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博 士( 工 学 ) 佐 々 木 哲 夫 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士( 工 学 ) 佐 々 木 哲 夫

学 位 論 文 題 名

金 型 磨 き 作 業 の 知 識 獲 得 と 自 動 化 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  金 型 の 製造 工 程 に お いて , 製 品 部 ( キャ ビ テ ィ ・ コア ) お よ ひ ,機 械部位 の形状 加工はNC 工 作機 械,放 電加工 法等の 導入 により 自動化 が進め られて いる 。しか し,射出成型用金型の製造 工 程の30〜 50%の工 数を 占める 磨き加 工は複 雑な形 状精度と表面粗さの両方を維持することが難 し く, いまだ に熟練 工の手 作業 に頼っ ている のが現 状であ る。

  本研究 は金型 磨き熟 練工 の持つ 知識や 技能を 収集 し,こ の情報 を基に した金型磨き方法を教示 す るエ キスパ ートシ ステム の構 築と, 熟練工 のもつ 技能を 再現 できる 自動磨き装置の試作・開発 を 行い ,その 有効性 を確認 する ことに よって 金型製 品面の 磨き 加工の 自動化のための基礎的資料 を 得 る こ と を 目 的 と し て 論 じ た も の で あ っ て ,7章 よ り 構 成 さ れ て い る 。   第1章は緒 論で あって ,金型 の自動 磨き 装置の 試作・ 開発と 磨きに 関す るエキ スパー トシス テ ム の構 築に関 して, これま で行 われた 研究の 概要と 問題点 にっ いて触 れるとともに,本研究の必 要 性 と 目 的 及 び そ の 研 究 範 囲 , な ら び に 本 論 文 の 概 要 に っ い て 述 べ て い る 。   第2章では ,金 型熟練 工の磨 き方法 に関 して, 小集団 活動の 報告書 ,作 業標準 ,アン ケ―ト な ど か ら 次 の よ うな 知 識 を 獲 得し , 工 キ ス パー ト シ ス テ ムに 必 要 な 情報 にっ いて述 べてい る。

  1) 金型熟 練工は 与えら れた金 型に 対して 適当ナ ょ工具と砥粒,番手を選択し,肉眼による表面 の 仕上 がり状 態を判 断しな がら ,本人の持っている技能(磨きカ,磨き速度,磨き方向の制御等)

に より 鏡面仕 上げを 行って いる 。

  2)金型熟 練工 が磨き 手順を 決定するためには,前工程の加工法(フライス加工,放電加工等),

最 終仕 上がり 程度( 表面粗 さ, 寸法精 度等) ,特徴 面の性 質( 自由曲 面,離型方向等)を事前の 情 報と して知 ってお かなけ れば ならな い。

  3)磨 き手 順 の 決 定 のた めは, 工具 の選定 基準と 作業手 順, さらに 現在の 工程か ら次の 工程 に 移 るた めの見 極め基 準の決 定方 法が重 要であ る。見 極め基 準は ,前加 工面に残る傷の除去する割 合 を3通り に分類 し, それと 使用工 具の適 当な組 合せ により ,最も 短時間 で仕 上がる 磨き手 順と し て決 定して いる。

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  4)以上のことから,できるだけ短時間に所望の粗さを得るには,各工具の磨き回数と表面状 態 の特 徴量 であ る 表面 粗さ ,傷 深さ , 除去 深さ との 定量 的 な関 係を 知る 必 要が ある 。   第3章では,熟練工が最も多く使用する複数の工具を用い,工具の種類,砥粒の番手,磨き回 数の組合せのもとで熟練工による手作業と往復運動する自動磨き装置により磨き実験を行った。

また,3次元動力計を用いて磨き作業の押し付けカと磨き速度を測定し,押し付けカは約20N, 工具の速度は約6 m/min近傍の値が用いられることが分かった。いずれの磨き工具の場合も,

前加工面粗さ は磨き回数Nとともに指数関 数的に改善され,仕上げ面粗さRaは前加工面粗さ Ro,最 終仕 上げ面 粗さRe,粗さ定数aによって 決定これ,次式で近似する ことができた。

    Ra‑ (Ro一Re) exp(一aXN)十Re

  最終仕上げ面粗さReは前加工面粗さの大小によらず使用する工具に依存する。除去深さの特 性曲線は2っの直線で近似することができ,その接点(交点)を示す臨界磨き回数Ncは改善可 能な仕上げ面粗さを得る磨き回数に良く一致している。この臨界磨き回数Ncにおける除去深さ Hcは,前加工 面粗さRzの1/2であり,また 粗さ定数aは臨界磨き回数の 逆数の2倍である。

