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博 士 ( 医 学 ) 加 藤 裕 貴

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 加 藤 裕 貴

学 位 論 文 題 名

糖 尿 病 ラ ッ ト 摘 出 心 に おけ る

L ― カ ル ニ チ ン の 虚 血 再 灌 流 障 害 抑 制 効 果 学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    は じめに

  糖 尿 病 は 動 脈 硬 化 の重 要 な危 険 因 子の ー つ であ り ,冠 動 脈 病変 合 併に よ り 心筋 梗 塞及 び 心 機 能 低 下 を 引 き 起 こ す事 が ある . し かし 糖 尿病 患 者 の中 に は ,明 ら かな 冠 動 脈病 変 なし に 心 機 能 が 低 下 し て い る症 例 を認 め , これ は 微小 血 管 病変 と 代 謝異 常 によ る と 考え ら れて い る .こ の 代 謝異 常 のー つ と してLー カ ルニ チ ン 減少 がある,L−カルニ チンは長鎖 脂肪酸が ミ ト コ ン ド ル ア 内 へ 輸 送さ れ る際 の 共 輸送 体 であ り , 脂質 代 謝 及び ェ ネル ギ ー 産生 に おけ る 必 須物 質 で ある , 糖尿 病 や 心筋 梗 塞 にお い てはL一 カ ル ニチ ン が減 少 し てお り ,これら の 疾 患 に よ る 心 機 能 低 下 患 者 にLー カ ル ニ チ ン を 長 期 投 与す る と 症状 改 善あ る い は生 命 予後 の 改善が得ら れたとの 報告がみ られる,

  現 在 , 心 臓 手 術 を 受け る 患者 の 糖 尿病 併 存 率は 高 く, こ れ らの 症 例で は 冠 動脈 病 変の 有 無 に 関 わ ら ず 心 機 能 が 低下 し てい る 可 能性 が あり , 術 中の 心 筋 保護 が より 重 要 にな っ てく る . 本研 究 で は, 長 期投 与 に て認 め ら れるLー カ ルニ チ ン の心 機 能改 善 効 果が 虚 血再灌流 の 急 性 期 投 与 に て も 同 様 に 得 ら れ る か を , 糖 尿 病 ラ ッ ト を 作 成 し 検 証 し た .     対 象と方法

  6週 齢時 に ス トレ プ トゾ ト シ ン6 5mg/kg静 注 し糖 尿 病 ラッ ト (n=12) を 作 成し ,対 照とし て 溶 解液 の み を静 注 した 非 糖 尿病 ラ ッ ト(n=12) を作成 した.心 灌流実験 に先立ち, 薬剤投 与1ケ 月 後 に 採 血 を 行 い , 血 糖 値 , 遊 離 脂 肪 酸 , 総 カ ルニ チ ン ,遊 離 カル ニ チ ンゝ ア シル カ ル ニチ ン 濃 度を 測 定, した(各n=6).心筋 内の総カ ルニチン ,遊離カ ルニチン, アシルカ ル ニチン濃度 の測定も 行った( 各n=3).

  心灌 流 実 験は , 薬 剤投 与1ケ 月後 に 心 臓を 単 離し 逆 向 性灌 流 (ラ ン ゲ ンド ル フ灌 流)によ る 左 心灌 流 モ デル を 用い た . 灌流 圧 はlOOcmHz0と し , 灌流 液 はmodified Krebs−Henseleit 溶 液(KHS)または 同液にL― カルニチ ン(5mmol/l)を 添加した 溶液の何 れかを用い た.ランゲ ン ド ルフ 灌 流 開始5,10,15,20分 後に 心 機能 ( 心 拍数 , 冠 灌流 量 ,左 室 収 縮期 一拡張 期圧 較 差(LVDP) ,左 室 圧 一次微分 値)を測 定した. 左室拡張 末期圧は4一6mmHgに維持 した.次い で , 常温 (37℃ )20分 の 全虚 血 と した 後 ,虚 血 前 と同 様 にKHSま た はLーカ ル ニ チン添加KHS に て ラ ン ゲ ン ド ル フ 再 灌 流 を45分 間 行 っ た . 再 灌 流 開 始 後20分 ま で は 毎 分 冠 灌 流 量を 計 量 し , 洞 調 律 復 帰 後 は5分 毎に 心 機能 を 測 定し た .再 灌 流 後, 心 室細 動(Vf)発 生 の 有無 と そ の 持 続 時 間 を 計 測 し た. 再 灌流 後 の 心機 能 回復 率 を ,再 灌 流45分 後値 の 虚 血前 値 に対 す る 百 分 率 で 表 し た . 結 果 は 平 均 値 土 標 準 誤 差 で 表 記 し ,Pく0.05を 有 意 と し た .     結 果

