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博 士 ( 薬 学 ) 井 指 康 裕

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 学 ) 井 指 康 裕

学 位 論 文 題 名

モルモット食細胞に発現する Fc レセプターの構造と機能の研究

一炎症部位における活性化機構の解析―

学 位 論 文 内容 の 要 旨

本論文にお いて、筆者は以下結果を得た。

1. モ ル モ ッ トM¢ のFc72Rを コ ー ド す る 遺 伝 子 の ク ロ ー ニ ン グ と 機 能 の 解 析   ヒトのFc7 RIIIのcDNAを プローブとしてモルモットH¢のcDNAライブラリーよりFcア2RのCDNAを 単離 した 。そ の 結果 、こ のレ セプ タ ーは ヒトやマウスのFc7RII【 に相当する細胞膜貫通型の 蛋 白で ある こと を 見い 出し た。 さら に 遺伝 子レベルで可溶型のサブ タイプが存在する可能性を 示 唆した。また、ヒトやマウ スのFc7RI【【とは異なり、モルモットのFc7RIIIは単独でCOSー7細胞膜 上に 発現 する が 、FcsRIの7鎖(7鎖) との共発現によりFcアRII【 の発現量が増大し、7鎖によ り 安も レて 細胞 表 面に発現できることを 見い出した。このように細 胞に発現させたFC7RIIIの種 々 の機 能を 検討 し た結果、Fc7RIII単独 の発現でもIgG2―ICとの結合 活性を示すが、ICの貪食作 用 に はFcERIの7鎖 と の 共 発現 が必 要 であ るこ とを 見い 出 した 。さ らにFc7RIはICの 刺 激に より 遺伝 子レ ベル で その 発現 が抑 制さ れ てい ることを見い出した。ま た、得られたcDNAをプロー ブ に用 いて ノー ザ ンブロットを行った結 果、阿NとI¢に発現してい るFc72Rは遺伝的に異なった タ イプであることを示唆する 結果を得た。

2.プ口テアー ゼによるFc7 RIIBの機能亢 進のメカニズムの解析

  血液中の好 中球をプロテアーゼの複合物 であるプロナーゼで処理す るとFcアRIIBのIgG一ICの結 合 能の 亢進 が認 め られ るよ うに なる が 、実 際に生体内 では、好中球由来エラス夕 一ゼやカテプ シ ンGな ど のセ リン プロテ アーゼが機能亢進に関与して いることを見い出した。こ の結果より、

好 中球 は自 己の 放 出し たプ ロテ アー ゼ によ り自らのFc7 RIIBを活性化している可 能性が考えら れた。

  好中 球のFcアRIIBと種々 の組成で作成したICとの反 応性を調べたところ、抗原抗 体比カぬ1の よ うなlつ の抗 原に 多数 の抗 体 が結 合し た大 き なICでは 著し い結 合 能の亢進が認 められたが、

IgG単量体や小 さなIC(抗原抗体比=10)では ほとんど変化は認められナ ょかった。この結果から、

プ ロテ アー ゼ処 理 を行 って もFcアRIIB自身 の抗体との 親和性は増大しないことが 示唆された。

また、Fc 7RIIBの発現量が高いM¢を用い てプ口テアーゼ処理によるIC結合性の変化を調べると、

lC結合性の増 大の割合は非常に少なかった 。これらの結果から、Fc7 RIIBの発現量の違いによル プロテアーゼ による活性上昇の割合に変化 があることが示唆された。

  さら に、 種々 の 密度でFC7 RIIBを発現させたCHO細胞 を用いてプロテア―ゼ処理 の影響を調べ ると、好中球 と同程度の密度でFc7 RIIBを 発現している細胞ではICと の結合性を示さなかったが プ ロテ アー ゼで 処 理す るこ とに よりICの結 合が 認め られ る よう にな った。また、M¢と同じ程 度 の密 度で 発現 し てい る細 胞で はICと の結 合が認めら れたが、プ口テアーゼ処理 によりICの結

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合 の増 大 が観 察さ れた 。こ の 結果 は、 好中 球 とM¢ にお けるプロテアーゼ処 理による効果の相 違と一 致し、Fc 7RIIBのIC結合性 には細胞膜上での発現密度が 影響していることが確認された。

