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博 士 ( 医 学 ) 東 梅 友 美

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 東 梅 友 美

学 位 論 文 題 名

骨 髄 移 植 キ メ ラ マ ウ ス モ デ ル の 急 性 移 植片 対 宿 主 病に お け る マ ク ロ フ ァ ー ジ 遊 走 阻止 因 子 の 影響

学 位 論 文 内 容 の要 旨

【 緒言 】

同 種造 血幹細 胞移 植にお ける 移植片対宿主病(graft‑versus‑host disease:GVHD)は患者の生命予後に関わる合併症の―

つ であ り,発 症機 序は腸 管な どの標 的臓 器にお いて ,ドナーT細胞がレシピェントに特異的に存在する抗原に対する免 疫 応答 を契機 とし て,T細 胞, 単球お よび マクロ ファ ージ等 から 種々の 炎症性サイトカインが産生されドナー由来T細 胞 が活 性化さ れ臓 器障害 を引 き起こ すも のと考 えら れている,マクロファージ遊走阻止因子(lVfacrophage migration inhibitory factor:MIF)はT細胞及びマクロファージなど種々の細胞に広く発現しており,炎症反応,免疫応答や細胞の 分 化・ 増殖能 促進 作用な ど多 岐多彩な作用を持っサイトカインである,これまで骨髄移植においても同種免疫反応の出 現 部 位 に 浸 潤 して い る マ ク ロ フ ァ ージやT細胞 が局所 的にMIFを産 生して いる ことが 報告 されて おり ,GVHDの 発症 に おい て重要 な役 割を果 たし ていることが示唆されるが,不明な点も多い.本研究では骨髄移植キメラマウスモデルに お い て ,MIFノ ッ クア ウ ト マ ウ ス を 用い て 骨 髄 移 植 後 の 急性GVHDにお け るMIFの 影響 を検討 した ので報 告す る,

【 材料 と方法 】 1, 実験 動物

  実 験 に は と もに 雌 の8‑16週 齢 で 野 生 型C57BU6N, 野 生 型BALB/c及 びBALB/cを 背 景 にMIF遺 伝 子 を ノ ッ ク ア ウ ト した マウス(MIF KO)を 使用 した.MIF KOマ ウスは 成長 及ぴ発 達も 野生型 と同 じであ り, 臓器障 害も 認めら れなか っ た, 実験は 北海 道大学 医学 部動物 実験 施設に 関す る指針 に従 って行 った ,

2. 同種 骨髄移 植法

  レ シ ピ エン ト がB´kLB/c野 生 型 及びMIFK0マ ウ ス の場 合に は, 前処置 とし て全身 放射 線照射 卩BI) を8.0Gy, C57BU6N野生 型 の 場合に はTB110.OGyを 照射し ,照 射後24時間以 内に ドナー 細胞 を尾静 脈注 射した ,移 植骨髄 細胞 数 はす べての マウ スで1x107の骨 髄細胞 を移 植した が, 脾臓細 胞の 輸注数は,レシピェントがB´虹B/c野生型及びMIF K0マ ウ ス の場 合 には2xl06を ,C57BU6N野生型 の場 合には1xl07を 輸注し た, ドナー 細胞 の生着 確認 はレシ ピェ ント がB´6曲 /c野 生型及 びMIFK0マウス の場 合にはH一2Kb陽性細 胞を ,C57BU6N野生型 の場 合にはH.2Kd陽 性細 胞をフ ロ ー サ イ ト メ トリ ー法に て測 定した .臨 床的GVHDの評 価方法 はCookcらによ り提 唱され たス コアリ ング システ ムを 用 いて 行った ,尚 ,血清Mm濃度 測定はMIF特 異的抗 体を 用いてELISA法 で行っ た.

3. フロ ーサイ トメ トリー 法

  移 植前 および 移植 後の脾 臓細 胞分画 測定 はFITC結 合抗 ラットIgG2b,E,FITC結 合抗H一2Kb,FITC結合抗H12Kd及び FITC結合 抗CD3,PE結合 抗CD4,PE結合 抗CD8,PE結合 抗NK1.1抗体( 全てBDBiosciences,S鋤Jose,CA) を用 い,

FACSキャリ ブラ ー(BeGtonDickinson,S齟J0se,Gqで 解析 しCenQueSt(BDBiosci闘c髄 ,S弧Josc,CA) で行 った.

