博 士 ( 薬 学 ) 井 指 康 裕
学 位 論 文 題 名
モルモット食細胞に発現する Fc レセプターの構造と機能の研究
一炎症部位における活性化機構の解析―
学 位 論 文 内容 の 要 旨
本論文にお いて、筆者は以下結果を得た。
1. モ ル モ ッ トM¢ のFc72Rを コ ー ド す る 遺 伝 子 の ク ロ ー ニ ン グ と 機 能 の 解 析 ヒトのFc7 RIIIのcDNAを プローブとしてモルモットH¢のcDNAライブラリーよりFcア2RのCDNAを 単離 した 。そ の 結果 、こ のレ セプ タ ーは ヒトやマウスのFc7RII【 に相当する細胞膜貫通型の 蛋 白で ある こと を 見い 出し た。 さら に 遺伝 子レベルで可溶型のサブ タイプが存在する可能性を 示 唆した。また、ヒトやマウ スのFc7RI【【とは異なり、モルモットのFc7RIIIは単独でCOSー7細胞膜 上に 発現 する が 、FcsRIの7鎖(7鎖) との共発現によりFcアRII【 の発現量が増大し、7鎖によ り 安も レて 細胞 表 面に発現できることを 見い出した。このように細 胞に発現させたFC7RIIIの種 々 の機 能を 検討 し た結果、Fc7RIII単独 の発現でもIgG2―ICとの結合 活性を示すが、ICの貪食作 用 に はFcERIの7鎖 と の 共 発現 が必 要 であ るこ とを 見い 出 した 。さ らにFc7RIはICの 刺 激に より 遺伝 子レ ベル で その 発現 が抑 制さ れ てい ることを見い出した。ま た、得られたcDNAをプロー ブ に用 いて ノー ザ ンブロットを行った結 果、阿NとI¢に発現してい るFc72Rは遺伝的に異なった タ イプであることを示唆する 結果を得た。
2.プ口テアー ゼによるFc7 RIIBの機能亢 進のメカニズムの解析
血液中の好 中球をプロテアーゼの複合物 であるプロナーゼで処理す るとFcアRIIBのIgG一ICの結 合 能の 亢進 が認 め られ るよ うに なる が 、実 際に生体内 では、好中球由来エラス夕 一ゼやカテプ シ ンGな ど のセ リン プロテ アーゼが機能亢進に関与して いることを見い出した。こ の結果より、
好 中球 は自 己の 放 出し たプ ロテ アー ゼ によ り自らのFc7 RIIBを活性化している可 能性が考えら れた。
好中 球のFcアRIIBと種々 の組成で作成したICとの反 応性を調べたところ、抗原抗 体比カぬ1の よ うなlつ の抗 原に 多数 の抗 体 が結 合し た大 き なICでは 著し い結 合 能の亢進が認 められたが、
IgG単量体や小 さなIC(抗原抗体比=10)では ほとんど変化は認められナ ょかった。この結果から、
プ ロテ アー ゼ処 理 を行 って もFcアRIIB自身 の抗体との 親和性は増大しないことが 示唆された。
また、Fc 7RIIBの発現量が高いM¢を用い てプ口テアーゼ処理によるIC結合性の変化を調べると、
lC結合性の増 大の割合は非常に少なかった 。これらの結果から、Fc7 RIIBの発現量の違いによル プロテアーゼ による活性上昇の割合に変化 があることが示唆された。
さら に、 種々 の 密度でFC7 RIIBを発現させたCHO細胞 を用いてプロテア―ゼ処理 の影響を調べ ると、好中球 と同程度の密度でFc7 RIIBを 発現している細胞ではICと の結合性を示さなかったが プ ロテ アー ゼで 処 理す るこ とに よりICの結 合が 認め られ る よう にな った。また、M¢と同じ程 度 の密 度で 発現 し てい る細 胞で はICと の結 合が認めら れたが、プ口テアーゼ処理 によりICの結
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合 の増 大 が観 察さ れた 。こ の 結果 は、 好中 球 とM¢ にお けるプロテアーゼ処 理による効果の相 違と一 致し、Fc 7RIIBのIC結合性 には細胞膜上での発現密度が 影響していることが確認された。
次 に高 密度にFc7 RIIBを発現しているCHO細胞を用 いてプロテアーゼ処理によ るIC結合性の変化 を 調べ た 。そ の結 果、 プロ テ アーゼ処理をしても 結合性に大きな変化は認め られず、FcアRIIB の 発現 密 度が 非常 に高 い細 胞 ではプロテアーゼ処 理による影響を受けないこ とを見い出した。
これ らの結果から、プロテアー ゼ処理によりFc7 RIIB自身のICとの親和性が高まるのではなく、
