の 振動特性,地震応答特性 お よび 内容物 や不連 続構造 の影響 を実 験的に 解明す るとと もに ,不連 続性を考慮した動的解析モ デ ル と そ の 剛性 評 価 法を 新たに 開発 し,ス テイブ サイロ の地震 時挙 動に関 する数 値シミ ュレ ー シ ョ ン ヘ の 適 用 性 ・ 解 析 精 度 の 検 証 を 行 な った も の で あ り, 全6章 か ら構 成 さ れ て いる 。 第1章 は序 論であ り,一 般的な サイ 口構造 物に関 する動 的問題 の概 要と既 往の研 究にっ いて 述
仁
夫 雄
二
史
嘉
輿 拓
村
田 田
田
芳
藤 角
柴
授 授
授 授
教 教
教 教
査 査
査 査
主 副
副 副
べ るとと もに, 本研究 の目 的と内 容を要 約して いる。
第2章 で は , 縮 尺1/6模 型 用ス テ イ ブ サ イ口 お よ び 内容物 として 「玄米 」, 「オガ クズ」 を 用 いた模 型振動 実験を 実施 し,コ ンクリ ートス テイブ サイ 口の基 本的振 動特性 ・地震応答特性と 内 容物の 動的効 果に関 する 検討を 行なっ ている 。内容 物の 存在は ステイ ブサイ 口の応答倍率を減 少 させ, その共 振振動 数を 低下さ せるが ,粒状 体であ る玄 米と粉 状体で あるオ ガクズとでは,内 容 物とし ての質 量・剛 性・ 減衰効 果に顕 著な相 違が見 られ ること を示し ている 。また,地震波応 答 時にお ける内 容物と サイ 口壁体 構造と の動的 相互作 用は ,内容 物の物 性に応 じて全く異なった 挙 動を示 すこと を明ら かに してい る。
第3章 で は,小 型ステ イブ サイ口 壁体構 造模型 を用い た静 的水平 加力実 験,地 震波 加振実 験お よ び1質 点履歴 復元カ モデル による 非線 形地震 応答解 析を通 じて ,コン クリー トステ イブサ イ口 壁 体構造 の復元 力特性 に関 する検 討を行 なって いる。 静的 水平加 力実験 から, ステイブサイロの 壁 体構造 は壁体 材料の 降状 以前の 段階か ら骨格 曲線が 軟化 バネ型 である 顕著な 履歴復元力特性を 示 すこと が判明 し,さ らに 履歴復 元カモ デルの 動的特 性に 模型実 験で求 めた静 的復元力曲線が適 用 できる ことか ら,ス テイ ブサイ 口壁体 構造の 履歴復 元力 特性は 速度依 存性が 少ないことを明ら か にして いる。
第4章 で は , 相 似則 を 考 慮 し た 縮尺1/8模型 用 ス テ イブサ イロお よび内 容物 として 「米」 を 用 いた正 弦波・ 地震波 加振 実験を 行なう ととも に,さ らに このサ イロ模 型と同 一材料・同一寸法 の 円筒シ ェル模 型によ る同 様な振 動実験 を実施 し,不 連続 構造の 影響を 検討し ている。両模型の 共 振振動 数の比 較結果 から ,ステ イブ継 目の存 在によ るス テイブ サイロ 壁体構 造の剛性低下傾向 を 説明し ている 。また ,ス テイブ サイ口 壁体構 造の履 歴復 元力特 性に起 因して ,入力加速度レベ ル の増大 に伴っ て応答 倍率 が漸次 減少し ,応答 加速度 の卓 越振動 数が順 次低下 するという非線形 ナ よ地震 応答特 性を示 すこ とを明 らかに してい る。
第5章 でtま,コ ンクリ ートス テイブ サイ 口の地 震時挙 動に関 する 解析的 な検討 をめざして,新 し い動的 解析モ デルと その 剛性評 価法の 開発を 行なっ てい る。ま ず,ス テイブ サイ口壁体構造の 主 要な構 成要素 である ステ イブ, フープ および ステイ ブ継 目をそ れぞれ 剛体, フープバネ,剛体 間 バ ネ でモ デル化 し,こ れら3種類 の基 本解析 モデル から組 立て られる 円筒状 の剛体 ―剛体 間バ ネ ―フー プバネ 系モデ ルに 基づい て,ス テイブ サイロ 要素 が考案 されて いる。 また,この構造要 素 におけ る剛体 間バネ 剛性 の評価 法は, 解析す べきス テイ ブサイ 口壁体 構造と 同一材料・同一寸 法 である 円筒殻 と等価 な剛 性定数 をひとっの規準値とし,さらにサイ口模型実験結果に基づいて,
壁 体構造 の不連 続性に 起因 する剛 性低減 率を推 定する もの である 。次に ,これ らステイブサイ口
205
要素および剛体間バネ剛性の評価法を地震時挙動の数値シミュレーションに適用し,縮尺1/8 模型用ステイブサイロの地震波加振実験結果との比較検討により,本解析手法の妥当性を検証す るとともに,等価線形化した地震応答解析の精度を明らかにしている。さらに,内容物を壁体構 造の付加質量と見なす簡便な解析モデル化による地震応答解析結果およびステイブサイ口模型実 験結果との比較を通じて,サイ口構造物の耐震設計において最も重要な地震応答時における内容 物の有効質量係数の算定が可能となることを示している。
第6章で は,以上の各章で得られた 主な結諭を要約し,本論文の 総括を行なっている。
これを要するに,本論文は不連続な壁体構造を有するコンクリートステイブサイ口の地震時挙 動に関して実験的に多くの新知見を与えるとともに,地震応答特性および内容物の有効質量係数 に関する数値シミュレーションを可能とする新たな解析手法を提案したものであり,構造動力学 の進展に寄与するところ大なるものがある。よって,著者は博士(工学)の学位を授与される資 格あるものと認める。