博 士 ( 理 学 ) 中 野 渡 拓 也
学位論文題名
Bidecadal and quas
ト
decadal preclpitationVariability OVerthePaCi丘CanditSadjaCentregion
(太平洋とその周辺領域における降水量の二十年と準十年変動)
学位論文内容の要旨
近 年、十 年〜百年 スケール の気候 変動が大 きな注 目を集め ている 。これらの十年〜百年 の 変動は、 いくっ かの主要な時間スケールを持つことが提案されている。その主要なものに、
二 十年と準 十年変 動が挙げ られる 。二十変 動は、わ が国の 気候にも 影響の大きなアリューシ ヤ ン低気圧 に活動 の中心を 持って いること が知られ ており 、日本の 気候変動を議論する上で も 興味深い 。一方 、準十年 変動は 、熱帯太 平洋の海 洋表面 温度に変 動の極大が確認されてい る 。従来、 二十年 と準十年 の時間 スケール を持つ変 動に着 目して、 気温・海洋表面温度・気 圧 などは全 球規模 の解析が なされ ていたが 、人間生 活に密 接に関わ る降水量については、全 球 規模の解 析はも とより、 北太平 洋規模の 解析すら 行われ ていなか った。なぜなら、降水デ ー タは海表 面温度 等に比べ て信頼 できるデ ータが少 ないた め、二十 年や準十年の時間スケー ルの変動を統計的に議論するのに不十分であったからである。
そ こで、 既存の独 立な降水 データ を複数併 用する ことで、 それぞ れのデータの持つ欠点 を 補い合い 、結果 の信頼性 を向上 させるこ とで、降 水量の 準十年と 二十年変動について、全 球 規模の空 間・時 間構造を 明らか にし、さ らにその 降水量 変動が大 気循環場の変動とどう結 び ついてい るか、 また周辺 地域に どのよう な影響を 与える のかをデ ータ解析の立場から解明 することを目的として研究に取り組んだ。
ま ず,二 十年の時 間スケー ルを持 つ降水量 変動の 空間構造 を明ら かにした。降水量デー タ で最も信 頼が置 ける陸上 の雨量 計観測を 用い、太 平洋周 辺の様々 な地点の冬季における降 水 量変動が 、アリ ューシャ ン低気 圧と共通 する二十 年変動 を示すこ とを、相関およびコヒー レ ンス解析 で明ら かにした 。コヒ ーレンス は統計的 に99%有 意なピー クが,二十年の周期帯 に 見られた .特に 、ハワイと東中国/南日本では、アリューシャン低気圧に現れている二十年 周 期と同じ 変動が 二十世紀 を通じ て顕著で ある。雨 量計デ ータでは 得られない海上を含めた 全 球規模の 空間分 布につい ては衛 星データ と再解析 データ の解析に よって推定した。その結 果 、 両 者 に 共 通 し た 二 十 年 周 期 の 降 水 変 動 が 北 太 平 洋 上 に 見 ら れ 、 北 太 平 洋 亜 熱 帯 (10°‑300N)と北部(500―70°N)とが同位相、北太平洋中緯度(300−50゜N)が逆位相の極性を示す 構 造 が 得 ら れ た 。 こ の 空 間 構 造 は 雨 量 計 デ ー タ の 解 析 結 果 と も 整 合 的 で あ る 。 次 に、再 解析デー タを用い て降水 量の二十 年変動 がどのよ うに大 気循環の変動と関係し
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て いる のか を, 水蒸気フラックス 解析によって明らかにした。前述のように再解析データ で 得 られ た二 十年 スケールの降水量 変動の空間構造が、他のデータで得られるものと一致す る こ とは 、再 解析 データの降水量変 動が信頼できるものであることを意味し、同データの水 蒸 気 フラ ック ス解 析が 有益 な情 報を 与え る。 まず、北太平洋に おける3つの降水極性構造は 水 蒸 気フ ラッ クス の収束とほばっり あっており、その場の蒸発の寄与は少ない。北部北太平 洋 で は、 月平 均よ りも短い擾乱に伴 う水蒸気フラックス(擾乱成分)の寄与が最も大きい。 こ の 擾乱 成分 は、 アリューシヤン低 気圧が強まる(弱まる)時に、北向きの水蒸気フラック ス が 弱ま る( 強ま る)ことに関係し ている。一方、北太平洋中緯度と亜熱帯では、月平均よ り も 長い 時間 スケ ールの変動に伴う 水蒸気フラックス(平均成分)で説明される。北太平洋 中 緯 度で の平 均成 分は、アリューシ ャン低気圧が強まる(弱まる)ことで、南西風が強化( 弱 ま る) する こと に対応している。 北太平洋亜熱帯での平均成分は、アリューシヤン低気圧 が 強 まる (弱 まる )ことで発散風が 強化(弱化)することに関連している。この発散風の変 動 は ハワ イを 含む 北太平洋亜熱帯に おける冬季の降水変動にとって、二十年スケールだけで な く、経年スケールの変動 にとっても重要な役割を担う。
