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Academic year: 2021

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博 士 ( 水 産 学 ) 伊 藤 健 二

     学位論文題名

ブドウガイろり励ロjaponica(PILSBRY) の繁殖形質 の個体群内変異に関する生態学的研究

学位論文内容の要旨

    古典的な最適繁殖投資理論の予測に反して、生物の稚仔(卵・新生児・

種子など)の大きさは、しばしば同一の個体群内においても幅広い変異を示 す。特に海産無脊椎動物に関しては、集団内レベルで生じる卵サイズ変異の維 持機構や、その適応的意義についての研究がほとんどない。本研究では、函館 湾西岸の葛登支岬潮聞帯に生息するブドウガイを対象に、まず生活史と成長、

繁殖の季節性を明らかにした上で、特に繁殖形質の個体群内変異のバターンと 産卵個体の性質が繁殖形質に及ぼす影響、更に産卵個体のサイズと繁殖スケジ ユールの関係を明らかにし、本種の繁殖形質の個体群内変異の維持プロセスと その適応的意義について論じた。

1.ブドウガイの生活史

    ブドウガイの生活史特性として生活環と成長、繁殖の季節性について調 査を行い、加えて成長の季節性を規定する要因として餌海藻動態の重要性につ いて検討を行った。

    ブドウガイが産み出す卵塊のうち、発生段階初期のものは4月末から7 月中旬の間に見いだされ、最も高密度なのは5月中旬であった。このことは、

ブドウガイの産卵期が4月下旬から7月中旬であり、そのピークが5月中旬であ ることを示唆している。また、プドウガイは葛登支岬潮間帯に周年にわたって 見いだされたが、産卵期の後半に大型個体の消滅と小型個体の出現が起こっ た。このことは、葛登支岬に生息するブドウガイが年間1世代の1年生の生活 史 を 持 ち 、 世 代 交 代 の 時 期 が 晩 夏 で あ る こ と を 示 唆 し て い る 。

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    ブ ド ウ ガ イ の 成 長 の 季節 性を 殻高 と湿 重量 の月 別の平 均値 の推 移を 基に 検討した結果、殻高の増大は主に8月から9月、湿重量(軟体部重量)の増大は産卵 期 前の2月 から4月に かけ て起 こっ てい るこ とが明らかになった。湿重量の増加 す る時 期は 、プ ドウ ガイ の餌 海藻 であ るエ ゾヒトエグサのスプリングプルーム の 時期 と一 致し てお り、 両者 の間 の因 果関 係は餌海藻を操作した野外実験によ って支持された。

2. 繁殖 形質 の個 体群 内変 異/、 夕ー ン

    ブ ドウ ガイ の卵塊 に含 まれ る卵 のサ イズ と数 の変 異を 野外調査と室内実 験 で調ベ、そこで見いだされた卵サイズの変異が稚仔の性質に与える影響を調 ぺ た。

    野 外で 見い だされ た卵 塊に 含ま れる 卵の サイ ズは 、卵 塊間で有意な変異 を 示し、卵数についても幅広い変異が見いだされた。卵サイズと卵数は、産卵 期 の初期から後期にかけて共に減少する傾向がある。また、定常条件下で産み 出 さ れ た 卵 塊 に つ い て も 、 卵 サ イ ズ の有 意 な 卵 塊間 変異 が見い ださ れた 。     卵 サイ ズと 稚仔の 性質 の関 係を 、卵 発生 時間 、孵 出幼 生サイズ、幼生の 飢 餓条件下における生存時間について調べた結果、大型の卵からは長い発生時 間 を経て大型の幼生が産まれ、その幼生の飢餓条件下での生存時間は小さい卵 に 由来する幼生に比べて長いことが示された。これらの結果は、大型卵に由来 す る幼 生ほ ど適 応度が 高い こと を示 唆し てい る。

3.産 卵個 体のサ イズ と齢 が及 ぽす 繁殖 形質 への 影響

    産卵個体のサイズと産卵開始からの日数(齢)が及ぼす卵サイズと卵数の変 異 への 影響 を調 べる ため に、 産卵 個体 を個別 に分 離し た飼育産卵実験を実験室 環 境の 定常 条件 で行 った 。

    そ の結 果、 産卵 個体 当たりの産卵回数は4.21土O.12回(n 19)で、産み出 さ れた 卵塊 間に は有 意な 卵サ イズ 変異 が見い ださ れた 。また、卵塊ごとの平均 卵 サ イ ズ は 、 産 卵 個 体 の サ イ ズ と 正 の相 関を 、齢 とは 負の 相関 を示 した 。ま た 、卵 数と 産卵 個体 の齢 の間 にも 負の 相関が 見い ださ れた。更に、同一個体が 産んだ最初と最後の卵塊の間では、最初の卵塊のほうが卵サイズ・卵数とも有意

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に大きい値を取っていることが示された。

    ここ で示 され た産 卵個 体の 齢と 卵サ イズ ・卵 数の間に見られる有意な相関 関係は、過去に植物や昆虫、多毛類で報告されている変異の傾向と同様のもので あ る 。検 討の 結果 、こ の傾 向は産 卵個 体の 死亡 リス クを 考慮 に入 れたBegon& Parker(1986)の最 適繁 殖投 資モ デル によ って 理解 出来ることが示された。ブド ウガイは産卵個体が生存している確率の高い産卵開始直後の産卵に、より多くの 繁殖投資資源を配分していると考えられる。

