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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士(水 産科学 )溝端浩 平

学 位 論 文 題 名

ベ ー リ ン グ 海 陸 棚 斜 面 域 に お け る 渦 場 変 動 と      その基礎生産量への影響

―衛星観測・船舶観測・海洋循環モデルによる統合的解析一

学位論文内容の要旨

[緒書]

  北太平洋 と北極海を結ぶ唯一の極域縁辺海であるべーリング海は 、世界で最も生産カ の 高い 漁場 のー っで あ る。 この 海は 東部陸棚域(水深200m以浅)と西部海盆域(水深 3500m以 深) に分 けら れ、 その 間に 約1300kmにも 及 ぶ陸 棚斜 面域 が存在する。Bering Sea Green Beltと呼 ば れる この 陸棚 斜面域は、ベーリング 海の中で年間基礎・二次生 産量が最も 高く、豊富な漁業資源・海鳥・海産哺乳類を支える重要 な海域である。近年 で は、 同海 域を 流れ る 境界 流Bering Slope Current(BSC, 平均流量3.0〜6.OSvに伴う 直 径50〜200kmの 中規 模渦 周辺 で、 高ク ロロフイルロ(Chl.み濃度・スケトウダラ稚 仔魚分布や 海盆から陸棚への水塊輸送が観測されており、中規模渦 の生物分布・陸棚へ の栄養塩/ 生物相輸送への影響が注目されている。また最近の海面 高度計を用いた研究 では、陸棚 斜面域の渦場の経年変動が示されており、その生物生産 への影響も関心を集 め てい る。 しか しな が らべ ーリ ング 海で 行わ れて きたProce88andRe80urce80fBering Sea8heH(PROBES,1976〜1981年 ) や 、SoutheasternBeringSeaCarryingCapacity

(SEBSCC,1996〜2002年)に代表される研究プロジェクトは、主に 陸棚域を対象にして きた為、陸 棚斜面域における渦や生物生産に関する知見は少なく、 同海域における中規 模渦の基礎 ・二次生産に対する影響や渦場経年変動の要因は解明さ れていない。そこで 本研究では 、衛星データ解析・船舶観測および海洋循環モデルによる渦再現実験により、

ベーリング 海陸棚斜面域における基礎生産変動に対する渦の役割と 渦場変動要因を統合 的に解明す ることを目的とする。

[資料と方 法]

  はじ めに1/3° グリ ッド 週平 均合成海面高度アノマリー(Sea LevelAnomaly; SLA)画 像 .NOAA/AVHR pathfinder 9kmメ ッ シ ュ 月 平 均 水 温 画 像 .SeaWiFS 9kmメ ッ シ ユ 月 平 均Chl‑aお よ び 光 合 成 有 効 放 射 画 像 か ら 、11年 平 均 月別SLA、渦 運動 エ ネル ギ ー(Eddy Kinetic Energy; EKE)画 像 ・1992年1月 〜2003年12月ま での 季節 別EKE 標 準 偏 差 画 像 ・1998年1月 〜2003年12月 ま で の 月 平 均 有 光 層 内 積 算 基 礎 生 産 量 画 像を作成し た。本研究ではこれらの衛星データセットを用いて、陸棚域・陸棚斜面域・

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海盆 域のChPa.基 礎生 産量 の時 間変 動、 陸棚 斜面 域に お ける 季節 平均 の渦場およぴ 春季 〜夏 季の 渦場 変動と基礎生産量と の関係について解析を行った。次に北海道大学 水 産 学 部 附 属 練 習 船 お し ょ ろ 丸 に よ り 、2000年8月1日〜8月2日に 低気 圧 性渦 断面 観 測 、2001年7月25日 〜 26日 お よ び 、2002年8月8日 〜9日 に 高 気 圧 性 渦 断 面 観 測をそれぞれ行い、渦周辺の水塊構造(密度・流速分布)および栄養塩(硝酸塩十亜硝酸 塩). Chl‑a濃度分布を調べた。渦の位置はコロラド大学海面高度データアーカイブホ ー ム ペ ー ジ で 公 開 さ れ て い るSLA画 像 か ら 特 定 し た 。 最 後 に 、 海 洋 循 環 モ デ ル Estuarine,Coastal and Ocean Model with Semi‑Implicit (ECOMSDによる渦再現実 験か ら、 渦形 成要 因およぴ渦による陸 棚一陸棚斜面間の海水交換について調べた。渦 形 成 要 因 に つ い て は 、BSCと 海 底 地 形 と の 距 離、BSCの擾 乱、 風向 の影 響 を感 度解 析 か ら 調 べ た 。 な お 風 向 に 関 す る 感 度 解 析 で は 、 予 めNCEP/NCAR再 解 析2.50グリ ッド 風向 風速 デー タを 用い て、1998年〜2003年春 季・ 夏 季の べー リン グ海陸棚斜面 域における平均風速を求め、これとほば同じ3ms'lの風を渦再現海域に一様に与えた。