仕上げ面粗さに関しては手磨き,自動磨きとともに同程度であるが,除去能カは手磨きが2倍程 度高く,また傷深さも小さく,しかも磨き工具の種類にかかわらず粗さに対する傷深さの比(HsZ Ra)は4とほば一定であることを述べている。

  第4章では,ある表面粗さの前加工面が与えられた場合,第2,3章で獲得した熟練工の知識 を基にして,非熟練者が磨き工具の選択順序,磨き回数,次の工具の選択の教示を受けられるエ キスパートシステムを構築した。このエキスパートシステムには多種多様な磨き工具データと磨 き特性デ一夕に対処できるように,工具名リスト,工具優先順位,ルールファイルそして第3章 の実験で得た数式ファイルで構成されている。また本工キスバートシステムでは金型磨き作業手 順決定に関する知識をif ‑ thenのルール形式で表現し,前加工面および要求仕上げ面の粗さと 傷 深 さ を 入 カ す る こ と に よ り 前 向 き の 推 論 で 全 可 能 解 を 探 索 す る こ と が で き る 。   このエキスバートシステムの解に従って磨き作業を行った結果,工具の選択,磨き回数,表面 の粗さの特性は教示された内容と良く一致し,本工キスパートシステムの有効性が検証された。

  第5章では,熟練工の磨き特性を再現できる自動磨き装置の試作にっいて述べている。熟練工 による磨き作業は,一般にはスティック砥石等を用いた往復運動によって行われている。そこで 曲面の自動磨き装置では,セグメント状に加工したスティック砥石を円板の外周に固定して回転 砥石を作り,これで磨き実験を行った。回転にはステッピングモ一夕を,押し付けカにはエアシ リンダーを用いた。

‑ 343

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  平 面や 傾斜面 にっい て,多 種類の 表面 粗さの 前加工 面を用 意し ,自動 磨き装置による磨き実験 を 行った 結果, 次の ような 結論が 得られ た。 回転砥 石によ る自動 磨き実 験では,磨き面の法線方 向 ヘ押し 付けカ を一 定に制 御する ことに よっ て,熟 練工の 手作業 で得た と同様の特性が得られ,

表 面粗さ と磨き 回数 の関係 を表す 実験式 の適 用が可 能であ る。回 転砥石 による磨きにおいては,

回 転 数n,送 り 速 度f,磨 き 回 数Nと磨 き 特 性 に 関 係す る 要 因 が 多い ので ,磨き パラ メー夕Sを 導 入する ことに よっ て回転 数や送 り速度 に影 響され ない磨 き特性 値を得 ることが可能になった。

磨 きパラ メー夕Sは 次式で 与え られる 。     Sニニ ニN/ (f/n) ‑NXn/f

  磨 きパ ラメー タを導 入する ことによって,斜面と曲面の磨き実験の結果を統一的に解析出来た。

  第6章で は , 開 発 した 自 動 金 型 磨き 装 置 に よっ て,R50mmのニ っの 円弧に よって 構成さ れた2 次 曲面を 磨く実 験で 得られ た特性 は,平 面や 斜面の 磨き実 験と同 等の特 性であり,熟練工が同じ 試 料を磨 いた実 験と 比較し て,表 面粗さ ,磨 き能率 共に両 者は同 程度で あり,自動磨き装置が熟 練 工の技 能に匹 敵す る性能 を持つ ことを 述べ ている 。

  第7章 は 結 論 と 総 括 で あ っ て , 本 研 究 に お い て 得 ら れ た 結 果 を 総 括 し て 述 べ て い る 。

学 位論 文審査の要旨

主 査    教 授    斎 藤 勝 政 副 査    教 授    池 田 正 幸 副 査    教 授    嘉 数 侑 昇 副 査    教 授    岸 浪 建 史 副 査    教 授    三 好 隆 志      (大阪大学・工学研究科)

  本論文 は金 型磨き 熟練工 の持つ 知識と 技能 を収集 し,こ の情報 を基 にした金型磨き方法を教示 するエ キスパ ―トシ ステ ムの構 築と熟 練工の もつ 技能を 再現で きる自 動磨き装置の試作・開発を 行い, その有 効性を 確認 するこ とによ って金 型製 品面の 磨き加 工の自 動化のための基礎的資料を 得るこ とを目 的とし て論 じたも のであ る。

