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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 浅 井 康 広

     学位論文題名

    Study on the Mechanism of

Co ― seismic Groundwater Level Changes    (地下水位地震応答発生メカニズムに関する研究)

学位論文内容の要旨

  地 震 に 伴 う 地 下 水 位 変 化 の 観 測 例 は 多 く 、 そ れ ら は2っ に 大別 され る。 一 っは 、断 層モ デ ル に よ る 観 測 点 で の 歪 変 化 に 対 す る多 孔質 被圧 帯水 層 のレ スポ ンス で説 明 可能 な水 位変 化 で あ る 。 も う 一 方 は 、 断 層 モ デ ル から 期待 され る歪 変 化で は説 明の 出来 な ぃ水 位変 化で あ る 。 後 者 に 関 す る 近 年 の 研 究 で は 、地 震動 がト リガ ー とな り観 測点 近傍 の 帯水 層中 の透 水 性 が 変 化 、 そ の 間 隙 水 圧 変 化 が 拡 散す ると いう 発生 メ カニ ズム が提 案さ れ てい る。 しか し 、 同 一 観 測 点 に お け る 地 震 動 の 観 測を 行っ てい なぃ か 、ま たは 、あ って も 観測 例が 少な いた め 、ト リガ ーの 性質 が 特定 され たと は言 い 難` `。 また 発 生メ カニ ズムに関しても 、観 測点 周 辺の 地質 構造 およ び 水理 地質 構造 は掘 削 記録 と水 理試 験 から 推測 した情報であっ て、

実際の構造を考慮し たメカニズムではない。

  地 震 に 伴 う 地 下 水 位 変 化 の 検 出 と 、こ れま で定 性的 に しか 示さ れな かっ た 地下 水位 地震 応 答 の ト リ ガ ー の 特 性 、 お よ び 、 観 測点 周辺 の地 質構 造 およ ぴ水 理特 性と 調 和的 な地 下水 位 地 震 応 答 発 生 メ カ ニ ズ ム を 明 ら か にす るこ とを 目的 と して 、岐 阜県 瑞浪 市 の戸 狩地 殻活 動 総 合 観 測 点350m孔(TGR350)に お け る 地 下 水 位 連 続 観 測 を1998年5月 に 開 始 し た 。 そ の 結 果 、2005年6月 の 約7年 間 の 期 間 に 、17例 の 近 地 お よ び 遠 地 地 震 に 応 答 し た 地 下 水位 変 化 ( 地 下 水 位 地 震 応 答 ) を 検 出 し 、そ の変 化は 全て 「 水位 が上 昇」 であ る こと を明 らか にした。

  地 下 水 位 地 震 応 答 の 変 化 の 特 徴 を 把握 する ため に次 の 解析 を行 った 。地 下 水位 連続 記録 に 含 ま れ る 潮 汐 応 答 と 気 圧 応 答 を 潮 汐 解 析 プ ロ グ ラ ムBAYTAP−G(Tamura et al,1991)に よ り 求 め 、 原 記 録 か ら そ れ ら を 差 し 引き ト レン ド を 抽出 した 。次 にこ の トレ ンド を用 い て 、 観 測 さ れ た 全 て の 地 下 水 位 地 震 応 答 の 最 大 変 化(Peak)量 を 求 め 、 地 震 発 生 時 から 一 定 変 化 量(Peak量 、 お よ び 、Peak量 の63.2% ,90%)ま で の 経 過 時 間 と の 関 係 を 調 査 し た 。 そ の 結 果 、 経 過 時 間 は 地 下 水 位 地震 応答 のPeak量 に 比例 する こと が明 ら かに なっ た。

ま た 、 地 下 水 位 地 震 応 答 の 時 間 変 化 につ いて 、時 間軸 をPeakまで の経 過時 間 、振 幅をPeak 量で正規化し比較し た結果、Peakまでの時間変化がほぼ一致していることを明らかにした。このこ とは、地下水位地震 応答を生じさせる発生源が 、ある入カに対して線形応答を持っことを示唆し ている。

  次 に 、 地 下 水 位 地 震 応 答 の う ち 、 同亠 ボア ホー ル内 に おけ る深 部ポ アホ ー ル地 殻変 動連 続 記 録 高 速 サ ン プ リ ン グ1秒 値 記 録 ( 傾 斜 地 震 動 お よ び 歪 地 震動 )が 同時 に 得ら れた2000 年7月 以 降 の9例 に つ い て 、 そ の 最 大 全 振 幅 と そ の 地 下 水 位 地 震 応 答 のPeak量 と の 関 係を 調 査 し た 。 そ の 結 果 、 地 下 水 位 地 震 応答 のPeak量 は傾 斜 地震 動お よび 歪地 震 動の 最大 全振 幅 に 比 例 す る こ と 、 傾 斜 地 震 動 記 録 は歪 地震 動よ り相 関 が強 く、 ある 閾値 以 上の 時に 地下 水位 地 震応 答が 生じ てい る こと が明 らか にな っ た。 この 閾値 の 特徴 を明 らかにするため に、

