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学位論文題名Ecological studies on Northern Goshawks and Sparrowhawks during breeding seasons on the Ishikari Plain,Hokkaido,Japan

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Academic year: 2021

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博 士 ( 地 球 環 境 科 学 ) 安 部 文 子

    

学位論文題名

Ecological studies on Northern Goshawks and     Sparrowhawks during breeding seasons     on the Ishikari Plain

,Hokkaido ,Japan

(北海道石狩平野における繁殖期のオオタカとハイタカの生態学的研究)

学位論文内容の要旨

  生物にとって繁殖場所や採餌場所、餌資源などは個体の適応度を決定する重要な要因である。猛禽類は一 般的に寿命が長く、大きな行動圏を持っため、自身の生存率や繁殖成功率、生涯の産子数などが最大になる ように生息場所を選択していると考えられる。近年では、人間の生活域の拡大により、猛禽類の生息環境も 変化してきている。林業施行や宅地開発などによる営巣地となる林の消失や狩り場環境の改変などによって 生息数が減少している種がいる一方で、本来の生息地とは異なる人為的な環境に適応している種も見られる。

  オオ夕力(Accipiter gentilis)とハイタカ仇.nむ恥)はハイタカ属に属する近縁種で、本来連続した森林に 生息する森林性の猛禽類であるが、近年農耕地などの人為的な環境でも繁殖が確認されるようになってきた。

北海道の石狩平野ではこの二種が農耕地内に点在する孤立林や防風林などで隣接して営巣している。本研究 では二種の営巣環境や採餌場所、餌資源を調べ、そゎぞゎの種にとってこのような人為的な環境での生息に 必要な要因を明らかにすることを目的とした。

  調査地は石狩平野の農耕地帯で、畑地や水田が約70%を占めている。調査は2002‐2005年の繁殖期に行っ た。5月上ー下旬に林を踏査し、繁殖している巣を発見した場合はその後もモ二夕リングを続け、繁殖の成 功不成功、可能であれば一腹卵数や巣立ち雛数についても記録した。

  調査期間中にオオ夕カとハイ夕カの営巣地がそれぞれ43カ所と26力所確認された。オオタカとハイ夕カ の繁殖成功率はそれ ぞれ80%(8ッ105巣)と54%(2餌8巣)であり、平均一腹卵数はそれぞれ33卵(60 巣 ) と43卵 (34巣 ) で あ っ た 。 こ れ は 森 林 環 境 で 行 わ れ た 研 究 の 報 告 に 近 い 値 で あ っ た 。   営巣環境の特徴を明らかにするために、各14巣について営巣木およびその周辺プ口ット(0.033ha)内の 樹木夕イプや樹種、胸高直径、樹高、営巣木から林縁や民家、道路までの距離を計測した。また、非営巣林 からランダムに25力所をコントロールとして抽出し、営巣地と同様の調査を行った。その結果、オオタカ は特定の森林夕イプヘの選好性を示さず、周辺の樹木の中で胸高直径が最大に近いものを営巣木として利用 していることが分かった。これはオオ夕カの巣が比較的大きく、安定して巣を支えることの出来る太い枝を 必要とするためと考えられる。一方、ハイタカは胸高直径断面積が大きい常緑針葉樹林を選好し、営巣木と しては常緑針葉樹のみを利用していた。このような林は飛行空間が少なく見通しも利きにくいため、捕食者 であるオオ夕カを回避することが出来ると考えられる。以上のことから、オオタカは巣の安定性を重視して、

ハイタカは捕食者の回避を重視して営巣地を選択していると思われる。また、両種ともに民家からは有意に 離れて営巣していた。このことから、農耕地に点在する防風林や孤立林という人為的な環境に生息しながら も 、 営 巣 地 と し て は 直 接 的 な 人 間 活 動 の 影 響 を 受 け る 場 所 を 避 け て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。   育雛期の行動圏を推定し、その内部の環境利用や採餌環境を明らかにするために、ラジオテレメト1」ー調 査を行った。6月中旬から7月中旬に繁殖個体を捕獲し、バックパック型の発信器を装着した。合計でオオ

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夕 カ19個 体 (♂ 〓101早〓9) 、ハ イタカ18個体(cl=7, ♀〓11)の追 跡を行 った。 追跡は 発信 器の故 障や個 体 が大 き く 移 動 した こ と に よ って追 跡が不 可能に なら ない限 り、幼 鳥が巣 の周 辺から 分散し 始める8月 下旬 ま で行 っ た 。 最 外郭 法(Minimum Convex Popn冫 に よっ て 推 定 さ れた 行 動 圏 面 積 はオ オ タ カ の 雄で1214