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5. 統計 学的検 討

生 存 曲 線 はKaplan‑Meier法 を 用 い て 解 析 し た , 血清MIF濃 度 及 び キ メ リズ ム 等 の 細 胞 表 面抗 原 解 析 に はMann WhitneyU testま たはt検定を 用い ,pく0.05を統 計学的 有意 差とし た。

【 結果 】

1) フロ ー サ イ ト メ ト リー 法 を用 いてBALB/c野生 型とMIF KOマウ スにお ける 脾臓細 胞のT細胞 分画(CD3゛,CD4゛,

CD8゛)及 びNK細 胞分 画刪K1111の測 定を行 った 結果,MIF KOマ ウスに おけ る各細 胞亜分画は野生型と明らかな有意差 を 認め なかっ た,

2) レシ ピ ェ ン ト に お けるMIFの 影 響 をBALB/c野生 型及びMIF KOマ ウスを レシ ピェン トに 用いて 検討 した. この レ シ ピ ェ ン ト マ ウス に お け るMIFのGVHD重症度 及ぴ 生存率 にお ける影 響は ,同種 移植 で脾臓 細胞 を輸注 され た群で ど ち ら も 同 様 のGVHD重 症 度 と生 存 率 を 呈 し て いる こ と か ら , 有 意な 影 響 が な い も の と考 え ら れ た 血 清MIF濃度 は MIF KOマウ スをレ シピ ェント とし た同種 及び 同系移 植群 (骨髄 移植 群及び 骨髄 十脾臓細胞移植群)で移植前値と移植 1週 後に は他の 移植 系に比 較し て有意 に低 値を示 した ものの ,移 植2週後 には 有意差 を認めなかった、キメリズム解析 で は 移 植 後7日 目 に は 全 て の 同 種 移 植 系 で 完 全 キ メ ラ 型 ( ド ナ ー タ イ プ90% 以 上 ) で あ っ た . 3) ドナ ー 由 来 のMIF産 生 細胞 が 移 植 さ れ た 場合 の 急 性GVHDの 発 症 ー の 影 響をBALB/c野 生型 及びMIF KOマウ スを ド ナー として 検討 した結 果, 脾臓細 胞を 移植さ れた 実験系 にお いて生 存率 では有 意差は認めなかったが,GVHDスコア に 関 し て はGVHDス コ ア が 低い 傾向で あっ た,し かし ,血清MIF濃度 に関 しては 両群 で有意 差は 認めら れな かった キ メ リズ ム解析 では 移植後7日目 ではMIF KOマウ スから 骨髄 を移植 され た群の キメ リズム が78.3%と他 の移植群に比較 し て低 かった が, 移植後14日目 には全 ての 移植群 で完 全キメ ラ型 であっ た,

【 考察 】

  レ シピ ェント が野 生型及 びMIF KOマウ スであ る場 合にはMIFの急 性GVHDに対す る影 響は認 めら れなかった.また,

MIFKOマ ウ ス をレ シ ピ ェ ン トと した場 合, 移植I週間後 の血 清MIFは ほとん ど検 出され なか ったも のの ,その 時点 で は 骨 髄 の み 移 植し た 群 と 骨 髄と脾 臓細 胞を移 植し た群の 両方 とも急 性GVHDは認め られ ず,こ の実 験系で はMIFの 関 与 を 見 出す ことは でき なかっ た.MIF KOマウ スを レシピ ェン トとし た移 植群で は, 移植2週 間後 には血 清MIF濃度の 増 加が 認めら れた が,こ れは 移植さ れた ドナー 由来 の種々 の細 胞がレ シピ ェント にお いてMIFを産生 し得ることを示 唆 して いる

