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博 士 ( 医 学 ) 小 野 寺

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 小 野 寺    伸

     学位 論 文題 名

Macrophage lN/Iigration Inhibitory Factor Up‑regulates     Expression of IvIatrix Metalloproteinases     in Synovial Fibroblasts of Rheumatoid Arthritis

(マ ク ロ ファ ー ジ 遊走 阻 止因 子 は 慢性 関 節リウ マチ滑膜 線維芽細 胞の      マ ト リ ッ ク ス メ タ ロ プ ロ テ ア ー ゼ 発 現 を 亢 進 す る )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

   慢 性 関 節リ ウ マチ ( 以 下RA) は 滑 膜を 病変の主 座とする 疾患であ り、滑膜 細胞は、 様々 な サイ ト カイン や蛋白分 解酵素・活 性酸素等 を産生し て、関節 破壊に中 心的に関 与する。

細 胞 外 基 質 分 解 酵 素 の ー っ で あ る マ ト リ ッ ク スメ タ ロ プロ テ ア ーゼ ( 以下 MMP) は 現 在 20 種 類 以 上が 同 定さ れ て いる が 、 なか で もMMP ― 1 ( コ ラゲ ナ ーゼ ) およぴMMP − 3 (スト ロ メラ イ シン) がRA におけ る関節構成 要素(関 節包・靭 帯・軟骨 )の破壊 に重要で あり、

こ れら は 主に滑 膜表層細 胞よりIL 一1 や TNF‑a によって 誘導され 産生され ると考え られてい る。またMMP と結合しその活性を選択的に阻害するtissue inhibitor of metauoprotemases (以 下 11MP ) も 滑 膜 細胞 に よ り産 生 され 、 MMP の活 性 を制 御 し てい る 。 マク ロ ファ ー ジ 遊走 阻 止 因 子 ( 以下 Mm )は 、 T リ ンパ 球 に より 産 生 され マ クロ フ ァ ージ の 炎症 部 位 より の 散 逸 を抑 制 す る因 子 とし て 知 られ て きた が 、 1989 年の cDNA ク ロー ニ ング に伴い近 年各種炎 症 性疾 患 の メデ イ エー 夕 ・ 細胞 増 殖制 御 因 子と し て 再評 価 され て いる 。我々は RA 滑膜組 織 にお い て MIF が CIM5 十 T 細 胞で 強 く 発現 し てい る こ と、 さ らに RA 患者に おける関 節液中 MIF 濃 度 が 正 常・ 変 形 性関 節 症( 以 下 0A ) 患 者に 比 べ高 い こ とを 既 に報 告 し たが 、 そ の RA 病 態 に おけ る 役 割は 不 明 な点 が 多い 。 そ こで M 正 の RA 患 者 由来 滑 膜線 維 芽 細胞 に 対 す る作用を主にM へ口産生誘導能の観点から検討した。

   【 方 法 】滑膜組 織の実験 的使用に関 し同意の 得られた RA およびOA 患 者より人 工膝関節 置

換 術時 に 滑膜組 織を採取 し、O .2 %コ ラゲナー ゼ消化に より得ら れた細胞 を lO %FCS .loo

以 M 非 必須 ア ミ ノ酸 添 加Eagle .sMEM に て継代 培養し、 主に3 代目 (播種よ り約14 日後 )に

滑 膜 線 維 芽 細 胞 と し て 使 用 し た 。 培 地 よ り 血 清 を 除 去 し た 後 ヒ ト rMm を 添 加 し 、 1 )

MMP ー1 ・3 、 TIMP 一1 、転写 因子 AP −1 を 構成する c イun .c ―fos 、 及び凡―1p のmRNA 発現2 )

MMP ‐ 1 ・ 3mRNA の 誘 導 に 対 す る 各 種 の シ グ ナ ル 伝 達 阻 害 剤 の 効 果 に 関 し ノ ー ザ ンブ ロ

ッ ト 法 で 検 討 し た 。 さ ら に rMIF 添 加 後 の RA . OA 細 胞 の 培 養 上 清 中 MMP ― 1 濃 度 に 関 し

ELISA 法 で 検討 し た。 ま た M 正 の有 す るisomerase 活 性には N 端 側第1prolme が重 要とされ て

いるが、これを甜anine に置換した変異体(P1Amutant )を site −derectedmutagenesistechnique

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に よ り 作 製 し 、 そ のMMP誘 導 活 性 の 差 異 も 併 せ て 検 討 し た 。 統 計 学 的 解 析 は 分 散 分 析 を 用い、Fisher.s PLSDをポストホックテストとし有意水準をpく0.05とした。