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Matsumoto and Roeloffs(2003)が榛原観測井(静岡県)で示した震源距離とマグニチュー ド だけで 決められ る地下水位地震応答検出基準をTGR350へ適用した。その結果、TGR350 では榛原観測井とは異なり、基準を超える場合でも地震応答を生じさせなかった地震(非 地 震応答 )が143例あることが判明した。そこで、9例の地震応答時とこれらの非地震応 答時の傾斜地震動記録の最大全振幅を調査した結果、地下水位地震応答は傾斜地震動の最 大全振幅が閾値2 x10―4 radianを超えた場合に生じることが明らかになった。このトリガ ー の特定 は、従来 の同様の研究、ならぴに、低速サンプリング(例えば1分、1時間)の 地殻変動観測では得られなかった新たな知見である。

  TGR350の地下水位地震応答記録を説明する数値モデルとしてRoeloffs (1998)による地 下水位地震応答に関する有限1次元多孔質帯水層中における間隙水圧上昇・拡散モデルの 適 用を行 った。そ の結果、この数値モデルはTGR350の地下水位地震応答記録のPeakまで の変化をよく説明できることが判明した。この数値モデルによって得られた間隙水圧上昇 源の位置と拡がり、および、TGR350周辺における地質構造調査結果および水理試験結果か ら、次のような地下水位地震応答発生メカニズムを新たに提案した。1)TGR350の花崗岩 中350m以浅には、発達した層理や節理から成る帯水層が大別して2箇所存在する。TGR350 の近傍には北北西の走行を持つ地質断層があり、通常、花崗岩中の地下水は、地質断層の 北東側(上流)から南西側(下流;TGR350が位置)へ流動している。地質断層はこれらの 帯水層を破砕しており、通常、破砕箇所は断層粘土や礫が充填され低透水性が維持されて いる。2)近地およぴ遠地地震の地震波の通過によって、閾値を超える傾斜地震動が生じ た場合、破砕箇所を充填している断層粘土およぴ礫が除去され、この箇所の透水性が高く なる。その結果、通常に比べて地質断層を横切る地下水の流動量が増え、下流域の間隙水 圧 が上昇 し、TGR350の 地下水位 が上昇す る。3)地下水位地震応答変化のPeak後、断層 粘土等の移動により日詰まりが生じ、低透水性が回復、地質断層を横切る地下水の流動量 が減少し、TGR350の地下水位は定常状態へ回復する。

  地下水位の回復過程中に、閾値を超える傾斜地震動が観測されたにもかかわらず地震応 答が生じなぃ場合がある。これは、破砕箇所において断層粘土等がすでに除去されている か、十分に日詰まりが進行していなく、地質断層を横切る地下水の流動量に増分が生じな いため、その結果地震応答が生じないと考えられる。また、地震応答のピーク後のトレン ドの差異について、正確な地下水位変化の長期トレンドを把握していなぃにもかかわらず、

その時間変化の正規化の際、地震発生前約10日間の直線トレンドを除去した解析手法に問 題がある可能性と、地下水位地震応答による観測点周辺の水理拡散係数の変化が考えられ る。  ・

  以上のことから、本研究の成果は次のようにまとめられる。@同一深部ボアホール内に おける高速サンプリングによる地殻変動および地下水位の同時観測結果から、地下水位地 震応答を生じさせるトリガーの特定を初めて行った。◎観測点周辺の地質構造調査結果お よび水理学的特性と調和的な地下水位地震応答発生メ、カニズムを初めて明らかにした。

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学位論文審査の要旨

     学位論文題名

    Study on the Mechanism of

Co 一 seismic Groundwater Level Changes    (地下水位地震応答発生メカニズムに関する研究)

  地震に伴う地下水位変化の観測例はこれまでも多くあるが、本研究では、水位応答のト リガー特性を明らかにするために、地震による地殻歪・傾斜と水位の同時観測を岐阜県瑞浪 市 の 戸狩 地 殻 活動 総 合 観測 点350m孔(TGR350)において1998年5月から開 始した 。その 結果 、2005年6月まで の約7年間に、 近地お よび遠地地震に応答した17例の地下水位変化

