• 検索結果がありません。

学位論文題名

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "学位論文題名"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

    

博士(農学)外山晶敏

    

学位論文題名

Study on reproductive behavlors of the foliage spider

    

く'hiracayzthiu7n ja ウ〇髭ZC 勿絖

(カバキコマチグモの繁殖行動に関する研究)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  フク口グモの一種であるカバキコマチグモChiracan出jumメaponたL跚は日本全国に 広く分布し,ススキやヨシの葉をちまき状に捲いた産室を作るなど特異的な繁殖行動を 示すことで知られている。しかしながら,その生態に関する研究はこれまでほとんどな かった。本研究では,本種の雌および雄の繁殖行動について,その全容を明らかにする とともに,詳細な行動生態学的研究を行った。

  本種雌の繁殖活動は産室における子への随伴行動とマトリファージ(子グモによる母 親食い行動)によって特徴付けることが出来る。本研究では,これら一連の行動が「雌 親による子グモの保護行動である」という作業仮説のもとに,その適応的意義について 精査した。その結果,本種雌の保護行動は「閉鎖された産室内における雌親随伴による 卵および幼体の捕食圧の軽減」,「孵化した子グモの出嚢(卵のうからの脱出)幇助」

お よ び「 マトリ ファ ージ によ る子グ モヘ の給 餌」 の3要素 から構 成さ れて いた 。   野外における雌親の除去実験から,本種の卵および幼体は潜在的に高い捕食圧の下に あり,産室での雌親の随伴が、被捕食のりスクを大幅に軽減する防衛機能を有している ことが判明した。このことから,本種を始めとしたフクログモ科のクモにおいても,多 くの生物種で指摘されているように,親の随伴行動の進化要因の1っが潜在的な捕食の 危険であることが示された。また,子グモが孵化後、出嚢する際に、親の存在が不可欠 であり,孵化直後の子グモには卵嚢を破る能カがないことも明らかとなった。このこと は,雌親が子グモの出嚢を幇助していることを示すと同時に,子の生存において雌親の 同伴が必要不可欠な前提となっていることを示していた。

  マトリファージは無脊椎動物全般においても少数の種にしかみられない特異的な行動 である。その意味については諸説あるが、本種においては,親による子の保護の視点か ら評価されるべきものであり,その機能が分散時の子グモの状態と強い相関を持つこと が明らかとなった。っまり,本種のマトリファージは単に餌として子グモの体重を増や すのみならず,子グモの通常より1つ進んだ齢期への脱皮促進つまり分散齢期の遅延

(一般にクモは2齢で分散する),クラッチ内共食いの抑制といった効果を有していた。

本種の3齢個体が,体サイズに比して相対的に長い脚を持っなど,形態的に2齢とは明

(2)

らかに異なる特徴を有していることは,マトリファージが単独徘徊生活により高度に適 応した形態で子グモを分散させる機能を持つことを示していた。また,雌親の子への投 資バターンについて、資源量との関係から調べたところ,雌親の産卵直前の重量,っま り資源蓄積量と、産卵数および卵への総投資量の間には、それぞれアイソメトリックな 関係がみられ,結果として卵黄とマトリファージとを介した1子当たりへの投資総量

(=分散時の子グモサイズ),および両投資機会間に配分される資源の比率は、雌親の 資源量から独立に保たれていた。このことは,雌親が自らの資源量に応じて産卵数を調 整することで,1子当たりへの投資を一定に保っていることを示していた。っまり,本 種におけるマトリファージは,季節的に繁殖機会が年に一回(1化性)に制限される条 件の下で,雌親が子を通じて最大の適応度をあげられるように,「雌親による子の保護 行動の一環」として進化してきたものと考えられた。

  一方,本種の雄は雄精子嚢の構造に伴う最初の交尾雄の優先性と雌の1回繁殖という 特性をもつ。このことから、雄の繁殖成功が,処女雌との交尾機会の獲得にかかってい るという作業仮説が成立する。そこで、自然個体群を対象に,個体識別法による交尾活 動調査および雄の繁殖行動を観察した。その結果,本種の雄は多回交尾が可能であり,

成熟前の雌に対して交尾前配偶者ガードを行うことが明らかとなり,また予想通り雄間 に成熟直後の雌との交尾をめぐる激しい競争があることがわかった。更に,人為的に成 熟雄を対峙させると、誇示行動から激しい闘争までの段階的な相互反応が観察され,野 外調査においても,しばしばガードしている雄の交代が認められた。こうした直接的相 互作用において,交尾前配偶者ガードをめぐる雄間競争の勝敗は、雄の体サイズに依存 していた。これらのデ一夕をもとに,選択勾配分析を行った結果,雄の成熟時体サイズ に正の淘汰圧が働いていることが明らかになった。一方,多くのクモ類に成熟雌雄間に 形態上の違いがみられ、雄に際だった特長は、このような雄間競争を通じて性選択され たものだとされている。今回の行動観察では、本種雄に特有な長い脚や大きい上顎は,