ー 方 . ド ナ ー にMIF KOマ ウ ス 由 来 の 造 血幹 細 胞 及 び 脾 臓 細胞 を 使 用 し た 実 験 移植 群 で は, 急性GVHDはBALB/c野 生 型 を ドナ ーとし た群 と比較 する と生存 率で は有意 差を 認めな いも のの,GVHDスコ アはBALB/c野 生型よ り低 かった こ れ は ド ナ ー にお け るMIFの発 現が 急性GVHDに生 存率で 寄与 できる ほど の影響 では ないが ,何 らかの 影響 を与え て い る可 能性が ある ,これ を検 証する ため には今 後実 験動物 数を 増やし て検 証を行 う必 要があ ると 考える.血清MIF濃 度 に お いて は野生 型及 びMIF KOマ ウス をドナ ーに した移 植群 では, 同系 及び同 種移 植でも 有意 差は認 めな かった し た がっ て,持 統的 なMIFの 低下を 誘導 できる 実験 系,す なわ ちMIF KOマ ウス 同士の 同種 移植系 を構 築することや安定 し た カ 価の 抗MIF抗 体を利 用す る必要 性が あり, これ らを使 用し て,血 清MIF濃 度を 完全に 抑制 するこ とが できた な ら ぱ. かなり 正確 な相関 関係 を導き 出せ 得る可 能性 がある もの と考え られ た.

【 結語 】

1.  レ シ ピ ェ ン トをMIF KOマ ウ ス に し て 実験 を行 った 場合は 野生 型と比 較し てMIFと 急性GVHD発症 との関 連は 少     ないと 考え られた .

2.  ドナ ーをM[F KOマウ スに した場 合, 骨髄細 胞の み移植 する と移植 後早 期のキ メリ ズムの 回復 が牌臓細胞を移植     した場 合に 比較し て有 意に遅 れた ,

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(3)

3.  ド ナー をMIF KOマ ウス にした 場合 に骨髄 細胞 と脾臓 細胞 を一緒 に輸 注するとBALB/c野生型を用いた同様の実験 と 比較 すると 生存 率には 寄与 しない が, 移植後 早期の急性GVHDを軽減する可能性が示唆された

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

骨髄移植キメラマウスモデルの急性移植片対宿主病に おけるマクロフプージ遊走阻止因子の影響

   マクロファージ遊走阻止因子(Macrophage migration inhibitory factor :MIF) はT 細 胞及びマクロファージなど種々の細胞に広く発現しており,炎症反応,免疫応答や細胞の 分化・増殖能促進作用など多岐多彩な作用を持っサイトカインである.これまで骨髄移植 にお いて も同 種免 疫反応の出現部位に浸潤しているマクロファージ やT 細胞が局所的に MIF を 産生 して しゝることが報告されて おり,移植片対宿主病(graft ―versus ―host ― disease :GVHD) の発症において重要な役割を 果たしていることが示唆されるが,不明な 点も多い.申請者は本研究において,骨髄移 植キメラマウスモデルを作成し,MIF ノック アウ ト(MIF KO) マ ウスを用いて骨髄移植後の急性GVHD におけるMIF の影響を検討した,

   実 験 に は と も に 雌 の 8‑16 週 齢 で 野 生 型 C57BL/6N , 野 生 型 BALB/c 及び BALB/c を背 景に MIF 遺 伝子 をノックアウトしたマウ スを使用した.レシピェントがBALB/c 野生型及 び MIF KO マ ウ ス の 場 合 に は , 前 処 置 と して 全 身放 射線 照射 (TBD を8.OGyC57BL/6N 野 生型の場合にはTBI lO.OGy を照射し,照射後24 時間以内にドナー細胞を尾静脈注射した.

移植骨髄細胞数はすべてのマウスでlx107 個の骨髄細胞を移植したが,脾臓細胞の輸注数 は. レシ ピエ ント がBALB/c 野生 型 及び MIF KO マ ウス の場 合に は2xl06 個を,C57BL/6N 野 生 型 の 場 合に は lx107 個 を輸 注し た. 臨床 的 GVHD の評 価方 法は Cooke ら に より 提唱 され たス コア リン グシ ステ ムを 用 いて 行っ た.尚,血清MIF 値測定 はMIF 特異的抗体を 用 い て ELISA 法 で 行 っ た . ド ナ ー を C57BL/6N 野生 型, レシ ピエ ント をBALB/c 野 生型 及びMIF KO マウスを用いて移植実験を行った 結果,骨髄細胞のほかに脾細胞を移植され ると 双方 のGVHD ス コア 、肝 臓組 織 及び 生存 曲線に明らかなGVHD が認められた,尚,血 清 MIF 値 は MIF KO レシ ピェ ント で移 植前 及び 移 植1 週間 後に おい て有 意に 野 生型 に比 べて低いものの,2 週間後には回復を認めたことより,レシピエントにお けるMIF の存在 はGVHD に 大き な影 響を 与え てい な いこ とが 示唆された,一方,ドナーをBALB/c 野生型 及び MIF KO マ ウス ,レ シピ エン ト をC57BL/6N 野生型を用いて移植実験を行った結果,

