博 士 ( 医 学 ) 古 崎 章
学 位 論 文 題 名
TRAIL − lVIediated Cytotoxicity:
Impacts of solubleTRAIL and TRAIL mlCr . pVeSiCleS ( 細 胞 性 TRAIL に よ る 標 的 細 胞 死 に お よ ぼ す 分 泌 型 TRAIL の 調 節 機 構 の 解 析 )
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
Tumor necrosis factavelated apoptosis‑inducingligand(1RAIりは、APC屹リガンドと も 呼 ば れ 、nボ フ ァ ミ リ ー に 属 す るu型 膜 貫 通 型 蛋 白 で あ る 。n強ILはnボ フ ァ ミ リ ー の 中 で も 、 免 疫 制 御 やT細 胞 の 細 胞 死 に 関 わ るRSLと 相 同 性 が 最 も 高 い と さ れ る 。 ヒ ト で は 、n強ILはn娘IL受 容 体 で あ るH冶IL・ .R1( ぬmRea嚠o叫 ) とn弧Iし .R2( ぬm R鰡 私 計5) の2つ の 細 胞 死 誘 導 性 受 容 体 と 結 合 し 、 カ ス ベ ー ス 経 路 を 通 じ て 細胞 死を 誘 導 す る 。 ま たTRAn, お よ び 皿WL受 容 体 は 様 々 な 組 織 で 発 現 し て い る 。n強ILに は 、 細 胞 膜 上 に 発 現 す る 細 胞 性 凧kILの 他 に 、 酵 素 的 に 細 胞 外 領 域 の み が 切 断 さ れ 遊離 する 可 溶性凧`IL(ゴrRAn. )とmic勵′e函d岱として分泌されるn弧IL血ば)Ve酬髄(、′rRAIL)が 存 在 す る と 考 え ら れ て い る 。 し か し な が ら 、 こ れ ら 分 泌 型n強ILの 生 物 学 的 活性 は明 ら かとなっていない。
細 胞 性TRAILは 、 主 と し て 活 性 化T細 胞 、 単 球 ・ マ ク ロ フ ァ ー ジ 、NK細 胞 、 樹 状 細 胞 に 発 現 し 、n強 凡 を 介 し た 細 胞 死 は 、 末 梢 血 活 性 化T細 胞 や 関 節 滑 膜 に 認 め ら れ る こ と か ら 、 多 く の 免疫 疾患 の制 御機 構に 関与 する と考 えら れ てい る。 この 他、nぬIL に よる 細胞 死は 子宮 や眼 にお ける 免疫 特権 、 ウイ ルス 感染 細胞 や腫 瘍細 胞の 生体 からの排 除 に も 関 与 す る と 考 え ら れ て い る 。 一 方 、n弧ILを 介 し た 細 胞 死 は 正 常 組 織 では 認め ら れ な い こ と か ら 、 腫 瘍 に 対 し て 重 合 化 リ コ ン ビ ナ ン ト 可 溶 性n弧ILを 用 い た 治療 法が 検 討 さ れ 、 そ の 有 効 性 が 報 告 さ れ て い る 。nWL機 構 の 臨 床 応 用 に は 、 細 胞 性 お よ び 分 泌 型1R甜Lの細胞死誘導活性や相互作用を検討する必 要がある。
本 研 究 で は 、 n強nの 生 物 学 的 活 性 を 明 ら か に す る た め 、 ヒ トnu凡 遺 伝 子 を レ ト ロ ウ イ ル ス ベ ク タ ー に よ り 遺 伝 子 導 入 し た 細 胞 株 を 用 い て 、 培 養 上 清 か ら 分 泌 型 nuILを分離し、Jmばを 標的細胞として細胞死誘導能を検討した。
ヒ トTRAIL遺 伝 子 を 導 入 し た 細 胞 と し て 、 マ ウ ス 由 来 で あ るTRAIL‑PA317細 胞 お よ びTRAL3T3細 胞 を 用 い た 。 ま た コ ン ト ロ ー ル 細 胞 に はKrox‑PA317細 胞 とNIH‑3T3 細胞を用いた。培養上 清を回収し、遠心にて細胞を除去した後、超遠心にて沈降成分(Vesicle prelxuation; VP)と 上 清(Vesicle‑free‑supematant; VFS)に 分 離 し て 実 験 に 用 い た 。 以下に結果の要約を示 す。
1)TRAIL発 現 をFACSに て 解 析 し た と こ ろ 、TRAIL‑PA317細 胞 お よぴTRAIL‑
3T3細 胞で はTRAIL発 現を 認め たが 、Krox‑PA317細胞とNIH‑3T3細胞では発現を認めな かった。Jurkat細胞を標的細胞として細胞死誘導活性を検討したところ、TRAH「PA317細 胞およ びTRAIL‑3T3細胞では細胞死が誘導されたが、Krox‑PA317細胞とNIH‑3T3細胞で は細胞死は誘導されなかった。