4. 野 外 の 繁 殖 形 質 変 異 に 及 ぽ す 、 産 卵 ス ケ ジ ュ ー ル と 餌 環 境変 動 の 影 響     産卵 個体 のサ イズ と齢 に依 存し た卵 サイ ズと 卵数 の変異を、野外で見いだ される卵サイズ・卵数の季節変動と結びっけるために、産卵個体の体サイズと繁 殖スケジュールの関係を野外ケージ実験で調べた。加えて、餌海藻の季節変動と 卵 サイズ 、卵 数変 異の 関係 を検 討す るた め、 実験 室条 件下で餌条件の操作を行 い、産み出される卵サイズと卵数の比較を行った。

    そ の結 果、 野外 ケー ジで の産 卵は 、野 外観 察の 結果と ほぽ 同じ4月 上旬 か ら7月上 旬ま で続 き、 産卵 盛期は4月下旬から5月上旬であることが示された。ま た、卵サイズ、卵数の季節変動パターンは野外観察同様、季節的な減少傾向を示 した。また、室内実験の結果同様、卵塊ごとの平均卵サイズは、産卵個体のサイ ズと正の相関を、齢とは負の相関を示した。更に、産卵個体のサイズと産卵開始 日との間には有意な負の相関が見いだされた。.この結果は、小型個体の産卵開始 が大型個体に比べて遅れる傾向があることを意味する。

    餌を 操作 した 室内 実験 の結 果、 餌を 半分 に制 限し たプドウガイの卵塊当た りの卵数は、餌を十分に与えたプドウガイの約半分になった。しかし、卵サイズ に関しては有意な差は見いだされなかった。

    これ らの 結果 を総 合し て検 討し たと ころ 、野 外で 観察されるブドウガイの 卵サイズと卵数の季節的な減少傾向には、産卵個体の加齢に依存した変異と、体 サイズに依存する変異(小型卵を産む小型個体の産卵の遅れ)の両方が含まれるこ と が示唆 され た。 また 、卵 数の変動については、この2つのプロセスに加え、餌 環 境 の 季 節 的 な 変 動 が 重 要 な プ 口 セ ス と な っ て い る と 考 え ら れ た 。

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5.産卵個体の性質と繁殖形質の間の相関関係の、後鰓類全般における普遍性     ブドウガイで見られる様な産卵個体の齢と卵サイズ、卵数の間の負の相関 関係は、後鰓類の別の種でも断片的な報告がある。しかし、この傾向は後鰓類全 般で必ずしも普遍的ではない。プドウガイに見られる繁殖形質の変異が、Begon

&Parkerの最適繁殖投資モデルによって説明できると仮定すると、後鰓類の繁殖 投資様式は、種ごとの生活様式に依存して異なったものになることが予想され る。その中でも特に重要になるのは、利用する餌の時空間変動と、寿命に占める 産卵期間の長さである。

    これまで得られている後鰓類の生活史に関する情報を検討した結果、後鰓 類の種間の繁殖投資様式の違いは、利用する餌の時空間変動や寿命に占める産卵 期間の長さといった特徴によって説明できることが支持された。この予測の妥当 性は、本研究のような情報をより幅広しゝ種で明らかにすることによって検証する ことが出来る。

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学位論文審査の要旨 主 査    教授    中尾    繁 副 査    教授    尼岡邦夫 副査   助教授    五嶋聖治

     学位論文題名

ブドウガイHaloa jap07zica(PILSBRY) の繁殖形質 の個体群内変異に関する生態学的研究

  本研究は後鰓類ブドウガイの個体群における繁殖形質(卵数や卵サイズ)変異の 発生・維持機構と、その適応的意義を論じたものである。野外調査と野外ケ ‑、ン実 験 、 お よ び 室 内 飼 育 実 験 か ら 得 ら れ た 結 果 は 以 下 の よ う で あ る 。   1)本 種の 産卵 期は4月下 旬か ら7月中 旬、盛 期は5月 中旬 で、個体の産卵回数は     約4回で ある 。軟 体部 重量 の増大は2月から4月で、餌海藻の増大と一致する。

  2)卯塊に含まれる卵サイズと数は、卵塊ごとに異なり、また、産卵期の遅いもの     ほ ど 減 少 傾 向 を 示 し た 。 大 型 卵 に 由 来 す る 幼 生 ほ ど 適 応 度 が 高 い 。   3)親サイズは卵塊の卵サイズに正の、親の齢は負の相関を示し、親の齢は卵数と     も負の相関を示した。同一親の生む卵は最初のものが卵数、卵サイズとも最も     大きぃ。

  4)生活史の繁殖スケ、ンュールと親サイズの関係から、野外と室内実験の両方で     1)〜3)の結果が支持され、また、蠱耳量が多いほど産卵数が多いが、卯サイズ     と負耳量とは関係がない。

    ブ ドウ ガイは 親個 体が 生存 して いる 確率 の高 い産 卵初 期に、より多い繁殖投     資資源を配布していると考えられる。餌の利用可能な時空間分布と寿命に占め     る産卵期間の長さで特徴づけられる生活様式と、親の性質が繁殖形質の変異を     生ずると考えられ、そのような繁殖投資様式tよBegon and Parker(1986)の最適繁     殖投資モデルで説明できるとしている。

    本 研究 は生態 学的 な興 味あ る新 知見 を提 供す ると とも に、この結果は今後栽

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培漁業における捶苗生産にも応用できる可能性がある。よって、審査員一同は、

本研究が学位(水産学博士)にミ妾当すると判定した。

参照

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