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    血 液 デ ータ で は ,非 糖 尿病 及 び 糖尿 病 ラッ ト の 血糖値 は各々170土5mg/dl,423土llmg/dl であった(pく0. 0001). 非糖尿病 ラットの アシルカ ルニチン 濃度および アシルカ ルニチンノ 遊 離 カ ル ニ チ ン 比 は21.0土2.0ルmoI/l,O.50土0.03だ っ た のに 対 して 糖 尿 病ラ ッ ト では 40.9土2.7u moI/、1,1.61土O.28と何れも有意な上昇を認めた(pくO.05).心筋内含量でも,

糖 尿 病 ラ ッ ト で ア シ ル カ ル ニ チ ン 濃 度 及 び ア シ ル カ ルニ チ ン ノ遊 離 カル こ チ ン比 の 有意 な 上 昇 を 認 め た の に 加 え , 総 カ ル ニ チ ン , 遊 離 カ ル ニ チ ン 濃 度 が , 糖 尿 病 ラ ッ ト(436.O土 17. 8nmol/g,273.8土8.3nmol/g)では ,非糖尿 病ラット(493.5土4.4nmol―/ 宮, 400.8土 13.8nmol/g)より有意に低かった(pく0.05).

  虚 血 前 心 機 能 は 何 れ の 群問 に おい て も 有意 差 を認 め な かっ た .LVDP回 復 率 は,L― カ ルニ チン添加灌 流非糖尿 病及び精 尿病ラットにおいて,それぞれ87.3士1.5%,85.9土10.6%と,

L一カ ル ニ チン 非 添 加灌 流 糖尿 病 ラ ット の52.3土6.7% に 対し 有 意な 回 復 率の 上 昇を認め た

( pくO. 05) . 他 の 心 機 能 回 復 率 は 何 れ の 群 間 で も 有 意 差 を 認 め な か っ た .   Vfは ,L― カ ル ニ チ ン 非 添 加 灌 流 非 糖 尿 病 及 び 糖 尿 病 ラ ッ ト の そ れ ぞ れ6/6(100%) , 4/6(66.7め で 認 めた の に対 し ,Lー カル ニ チン 添 加 灌流非糖 尿病及び 糖尿病ラッ トではそ れ ぞれ2/6(33.3%),0/6(0%)と有意な発生率の低下を認めた(pくO.05).Vf持続時間は,L−カ ルニ チ ン添 加 非 糖尿 病 ラッ ト で36.8土28.5秒 と ,L−カルニ チン非添 加の868.2士171.3秒 より有意に短縮した(pくO.05).

  再 灌 流 後 冠 灌 流 量 は , 非 糖 尿 病 ラ ッ ト で はL― カ ル ニチ ン 添 加灌 流 群で8分 後 ま では 非 添 加灌 流 群に 比 し 有意 に 増加 し た が, そ の後 は 差 が無 く な り再 灌 流45分 後で は 同量 とな った.

糖 尿 病 ラ ッ ト で はL― カル ニ チン 添 加 灌流 の 有無 で , 何れ の 時 点で も 冠灌 流 量 に差 を 認め な かった.

    考察

  Lー カ ル こ チ ン の 心 筋 虚 血再 灌 流 時の 急 性 期投 与 は, 非 糖 尿病 , 糖尿 病 モ デル 何 れに お い て も 有 意 に 虚 血 再 灌 流 障 害 を 抑 制 し た と の 報 告 が あ る一 方 , 非糖 尿 病モ デ ル では 心 機能 の 改 善 は 得 ら れ な か っ た と す る 報 告 も み ら れ る . 本 研 究で は , 糖尿 病 ラッ ト に おい て は心 筋 虚 血 再 灌 流 時 のLー カ ル ニ チ ン 急 性 期 投 与 に よ り 有 意 にLVDPが 回 復 し 心 収 縮 能 保 持に よ る 虚 血 再 灌 流 障 害 抑 制 , 心 筋保 護 効 果を 認 め たが , 非糖 尿 病 ラッ ト ではL一 カ ル ニチ ン 投与 に てLVDPの 回 復 傾 向 は 認 め ら れ る も の の 統 計 学 的 有 意 差 は な か っ た . し か し な が らL― カ ル ニチ ン 急性 期 投 与に よ り再 灌 流 後不 整 脈の 発 生 は糖 尿 病 の有 無 に関 わ ら ず有 意 に抑 制され,