【 結 果 】1)MIFは 濃 度 依 存 的 に MMP・1‑3のmRNA発 現 を 添 加 約6時 間 後 よ り 誘 導 し 、24 時 間 後 ピ ー ク に 達 し た 。MMP−1・3の 非 刺 激 時 レ ベ ル お よ びMmに よ る 誘 導 の 程 度 はOAよ りRA由 来 細 胞 で 強 か っ た 。nMP―1の 発 現 は 不 変 な い し 僅 か に 増 強 さ れ た 。 ま たMIF(1以 如1) 添 加 30分 後 にcイ 弸mRNA発 現 が 増 加 し 、 以 後 漸 減 し て6時 間 後 無 刺 激 時 レ ベ ル に 戻 っ た 。 ま た 添 加30分 後 にc−fosmRNAが 一 過 性 に 増 加 し た 。 凡 ・1pの 発 現 も 濃 度 依 存 的 に 増 加 し 、6時 間 で ピ ー ク に 達 し た 後 漸 減 し た 。2)Mm(1メg/ml) に よ るMMPー1・3の 誘 導 は チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ 阻 害 剤 (genistem10メM及 びherbinlycinA1〃M) 、 プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼC

( 以 下PKC) 阻 害 剤 (H・710メM及 びstaurosporiJle100nM) 、AP・1結 合 阻 害 剤 (curcumm 10pM) の 同 時 添 加 に よ り 阻 害 さ れ た 。cyclic心m 依 存 性 プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼA阻 害 剤 (H− 81.5〜15メM) の 添 加 はMMPの 誘 導 に 影 響 を 与 え な か っ た 。 凡 ‐1レ セ プ タ ー ア ン タ ゴ ニ ス ト ( 10nM〜1冖M) の 添 加 もMMPの 誘 導 に 影 響 を 与 え ず 、 MIFのMMP誘 導 作 用 は 少 な く と も 内 因 性IL―1の 作 用 を 介 し て い な い こ と を 示 唆 し た 。3)1〃g/mlのMm添 加 に よ り 培 養 上 清 中 のMMP―1濃 度 は 有意 に 増 加し (RA:pく0.o001, ()A:pくO.005)、 この増 加はOAよりRA 由 来 細 胞 で 有 意 に 大 き か っ た (pくO.o005) 。PlAmutantはMMP.1・3の 誘 導 活 性 を 示 さ な かった。

【 考 察 と 結 論 】MmのMMP誘 導 活 性 に 関 す る 報 告 は 本 研 究 が 嚆 矢 で あ る 。M^ ロ ,1とMMP, 3は そ のpromotorがTRE(AP―1結 合 領 域 ) お よ びPEハ3(Ets結 合 領 域 ) を 有 す る 類 似 し た 構 造 を 持 っ て い る た め 、Mmに よ る 誘 導 と そ の 阻 害 の ノ ヾ タ ー ン が 共 通 し て い た の も 頷 け る 。 ま たHMP−1プ ロ モ ー タ ー もTREが 複 数 有 り 、 細 胞 の 条 件 に よ っ て はMIFに よ り 誘 導 さ れ る と 思 わ れ る 。RAの 滑 膜 細 胞 は , 転 写 活 性 の 亢 進 を 特 徴 と し て お り , こ の 原 因 と し て retrovirusによる感染とそれにより持ち込まれるproto‐oncogene(sふ魍y6,fHツ・c raS丿u′}/』向s等)

の 関 与 が 示 唆 さ れ て い る 。 結 果 に 示 し たRA細 胞 と の 罅 田 胞 のMmに 対 す る 反 応 性 の 相 違 は こうした原因によると思われる。