2) 超 遠 心 に て 分 離 さ れ たVPとVFSの 細 胞 死 誘 導 活 性 を 検 討 し た と こ ろ 、 TRAIL‑PA317細 胞由 来のVPおよぴVFSでは標的細胞の細胞死を誘導したが、Krox‑PA317 細胞由来のVPとVFSはともに細胞死を誘導したかった。また、Cell lysate、VP、VFSのTRAIL 蛋白構 造をWestem blot法にて解析したところ、vTRAILは細胞性TRAILと同様に、細胞 膜貫通型の全長性TRAILであったのに対し、sTRAILは細胞外領域のみから構成されるこ とが明 かと なっ た。 また 、細 胞性TRAILから 分泌 されるTRAIL蛋白量をELISAにて計測 したと ころ 、sTRAILはvTRAILに比して大量に分泌されていた。ー方、蛋白質濃度で比 較し た と こ ろ 、sTRAILに 比 ベvTRAILは よ り 強 カ に 標 的細 胞に 細胞 死を 誘導 した 。 3) 細 胞 性TRAILの 細 胞 死 誘 導 活 性 に 対 し てsTRAIIー お よ ぴvTRAILが ど の よ うな 干 渉 作 用 を 有 し て い るか 、TRAIL発 現細 胞と 標的 細胞 の環 境下 にvT馳uLまた は ゴrRAILを添加し検討したところ、、′TRAILはn強IL発現細胞による細胞死誘導を相加的 に 増 強 さ せ た の に 対 し 、STR心Lは 凧 `IL発 現 細 胞 の 細 胞 死 誘 導 を 抑 制 し た 。 以 上 よ り 、 本 実 験 系 に お い て は 、 細 胞性nuILの み で は な く 、 分 泌 型n強ILと して、ゴrRAILおよぴvTRAILが存在していることが確認された。またST凡虹Lの分泌量が 多いこ とか ら、 細胞 性n強ILの細胞 膜上 の凧 `IL発現 制御 には 、VTRuLよ りも 灯R心L の分泌が大きな役割を担っていることが考えられた。一方、細胞死誘導活性に関しては、
vTRAn,は 細胞 性TRAILの有する細胞死誘導活性を保持していたのに対し、STR心Lは細 胞死誘導活性を大部分喪失していることが判明した。この細胞死誘導活性の違いは、各々 の分泌 型n弧ILの蛋 白構 造の 差異に よる もの と考 えられた。さらに、細胞陛n強nの標 的細胞ーの細胞死誘導に対してvTRAILは相加的に、ゴrRAILは抑制的に作用し、それぞ れ異なる干渉作用を有していることが考えられた。
本 実 験 結 果 か ら 、n強ILを高 発現す る異 常細 胞か らは 、大 量のsTR甜Lが 分泌 さ れ、正 常の 細胞 性n強凡とn強IL受容体との結合を阻害し、免疫機構に変調をきたすこ となどの病態が想定される。今後、ざrRAILおよびvTRAILの生体内における役割を解析 することにより、自己免疫疾患の制御や腫瘍治療への応用、すなわち、T ̄RAIL機構の人 為的制御による新たな治療法の開発が期待される。
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学位論文審査の要旨
学位論文題名
TRAIL 一Mediated Cytotoxicity:
Impacts of solubleTRAIL and TRAIL mlcrovesicles ( 細 胞性 TRAIL に よる 標 的 細胞 死 にお よ ぼす 分泌型TRAIL の調節機構の解析)
Tumor necrosis factor‑related apoptoslS−lnduCingligand (TRAIL)は、TNFファミリー→に 属 す るII型 膜 貫 通 型 蛋 白 で あ る 。TRAILは 免疫 制 御やT細 胞 の 細胞 死 に関 わ るFaSLと相 同 性 が 最 も 高 い と さ れ る 。 ヒト で は 、TRAILはTRAIL受 容 体 と結 合 し、 カ ス ペー ス 経路 を 通 じ て 細 胞 死 を 誘 導 す る 。TRAILには 細 胞膜 上 に 発現 す る 細胞 性TRAILの 他に 、 酵素 的 に 切断 さ れ 遊離 す る可 溶 性TRAIL(sTRAIL) とmicrovesiclesとし て 分泌 さ れ るTRAIL microvesicIes(vTRAIL)が存在すると考えられている。しかしながら、これら分泌型TRAIL の 生 物学 的 活 性は 明 らか と な って い な い。 ま たTRAIL機構 の 臨床 応 用 には 、 細 胞性 およ び 分 泌 型TRAILの 細 胞 死 誘 導 活 性 や 相互 作 用を 検 討 する 必 要 があ る 。TRAILの生 物 学的 活 性 を明 ら か にす る ため 、 ヒ トTRAIL遺伝 子 をレ ト ロ ウイ ル スベ ク タ ーに よ り 遺伝 子導 入 し た細 胞 株 を用 い て、 培 養 上清 か ら 分泌 型TRAILを 分離 し 、Jurkatを 標的 細 胞 とし て 細 胞 死 誘 導 能 を 検 討 し た 。 ヒトTRAIL遺 伝 子導 入 細 胞と し て マウ ス 由来 で あ るTRAILー PA317細 胞 を 用い た 。 培養 上清を 回収し遠 心にて細 胞を除去 した後、 超遠心にて 沈降成分