こ の こ と は , 非 糖 尿 病 心 でもL一 カ ル ニチ ン 急性 期 投 与に よ り 虚血 再 灌流 障 害 が抑 制 され た こ と を 示 唆 す る . 糖 尿 病 に お い て は , 糖 取 り 込 み 低 下の た め ,脂 質 代謝 に エ ネル ギ ー産 生 能 を 依 存 す る 割 合 が 増 加 する が ,Lー カル ニ チン 濃 度 の低 下 に より エ ネル ギ ー 産生 能 が低 下 する と 考え ら れ る. ま た, 心 筋 は虚 血 時に 細 胞 内に 蓄 積 したL― カ ルニ チ ン を放 出す る.L― カル ニ チン 減 少 は, 遊 離脂 肪 酸 並び に アシ ル カ ルニ チ ン の細 胞 内蓄 積 を 引き 起 こし ,.これ ら に よ り 細 胞 膜 お よ び 細 胞膜 上 のNa+ →K゛ATPaseな どの 酵 素 蛋白 が 障害 さ れ ,細 胞 構造 の 不 安 定 化 や 静 止 膜 電 位 低 下に よ る 不整 脈 発 生を 惹 起す る と 考え ら れる .L− カ ルニ チ ンの 心 筋 血 流 量 に 及 ぽ す 効 果 は ,犬 の 正 常心 に お いてLー カ ルニ チ ン 投与 に より 有 意 に冠 血 流量 が 増 加 し , 冠 血 管 抵 抗 は 有 意 に 減 少 し た と す る 報 告 が ある の み であ る .本 研 究 では , 虚血 前 に お い て はL一 カ ル ニ チン 投 与に よ り 冠灌 流 量の 変 化 は認 め ら れな か った が , 再灌 流 後に お い て は 非 糖 尿 病 ラ ッ ト でL― カ ル ニ チ ン 投 与 に よ り 再 灌 流 早 期 の 冠 灌 流 量 増 加 を 認 めた の に 対 し , 糖 尿 病 ラ ッ ト で は そ の 効 果 は 認 め ら れ な か った , こ れは , 糖尿 病 心 にお け る微 少 循 環 障 害 が 虚 血 後 のhyperemia, 冠 予 備 能 を 低 下 さ せ て いる 可 能 性が あ るが ,Lー カ ルニ チ

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ンの関与,効果等を含め今後の検討が必要である.また,本研究ではL ―カルニチンが心筋 代謝障害を改善することにより常温全虚血後の心機能回復に寄与することが示唆されたが,

本実験は晶質液を灌流液とするnon 一working の非生理的な実験系を用いており,L ーカルニ チンの臨床応用には血液灌流モデルなどのより生理的な実験系による検討が必要である.

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

糖尿病ラット摘出心における

L ―カルニチンの虚血再灌流障害抑制効果

  本研 究の目的は,糖尿病及び非糖尿病ラットにおける,L一カルニチン急性投与による 心筋虚血再灌流抑制効果について検討することである,

  ウィ スターラットにストレプトゾトシン静注し糖尿病ラットを作成し,対照非糖尿病ラ ットと 比較検討した,薬剤投与1ケ 月後に血糖値,血中遊離脂肪酸濃度,血中カルニチン 分画測 定と心筋内カルニチン分画測定を行った,次いで,ラット単離心を用い,ランゲン ドルフ灌流による左心灌流実験を行った.灌流圧lOOCDlH20,左室拡張末期圧4―6mmHgとし,

modified Krebs−Henseleit溶液またはLーカルニチン(5mmol/l)添加溶液にて灌流した.灌 流開始5分毎20分まで心機能(心拍数,′冠灌流量,左室収縮期ー拡張期圧較差(LVDP),左室 圧一次微分値)を測定した.次いで,常温(37℃)20分の全虚血とした後,虚血前と同じ灌 流液で 再灌流を45分間行った.再灌流20分後までは毎分冠灌流 量を計量し,洞調律復帰 後5分毎に心機能を測定し再灌流後 心機能回復率を再灌流45分後値の虚血前値に対する百 分 率で 評価 し た. 再灌 流後 ,心 室細 動(Vf)発 生の 有無 とそ の持 続時 間を 計測した.

