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博 士 ( 医 学 ) 高 橋

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 高 橋    甼

     学 位論 文 題名

Serum KL‑6Levels in Dairy Farmers      ( 酪農 従 事者における血清 KL − 6 値)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  研究目的 :農夫肺 症は、乾 燥牧草中 で成長す る好熱性 放線菌の吸入によって引き起こされる過 敏性肺臓 炎である 。酪農家 の中には 、臨床症 状や胸部 レ線異常がないのにもかかわらず、沈降抗 体が陽性 であった り、肺胞 洗浄で明 らかにな るりンパ 球性胞隔炎を呈する者が含まれるなど、従 来の診断 基準は農 夫肺症を 検出する のに十分 に鋭敏で あるとはいえない。しかしながら、肺胞洗 浄検査や 肺生検は 侵襲的で あり、農 夫肺症検 診に用い るのには適さない。一方、ムチン様高分子 糖蛋 白 で あるKL―6は、 当 初、 腫 瘍 マー カ とし て 発見さ れ、その 血中濃度 は肺癌、特 に腺癌患 者で高値 であるこ とが知ら れている 。最近に なって、 問質性肺疾患の疾患活動性の指標となるこ とが わ か って き た 。し か しな が ら 、血 清KL−6の 測定が 農夫肺症 の疾患活 動性を反映 するか否 かに つ い ての 検 討 はい ま だな さ れ てい な い。 今 回、 血清KL―6が 農夫肺症 の指標とな りうるか どうかについて検討した。

  対 象 と方 法 : 我々 は 、1978年 か ら1998年ま で 北海 道 の 最北 の 酪農 地 域 で農 夫肺 症検診を行 って き た 。今 回 、 同地 区 の272名 の 酪農 家 を対 象 として 検討した 。全例が 現在、酪農 業を営ん でおり、 検診受診 時に詳細 なアンケ ート調査 、内科的 診察、呼吸機能検査、胸部レ線撮影と採血 をおこな った。農 夫肺症の 診断は、 かびの生 えた乾燥 牧草や藁への暴露歴、それらと接触した際 や接触後におこる特徴的症状(発熱、咳嗽、呼吸困難)、Saccharop〇炒sp〇rarecHvむ.guぬ(SR) やTカerロユ 〇acHn〇mycesvulga血(TV)に対す る血清沈 降抗体、 及び、胸 部レ線上のびまん性 小粒状影 やスリガ ラス影の 存在の全 てを満た したとき 、農夫肺症活動期と診断した。対象者を農 夫肺症発症者(農夫肺症群)、沈降抗体陽性者(陽性群)、沈降抗体陰性者(陰性群)に分類した。

血清KL―6値 は、全て の対象者 で測定し た。農夫 肺症群で は農夫肺症 を発症し ていない時期(非 活動 期 ) 、す な わ ち、 診 断基 準 を 満た さ ない 時 期の 保存血清 中のKL―6値 も測定した 。SRとTV に対 す る 沈降 抗 体 の測 定 は対 向 流 電気 泳 動法 で 行 った 。 血清KL−6値の 測 定 はELISA法で測 定 した。

  結 果 :農 夫 肺 症群 は5例 、沈 降 抗 体陽 性 群は30例、 陰 性 群は237人で あ っ た。 年齢、性別 、 酪農従事 年数、牛 舎内作業 時間、牧 草地面積 、酪農従 事者数、成牛頭数、牧草取り扱い時間を含 む酪農条 件に三群 間で差は なかった 。喫煙率 は抗体陰 性群で農夫肺症群、抗体陽性群に比べて有 意に高率 であった (それぞ れ31%、20% 、10%、pく0.05)。農夫肺症群における有症状者は抗 体陽性群 と陰性群 に比べて 高率であった(それぞれ100%、43%、41%、pくO.05)。胸部異常陰 影を有する率も農夫肺群において有意に高率であった(それぞれlOO%、3%、0.8%、pく0.05)。

(2)

ラ音を聴取する率も農夫肺症群で有意に高率であった(それぞれ100%、10%、0.8%、pく0.05)。 肺 拡散 能は 農夫肺 症群 で抗 体陽 性群 に比 べ有 意に 低下 して いた (そ れぞれDLco;14.2+0.5ISE]

対20.0+1.3、pく0.01、DL/VA;3.98+0.38対5.02+0.21、pく0.01) 。農 夫肺 症群 、抗 体陽 性 群 、 抗 体 陰 性 群 の そ れ ぞ れ の 血 清KL−6値 は 、1263土288 U/ml、328土57 U/ml、207土6 U/mlで あり 、農夫 肺症 群が 他の 二群 に比 べて 有意 に高 値であった(pく0.001)。また、抗体陽 性 群は 陰性 群より 有意 に高 値で あっ た。5例の 農夫 肺症 群では活動期と非活動期の血清KLー6値 を 測 定 し た が 、 活 動 期 で 有 意 に 高 値 で あ っ た ( そ れ ぞれ1263+288 U/ml対419+209 U/ml、 pく0.05)。 血清KL−6値が 抗体 陽性 群は 陰性群 に比 べ有 意に 高値 であ った ため 、抗 体陽性群を 高KL−6群 と 正 常KL−6の 二 群 に 分 類し た 。 血 清KL−6値の 正常 範囲 は、 肺病 変が ない と考 え ら れる 抗体 陰性群 の値 をも とに決定した。血清KL−6値は性別により有意に影響を受けたため、