次 に高 密度にFc7 RIIBを発現しているCHO細胞を用 いてプロテアーゼ処理によ るIC結合性の変化 を 調べ た 。そ の結 果、 プロ テ アーゼ処理をしても 結合性に大きな変化は認め られず、FcアRIIB の 発現 密 度が 非常 に高 い細 胞 ではプロテアーゼ処 理による影響を受けないこ とを見い出した。

  これ らの結果から、プロテアー ゼ処理によりFc7 RIIB自身のICとの親和性が高まるのではなく、

この処 理によりFc7 RIIBの細胞膜 上での流動性が増大してFcアRIIBの密度が局所的に高まること が可能 となり、多価のICとの結合 性が増大することが考えられ た。

  実際 に 、プ ロテ ア― ゼ処 理 前後でのFc7 RIIBの 細胞膜上での分布を調べる ために共焦点レー ザ ―走 査 顕微 鏡を 用い て細 胞 膜でのFcアRIIBの分 布を調べた。その結果、プ 口テア―ゼ処理を 行って もFc7 RIIti細胞膜上に均等 に分布しているのが、FcアRIIを架橋するとプロテアーゼ未処 理 の細 胞 は細 胞膜 上に 均等 に 分布しているのに対 し、プロテア―ゼ処理をし た細胞のFc7 RIIB は 細胞 表 面で 局在 化し てい る ことが確認された。 このことから、プロテア― ゼ処理により直接 FcアRIIBの局 在化 が引 き起 こ されるのではなく、 プロテアーゼ処理により細 胞膜上での流動性 が 高ま っ た結 果、ICの よう な 多価の結合部位を持 ったりガンドと効果的に結 合できるようにな ること が考えられた。

  プロ テ アー ゼ処 理を 行っ て も、FcアRIIBの 分子 量に 変化は認められず、プ ロテアーゼはFc7 RIIBに 直接作用していないことが 明らかとなった。

  細胞 内領域を欠損させたFc7 RIIBと、細胞膜貫通領域と細胞 内領域をマウスCD28に置換させた FcアRIIを発現させたCHO細胞を用いてプロテアー ゼ処理の影響を調べた結果、 この2種類の細胞 におい て、プ口テア―ゼ処理によ りIC結合性の増大が認められた。―この結果から、Fc7 RIIBの細 胞 膜貫 通 領域 と細 胞内 領域 は プロテアーゼ処理に よる抗体結合性の増大には 無関係であり、細 胞 外領 域 のみ がプ ロテ アー ゼ 処理による抗体結合 性の増大に関与しているこ とが示唆された。

  以上 の 結果 より 、プ ロテ ア ーゼはFc7 RIIB以外 の膜表面蛋白質に作用し、 細胞外の環境を変 化させ ることで、Fc7 RIIBの細胞 膜での流動性を高め、ICとの結合性を増大させると考えられた。

3.抗体依存性細胞傷害反応 に及ぼす2種類のFc 7Rの機 能の相違

  M¢に発現している2種類 のFc7RiのADCC反応を引き起 こす能カを比較した結果、Fc7 RIIのみに ADCC活性が存在することを 見い出した。さらに、Fc7 RIl{;t2種類のIgGと結合するにもかかわら ず 、IgG2を 介 し た 結 合 で の み 特 異 的 に 引 き 起 こ さ れ る こ と を 見 い 出 し た 。

4.ラットFc RIIをコ―ドす る遺伝子の単離とその機能

  ラットPrINよりFcアRIIを コードする遺伝子を単離し 、CHO細胞に発現させてその機能について 調べた。その結果、ラットFc 7RIIはいくっかの【gG単量体に対しても結合できる性質を持ってい ることを見い出した。また 、IgG―ICの取り込み能を保 持していた。さらに、ヒトや モルモット のFc7 RIIと同様にプロテア ーゼ処理をすることでIgG―lCの結合が亢進することを見い出した。

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学位論文 審査の要旨

学 位 論 文 題 名

モルモット食細胞に発現するFc レセプターの構造と機能の研究

― 炎 症 部 位 に お け る 活性化 機構 の解 析一

  

細菌 など の異 物が 生体 内に 侵入 すると 、補 体系 の活 性化などにより異物 を破壊する。そして、マク口ファ―ジなどの抗原提示細胞は、その情報をT 細 胞に伝え、T 細胞はこれらの抗原を認識するB 細胞の活性化を促す。活性化さ れたB 細胞は、抗体産生細胞へと分化し、抗体を分泌するようになる。抗体は 抗原を特異的に認識して、免疫複合体を形成レ、細菌の体内侵入をくい止め る 。さ らに 、免 疫複 合体 は好 中球 やマク ロフ ァー ジな どの貪食細胞のFc レ セプ夕一を介して取り込まれ、消化分解をうける。この一連の反応は体液性 免疫と呼ばれる。したがって、Fc レセブク―を介した標的異物の排除過程は 生 体防 御機 構の 仕上 げ段 階と もい えるも ので あり 、