(Vesicleprepara1ニion;VP)と上清(Vesicle−free―supematant;VFS)に分離して実験に用い た 。TRAIL発 現 をFACSに て 解 析 した と こ ろ、TRAIL‐PA317細 胞 でTRAIL発 現 を 認め た 。 Wbstemblot法 に て 、vTRAILは 細 胞 性TRAILと 同 様 の 約32kDaで あ っ た の に 対 し て 、 STRA【Lは 約20kDaの 小さ な 分子 サ イ ズで あ るこ と が 確認 された。Jurkat細胞を標 的細胞 と し て細 胞 死 誘導 活 性を 検 討 した と こ ろ、TRAILIPA317細胞 で は細 胞 死 が誘 導 さ れ、 可 溶 性TRAIL受 容体 添 加 にて 完 全に 抑 制 され 、 コン ト ロ ール 細 胞で は 細 胞死 は 誘 導さ れな か っ た 。vTRAILとSTRAILの 細 胞 死 誘 導 活 性 を 検 討 し た と こ ろ 、vTRAILは 用 量 依 存 性 に 強 カ に 細 胞 死 を 誘 導 し た が、sTRAILでは 殆 ど細 胞 死 を誘 導 しな か っ た。VTRAILおよ びsTRAILの 蛋 白 量 をEuSAに て 計 測 し た と こ ろ 、slrRAILはvTRAILに 比 し て 大 量 に 分 泌 さ れ て い た 。 一 方 、 蛋 白 質濃 度 で 比較 し たと こ ろ 、sTRAILに比 べvTRAILは よ り 強カ に 標 的 細 胞 に 細 胞 死 を 誘 導 し た 。 細 胞 性TRAILの 細 胞 死 誘 導 活 性に 対 し てsTRAILおよ びvTRAILが ど の よ う な 干 渉 作 用 を 有 し て い る か 、TRAIL発 現細 胞 と標 的 細 胞の 環 境下
次
俊 夫
鎮 弘
隆
山
田 池
畠 秋
小
授 授
授
教 教
教
査 査
査
主 副
副
にvTRAIL または sTRAIL を 添加 し検討 した とこ ろ、vTRAIL はTRAIL 発現 細胞による細 胞死 誘導 を相加的に増強させたのに対し、sTRAIL は TRAIL 発現細胞の細胞死誘導を抑 制し た。 以上より本実験系においては、細胞性TRAIL 、sTRAIL およびvTRAIL が存在し てい るこ とが確認された。また細胞性TRAIL 誘導性細胞死にsTRAIL が負の制御を担っ ていることが考えられた。質疑応答では,主査から紹介があった後、申請者はスライドを 用いながら約15 分に渡って学位論文内容の発表を行った。その後、副査秋田弘俊教授か ら、l)Jurkat 細胞以外の細胞株での細胞死について、2 )内在性にTRAIL を発現した細胞で の検討にっいて、3 )癌治療への応用の可能性にっいての質問があった。次いで副査小池隆 夫教 授か ら、l)sTRAIL に つい て腫瘍 自体がsTRAIL を分泌している可能性について、
2)microveicles を liposome 化して治療に応用する可能性にっいての質問があった。次いで 主査畠山鎮次教授から、1)PA‑317 細胞自体がウイルスベクターを産生している可能性に っいて、2)budding 様式によるTRAIL 以外のシステムについて3)Cr‑release 法以外でのア ポトーシスの検討にっいて、4)vTRAIL は細胞性TRAIL とほば同様の作用であるが、sTRAIL は抑制性の機能しか存在しないのかどうかについての質問があった。いずれの質問に対し ても、申請者はこれまでの文献的報告および実験結果を引用し、概ね適切に回答した。
こ の論 文は、 TRAIL 誘導性細胞死における sTRAIL の役割を明らかにした点で高く評 価され、今後のTRAIL 機構解析の進展および腫瘍や自己免疫疾患の治療への臨床応用が 期待される。
審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども 併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した。
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