(士SD5.4)kmう、雌で14.2QSD914)kIn2、ハイ夕カの雄で14.2(士SD8.9)km2、雌で19.2(土SD5.9)km2 で あっ た 。種間 および 同種の 雌雄 間で行 動圏の サイズ に有意 な差 は見ら れなか った。 行動 圏のサ イズは 餌資 源 量や 採 餌環境 の質に よって 決定 され、 餌条件 が良い ほど行 動圏 が小さ くなる ことが 知ら れてい る。森 林の 分 断化 は 多くの 場合そ こに生 息す る動物 の種数 や個体 数の減 少を 招くと 考えら れてい る。 しかし 、今回 得ら れ た分 断 化され た環境 におけ るオ オタカ とハイ タカの 行動圏 サイ ズは、 連続し た森林 地帯 で行わ れた先 行研 究 と比 較 しても 極端に 大きい もの ではな かった 。この ことか ら、 本調査 地の採 餌環境 はそ れほど 悪くな いと 思 われ る 。採餌 行動は 両種と もに 林内、 農耕地 、林縁 部など で多 く記録 され、 そゎ以 外に も民家 敷地内 の庭 木や牛 舎など 、よ り人間 活動に 近い場 所で も確認 された 。

  餌 資 源 を 調べ る た め に 、 繁殖 し て い る オオ 夕 カ と ハイタ カの巣 (各3巣) に小型CCDカ メラ を設置 して、

育 雛期 間 中 に 巣 に運 ぱ れ て く る餌の 種類や サイズ を記 録した 。両種 ともに 日の 出から 日の入 りまで の3時台 か ら19時 台 を通 し て 巣 へ の 餌の 搬 入 が 見 られ 、 餌 の 大部分 が鳥類 であっ た。餌 のサ イズ構 成には 種間で 違 い が見 ら れ、オ オ夕カ がスズ メ大 から大 きいも のでは ハト大 やカ ラス大 の餌を 巣に運 んで きたの に対し て、

ハイタ カでは ほと んどが ムクド リ大以 下の 餌であ った。 この餌 サイズ の違 いはオ オ夕力 (体重 :♂〓約650& 早 エ約950g) とハ イ夕力 (♂〓 約150g, 早〓約300g)の 体サイ ズの違 いを 反映し ている と考え られ る。両 種 と もに 餌 動物と して森 林性の 鳥類 以外に 、スズ メやム クドり など 比較的 人の生 活圏に 近い 環境に 生息す る種 も記録 された 。

  本 調 査地 におけ るオオ 夕カ とハイ 夕カは 、営巣 場所 となる 林が著 しく分 断化さ れて いるた め、限 られた 資 源 の中 か らそゎ ぞれの 種の要 求に あった 樹木や 林分を 選んで 営巣 せざる を得な いとい う制 限があ るもの の、

人 為的 な 環境を 営巣場 所や採 餌場 所とし て利用 し、農 耕地環 境に 生息す る動物 を捕る こと で、人 間の生 息域 に 進出 し てきた と考え られる 。し かし農 耕地や 防風林 といっ た環 境は人 間活動 の影響 を受 けやす く、簡 単に 環境の 改変や 消失 カ鍵! こる可 能性の 高い 不安定 な生息 地であ る。こ のため、平野部の農耕地帯に生息するオ オ タカ と ハイタ カの保 護管理 を行 う上で は、本 研究の 成果を ふま えて営 巣地と なり得 る林 分構造 や採餌 場所 を管理 してい くこ とが必 要であ ると考 えら れる。

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学位論文審査の要旨

主査

  

教授   東   正剛 副査

  

教授   岩熊敏 夫

副査

  

名誉教授   藤 巻裕蔵(帯 広畜産大学)

副 査

  

教 授

  

上 田 恵 介 ( 立 教 大 学 )

    

学位論文題名

Ecological studies on Northern Goshawks and     Sparrowhawks during breeding seasons     on the Ishikari Plain

,Hokkaido ,Japan

(北海道石狩平野における繁殖期のオオタカとハイタカの生態学的研究)

  

猛禽類は最上位の栄養段 階に属する鳥類であり、同所的に分布する近縁種問には激しい 競争があると予想されるが、北海道の石狩平野では、同じハイ夕力属Acc 駟f ぬr で鳥類食で あるオオタカとハイ夕カが ほぽ同所的に生息している。一般に、オオタカは山麓などの連 続した森林を好み、ハイ夕 カはやや開けた環境を好むと考えられてきたが、石狩平野では オオタカも開放環境に進出 しており、2 種の同所性が実現している。この2 種はヨーロッバ にも広く分布しており、個 別の研究例は少なくないが、開放環境での同所性に関する研究 は本研究が初めての試みと 評価できる。

  

