博士(獣医学)李 愼曉 学位論文題名
IvIorphological and genetic analyses on the cystic rete ovarii in IVIRL7R/IpJ mice
(MRL/MpJ マウスにおける卵巣網嚢胞の形態学・遺伝学的解析)
学位論文内容の要旨
卵巣嚢胞は哺乳類全般に共通して出現する形態変化であり、卵胞、黄体、表面上皮ならびに卵 巣網に由来することが知られ、いずれも不妊症の一因になりうる。卵巣嚢胞の原因は、主に全身 あるいは局所の内分泌異常によるが、自己免疫疾患モデルであるMRL マウスは、卵巣網由来の嚢 胞を高率に発症し、免疫機構の破綻も一因になると考えられる。
卵巣嚢胞の形態的特徴およぴ原因因子の把握は診断ならぴに治療に重要である。本研究のゴー ルはMRL マウス卵巣網嚢胞の解析を通じてヒトを含めた動物の本症を克服することである。その ため、嚢胞の由来を精査し、原因遺伝子座の同定を試みた。第1 章では「MRL マウス卵巣網嚢胞 の形成過程に関する形態学的解析」を行い、立体構造の把握に努めた。第2 章では「戻し交配系 を 用いたMRL マウス卵巣網嚢胞の責任遺伝子座解析」を行い、候補遺伝子座mroc を発見した。
第 3 章で は「 F2 交 雑系を用 いた MRL マウス卵巣網嚢胞の責任遺伝子座解析」を行い、候補遺伝 子座mroc2 を発見した。
卵巣網は胎子期の中腎管およぴ中腎細管の遺残として知られ、生後、加齢に伴い拡張し嚢胞を 形 成する特 徴がヒ トを含め た多く の動物種に共通する。第1 章では、走査電子頭微鏡(SEM) 観 察の他、2 週齢から 12 ケ月齢の MRL マウス卵巣および卵巣脂肪体のへマトキシリン染色ホールマ ウント標本を作製し、B6 マウスの構造と比較した。
B6 マウスにおける卵巣網は、卵巣脂肪体に位置する卵巣外卵巣網、卵巣門から卵巣髄質に位 置する卵巣内卵巣網、およびそれらを結ぶ介在卵巣網に分けられ、曲細管状の卵巣外卵巣網は卵 巣周囲脂肪組織を走行し、加齢による形態変化は認められなかった。一方、MRL マウスの卵巣外 卵巣網は単一細管、拡張した細管、およぴ孤立細管など多形性を示し、卵巣実質に大型嚢胞を形 成している個体ほど、卵巣外卵巣網の細管構造が単純化していた。SEM 観察により、MRL マウス の卵巣網嚢胞表面には微絨毛細胞(I 型)、線毛細胞(n 型)、および1‑2 本の長線毛を有する細胞
(m 型)が認められた。さらに拡張が進行した卵巣網上皮細胞には細胞増殖像が認められず、卵
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巣 外 卵 巣 網 に 特 徴 的 ナ ょ 線 毛 細 胞 の 集 塊 が 嚢 胞 壁 に 出 現 す る こ と か ら 、 卵 巣 網 嚢 胞 の 形 成 は 卵 巣 外 卵 巣 網 の 二 次 的 侵 入 に 起 因 す る こ と が 見 出 さ れ た 。
第2章 で は 、MRLマ ウ ス に お け る 卵 巣 網 嚢 胞 発 症 の 原 因 遺 伝 子 座 を 決 定 す る た め 、MRLとB6 問 の 戻 し 交 配 群213例 を 作 出 し 、 嚢 胞 の 周 径 を 量 的 形 質 と し てQTL解 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 第 3番(21.73‑35.01cM)、 第4番(52.81 cM) 、 第6番 (27.41cM) お よ ぴ 、 第11番 染 色 体 (54.34cM) に お い てsl饗estivcレ ベ ル (u峪 =6.5) を 超 え る ピ ー ク が 認 め ら れ た 。 さ ら に 、 第14番 染 色 体
(33.21・37.26cM)にs蜘丘cantレ ベル (LRS〓11.9)を 超え る ピー クが 認 めら れ、 当 遺伝 子座 をm朋c と 命 名 し た 。 特 に 、 第4番 染 色 体 と 第14番 染 色 体 の ピ ー ク 領 域 ら の 遺 伝 型 は 高 い 相 関 を 示 し 伊 く O.00001) 、MRLマ ウ ス に お け る 卵 巣 網 嚢 胞 は 複 数 の 遺 伝 子 座 の 影 響 下 で 発 症 す る 多 因 子 疾 患 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。
第3章 で は 、 卵 巣 網 嚢 胞 発 症 の 原 因 遺 伝 子 座 を さ ら に 精 査 す る た めF2交 雑 系113例 を 用 い て QTL解 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 第6番 染 色 体 (32.53cM) にs迺 虹 丘cantレ ベ ル を 超 え る ピ ー ク
(LRS=18.5) が 認 め ら れ 、 当 遺 伝 子 座 をm朋 口 と 命 名 し た 。