この処 理によりFc7 RIIBの細胞膜 上での流動性が増大してFcアRIIBの密度が局所的に高まること が可能 となり、多価のICとの結合 性が増大することが考えられ た。
実際 に 、プ ロテ ア― ゼ処 理 前後でのFc7 RIIBの 細胞膜上での分布を調べる ために共焦点レー ザ ―走 査 顕微 鏡を 用い て細 胞 膜でのFcアRIIBの分 布を調べた。その結果、プ 口テア―ゼ処理を 行って もFc7 RIIti細胞膜上に均等 に分布しているのが、FcアRIIを架橋するとプロテアーゼ未処 理 の細 胞 は細 胞膜 上に 均等 に 分布しているのに対 し、プロテア―ゼ処理をし た細胞のFc7 RIIB は 細胞 表 面で 局在 化し てい る ことが確認された。 このことから、プロテア― ゼ処理により直接 FcアRIIBの局 在化 が引 き起 こ されるのではなく、 プロテアーゼ処理により細 胞膜上での流動性 が 高ま っ た結 果、ICの よう な 多価の結合部位を持 ったりガンドと効果的に結 合できるようにな ること が考えられた。
プロ テ アー ゼ処 理を 行っ て も、FcアRIIBの 分子 量に 変化は認められず、プ ロテアーゼはFc7 RIIBに 直接作用していないことが 明らかとなった。
細胞 内領域を欠損させたFc7 RIIBと、細胞膜貫通領域と細胞 内領域をマウスCD28に置換させた FcアRIIを発現させたCHO細胞を用いてプロテアー ゼ処理の影響を調べた結果、 この2種類の細胞 におい て、プ口テア―ゼ処理によ りIC結合性の増大が認められた。―この結果から、Fc7 RIIBの細 胞 膜貫 通 領域 と細 胞内 領域 は プロテアーゼ処理に よる抗体結合性の増大には 無関係であり、細 胞 外領 域 のみ がプ ロテ アー ゼ 処理による抗体結合 性の増大に関与しているこ とが示唆された。
以上 の 結果 より 、プ ロテ ア ーゼはFc7 RIIB以外 の膜表面蛋白質に作用し、 細胞外の環境を変 化させ ることで、Fc7 RIIBの細胞 膜での流動性を高め、ICとの結合性を増大させると考えられた。
3.抗体依存性細胞傷害反応 に及ぼす2種類のFc 7Rの機 能の相違
M¢に発現している2種類 のFc7RiのADCC反応を引き起 こす能カを比較した結果、Fc7 RIIのみに ADCC活性が存在することを 見い出した。さらに、Fc7 RIl{;t2種類のIgGと結合するにもかかわら ず 、IgG2を 介 し た 結 合 で の み 特 異 的 に 引 き 起 こ さ れ る こ と を 見 い 出 し た 。
4.ラットFc RIIをコ―ドす る遺伝子の単離とその機能
ラットPrINよりFcアRIIを コードする遺伝子を単離し 、CHO細胞に発現させてその機能について 調べた。その結果、ラットFc 7RIIはいくっかの【gG単量体に対しても結合できる性質を持ってい ることを見い出した。また 、IgG―ICの取り込み能を保 持していた。さらに、ヒトや モルモット のFc7 RIIと同様にプロテア ーゼ処理をすることでIgG―lCの結合が亢進することを見い出した。
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学位論文 審査の要旨
学 位 論 文 題 名
モルモット食細胞に発現するFc レセプターの構造と機能の研究
― 炎 症 部 位 に お け る 活性化 機構 の解 析一
細菌 など の異 物が 生体 内に 侵入 すると 、補 体系 の活 性化などにより異物 を破壊する。そして、マク口ファ―ジなどの抗原提示細胞は、その情報をT 細 胞に伝え、T 細胞はこれらの抗原を認識するB 細胞の活性化を促す。活性化さ れたB 細胞は、抗体産生細胞へと分化し、抗体を分泌するようになる。抗体は 抗原を特異的に認識して、免疫複合体を形成レ、細菌の体内侵入をくい止め る 。さ らに 、免 疫複 合体 は好 中球 やマク ロフ ァー ジな どの貪食細胞のFc レ セプ夕一を介して取り込まれ、消化分解をうける。この一連の反応は体液性 免疫と呼ばれる。したがって、Fc レセブク―を介した標的異物の排除過程は 生 体防 御機 構の 仕上 げ段 階と もい えるも ので あり 、
Fcレセブタ―は重要な 働きをする膜分子である。
近年、Fc レセプクーの研究は分子生物学の進歩と相俟って急速に進展し、
ヒ ト、 マウ スの
Fcレ セプ ター の構 造が遺 伝子 解析 から 明らかにされつっあ る。