また 陸棚 ー陸 棚斜 面間の海水交換につ いては、海盆域の下層栄養塩・陸棚斜面域の高 基礎生産量水塊を想定したトレーサー実験から解析を行 った。

[ 結果 と考 察]

1.懣 盪 窪動 と基 礎生 産量 とQ閣錘

    ベ ーリ ング 海陸 棚斜 面域 では、春季〜夏季にかけて高気圧性渦が分布 し、夏季に   最 もEKEが 高 く な る 。 ま た 夏 季 のEKE変 動 は 、1999年 の 夏 季 に 最 も 小 さ く な る   が、2000年以 降は 増大 傾向 にあった。同海域におけるChトロ濃度・基礎 生産量は、

  初夏 に陸 棚域 より も高 くな り、 夏 季の 間も30.5〜48.5gCm'2year'1と比 較的高い値   を 維 持 し て い た 。 そ こ で 春季 〜夏 季のEKE標 準偏 差と 基礎 生産 量と の関 係を 調べ   ると 、夏 季に のみ 正の 相関 関係が見いだされた。この結果は、春季では 海盆スケー   ルの ブル ーム が基 礎生 産量 に寄与している一方で、夏季では高気圧性渦 による渦場   変動 が、 基礎 生産 量を 左右 する こ とを 示唆 して いる 。

2. 陸 棚 鎚 画 壇 ! 三 蠱Lす 歪 過 髭 塵 墓 因

    ECOMSIに よ る 感 度 解 析 の 結 果 、BSCが 陸 棚 斜 面 か ら50km以 上 沖 合 に 流 れ て   お り 、 か つBSCに 擾 乱 が 与 え ら れる こと によ って 、中 規 模渦 が形 成さ れる こと が   明 ら か に な っ た 。1998年‑‑2003年 の 季 節 別EKE標 準 偏 差 画 像 に よ る と 、 高EKE   標 準 偏差 分布 は、 」bnchitka PassやAmukta Passから 陸 棚斜 面域 にか けて 分布 し   て お り 、 北 太 平 洋 水 の 流 入 がBSCと そ の 起 源 で あ るAleutian North Slope   Current(ANSC)に 擾 乱 を 与 え て い る と 考 え ら れ る 。

3. 過 盪 ! 三 佳 弖 陸 棚 : 陸 棚 斜 面 筮 金 堕 墓 養 塰 : 處 塞 Z乏 Zク 悉     ECOMSIによ るト レー サー 実験 から 、陸 棚斜 面域 に 中規 模渦 が形 成さ れた 場合 、   陸 棚斜 面域 ・陸 棚域 へ の栄 養塩フラックスは、渦が形 成されない場合に比べて増加     し、 水深200m以浅 へ のフ ラックスの増加量は、炭素 フラックスに換算して約62%   で あ っ た 。 従 っ て 、2000年 以降 の陸 棚斜 面域 にお けるEKE増 加は 、陸 棚域 への 栄

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養塩・炭素フラックスの増加にっながると考えられる。また渦により、陸棚斜面域 下層に輸送された栄養塩は、低栄養塩濃度の表層へと拡散すると考えられ、これを 利用して植物プランクトンが陸棚斜面域で増殖し、常に高い基礎生産量が維持され ると考えられる。