Fc

レセブタ―は重要な 働きをする膜分子である。

  

近年、Fc レセプクーの研究は分子生物学の進歩と相俟って急速に進展し、

ヒ ト、 マウ スの

Fc

レ セプ ター の構 造が遺 伝子 解析 から 明らかにされつっあ る。

  

本研 究は 、こ れま で実 体が 不明 であっ たモ ルモ ット マク口ファージのFc レセプタ−(Fc7III )の遺伝子ク口二ニングに成功し、その全配列を決定し た。さらに、その遺伝子を導入した細胞を用いて、貪食作用における役割を 解析し、貪食活性には新たにァ鎖と呼ばれる別種の蛋白質が関連することを 見いだした。さらに、食細胞のFc レセブクーの存在状態について検討し、細

治 幸

光 彦

澤 村

出 橋

長 野

上 o

授 授

授 授

   

   

(4)

胞が刺激を受けて活性化状態になると、Fc レセプクーも膜表面を移動して、

よ り 強 い 細 胞 応 答 を 惹 起 す る よ う に な る こ と を 証 明 し た つ    以下に、その成果の概略を述べる。

  1 :モルモ゛ソトマク口ファージに発現しているFc レセブ夕.―をコードする 遺伝子の単離とその機能

   マク 口 フ ァ ー ジ に 発現 して いる Fc レ セブ ターの cDNA のク 口ー ニン グを 行 い、 そのアミノ酸配列を推定し、このレセブ夕一はヒトやマウ7 ヽのFc レセブ 夕 一の タ イ ブ III に 相 当 す る 細 胞膜 貫 通 型 の 蛋 白 質で ある こと を見 いだ し たっまた、遺伝子レベルで可溶型のサフタイブが存在する可能性を示唆した.、

また 、モルモ`ソトのFc レセブ夕一は単独で細胞膜に発現してIgG との結合活 性 を示 す が 、 貪 食 作 用な どの 機能 には Fc イ ブシ口 ンレ セブ ター のァ 鎖と の 共発現が必須であることを明らかにした.、

  2:Fc レ セ ブ タ ー の ブ 口 テ ア ー セ ゛ に よ る 機 能 亢 進 の 機 構 に つ い て    末 梢血 の白 血球 と炎 症部 位に 浸潤 して きた 白血 球とでは、免疫複合体の 貪食活性が著しくことなり、炎症性白血球の方が高い活性を示す。しかし、

末梢 血白 血球 をブ 口テ アー ゼ処 理す ると 、炎 症性 白血球同様な活性を示す こと が報 告さ れて いる 。Fc レセ ブタ ー遺 伝子 を導 入して強制発現させた細 胞を 用い てこ の機 構を 解析 レた 。Fc レセ ブク ーを 発現した細胞をブ口テア ーゼ 処理 して もレ セプ クー の切 断な どの 構造 的な 変化は見られず、細胞表 面のレセブク一分布が極端に変動し、集積する傾向が観察された。これは、

細胞膜あ流動性が変化して、レセブクー密度が局所的に高まることで、免疫 複合体との結合性を強めることが示唆された。

  3:Fc レセプターの細胞障害活性

   モ ルモ ッ卜 マク 口フ ァージには2 種類のFc レセブクーが発現している。そ

れぞ れの Fc レ セブ ター を単 独に 強制 発現 させ た細 胞を用いて、その機能を

比較 検討 した 。2 種類 のFc レセプクーのうち、FcRIIB が強い細胞障害活性を

示す こと が明 らか にな った 。さ らに 、こ のFcRIIB に相当するレセプターを

コ ー ド す る 遺 伝 子 を ラ ッ ト白 血 球 か ら も 分離 し、 その 構造 を決 定し た。

(5)

   以上、本研究において、モルモットマクロファージのFc レセプターの構造

や機能を明らかにした。モルモットは炎症剤開発に用いられる実験動物で

あり、この研究成果は抗炎症薬開発を進めるうえで貢献するものであり、博

士(薬学)の学位に値する業績と評価される。

参照

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