カ ッ ト オ フ 値 を 男 性 で は440一450 U/ml、 女 性 で は410ー420 U/mlに設 定し た。高KL−6群 は 8例 で 、正 常KL−6群 は22例 で あ っ た。 肺 拡 散 能 が 高KL―6群 で 正常KL−6群 に 比 べて 有意 に 低 か っ た ( そ れ ぞ れDLco;16.2土2.1対21.9土1.3、pくO.Ol、DL/VA;4.66土0.33対5.22士 0.25、pく0.05)。

  考察 :最 近、血 清KL―6値が 問質 性肺 疾患に おけ る疾 患活 動性 の良 い指 標で ある ことが認識 さ れて きた 。特発 性問 質性 肺炎 では 疾患 活動 性と よく 相関 し、 肺胞 洗浄液 中のKL―6値も上昇 し てお り、 肺胞洗 浄液 中の りン バ球 数や 好中 球数 と相 関することが知られている。免疫染色で KL−6は 正常 肺のII型 肺胞 上皮細胞と呼吸細気管支上皮細胞に発現しており、特に特発性問質性 肺 炎で は再 生II型 肺胞 上皮 細胞 と肺 胞マ ク口 ファ ージ に発現している。これらの結果から、問 質 性肺 疾患 患者の 血清KL−6の 上昇 は、 下気道 にお ける 、障 害・ 再生 したII型 肺胞 上皮細胞か ら の産 生を 反映す るも のと 考えられる。しかしながら、血清KL―6値が農夫肺症患者で上昇し、

また、疾患活動性と関連があるか否かは不明であった。本研究で、農夫肺症群で抗体陽性群と陰 性 群に 比べ 血清KL←6値が 有意 に高 値で あり、 また 、農 夫肺 症の 活動 期は 非活 動期 に比べて有 意 に高 値で あるこ とが 明ら かに なっ た。 この 結果 は、 血清KL−6値が 農夫 肺症 の疾 患活動性の 良い指標であり得ることを示唆する。無症候性の沈降抗体陽性農夫が潜在的なりンパ球性胞隔炎 を呈していたり、また、症状が消失した後もりンパ球性胞隔炎を呈する場合が認められる。しか し なが ら、 抗KL―6抗 体を 用い た免 疫染 色では 問質 に浸 潤するりンバ球は陰性であり、KL―6と 肺胞洗浄液中のりンパ球浸潤とは異なる病態をあらわしていると考えられる。サルコイドーシス で は血 清KL−6値 と胸 部CTでの 肺病 変の 広がり と相 関が ある 。特 に活 動期 の農 夫肺 症の組織所 見 はII型肺 胞上皮 細胞 の増 殖やII型 肺胞 上皮 や細 気管 支上皮細胞の変性という点で類似してお り 、こ のこ とが農 夫肺 症で 血清KL−6値 が高値 であ る原 因と 推測 され る。 本研 究で 沈降抗体陽 性 群 は 陰 性 群 よ り 血 清KL−6値 が 高 く 、 抗 体 陽 性 群の うち の8例で 血清KL―6値は 正常 上限 を 越 え て い た 。 ま た 、 こ の8例 は 正 常KL―6群 に 比 べ てDLcoが53% 、DL/VAが24% 低 下 し て い た。 以上 より、 農夫 肺症 患者 で血 清KLー6値 が高 値で ある こと と考 え合 わせ ると 、抗体陽性 群 の中 の高KL−6群は 、現 在の 診断 基準 では診 断で きな い潜 在す る農 夫肺 症の 存在 を示唆する かもしれない。農夫肺症は酪農家における主たる職業性肺疾患のーつであり、酪農従事者を対象 と した 健康 管理は 重要 であ る。 農夫 肺症 検診 の重 要な 点は、肺胞洗浄や胸部CT、肺生検などの 侵襲的な検査が必要な農夫肺症疑い例を如何に抽出するかということである。従来の農夫肺症の

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診断基準ではこのような検診には十分ではないことがいわれており、本研究で血清KL一6値の 測定は疾患活動性を判定する非侵略的で低コストの指標であり得るということと、検診により早 期の農夫肺症を検出できる可能性が示唆された。

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学 位 論 文 審 査 の要 旨

     学位論文題名

Serum KL‑6Levels in Dairy Farmers      (酪農従事者における血清KL ―6 値)