4. 生規擡過 !三よ歪 陸棚二陸 棚鎧面閭cD17t7B奎換とGreen Belt潅筮全堕彪饗     陸棚斜面域における渦の分布・伝搬により、陸棚斜面域の高基礎生産量水塊は、

  約100km沖合の海盆域まで移流・拡散される。従って中規模渦の陸棚―陸棚斜面   間の海水交換によって、陸棚斜面域の高基礎生産量水塊が形成されるとともに、こ   の水塊が約100km沖合の海盆域へと移流・拡散されることでGreen Belt海域が維   持される。

5.過盪経生蛮動Q堊国

    べーリング海への北太平洋水の流入量は、アリューシヤン列島南側に形成される   高気圧性の巨大渦の影響を受ける。この渦の形成・伝搬はEl Nifio年/La Nifia年で   異 なり、その要因はENSOイベントに伴う沿岸ケルビン波、もしくはアラスカ湾   流の流量・擾乱の増大が挙げられる。この巨大渦による北太平洋水の流入量の増大   は 、ANSCとBSCの流 量・擾乱 増大、も しくは高温高塩分水の増加による陸棚斜   面域の傾圧不安定の発生・密度流とBSCの関係による渦度の発生に寄与する。こ   のようにべーリング海陸棚斜面域の渦場変動および夏季の基礎生産量は、ENSOイ   ベントの影響を受けている可能性がある。

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学位論 文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授 教授

齊藤誠一 三浦汀介 飯田浩二 米田園三郎

池田元美(地球環境科学研究科)

学 位 論 文 題 名

ベ ー リ ン グ 海 陸 棚 斜 面 域 に お け る 渦 場 変 動 と      その基 礎生産量へ の影響

一衛星 観測・船舶 観測・海洋循環モデルによる統合的解析―

  近 年 、 衛 星 を 用 い た 地 球 環 境 観 測 技 術 が 進 歩 し 、 海 洋 の 物 質 循 環 や 汚 染 の モ ニ タ リ ン グ に 応 用 可 能 な 衛 星 リ モ ー ト セ ン シ ン グ に 関 心 が 高 ま っ て き た 。 特 に 船 舶 で 常 時 観 測 す る の が 困 難 な 遠 隔 の 外 洋 域 で 、 こ の よ う な 観 測 技 術 を 用 い て そ の 生 産 性 や そ の 健 康 度 を モ ニ タ ー し て い く こ と は 極 め て 重 要 な 課 題 で あ る 。 現 在 ま で べ ー リ ン グ 海 に お け る 春 季 ブ ル ー ム な ど の 生 物 生 産 過 程 お よ ぴ 物 理 過 程 の 時 空 間 変 動 に 関 す る 研 究 は 極 め て 少 な く 、 従 来 の 船 舶 観 測 に 加 え 、 広 域 を 、 瞬 時 に 、 繰 り 返 し 観 測 で き る 衛 星 に よ る 海 色 観 測 や 海 面 高 度 観 測 が 非 常 に 有 カ な 手 段 と な っ て い る 。 さ ら に 、 数 値 モ デ リ ン グ 手 法 を 加 え る こ と で そ の 変 動 機 構 の 理 解 が 可 能 に な る 。

