博 士 ( 医 学 ) 小 野 寺 伸
学位 論 文題 名
Macrophage lN/Iigration Inhibitory Factor Up‑regulates Expression of IvIatrix Metalloproteinases in Synovial Fibroblasts of Rheumatoid Arthritis
(マ ク ロ ファ ー ジ 遊走 阻 止因 子 は 慢性 関 節リウ マチ滑膜 線維芽細 胞の マ ト リ ッ ク ス メ タ ロ プ ロ テ ア ー ゼ 発 現 を 亢 進 す る )
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
慢 性 関 節リ ウ マチ ( 以 下RA) は 滑 膜を 病変の主 座とする 疾患であ り、滑膜 細胞は、 様々 な サイ ト カイン や蛋白分 解酵素・活 性酸素等 を産生し て、関節 破壊に中 心的に関 与する。
細 胞 外 基 質 分 解 酵 素 の ー っ で あ る マ ト リ ッ ク スメ タ ロ プロ テ ア ーゼ ( 以下 MMP) は 現 在 20 種 類 以 上が 同 定さ れ て いる が 、 なか で もMMP ― 1 ( コ ラゲ ナ ーゼ ) およぴMMP − 3 (スト ロ メラ イ シン) がRA におけ る関節構成 要素(関 節包・靭 帯・軟骨 )の破壊 に重要で あり、
こ れら は 主に滑 膜表層細 胞よりIL 一1 や TNF‑a によって 誘導され 産生され ると考え られてい る。またMMP と結合しその活性を選択的に阻害するtissue inhibitor of metauoprotemases (以 下 11MP ) も 滑 膜 細胞 に よ り産 生 され 、 MMP の活 性 を制 御 し てい る 。 マク ロ ファ ー ジ 遊走 阻 止 因 子 ( 以下 Mm )は 、 T リ ンパ 球 に より 産 生 され マ クロ フ ァ ージ の 炎症 部 位 より の 散 逸 を抑 制 す る因 子 とし て 知 られ て きた が 、 1989 年の cDNA ク ロー ニ ング に伴い近 年各種炎 症 性疾 患 の メデ イ エー 夕 ・ 細胞 増 殖制 御 因 子と し て 再評 価 され て いる 。我々は RA 滑膜組 織 にお い て MIF が CIM5 十 T 細 胞で 強 く 発現 し てい る こ と、 さ らに RA 患者に おける関 節液中 MIF 濃 度 が 正 常・ 変 形 性関 節 症( 以 下 0A ) 患 者に 比 べ高 い こ とを 既 に報 告 し たが 、 そ の RA 病 態 に おけ る 役 割は 不 明 な点 が 多い 。 そ こで M 正 の RA 患 者 由来 滑 膜線 維 芽 細胞 に 対 す る作用を主にM へ口産生誘導能の観点から検討した。
【 方 法 】滑膜組 織の実験 的使用に関 し同意の 得られた RA およびOA 患 者より人 工膝関節 置
換 術時 に 滑膜組 織を採取 し、O .2 %コ ラゲナー ゼ消化に より得ら れた細胞 を lO %FCS .loo
以 M 非 必須 ア ミ ノ酸 添 加Eagle .sMEM に て継代 培養し、 主に3 代目 (播種よ り約14 日後 )に
滑 膜 線 維 芽 細 胞 と し て 使 用 し た 。 培 地 よ り 血 清 を 除 去 し た 後 ヒ ト rMm を 添 加 し 、 1 )
MMP ー1 ・3 、 TIMP 一1 、転写 因子 AP −1 を 構成する c イun .c ―fos 、 及び凡―1p のmRNA 発現2 )
MMP ‐ 1 ・ 3mRNA の 誘 導 に 対 す る 各 種 の シ グ ナ ル 伝 達 阻 害 剤 の 効 果 に 関 し ノ ー ザ ンブ ロ
ッ ト 法 で 検 討 し た 。 さ ら に rMIF 添 加 後 の RA . OA 細 胞 の 培 養 上 清 中 MMP ― 1 濃 度 に 関 し
ELISA 法 で 検討 し た。 ま た M 正 の有 す るisomerase 活 性には N 端 側第1prolme が重 要とされ て
いるが、これを甜anine に置換した変異体(P1Amutant )を site −derectedmutagenesistechnique
に よ り 作 製 し 、 そ のMMP誘 導 活 性 の 差 異 も 併 せ て 検 討 し た 。 統 計 学 的 解 析 は 分 散 分 析 を 用い、Fisher.s PLSDをポストホックテストとし有意水準をpく0.05とした。
【 結 果 】1)MIFは 濃 度 依 存 的 に MMP・1‑3のmRNA発 現 を 添 加 約6時 間 後 よ り 誘 導 し 、24 時 間 後 ピ ー ク に 達 し た 。MMP−1・3の 非 刺 激 時 レ ベ ル お よ びMmに よ る 誘 導 の 程 度 はOAよ りRA由 来 細 胞 で 強 か っ た 。nMP―1の 発 現 は 不 変 な い し 僅 か に 増 強 さ れ た 。 ま たMIF(1以 如1) 添 加 30分 後 にcイ 弸mRNA発 現 が 増 加 し 、 以 後 漸 減 し て6時 間 後 無 刺 激 時 レ ベ ル に 戻 っ た 。 ま た 添 加30分 後 にc−fosmRNAが 一 過 性 に 増 加 し た 。 凡 ・1pの 発 現 も 濃 度 依 存 的 に 増 加 し 、6時 間 で ピ ー ク に 達 し た 後 漸 減 し た 。2)Mm(1メg/ml) に よ るMMPー1・3の 誘 導 は チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ 阻 害 剤 (genistem10メM及 びherbinlycinA1〃M) 、 プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼC
( 以 下PKC) 阻 害 剤 (H・710メM及 びstaurosporiJle100nM) 、AP・1結 合 阻 害 剤 (curcumm 10pM) の 同 時 添 加 に よ り 阻 害 さ れ た 。cyclic心m 依 存 性 プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼA阻 害 剤 (H− 81.5〜15メM) の 添 加 はMMPの 誘 導 に 影 響 を 与 え な か っ た 。 凡 ‐1レ セ プ タ ー ア ン タ ゴ ニ ス ト ( 10nM〜1冖M) の 添 加 もMMPの 誘 導 に 影 響 を 与 え ず 、 MIFのMMP誘 導 作 用 は 少 な く と も 内 因 性IL―1の 作 用 を 介 し て い な い こ と を 示 唆 し た 。3)1〃g/mlのMm添 加 に よ り 培 養 上 清 中 のMMP―1濃 度 は 有意 に 増 加し (RA:pく0.o001, ()A:pくO.005)、 この増 加はOAよりRA 由 来 細 胞 で 有 意 に 大 き か っ た (pくO.o005) 。PlAmutantはMMP.1・3の 誘 導 活 性 を 示 さ な かった。
【 考 察 と 結 論 】MmのMMP誘 導 活 性 に 関 す る 報 告 は 本 研 究 が 嚆 矢 で あ る 。M^ ロ ,1とMMP, 3は そ のpromotorがTRE(AP―1結 合 領 域 ) お よ びPEハ3(Ets結 合 領 域 ) を 有 す る 類 似 し た 構 造 を 持 っ て い る た め 、Mmに よ る 誘 導 と そ の 阻 害 の ノ ヾ タ ー ン が 共 通 し て い た の も 頷 け る 。 ま たHMP−1プ ロ モ ー タ ー もTREが 複 数 有 り 、 細 胞 の 条 件 に よ っ て はMIFに よ り 誘 導 さ れ る と 思 わ れ る 。RAの 滑 膜 細 胞 は , 転 写 活 性 の 亢 進 を 特 徴 と し て お り , こ の 原 因 と し て retrovirusによる感染とそれにより持ち込まれるproto‐oncogene(sふ魍y6,fHツ・c raS丿u′}/』向s等)
の 関 与 が 示 唆 さ れ て い る 。 結 果 に 示 し たRA細 胞 と の 罅 田 胞 のMmに 対 す る 反 応 性 の 相 違 は こうした原因によると思われる。
本 結 果 よ り 、MmのMMP‐1・3誘 導 は 、PKC/ チロ シ ン キナ ー ゼ を介 し 、c―mn/cーfosの 誘 導 を 経 て 、 主 にAP‐1に よ り 調 節 さ れ て い る こ と が 示 さ れ た 。PKCはILIlやTNF−aに よ るAPー 1結 合 の 促 進 やMMP一1・3の 転 写 誘 導 に 関 与 す る と さ れ て い る 。 ま たherb襾ycinAは 非 レ セ プ タ ー 型 チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ で あ るsrcfam衂 に 強 く 選 択 的 で あ り 、 さ ら にs′cカ やKCの 基 質 で あ り 、 例 え ばp−adrenergicreceptorか ら の シグ ナ ル 伝達 はPKCに よ るsrcのり ン 酸 化 を主 に 利 用 す る 等 の 報 告 も あ る こ と か ら 、Mmに よ る 刺 激 に よ り 起 こ る 細 胞 内 イ ベ ン ト の 初 期 に はPKCの 活 性 化 とsrcfamnyの り ン 酸 化 が 重 要 で あ る 可 能 性 が あ る 。 一 方MMP−1の 転 写 に は AP−1と と も に 転 写 調 節 因 子Etsも 重 要 と さ れ て お り 、 こ の 関与 の 検 討は 今 後 の課 題 で ある 。 ま たMmの 生 物 活 性 は そ のisomerase活 性 と 強 く 関 連 す る と の 報 告 が あ り 、 本 研 究 の 結 果 も そ れ を 支 持 し た が 、M正 が 細 胞 に 作 用 を 及 ぼ す 過 程 で ど の よ う に 酵 素 活 性 と 結 び っ く の か は全く不明であり、M正受容体の解析が必須である。
抗 原 提 示 を 受 け たT細 胞 は滑 膜 内 に浸 潤 し1111′1112に大 別 さ れる り ン フォ カ イ ンを 産 生 す る が 、MIFも そ の ー つ で あ る こ と が 近 年 明 ら か に さ れ て お り 、 サ イ ト カ イ ン ネ ッ ト ワ ー ク の 中 心 に 位 置 し て 、 滑 膜 マ ク ロ フ ァ ー ジ の 凡 一lp.TNF― や 本 研 究 が 示 し た 如 く 滑 膜 線維 芽 細 胞 のMMP. 凡 一1ロ 産 生 を 促 し 、 関 節 炎 ・ 関 節 破 壊 に 強 く 関 与 す る こ と が 推 測 さ れ る 。