競合雄間の誇示行動や闘争において,威嚇手段や武器としてっかわれていた。しかし、

勾配分析では、これらの形質に対する明瞭な淘汰圧は検出されなかった。これは,雄の 体サイズの変異が闘争の勝敗を一義的に決めてしまうほど大きく、そのために、闘争に 関わる諸形質の大小が勝敗にあまり関わらないことに一因があると考えられる。形態に お け る 性 的 二 型 性 の 意 味 に 関 し て は , 今 後 更 な る 検 討 が 必 要 で あ ろ う 。   野外データから,成熟時体サイズ,成熟日について季節を追って分析したところ、雄 の体サイズには年や場所により,大きな変動がみられ,本種の成長が強く環境に依存し,

制限されていることが明らかとなった。これに対し,成熟準備雌の出現に先行して、雄 の成熟がコンスタントに起こっていることから,本種の雄が自らの成長状況に応じて,

成熟夕イミングの調整を行っていること,すなわち,「成熟夕イミングが成熟齢期の可 塑性によって調整されている」という可能性が示唆された。野外における雄の成熟時体 サイズと成熟日の頻度分布が,しばしば2つのピークを示すことは、上記の仮説を支持 するものと考えられた。さらに,雄の成熟時体サイズと成熟日の間には正の相関が見ら れ,他のクモ類が一般に負の相関を示す事実と対照をなしていた。雄の交尾成功度に関

(3)

する野外調査では,先行して成熟した小さい雄は、大きい雄が出現する前に、わずかな がら交尾機会を得ており,本種雄には,成長状況に応じた代替戦略,すなわち「小さく 早 く 成 熟 」 と 「 遅 れ て も 大 き く 成 熟 」 が 存 在 す る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。

(4)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査

副査 副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授 助教授

齋藤   裕 諏訪正明 前川光司 綿貫   豊 秋元信一

    

学位論文題名

Study on reproductive behavlors of the foliage spider

    Chiraca7zthiuyn japOYzzcuYn

    

    

( カ バ キ コ マ チ グ モ の 繁 殖 行 動 に 関 す る 研 究 )

  本 論 文 は 、 図 表 を 含 め134ベ ー ジ か ら な り 、 引 用 文 献104を 含 み 、 英 文 で 書 か れ て い る 。 他 に 、 参 考 論 文3編 が 添 え ら れ て い る 。

  フ ク ロ グ モ の 一 種 で、 強い 毒を もっ カバ キコ マチ グモ ('hiraCanjum丿aponたL間 は 日 本 全 国 に 広 く 分 布 し 、 ス ス キ や ヨ シ の 葉 を ち ま き 状 に 捲 い た 産 室 を 作 る な ど 特 異 的 な 繁 殖 行 動 を 示 す こ と で 知 ら れ て い る 。 本 研 究 で は , 本 種 の 雌 お よ び 雄 の 繁 殖 行 動 に つ い て , そ の 全 容 を 明 ら か に す る と と も に , 行 動 生 態 学 的 分 析 を 行 っ た 。   本 種 の 繁 殖 活 動 は 、 雄 ど う し の 未 交 尾 雌 を め ぐ る 競 争 雌 親 の 産 室 に お け る 子 へ の 随 伴 行 動 、 お よ び 子 グ モ が 母 親 を 捕 食 す る 行 動 ( マ ト リ フ ァ ― ジ ) 3っ に よ っ て 特 徴 付 け る こ と が 出 来 る 。 本 研 究 で は , ま ず 、 雌 親 の 子 へ の 随 伴 と マ ト リ フ ァ ー ジ が 「 雌 親 に よ る 子 グ モ の 保 護 行 動 で あ る 」 と い う 仮 説 の も と に , そ の 適 応 的 意 義 に つ い て 精 査 し た 。

  そ の 結 果 , 本 種 雌 の 保 護 行 動 は 「 閉 鎖 さ れ た 産 室 内 に お け る 雌 親 随 伴 に よ る 卵 お よ び 幼 体 の 捕 食 圧 の 軽 減 」, 「孵 化し た子 グモ の卵 のう から の脱 出幇 助 」お よび 「マ トリ ファ ー ジ に よ る 子 グ モ ヘ の 給 餌 」 の3要 素 か ら 構 成 さ れ て お り 、 い ず れ の 段 階 も 子 グ モ の 生 存 率 を 効 果 的 に 上 げ る 働 き を も つ こ と が 明 ら か と な っ た 。 特 に 、 マ ト リ フ ァ ー ジ は 動 物 界 に お い て 、 ご く ま れ に み ら れ る 特 異 的 な 行 動 で あ り 、 そ の 意 味 は よ く わ か っ て い な か っ た 。 本 種 に お い て は , そ の 機 能 が 分 散 時 ま で に 子 グ モ を 安 全 か つ 十 分 に 成 育 さ せ る た め の 、 親 に よ る 子 へ の 給 餌 に あ た る こ と が 実 証 さ れ た 。 っ ま り , 本 種 の マ ト リ フ ァ ー ジ は 単 に 餌 と し て 子 グ モ の 体 重 を 増 や す の み な ら ず , 子 グ モ の 通 常 よ り1つ 進 ん だ 齢 期 へ の 脱 皮 促 進 っ ま り 分 散 齢 期 の 遅 延 , ク ラ ッ チ 内 共 食 い の 抑 制 と い っ た 効 果 を 有 し て い た 。