  本 結 果 よ り 、MmのMMP‐1・3誘 導 は 、PKC/ チロ シ ン キナ ー ゼ を介 し 、c―mn/cーfosの 誘 導 を 経 て 、 主 にAP‐1に よ り 調 節 さ れ て い る こ と が 示 さ れ た 。PKCはILIlやTNF−aに よ るAPー 1結 合 の 促 進 やMMP一1・3の 転 写 誘 導 に 関 与 す る と さ れ て い る 。 ま たherb襾ycinAは 非 レ セ プ タ ー 型 チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ で あ るsrcfam衂 に 強 く 選 択 的 で あ り 、 さ ら にs′cカ やKCの 基 質 で あ り 、 例 え ばp−adrenergicreceptorか ら の シグ ナ ル 伝達 はPKCに よ るsrcのり ン 酸 化 を主 に 利 用 す る 等 の 報 告 も あ る こ と か ら 、Mmに よ る 刺 激 に よ り 起 こ る 細 胞 内 イ ベ ン ト の 初 期 に はPKCの 活 性 化 とsrcfamnyの り ン 酸 化 が 重 要 で あ る 可 能 性 が あ る 。 一 方MMP−1の 転 写 に は AP−1と と も に 転 写 調 節 因 子Etsも 重 要 と さ れ て お り 、 こ の 関与 の 検 討は 今 後 の課 題 で ある 。 ま たMmの 生 物 活 性 は そ のisomerase活 性 と 強 く 関 連 す る と の 報 告 が あ り 、 本 研 究 の 結 果 も そ れ を 支 持 し た が 、M正 が 細 胞 に 作 用 を 及 ぼ す 過 程 で ど の よ う に 酵 素 活 性 と 結 び っ く の か は全く不明であり、M正受容体の解析が必須である。

  抗 原 提 示 を 受 け たT細 胞 は滑 膜 内 に浸 潤 し1111′1112に大 別 さ れる り ン フォ カ イ ンを 産 生 す る が 、MIFも そ の ー つ で あ る こ と が 近 年 明 ら か に さ れ て お り 、 サ イ ト カ イ ン ネ ッ ト ワ ー ク の 中 心 に 位 置 し て 、 滑 膜 マ ク ロ フ ァ ー ジ の 凡 一lp.TNF― や 本 研 究 が 示 し た 如 く 滑 膜 線維 芽 細 胞 のMMP. 凡 一1ロ 産 生 を 促 し 、 関 節 炎 ・ 関 節 破 壊 に 強 く 関 与 す る こ と が 推 測 さ れ る 。

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また Mikulowska らはRA モデルであるII 型コラーゲン誘発関節炎マウスに抗MIF 抗体を投与 し、関節炎の著明な改善と抗 II 型コラーゲン抗体価の減少を報告した.以上の結果は,

MLF がRA 治療のターゲットになりうることを示しており、MIF の抑制によるRA に対する

新たな治療のアプローチが可能になると期待される。

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学位論文審査の要旨

     学位論文題名

Macrophage Migration Inhibitory Factor Up‑regulates     Expression of lN/Iatrix lVIetalloproteinases     in Synovial Fibroblasts of Rheumatoid Arthritis

(マクロファージ遊走阻止因子は慢性関節リウマチ滑膜線維芽細胞の      マ ト リ ッ ク ス メ タ ロ プ ロ テ ア ー ゼ 発 現 を 亢 進 す る )

   慢性関節リウマチ(以下 RA) の滑膜組織において、滑膜細胞は、様々なサイトカイン や蛋白分解酵素等を産生し、関節破壊に中心的に関与する。我々はRA 滑膜組織において MIF がCD45( 十 )T 細胞で強く発現しており、RA 患者の関節液中MIF 濃度が正常・変形性関 節症(以下OA) 患者に比ベ高いことを報告したが、その RA 病態への関与は不明な点が多 い。そこでMIF の RA 患者由来滑膜線維芽細胞に対する作用を主にマトリックスメ夕口プ 口 テア ーゼ (以 下MMP ) との関 連で検討した。RA およびOA 由来の滑膜線維芽細胞にヒ ト rMIF を添 加し 、 MMP ← 1‑3 等の mRNA 発 現、 およ びそ の誘導 に対する各種シグナル伝 達阻害剤の効果に関しノーザンブ口ット法で検討した結果、MIF は濃度依存的にMMP 一1 ・ 3 、 及びIL ― iB のmRNA 発 現を6 時 間後よ り誘 導し 、こ れらの 誘導の程度は OA よりRA で 強かった。TIMP − 1 の発現は僅かに増強した。また MIF ( 1 ル g/ml) 添加30 分後に c ―jun およびc 一fos のmRNA 発現が一過性に増強した。チ口シンキナーゼ阻害剤、PKC 阻害剤、

AP −1 結合 阻害 剤の 添加 により MIF による MMP ー1 ・ 3 の誘導は阻害されたが、cAMP 依存 性PKA 阻害剤及び IL − 1 レセプターアンタゴニストの添加はMMP の誘導に影響を与えなか っ た。 培養 上清 中MMP − 1 濃 度を ELISA に て測 定した 結果 、1Ug/ml 以上の MIF 添加によ り培養上清中のMMP ― 1 濃度は有意に増加し、増加の程度はRA がOA より有意に高かった。