(水位応答と呼ぶ)を検出し、その変化は全て「水位が上昇」であることを明らかにした。

  まず、水位応答の変化の特徴を把握するために、地下水位連続記録に含まれる潮汐応答 と気 圧応答を 潮汐解 析プログラムBAYTAP‑G (Tamura et al,1991)により求め、原記録か らそれらを差し引き トレンド を抽出した。このトレンドから観測された全ての水位応 答の最大値を求め、地震時から最大値までの経過時間をもとめた。その結果、経過時間と 水位応答の最大値は比例する。時間軸を経過時間で、振幅を最大値で正規化し、全てを比 較した結果、最大値までの水位上昇の時間変化がほぼ一致していることが見出され、この ことは、水位応答を生じさせる発生源が、ある入力(地震時擾乱の大きさ)に対して線形 応答を持つことを示唆している。

  次に 、水位応 答のうち、地殻変動連続記録高速サンプリング1秒値記録、傾斜地震動お よび 歪地震動 、が同 時に得ら れた2000年7月以 降の9例について、それらの最大全振幅と その時の水位応答の最大値との関係を調査した。その結果、水位応答の最大値は傾斜地震 動および歪地震動の最大全振幅に比例すること、そしてある閾値以上の時に水位応答が生 じていることが明らかになった。地震と地下水位応答の関係については、従来、震源距離 とマ グニチュ ードと 応答の有 無に関し てのみ 調べられ ており 、例えぱ 、Matsumoto and Roeloffs (2003)が榛原観測井(静岡県)について、かなり系統的な水位応答検出基準を得 ている。しかしながら、この方法をTGR350へ適用した結果、基準を超える場合でも地震応 答を生じさせなかった地震(非地震応答)が143例あることが判明した。そこで、9例の地 震応答時とこれらt・つ非地震応答時の傾斜地震動記録の最大全振幅を調査した結果、水位応

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稔 司

   

   

原 田

笠 池

授 授

教 教

査 査

主 副

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答は傾斜地震動の最大全振幅が閾値2 x10―4 radianを超えた場合に生じることが明らかに なった。このトリガーの特定は、従来の地下水位のみの観測や、低速サンプリングの地殻 変動観測では得られなかった新たな知見である。

  Roeloffs (1998)による水位応答に関する有限1次元多孔質帯水層中における間隙水圧上 昇・拡散モデルは、TGR350の水位応答記録の上昇過程をよく説明できる。この数値モデル によって得られた間隙水圧上昇源の位置と拡がり、および、TGR350周辺における地質構造 と水理パラメータから、次のような水位応答発生メカニズムを新たに提案した。1)TGR350 の花 崗岩層中 には、 発達した層理や節理から成る帯水層が2箇所存在する。TGR350の近傍 には北北西の走行を持つ地質断層があり、通常、花崗岩中の地下水は、地質断層の北東側

(上流)から南西側(下流;TGR350が位置)へ流動している。地質断層はこれらの帯水層 を破砕しており、通常、破砕箇所は断層粘土や礫が充填され低透水性が維持されている。

2)近地および遠地地震の地震波の通過によって、閾値を超える傾斜地震動が生じた場合、

破砕箇所を充填している断層粘土および礫が除去され、この箇所の透水性が高くなる。そ の結果、通常に比べて地質断層を横切る地下水の流動量が増え、下流域の間隙水圧が上昇 し、TGR350の地下 水位が上昇する。3)水位応答変化のPeak後、断層粘土等の移動により 目詰まりが生じ、低透水性が回復、地質断層を横切る地下水の流動量が減少し、TGR350の 地下水位は定常状態ー回復する。

  さらに、ここで提案された発生メカニズムを支持する次のような、興味ある結果を得て いる。地下水位の回復過程中に、閾値を超える傾斜地震動が観測されたにもかかわらず水 位応答が生じない場合がある。これは、破砕箇所において断層粘土等がすでに除去されて いるか、十分に日詰まりが進行していなく、地質断層を横切る地下水の流動量に増分が生 じなぃため、その結果地震応答が生じないと考えられる。

  以上のことから、本研究の成果は次のようにまとめられる。◎同一深部ボアホール内に おける高速サンプリングによる地殻変動および地下水位の同時観測結果から、水位応答を 生じさせるトリガーの特定を初めて行った。◎観測点周辺の地質構造調査および水理学的 特性と調和的な水位応答発生メカニズムを初めて明らかにした。

よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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参照

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