  本 研 究 で 対 象 と し た べ ー リ ン グ 海 は 東 部 陸 棚 域 ( 水 深200m以 浅 ) と 西 部 海 盆 域 ( 水 深 3500m以 深 ) に 分 け ら れ 、 そ の 問 に 約1300kmに も 及 ぶ 陸 棚 斜 面 域 が 存 在 す る 。 こ の 陸 棚 斜 面 域は 、ベ ー リン グ海 の中 で年 間基 礎生 産・ 二次 生産 量が 最も 高く 、Bering Sea Green Belt と 呼 ば れ 、 豊 富 な 漁 業 資 源 ・ 海 鳥 ・ 海 産 哺 乳 類 を 支 え る 重 要 な 海 域 で あ る 。 近 年 で は 、 境 界流 であ るBering  Slope  Current (BSC, 平均 流量3.0〜6. OSV)に伴 う直 径50〜200kmの 中 規 模 渦 周 辺 で 、 高 ク ロ ロ フ ィ ルa濃 度 ・ ス ケ ト ウ ダ ラ 稚 仔 魚 分 布 や 海 盆 か ら 陸 棚 へ の 水 塊 輸 送 が 観 測 さ れ て 茄 り 、 中 規 模 渦 の 生 物 分 布 ・ 陸 棚 へ の 栄 養 塩 / 生 物 相 輸 送 へ の影 響 が 注 目 さ れ て い る 。 ま た 最 近 の 海 面 高 度 計 を 用 い た 研 究 で は 、 陸 棚 斜 面 域 の 渦 場 の 経 年 変 動 が 示 さ れ て お り 、 そ の 生 物 生 産 へ の 影 響 も 関 心 を 集 め て い る 。 し か し な が ら べ ー リ ン グ 海 で 行 わ れ て き たProcess and Resources of Bering Sea shelf (PROBES,1976〜1981 年 ) や 、Southeastern Bering Sea Carrying Capacity (SEBSCC,1996 ‑2002年 )に 代表 さ れ る 研 究 プ ロ ジ ェ ク ト は 、 主 に 陸 棚 域 を 対 象 に し て き た 為 、 陸 棚 斜 面 域 に お け る 渦 や 生 物 生 産 に 関 す る 知 見 は 少 な く 、 同 海 域 に お け る 中 規 模 渦 の 経 年 変 動 要 因 や そ の 基 礎 生

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産・二次生産への影響は解明されていない。

   地球規模の気候・環境変化に対する植物プランクトン・基礎生産の地域的、時間的変 動を明らかにしていくために、従来の船舶観測や、定点観測に加えて、衛星観測による 長期的を時系列解析を行うことが重要である。さらに、その変動機構を理解し、将来的 に予測するためには、数値モデルによる素過程の理解と要因の究明が不可欠である。

   本研究は、従来の船舶観測に加えて、衛星観測および海洋循環モデルを用いて、陸棚 斜面域における渦の発生要因と、渦による高基礎生産量維持メカニズムを統合的に解明 した。さらにその結果を踏まえて、中規模現象を介した気候変動の基礎生産量変動へ与 え る 影 響 を 、 海 面 気 圧 場 の 解 析 に 基 づ い て 考 察 し た も の で あ る 。

特に審査員一同が評価した点は以下の通りである。

1 .マルチセンサーリモートセンシングを用いることで、1998 年から2002 年までの6 年      間におけるべーリング海陸棚斜面域の渦場変動およぴ基礎生産量分布の経年変動を      明らかにし、夏季に渦場変動と基礎生産量との問に正の相関関係があることを明ら      かにした。

2. 中規模渦を船舶観測する際、準リアルタイムの海面高度画像を用い、的確に渦の位      置を捉え、その水塊構造と栄養塩分布・クロロフイルロ濃度分布を明らかにした。

3. 海洋循環モデルによる渦再現実験により、陸棚斜面域においてべーリングスロープ      流が擾乱をもち、陸棚域から約50km 以上離れて流れているという条件が中規模渦形      成の大きな要因であることを明らかにした。

4. トレーサー実験から中規模渦形成・伝搬に伴う海盆域から陸棚域への栄養塩輸送過      程、および中規模渦による陸棚域から陸棚斜面域への高基礎生産量水塊の輸送過程      を示し、陸棚斜面域における高基礎生産量海域維持メカニズムを明らかにした。

5. 気候変動に伴うアラスカ湾流の流量・擾乱の増加により、北太平洋の高温高塩分水      のべーリング海への流入も増加し、結果的に陸棚斜面域で傾圧不安定になることが      要因で渦場が形成されることを示唆した。

   今後、衛星観測、船舶観測、海洋循環モデルを用いたこのような統合的栓方法に、生 態系モデルを加えた研究を推進すれば、年々変動も含んだ長期的な海洋の生物生産変動 と 地 球 環 境 変 動 と の 関 係 を 同 時 に 理 解 す る こ と が 可 能 と な る 。    審査員一同は、本研究が、ベーリング海陸棚斜面域における中規模渦の基礎生産量分 布への影響に関する統合的な知見を得たものと高く評価し、本論文が博士(水産科学)

の学位を授与される資格のあるものと判定した。

参照

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