核抽出夕ンパクのAP −1 結合活性に関しゲルシフト法で検討した結果、 MIF 添加5 分後より AP −1 結合活性は著明に増加し、このバンドは抗c ―jun 抗体によルスーパーシフトした。ま た MIF のN 端 側第 1pr01me を甜anme に 置換 した 変異体 は MMP ― 1 ・ 3 の誘導活性を示さな か った 。MIF の MMP 誘導 活性 に関する報告は本研究が嚆矢であり、以上よりMIF はRA に お いて IL 一 18 や MMP ― 1 ・ 3 を介 し関 節の 炎症 と破壊 に関 与し ていること、MIF のMMPI

敬 雄

明  

  輝

浪 木

吉 石

授 授

教 教

査 査

主 副

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1 ・3 誘導はその情報伝達にチ口シンキナーゼ、PKC 、AP − 1 を介し、IL −1 非依存的である こ と、また MIF のMMP 誘導活性は N 端側第 lproline が重要であることが示された。近年 II 型コラーゲン誘発関節炎マウスに対する抗MIF 抗体の著明な抗炎症効果が報告されており、

以 上の結果より、 MIF をターゲットとしたRA の新たな治療のアプ口ーチの展開が期待さ れ る。吉木教 授より、 MIF が MMP の 発現を制御するという知見は今まで無かったもので 非常に興味深いとのコメントがあり、 1 )OA と RA の滑膜細胞の違しゝ、2 ) RA の病状と関 節液中 MIF 濃度との間の相関、3 )MIF のレセプターの解明の現状、 4 )MIF のregulation 、 5 )抗 MIF 抗体の全身投与の問題点、等の質問があり、 1 ) OA の滑膜細胞は本質的には正 常と考えてよく、一方 RA の滑膜細胞はウイルス感染などの病態修飾により外来遺伝子が 持ち込まれて活性化しており、transform したもので本質的に違うと考えられる、2 )印 象としてはおおむね相関している、 3 )未だ報告はなく、最近 MIF がend ocytosis により 細胞内に取り込まれるとの報告があり、従来のレセプターが介在する情報伝達とは異なる 様式かもしれない、 4 )成長因子、血清、hypoxia 等での誘導の報告がある、 5 )ラット肝 炎モデルや肺炎モデルで投与が行われているが特に問題はないようである、との回答があ っ た 。石 橋 教授より 、 1 )コ ント口ール として OA は適 切か、 2 )シグナ ル伝達経路 は inhibitor を使った間接的アプ口ーチだが、今後どのように進めるのか、3 )isomerase 活 性が MMP をregulation する機序は、等の質問があり、 1 )本来は正常滑膜細胞が適切だが 採取が困難であり、またestablish された線維芽細胞のcell line ではMIF に反応一したものは なかった、 2 )この系は継代数や origin の患者さんの病態などにより反応があまり安定し な い ため 、 現在 別 な 細胞 の 系を 用 いて 詳 細な 解析をして いる、 3 )不明であ るが、

isomerase 活 性 そ の も の よ り 、 第 1 プ 口 リ ン を mutation さ せ る こ と に よ る conformational な変化の結果との説もある、との回答があった。三浪教授より、1 )現在 RA の 抗サイトカ イン療法と しては抗 TNF‑a 抗体が有望視されているが、MIF を標的にす るのはそれに比べどうか、 2 )チ口シンキナーゼやPKC は情報伝達経路の上流で作用する と 思われるが 、下流では 何が働くか 、との質問 があり、 1 )抗 TNF 一 a 抗体が効くのは TNF‑a がサイトカインカスケードその中でかなり上流に位置するためだと考えられてい る が、最近 MIF カiTNF‑a をさらに上流で regulation しているというevidence の報告が相 次 いでおり、 かなり有望 ではないかと思われる、2 ).別な細胞の系であるが、 MIF は ERKl/2 によ る Jun の りン酸化を 介してMMP を誘導する知見を得た、との回答があった。

   この論文は、慢性関節リウマチの関節破壊病態に新しい知見をもたらした点で高く評価 され、今後のりウマチ病態への更なる関与の検討や、新しい治療に向けた臨床応用の研究 への展開が期待される。

   審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども

併 せ 申請 者 が博士( 医学)の学 位を受ける に充分な資 格を有する ものと判定 した。

参照

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