一 方、 準十 年の 時間 スケ ール をも つ降 水量変動の空間構 造は二十年とは異なり2つの 季 節 (冬 季と 秋季 )に特徴付けられ る。陸上の雨量計観測を用い、太平洋周辺では北アメリ カ 南西部で冬季に、熱帯太 平洋西部/オーストラリア北部において秋季の降水量が、熱帯太平洋 の 海洋 表面 温度 と共通する準十年 変動を示すことを、相関およびコヒーレンス解析で明ら か に した 。雨 量計 データでは得られ ない海上を含めた全球規模の空間分布については衛星デ ー タ と再 解析 デー タの解析によって 推定した。その結果、両者に共通した準十年周期の降水 変 動が太平洋上に見られ、 冬季における北太平洋亜熱帯東部(10°―300N)では熱帯太平洋の海表 面温度と同位相の、秋季 における熱帯太平洋西部/オーストラリア北部では逆位相の極性を示 す 構造 が得 られ た。この空間構造 は雨量計データの解析結果とも整合的である。秋季にお け る熱帯太平洋西部/オー ストラリア北部における降水変動は、経年スケールのEl Nino/Southem Oscillation (ENSO)に伴 うものと類似した特長を示すものの、冬季における北太平洋亜熱帯東 部における降水変動はそ れとは異なる構造を示す。
次 に、 準十 年変動のシグナル が亜表層水温偏差として、熱帯太平洋西部から東部に向 か って伝播する特徴を利用 、して、数年先の降水量の予測可能性について調べた。その結果、北 ア メリ カ南 西部 における冬季の降 水量と熱帯太平洋中央部における亜表層温度の間には約 ニ 年 の遅 延関 係が あることが分かっ た。この遅延関係を利用し、北アメリカ南西部における 降 水 量の 予測 スキ ルを見積もった結 果、一年前の亜表層温度場から、北アメリカ南西部にお け る 降水 量の 分散 のおよそ10%が説 明されることがわかった。この準十年変動によって説明 さ れる分散の割合はENSOに よるものと同程度の大きさを持つ。
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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 , 主査
副査 副査 副査 副査
助教 授 教授 教授 教授 助教 授
見 延 林 播 磨屋 山 崎 谷 本
庄士郎 祥介 敏生
孝治(大学院地球環境科学研究科)
陽一(大学院地球環境科学研究科)
学位論文題名
Bidecadal and quas
ト
decadal preclpitationVariability OVerthePaCi丘
CanditSadjaCentregion
(太平洋とその周辺領域における降水量の二十年と準十年変動)
近 年 , 十 年 〜 百 年 ス ケ ー ル の 気 候 変 動 が 大 き な 注 目 を 集 め て い る . こ れ ら の 十 年 〜 百 年 ス ゲ ー ル の 変 動 は , い く っ か の 主 要 な 時 間 ス ケ ー ル を 持 つ こ と が 提 案 さ れ て お り , 二 十 年 と 準 十 年 変 動 は そ の 主 要 な も の で あ る . 従 来 , 二 十 年 と 準 十 年 の 時 間 ス ケ ー ル を 持 つ 変 動 に 着 目 し て , 気 温 ・ 海 洋 表 面温 度 ・ 気 圧な ど は 全 球規 模 の 解 析が な さ れ てい た が , 人 間 生 活 に 密 接 に 関 わ る 降 水 量 に つ い て は , デ ー タ の 信 頼 性 ・ 期 間 な ど の 問 題 に よ り , こ れ ま で 全 球 規 模 の 解 析 は も と よ り , 北 太 平 洋 規 模 の 解 析 す ら 行 わ れ て い な か っ た . 本 研 究 は , 降 水 量 の 二 十 年 と 準 十 年 変 動 に 着 目 し て , 一 連 の デ ー タ 解 析 を 行 っ た も の で あ る .