  糖尿 病ラットの血糖値,血中アシルカルニチン濃度,血中アシルカルニチンノ遊離カル ニチン 比及び心筋内アシルカルニチン含量,アシルカルニチンノ遊離カルニチン比は有意 な上昇を認め,また,心筋内総カルニチン及び遊離カルニチン含量の有意な低下を認めた.

  虚血 前心機能は群間に有意差を認めなかった.再灌流後の心 機能は,糖尿病ラットに お いて ,L一 カル ニチ ン非投与群 に比して投与群で有意なLVDPの回復を認めた,他の心 機能回 復率は群間に有意差を認めなかった. Vf発生率は,糖尿病,非糖尿病ラット双方に おいてL―カルニチン投与により, 非投与群に比し有意に低下した.また、Vf持続時間も L一カルニチン投与により非糖尿病ラットにおいて,有意な短縮を認めた,冠灌流量経時的 変化は ,虚血前値に群間に有意差は認められないが,非糖尿病ラットにおいて,L―カルニ チン投与群で再灌流後2丶一丶8分後まで非投与群に比し有意に増加した.一方,糖尿病ラット におい ては,L一カルニチン投与の有無で,何れの時点においても冠灌流量に有意差を認め なかった.

  以上 より,糖尿病ラットにおいて,Lーカルニチン急性投与により心収縮能が保持され,

心筋虚 血再灌流障害抑制効果を認めた.非糖尿病ラットにおいては,L一カルニチン投与に てLVDPの有意な回復は認められなかったが,再灌流後不整脈は有意に抑制され,この事は,

非糖尿 病心においてもL一カルニチ ン急性投与により虚血再灌流障害抑制効果が得られた 事を示 唆する.L一カルニチン急性投与による心筋虚血再灌流障害抑制効果は,糖尿病また は心筋 虚血時に減少するLーカルニチンを補充する事により,心筋代謝障害が改善され,工 ネルギ ー産生能が保持された為と考えられる.また,アシルカルニチンなどの細胞障害物

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秀 一

慶 聡

田 輪

安 三

授 授

教 教

査 査

主 副

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質の蓄積抑制による効果も考えられる.犬の正常心においてL一カルニチン投与により冠血 管抵抗が有意に減少し,冠灌流量が増加したとする報告があり,本研究においても,非糖 尿病ラットにおけるLーカルニチン急性投与による再灌流後早期冠灌流量増加は,同様の機 序によるものと考えられた,一方,糖尿病ラットにおいて同様の結果が得られなかったの は,糖尿病心における内皮障害や血管外構造異常など他の因子が関与しているためと考え られた.なお,本実験は晶質液を灌流液とするnon−workingの非生理的な実験系を用いて おり,Lーカルニチン臨床応用には血液灌流モデルなどのより生理的な実験系による検討が 必要である.

  公開発表では,副査の筒井教授から,本研究で用いた糖尿病ラッ卜の心筋障害の程度,

カルニチン投与量増減による効果の変化,臨床応用時の投与対象について,三輸教授から,

糖尿病におけるカルニチン分画変化の機序,重度の糖尿病性心筋障害モデルの作成方法に ついて,主査の安田教授から,実験動物モデル及び心機能測定項目の妥当性,臨床応用へ の課題,問題点について,などの質問がなされた,これらの質問に対し,申請者は本研究 の実験結果や臨床経験,この分野に関してこれまでに発表された論文などをもとに,誠実 かつ妥当な回答を成し得た.

  この論文は,開心術における新たな心筋保護剤の可能性を示したものとして評価され,

今後の研究発展により,その臨床応用及び虚血再灌流障害機序解明に寄与することが期待 される.

  審 査員一同 は,これ らの成果を高く評価し,大学院課程における研鑽や取得単位など も併 せ申請 者が博士 (医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した.

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参照

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