申請者は、特に行動圏、 食性、営巣環境に注目して2 種の生態比較を行うとともに、猛 禽類にみられる逆性的二型 (雌が大きく、雄が小さい)について、採餌分業仮説の立場か ら考察している。まず、オ オ夕力19 個体(雄10 、雌9 ) とハイ夕力18 個体(雄7 、雌11 ) をテレメトリー法によって 追跡し、1 )行動圏サイズは いずれの種においても雄より雌の 方でやや大きいが、統計的 な有意差は認められない、2 )ハイタカは小型(スズメなど)

から中型(ハトなど)の鳥 類、オオタカは小型から大型(カモなど)まで様々なサイズの 鳥類を捕獲する、3 )いずれの種のべアーにおいても、雌の方が雄よりむ遠くまで出かけ、

より大きな鳥類をハンテイ ングする傾向が認められる、4 )ハンティングスタイルを種間 で比較したところ、ハイタ カは追跡による空中捕獲が多いのに対し、オオ夕カは待ち伏せ による地上付近での捕獲が ほとんどである、ことなどを明らかにした。ヨーロッパ(両種 が分布)や北米(オオタカ のみ分布)でもテレメトリー法による研究はなされているが、

同じ地域内で両種および雌 雄の行動圏を比較した研究例はなく、空間利用を平面的でなく 立体的に解析した例もなく 、方法および成果の独創性は高い。

  

次に、オオタカの3 巣とハイ夕カの3 巣にピデオカメラを設置して雛への給餌行動と餌

    

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(4)

メニュ ーを解析 し、いずれの種においても、1 )育雛期の初期は雌が巣に留まり、雄が捕 らえて きた餌を 受け取って雛に給餌する、

2

)後期になると雌も時々ハンテイングに出か けるよ うになる が、雛に直接餌を渡すのはほとんど雌である、3 )雛に与える獲物はテレ メトリー法で明らかとなった獲物よりも有意に小さしゝ、ことなどを明らかにしている。ま た、育 雛期の中 期に雄 が死亡し たオオ 夕カの

1

巣につ いて詳 しい解析を行い、1 )雛2 羽 の うち

1

羽は死 亡し、生 き残っ た1 羽 も巣立 ちが通常 よりも約

1

週 間遅れた 、2 ) 前期は 雄のみ、後期は雌のみでハンテイングを行ったことになるが、餌の搬入頻度は前期で有意 に多い、゛3 )餌のサイズは後期で有意に大きく、雌による中・大型鳥類の捕獲を反映した が、正常巣では前期と後期で有意差が認められない、ことなどを明らかにした。これらの 結果から、育雛期のハンテイングは主に雄が行い、後期における雌のハンテイングは補助 的なものに過ぎないと思われる。小型の鳥類は巣の周辺でも数多く捕獲できることから、

体サイズの小さい雄がハンテイングを担当し、大きな雌が巣の防衛を担当することはこれ らの猛禽類にとって有利と考えられるので、今回の研究結果は、猛禽類の逆性的二型が育 雛期の分業に起因するという説を支持しているというのが申請者の結論である。このよう な仮説の検証にはさらなる研究が必要ではあるが、観察途中に雄が死亡するという偶然の 出 来 事 を 上 手 く 利 用 し た 今 回 の 解 析 結 果 は、 先 行 研究 に 比 べて も 説 得 カが あ る 。

  

最後に、ほぼ同所的に営巣する14 組のオオ夕カとハイタカについて、営巣地環境の詳細 な比較 解析を行 い、

1

)ハイタカは常緑針葉樹林を好み、マツやトウヒの枝上でしか営巣 しないのに対し、オオタカは多様なタイプの森林を好み、色々な樹種の枝上で営巣する、

2

) オオタカ の営巣木は周辺の樹木に比べてほぼ最大級の胸高直径を示すのに対し、ハイ タカの 営巣木の 胸高直径は最大木より有意に小さい、

3

)従って、営巣木の胸高直径はオ オタカで大きいが、営巣地の樹木密度はハイ夕カで高い、ことなどを明らかにしている。

ハイタカにとってオオタカは捕食者であるが、樹木密度の高い林は体サイズの小さいハイ 夕カにとって有利であり、大きく重い巣を造るオオ夕カにとっては太い木を営巣木として 選ぶこ とは重要 と考え られる。 以上の 結果から、申請者は、1 )餌メニューの違い、2 ) 採餌に おけるハ ンテイングスタイルと空間利用の違い、3 )営巣林夕イプと営巣木選好性 の違い などが、 石狩平野における2 種の共存を可能にしていると結論づけている。これら のうち 、

1

) と

3

) につい ては2 種を個 別に研究 した先行 研究か ら予想された要因である が、採餌におけるハンテイングスタイルと空間利用の違いの重要性に着目した例はなく、

独創性の高い成果である。

  

審査委員一同は、これらの成果を高く評価し、また研究者として誠実かっ熱心であり、

大学院博士課程における研鑽や修得単位などもあわせて、申請者が博士(地球環境科学)

の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した。

‑ 110

参照

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