ま ず , 本 研 究 で は 二 十 年 と 準 十 年 の 時 間 ス ケ ー ル を 持 つ 降 水 量 変 動 の 空 間 構 造 を 明 ら か に し た . 降 水 量 デ ー タ で 最 も デ ー タ の 有 効 な 期 間 が 長 く , 信 頼 が 置 け る 陸 上 の 雨 量 計 観 測 に よ っ て 統 計 的 な 有 意 性 を 確 認 し , 全 球 の 情 報 が 得 ら れ る 再 解 析 デ ー タ と 衛 星 観 測 デ ー タ か ら 空 間 構 造 を 求 め た . 二 十 年 変 動 で は , 太 平 洋 周 辺 の 様 々 な 地 点 の 冬 季 に お け る 降 水 量 変 動 が , ア リ ュ ー シ ャ ン 低 気 圧 と 共 通 す る 変 化 を 示 す こ と を , 相 関 及 び コ ヒ ー レ ン ス 解 析 で 明 ら か に し た . 特 に ,ハ ワ イ と 東中 国 / 南 日本 で は , アリ ュ ー シ ャン 低 気 圧 に 現 れ て い る 二 十 年 変 動 が 二 十 世 紀 を 通 じ て 顕 著 で あ る . 衛 星 デ ー タ と 再 解 析 デ ー タ に 共 通 し た 二 十 年 周 期 の 降 水 変 動 が 北 太 平 洋 上 に 見 ら れ , 北 太 平 洋 亜 熱 帯(100―300N) と 北 部(500ー700N)と が 同 位 相 , 北 太 平 洋 中 緯 度 (3ぴ ―‑500N)が 逆 位 相 の 極 陸 を 示 す 3パ ッ チ 構 造 が 得 ら れ た . こ の 空 間 構 造 は 雨 量 計 デ ー タ の 解 析 結 果 と も 整 合 的 で あ る . 準 十 年 変 動 の 解 析 に は , 指 標 時 系 列 に エ ル ニ ー ニ ヨ 現 象 の 解 析 に よ く 利 用 さ れ る 熱 帯 の 海 洋 表 面 水 温 を 用 い て , 相 関 ・ コ ヒ ー レ ン ス 解 析 を 行 っ た . そ の 結 果 , 北 太 平 洋 亜 熱 帯
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東部(100―30°N)から北米南西部に大きな正の相関が見られ,エルニーニョとは異なっ て赤道付近では相関が小さぃという特徴が得られた.
次に,再解析データを用いて降水量の二十年変動がどのように大気循環の変動と関係 しているのかを,水収支解析によって明らかにした.北太平洋における3パッチ構造は 水蒸気フラックスの収束とほぼっりあっており,その場の蒸発の寄与は少ない.北太平 洋北部では,月平均よりも短い擾乱に伴う水蒸気フラックス(擾乱成分)が降水変動に 対して最も大きい寄与を持つ.この擾乱成分は,アリューシヤン低気圧が強まる(弱ま る)時に,北向きの水蒸気フラックスが北(南)方に変位することに関係している.一 方,北太平洋中緯度と亜熱帯では,月平均よりも長い時間スケールの変動に伴う水蒸気 フラックス(平均成分)で説明される.北太平洋中緯度での平均成分は,アリューシヤ ン低気圧が強まる(弱まる)ことで,南西風が強化(弱まる)することによって生じて いる.北太平洋亜熱帯での平均成分は,アリューシャン低気圧が強まる(弱まる)こと で発散風が強化(弱化)することに関連している.
最後に,準十年変動のシグナルが亜表層水温偏差として,熱帯太平洋西部から東部に 向かって伝播する特徴を利用して,数年先の降水量の予測可能性について調べた.注目 した領域は前述の解析結果で熱帯太平洋の海表面温度と有意な相関が観測された北ア メリカ南西部における冬季の降水変動である.ラグ相関解析によって,北アメリカ南西 部における冬季の降水量と熱帯太平洋中央部における亜表層温度の間には約二年の遅 延関係があることを見出した.この遅延関係を利用し,北アメリカ南西部における降水 量の予測スキルを亜表層温度場から統計的な手法(相関モラシレ冫で見積もった.この手 法では,冬季北アメリカ南西部における降水量の予測値は,予測される年の前までの亜 表層温度場に対して8〜20年のバンドパスフアルタを掛け,2年ずらしたものから推定 される.この予測値を用いることによって,北アメリカ南西部における生データ降水量 の分散のおよそ10%が説明されることが示された.この準十年変動によって説明され る分散の割合は,ENSOによるものと同程度の大きさを持つ・
これら一連の研究は,十年〜百年スケールの降水量変動研究に,先端的なまた大きな 貢献をしたものと高く評価できる.よって,本論文の著者は,北海道大学博士(理学)
の学位を授与される資格あるものと認める.