(5)

  また,雌親が子へどのように資源を投資するかについて、卵黄とマトリファージとを 介した1子当たりへの投資総量,および資源の配分比率を測定した結果、雌親が自らの 資源量に応じて産卵数を調整することで,1子当たりの投資量を一定に保っていること がわかった。っまり,本種におけるマトリファージは,季節的に繁殖機会が年に一度に 限定される条件の下で,雌親が子を通じて最大の適応度をあげられるように,「雌親に よ る 子 の 保 護 行 動 の 一 環 」 と し て 進 化 し て き た も の だ と 考 察 さ れ た 。   一方,繁殖期における 雄どうしの未交尾雌をめぐる競争 は、雄の精子嚢の構造に 伴う最初の交尾雄の優先性と、マトリファ―ジから必然的に生じた 雌の1回繁殖 と いう特性に関連している。このような条件下では、雄の繁殖成功が,未交尾雌との交尾 機会の獲得にかかっているために、激しい競争が予想される。そこで、自然個体群を対 象に,個体識別法による交尾活動調査および雄の繁殖行動を観察した結果,本種の雄は 多回交尾が可能であり,成熟前の雌に対して交尾前配偶者ガードを行うことが明らかと なった。また予想通り雄間に成熟直後の雌との交尾をめぐる激しい競争があり、この競 争の勝敗は、雄の体サイズに依存していることが判明した。これらのデ一夕をもとに,

自然選択の強さを測る数理的手法である選択勾配分析を行った結果,雄の成熟時体サイ ズに正の淘汰圧が働いていることが明らかになった。

  野外データから,成熟時体サイズ,成熟日について季節を追って分析したところ、雄 の体サイズには年や場所により,大きな変動がみられ,本種の成長が強く環境に依存し,

制限されていることが明らかとなった。これに対し,成熟準備雌の出現に先行して、雄 の成熟がコンスタントに起こっていることから,本種の雄が自らの成長状況に応じて,

成熟夕イミングの調整を行っていること,すなわち,「成熟夕イミングが成熟齢期の可 塑性によって調整されている」ということが示唆された。野外における雄の成熟時体サ イズと成熟日の頻度分布が,しばしば2つのピークを示すことは、上記の仮説を支持し ている。さらに,雄の成熟時体サイズと成熟日の間には正の相関が見られ,他のクモ類 が一般に負の相関を示す事実と対照をなしていた。雄の交尾成功度に関する野外調査で は,先行して成熟した小さい雄は、大きい雄が出現する前に、,わずかながら交尾する機 会を得ており,本種雄はI「小さい体でも早く成熟する」と「遅れても大きい体で成熟 する」という、自身の成長状況と雌の出現状態に応じた代替戦略をもつことが強く示唆 された。

  本研究は、「子による母食い」という動物界でまれにみる習性をもつカバキコマチグ モの繁殖生態を、野外および実験室において克明に観察し、本種が亜社会性のクモであ ることを明らかにしたばかりか、統計数理的手法を用いて、形態に対して働く自然選択 の存在とその方向性を明らかにしている。これらは、クモ類のみならず、捕食性動物全 般に共通する多くの疑問に答えを与えるものであり、生態学・行動学上高く評価される。

  よって、審査員一同は,外山晶敏が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有 するものと認めた。

参照

関連したドキュメント

  

   本研究では, 1997 年―2002 年の間に,北海道沿岸,千島列島,カムチヤッカ半島周

  

   申請者は、特に行動圏、 食性、営巣環境に注目して2

   公 開 発表 にあ たっ ては ,副 査の 笠原 教授 から ,「 iNKT 分化障害とDP 胸 腺細胞の減少 およ び CDld 発現 低下 の関 連性 」の コメ ント の後 ,「

   以 上の 結果 より,p53 の変異は予後においても放射線感受性においても最も相関の高い 因子 であ り,

ン グロー プが7.6dB 低 滅する ことを 示した ,さら に, アレー アンテ ナの収 束効 果につ いて解 析的に 検 討した 結果よ り,導 波管 スロッ トアレ ーアン テナに おけ

   リグ ニン はセ ルロ ース に次 いで 植物によって大量に生産される物質であるが、現 在有効 には利用されていない。/ ヾルプの製造工程で排出されるりグニンは燃焼処理 されて いる