  従来の診断基準は農夫肺症を検出するのに十分に鋭敏であるとはいえないが、肺胞 洗浄検査や肺生検は侵襲的であり、農夫肺症検診に用いるのには適さない。ムチン様 高分子糖蛋白であるKL−6は、当初、腫瘍マーカとして発見されたが、問質性肺疾患 の疾患活動性の指標となることがわかってきた。しかし、血清KL−6の測定が農夫肺 症の疾患活動性を反映するか否かについての検討はいまだなされていない。申請者は、

272名の酪 農家を対象として、EUSA法で血清KL−6値を測定し、これが農夫肺症の 指標となりうるか否かについて検討した。農夫肺症の診断は、従来の診断基準を用い た。すなわち、かびの生えた乾燥牧草や藁への暴露歴、それらと接触した際や接触後 に おこる特徴的症状、Saccharopo紗Sp〇fareCHレ蛔uねやTカem】弸C亡加〇myceS w!蜘dsに対する血清沈降抗体、及び、胸部レ線上のびまん性小粒状影やスリガラス 影の存在の全てを満たしたとき、農夫肺症活動期と診断した。この診断基準に基づき、

対象者を農夫肺症群、沈降抗体陽性群、沈降抗体陰性群に分類した。農夫肺症群は5 例、沈降抗体陽性群は30例、陰性群は237人であった。年齢、性別、酪農従事年数、

牛舎内作業時間、牧草地面積、酪農従事者数、牛頭数、牧草取扱時間を含む酪農条件 に3群間で差はなかった。喫煙率は抗体陰性群で農夫肺症群、抗体陽性群に比ぺて有 意に高率であった。農夫肺症群における有症状者は抗体陽性群と陰性群に比べて高率 であった。胸部異常陰影を有する率も農夫肺症群において有意に高率であった。ラ音 を聴取する率も農夫肺症群で有意に高率であった。肺拡散能は農夫肺症群で抗体陽性 群に比ぺ有意に低下していた。農夫肺症群、抗体陽性群、抗体陰性群のそれぞれの血 清KL一も値は、1263士288、328士57、207士6U/mlであ り、農夫肺 症群が他の二 群に比ぺて有意に高値であった。また、抗体陽性群は陰性群より有意に高値であった。

5例の農夫肺症群では活動期と非活動期の血清KL−6値を測定したが、活動期で有意 に高値であった。血清KL―6値が抗体陽性群は陰性群に比ぺ有意に高値であったため、

抗体陽性群を高KL―6群と正常KL−6の二群に分類した。血清KL―6値の正常範囲は、

肺病変がないと考えられる抗体陰性群の値をもとに決定した。高KL―6群は8例で、

雄子 和 輝玲 義 橋   上 石岸 川 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

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正 常KLー6群 は22例であっ た。肺拡散 能が高KL‑6群で 正常KL―6群に比ぺて有意 に低かった。以上の結果は、血清KL―6値が農夫肺症の疾患活動性の良い指標であり 得ることを示唆し、抗体陽性群の中の高KL―6群は、現在の診断基準では診断できな い潜在する農夫肺症の存在を示唆する可能性が考えられた。

  発表後、副査岸教授から活動期・非活動期血清の測定期間についての質疑があった。

申請者は年1回の農夫肺検診で得られた保存血清を用いており、受診状況により前年 度分から5年前までばらっきがあると回答した。次に、活動性の評価にはどのくらい の間隔をおいて測定すべきかについての質疑があったが、季節性を考慮することと、

他疾患での検討結果を挙げて、おおむね月1ー2回の測定が妥当であると回答した。次 に、副査川上教授から、正常値の男女差と、一般的に正常上限を500U/mlに設定し ている理由についての質疑があった。他施設での正常値の設定結果を引用し、同様に 男女差が認められ、85%以上の診断率が得られるための便宜的な設定値であると回答 した。最後に、主査石橋教授から、KL一6の接着能カの阻害作用と問質性肺疾患にお ける意義についての質疑があった。構造上の特徴より、上皮細胞に発現することで感 染防御の役割を果たしていると回答した。次に、KL―6の亜分子があるのであれば、

その亜分子を用いることで、より疾患特異的な検討が可能ではないかとの質疑があっ た。亜分子はいままで3型が報告されているが、いまだ測定法は確立されておらず、

現段階では検討できないが、今後、検討に値すると回答した。次に、DLCOの差が少 なく、本当に病気を発症しているかとの質疑があった。肺全体の拡散能を反映してい るため、軽度の低下でも病変がびまん性に存在していることを表すと回答した。また、

活動期でのみ上昇するのであれば、早期発見に結びっかないのではないかとの質疑が あった。沈降抗体陽性群の中でも高値例が存在し、潜在する発症者を抽出できる可能 性があると回答した。

  この論文は、農夫肺症とKL―6の関係についての初めての検討であり、その有用性 を明らかにし、将来、早期の農夫肺症を検出できる可能性を示唆したものとして高く 評価され、今後の臨床的な展開が期待される。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受ける のに十分な資格を有するものと判定した。

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