本 研 究 の 結 諭 と し て 、 著 者 はMRLマ ウ ス 卵 巣 網 嚢 胞 を 形 態 的 に 解 析 し 卵 巣 外 卵 巣 網 が 卵 巣 内 に 引 き 込 ま れ て 形 成 さ れ る こ と を 明 ら か に し た 。 さ ら に 、 嚢 胞 形 成 に 関 与 す る 責 任 遺 伝 子 座 と し て 第14番 染 色 体 のm朋cお よ び 第6番 染 色 体 のm朋 口 を 発 見 し た 。 今 後 、 コ ン ジ ェ ニ ッ ク マ ウ ス を 作 出 し 、 卵 巣 網 嚢 胞 発 症 を 検 証 す る こ と で 所mcお よ び 所 閉 口 の 候 補 遺 伝 子 を 明 ら か に す る こ と が で き る 。 こ れ ら 一 連 の 研 究 成 果 が 自 己 免 疫 疾 患 に 起 因 す る 不 妊 症 の 克 服 に 貢 献 す る こ と を 期 待 す る 。
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学 位 論 文 審 査 の 要 旨
主 査 副 査 副 査 副 査
教授 教授 教授 准教授
昆 高橋 橋本 佐々木
学 位 論 文 題 名
泰 寛 芳 幸 善 春 宣 哉
rvIorphological and genetic analyses on the cystic rete ●●
ovar11inMRL /MpJmiCe
(MRL/MpJ マウスにおける卵巣網嚢胞の形態学・遺伝学的解析)
卵巣 嚢 胞は 哺乳 類 全般 に共 通 して 出現 す る形 態変 化 であ り、 卵 胞、 黄体、表面上 皮ならびに卵 巣 網 に 由 来 す る 。 自 己 免 疫 疾 患 モ デ ル で あ るMRLマウ スは 卵 巣網 由来 の 嚢胞 を高 率 に発 症す る こ と か ら 、 免 疫 機 構 の 破 綻 も そ の 原 因 に な ると 考え ら れる 。本 研 究の ゴー ル は、MRLマ ウス 卵 巣 網嚢 胞 の解 析を 通 じて ヒト を 含め た動 物 の本 症を 克 服す るこ と であ る。そのため 、嚢胞の由来 を精 査し、原因遺伝子座 の同定を試みた。
第1章 で は 「MRLマ ウ ス 卵 巣 網 嚢 胞 の 形 成 過 程 に 関 す る 形 態 学 的解 析 」を 行い 、 立体 構造 の 把 握 に 努 め た 。 そ の 結 果 、MRLマ ウ ス の 卵 巣網 は 卵巣 外卵 巣 網、 卵巣 内 卵巣 網お よ び介 在卵 巣 網 に分 け られ 、卵 巣 外卵 巣網 が 二次 的に 卵 巣内 に侵 入 する こと で 嚢胞 形成に至るこ とが見出され た。
第2章 で は 「 戻 し 交 配 系 を 用 い たMRLマ ウ ス 卵 巣 網 嚢 胞 の 責 任 遺伝 子 座解 析」 を 行っ た。 そ の結 果、第3番(21.73‑3 5.01 cM)、第4番(52.81c均、第6番(27.41cM)および、第11番(54134 cM)染 色 体に おい てsuggesdveレベ ル (I」RS=6.5) を超 える ピ ーク が認められた 。さらに、第 14番 染色体(33.21‐37.26cM)にsigmflca11tレベ ル(LRS=11.9)を超えるピークが認められ、当 遺 伝 子 座 をm朋cと 命 名 し た 。 特 に 、 第4番 染色 体 と第14番 染 色体 のピ ー ク領 域の 遺 伝型 は高 い 相 関を 示 し(PくO.00001)、MRLマ ウス に おけ る卵 巣 網嚢 胞は 複 数の 遺伝子座の影 響下で発症す る多 因子疾患であること が示唆された。
第3章 で は 「F2交 雑 系 を 用 い たMRLマ ウ ス 卵 巣 網 嚢 胞 の 責 任 遺 伝子 座 解析 」を 行 った 。そ の 結果 、第6番染 色体(32.53cM) にsigni丘caIItレベルを超えるピーク(LI峪=18.5)が認められ、当 遺伝 子座をmゆ 口と命名した。
本 研 究 の 結 論 と し て 、 著 者 はMRLマ ウ ス 卵巣 網 嚢胞 を形 態 的に 解析 し 、卵 巣外 卵 巣網 が卵 巣 内 に二 次 的に 侵入 し て形 成さ れ るこ とを 明 らか にし た 。さ らに 、 嚢胞 形成に関与す る責任遺伝子 座 と し て 第14番 染 色 体 のm脚 お よ び 第6番 染 色 体 の 所mc2を 発 見 し た 。 こ れ ら 一 連 の 研 究 は 、 卵 巣網 嚢 胞の 原因 解 明に 貢献 す る優 れた 成 果で ある 。 よっ て、 審 査委 員一同は、上 記博士論文提 出 者 李 愼 曉 氏 の 博 士 論 文 は 、 北 海 道 大 学 大 学 院 獣 医 学 研 究 科 規 程 第6条 の 規 定 に よ る本 研究科の行う博士論 文の審査等に合格 と認めた。
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