  第1章は 緒論で あって ,金型 の自 動磨き 装置の 試作・ 開発 と磨き に関す るエキ スパ― トシ ステ

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ム の構築 に関し て,こ れまで 行わ れた研 究の概 要と問 題点 にっい て触れ るとともに,本研究の必 要 性 と 目 的 及 び そ の 研 究 範 囲 , 、 な ら び に 本 論 文 の 概 要 に っ い て 述 べ て い る 。   第2章では ,金型 熟練 工の磨 き方法 に関し て, 小集団 活動の 報告書 ,アン ケー トなど から知 識 を 獲得し ,工キ スパー トシス テム に必要 な情報 にっい て述 べてい る。

  す なわち ,

  1)金 型 熟 練 工 が磨 き 手 順を決 定する ため には, 前工程 での加 工法 (フラ イス加 工,放 電加工 等 ),最 終仕上 がり程 度(表 面粗 さ,寸法精度等),特徴面の性質(自由曲面,離型方向等)を事 前 の情報 として 知って おく必 要が ある。

  2)磨 き 手 順 の 決定 の た めには ,工具 の選 定基準 と作業 手順, さら に現在 の工程 から次 の工程 に 移るた めの見 極め基 準の決 定方 法が重 要であ る。

  3)以 上 の こ と から , で きるだ け短時 間で 所望の 粗さを 得るに は, 各工具 の磨き 回数と 表面状 態 の 特 徴 量 で あ る 表 面 粗 さ , 傷 深 さ , 除 去 深 さ と の 定 量 的 な 関 係 を 知 る 必 要 が あ る 。   第3章では ,熟練 工が 最も多 く使用 する複 数の 工具を 用い, 工具の 種類, 砥粒 の番手 ,磨き 回 数 の組合 せの基 で熟練 工によ る手 作業と,自動磨き装置による往復運動により磨き実験を行った。

い ずれ の磨き 工具 の場合 も,前 加工面 粗さは 磨き 回数Nとと もに指 数関数 的に改 善さ れ,仕 上げ 面 粗 さRaは 前 加 工 面 粗 さRo, 最 終 仕 上 げ 面 粗 さRe, 粗さ 定 数aに よっ て 決 定 さ れ, 次 式 で 近 似する ことが できた 。

    Ra= (Ro−Re) exp(―aXN)十Re.

除 去深 さの特 性曲 線は2っの 直線で 近似す ること ができ ,そ の接点 (交点 )を示 す臨 界磨き 回数 Ncは 改善可 能な仕 上げ 面粗さ を得る 磨き回 数に良 く一 致して いる。

  第4章 で は , あ る表 面 粗 さ の 前加 工 面 が 与 え られた 場合, 第2,3章で獲 得した 熟練工 の知識 を 基にし て,非 熟練者 の磨き 工具 の選択 順序, 磨き回 数, 次の工 具の選 択の教示を受けられるエ キ スパー トシス テムを 構築し た。 本工キ スパー トシス テム では金 型磨き の作業手順決定に関する 知 識 をif―thenの ル ー ル形 式で 表現し ,前加 工面お よび要 求仕 上げ面 の粗さ と傷深 さを 入カす る こ と に より 前 向 き 推 論で 全可能 解を探 索する ことが でき る。本 工キス パート シス テムの 解に 従 って磨 いた結 果は教 示され た内 容と一 致し, 本工キ スパ ートシ ステム の有効性が検証された。

  第5章は熟 練工の 磨き 特性を 再現で きる自 動磨 き装置 の試作 開発研 究にっ いて 論じた もので あ る 。曲面 の自動 磨き装 置では ,円 盤状に 加工し たステ ィッ ク砥石 で磨き 実験を行い,次のような 結 諭を得 ている 。手磨 きの表 面粗 さと磨 き回数 の関係 を表 す実験 式の適 用が可能であり,回転砥 石 によ る磨き にお いては ,回転 数n,送り 得度f,磨 き回転Nと 磨き特 性に関 係す る磨き パラメ ー

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夕Sを導入することによって,回転数や送り速度に影響されない磨き特性値を得ることが可能で ある。

  磨きパラメ一夕Sは次式で与えられている。

    S=N/(f/n)ーNXn/f

  第6章では,開発した自動金型磨き装置によって,.2次曲面の磨き実験で得られた特性が,平 面や斜面の磨き実験と同等の特性を示し,熟練工が手作業で磨いた仕上げ面と比較して,表面粗 さ,加工能率共に両者は同程度であり,自動磨き装置が熟練工の技能を再現する性能を持っこと を述べている。

  第7章は 結論 と 総括 であ って ,本 研 究に おい て得られた結 果を総括して述べている。

  本論文は,熟練工の技能によって行われる金型磨き作業を解析することにより精密工学上有益 な多くの知見が得られており,さらにエキスパートシステムの構築により磨き作業の自動化が計 られ,生産工学の進歩に寄与するところ大である。

  よ っ て 著 者 は , 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

参照