GVHD ス コ ア 及び 生 存曲 線に おい ては ドナ ーを MIF KO マ ウス にし て骨 髄細 胞 と脾 細胞 を移 植し た群 では ,BALB/c 野生 型 の同 群と 比較して有意に移植後早期のGVHD スコアの

一 49―

俊 則

弘 和

田 江

   

   

秋 小

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

低下 を認 めた .ま た, 肝臓 組織 上も GVHD の軽減が認められ,MIF KO マウスをドナーに した 場合 には MIF 陰 性の りン バ球 浸潤 が認められた,しかし,生存曲 線及び血清MIF 値 においては有意差を認めなかった,したがって,局所の免疫担当細胞におけるドナー由来 のMIF がGVHD の発症に 関与している可能性が示唆された.

   公開発表にあたって,副査小野江和則教授から,本実験におけるC57BL/6N マウスを選択 した理由,造血細胞以外の主なMIF の産生細胞,ドナーがMIF KO マウスの場合はGVFLD 抑制 効果があるのに,レシピェントをMIF KO マウスにした場合に血清MIF 値は低値であるにも かかわらず,GVHD 抑制効果を認めない点,MIF の炎症促進因子としての可能性についての 質問があった.申請者は,C57BL/6N マウスは通常頻用されていること,MIF は造血細胞以 外にも肺胞上皮や肝細胞及び下垂体前葉で多いこと,レシピェントをMIF KO マウスにした 場合 でも GVHD が重症化したのはドナー由来のMIF 産生が亢進するとともに,GVHD の重症 度には血清値よりも局所の発現が重要であること,MIF は炎症促進因子となり得ると回答 した.次いで,副査今村雅寛教授より局所と全身のMIF 値の差がGVHD に及ぽす影響,マウ ス移植実験での局所のMIF 発現程度とGVHD との関係,接着分子以外の組織障害に関与する 因子,移植モデルにおけるGVHD 出現の差異,免疫抑制剤と血清MIF 値との関連についての 質問があった.申請者は,既報の論文を参考に全身のMIF 値が必ずしもGVHD の重症度に反 映せず,むしろ局所の濃度が重要であること,マウスの移植モデルにおける報告はなく,

ヒトの場合と同様に局所での発現が大きな要因になり得ること,TNF‑a 等のサイトカイン も組織障害に関与している可能性があること,MHC を一致させた実験系で行った場合には MIF の影響をより明確 にできる可能性があること,および申請者はヒトの検体でのMIF の 測定も試みたが,免疫抑制剤による差を認めなかったことについて回答した.最後に,主 査秋田弘俊教授より,MIF KO マウスをドナーとして移植した場合の肝臓組織の破壊機序,

MIF KO マウスを移植した場合の生着,GVHD の病理組織におけるMIF 免疫染色での細胞内の MIF の局在,今後の臨 床応用の可能性についての質問があった,申請者は,MIF により上皮 細胞のICAM 一1 やVCAM 一1 が発現亢進し炎症が惹起されることから,MIF KO マウスのりンバ 球を移植した場合にはそれらの接着分子の発現が低下する可能性があること,生着はMIF KO マウスの骨髄細胞のみ移植した場合には遅れ,その理由としてMIF が細胞増殖に関与し ていること,浸潤リンパ球には細胞質及び細胞核のそれぞれにMIF が局在している細胞が ある こと ,抗 MIF 抗 体の 投与 によ りGVHD を 軽減 でき る可 能性 があ ることを回答した,

   本研究は,MIF KO マウスをドナーに用いた移植実験により,局所の免疫担当細胞におけ るドナー由来のMIF が GVHD の発症に関与している可能性を示唆し,MIF を抑制することで 新たなGVHD 治療の可能性が期待されることを明ら かにした.

   審査員一同は,これらの成果を高く評価し,大学院課程における研鑽や取得単位なども 併せ 申請 者が 博士 (医 学) の学 位を 受け るのに充分な資格を有するものと判断した.

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参照

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