博 士 ( 農 学 ) カ ワ カ ミ ジ ャ ク ソ ン
学 位 論 文 題 名
Growth and Yield of Potato Plants Grown from Microtubers in Fields
( 圃 場 に 栽 培 し た バ レ イ シ ョ の マ イ ク ロ チ ュ ー バ ー に お け る 生 育 と 収 量 )
学位論文内容の要旨
バ レ イシ ョ(Solanum tuberosumL.) は通 常, 圃場で生産される塊茎(CT)を種イモに用 いて 栽培される.しかし熱帯や亜熱帯地域では,ウイルス病 の影響により無病CTの生産が困難 であ り,低収量の主要因になっている.このような地域では,無菌条件の培養容器内で生産され る小 塊茎,マイクロチュソくー(Mrヽ)の種イモとしての利 用が注目されている.しかしMTの 生産 方法にっいてはこれまでにも多くの研究がなされている が,MTを種イモに用いた圃場栽培 での 生育と収量についてはいまだ不明な点が多い.本研究では,北海道大学北方生物圏フイール ド 科学 研 究セ ンタ ー生 物生産研究農場の圃場 で、バレイショのMTとCTを種イモに用いて栽培 し, 生育と収量に及ばす種イモの影響を調査した.
1. MTとCTにお ける 生育 と収 量の 差異
晩 生 品 種 の 農 林1号(Nl)に つ い て , 生 重 約50gのCT, お よ び0.5〜1gと1〜3gのMT を種 イモ に 用い て, 生育 と収 量を4年 間 調査 した .MTはCTに比べ,生育初期における根長と 葉面 積指 数(LAI)が 小さ く, また 塊茎 形 成開 始期 が7日, 塊茎 肥大 開 始期 が14日遅かった.
しかし,萌芽後40日 頃には(珂とMTが類似したI」AIを示し,塊茎肥大開始期以降における塊 茎乾 物重 増 加速 度に も差 異が認められなかった .CTとMTはほば同時期に茎葉黄変期に至り,
MTはCTの 約82% の収 量(4年 間平 均値 ) を示 した .
2. MTとCTにおける生育と収量の差 異と種イモの大きさとの関係
品 種N1に つ い て , 生 重 約50gの ( 汀(Cont),1〜3gのCT (Mini), 約5gに 切 断 し た CT (Cut),1〜3gのMT (M), お よ び0.3〜0.5gのMT (SS)を 種 イ モ に 用 い て , 種 イ モ の大きさが生育と収量に及ぼす影響 を調査した.Cutでは萌芽率が低く,植付けから萌芽までの 期間 が長 かっ た が, それ 以外 の種イモでは類似した値を示した,Cont以外の種 イモではCont に比 べて生育初期のLAIが小さく,塊茎肥大開始期が遅く,収量が低かった.こ のため前節で 明ら かに したCTとMTにお ける 生育と収量の差異は,主として種イモの大きさの 差異に起因す ると推察された.
3. 品 種 の 早 晩 性 がMTとCTの 生 育 と 収 量 に 及 ば す 影 響
早 生 品 種 の キ タ ア カ リ(KA), 晩 生 品 種 の コ ナ フ ブ キ(KF)とN1, およ び極 晩生 系統 の IWA‑1に つ い て , 生 重 約50gのCTと1〜3gのMTを 種 イ モ に 用 い て , 生 育 と 収 量 を4年 間 調 査し た. いず れの 品種 ・系 統で も, 生 育初 期のLAl[はCTに比 べてMTの 方が 小さ かっ たが , 地 上 部 最 大 期 のLAIはCTとMTが 類似 し た値 を示 した .ま た, 地上 部最 大期 の塊 茎乾 物重 は MTがCTの 約65%で あっ たが ,こ れ以 降 の塊 茎乾 物重 増加 速度 はCTに比 べてMTの 方が 高く , MTはCTの 約86% の 収 量 (4年 間 平 均 値 ) を 示 し た , こ の た め ,CTとMTに お け る 生 育と 収 量 の 差 異 に 及 ば す 品 種 の 早 晩 性 の 影 響 は 小 さ い も の と 推 察 さ れ た .
4.土壌水分条件がMTとCTの生育と収量に及ばす 影響
品 種NlとKFに つ い て , 生 重 約50gのCTと1〜3gのMTを 種 イ モ に 用 い て , 土 壌 水 分 条 件が 生育 と収 量に 及ば す影 響を3年間調査した .土壌水分処理として,萌芽約1ケ月後にビ ニールハウスを圃場 に設置して,灌水区と無灌水区を設けた.いずれの品種でも,土壌乾燥に伴 うLAIの 低 下 は 開 花 中期 (萌 芽 後約50日 )に はCTに比 べMTの方 が大 きか った が, 気孔 コ ン ダ クタ ンス の低 下はMTの 方が 小さ く, 地 上部 最大 期( 萌芽 後約80日 )に おけ る無 灌水区の LAIは両種イモが類似した値を示した.また,地上部最大期における無灌水区での根長と土層内 に おけ る根 長分 布で も, 両種 イモ間に差異が認められなかった.さらに,CTとMTのいずれに おいても土壌乾燥に よって塊茎乾物重増加速度は低下し,灌水区に対する無灌水区の収量割合は 約87% (3年 間の 平均 値) の類 似し た値 を示 した .こ のため,CTとMTにおけ る生育と収量の 差異に及ばす土壌水 分条件の影響は小さぃものと推察された.
5.気象条件がMTとCTの生育と収量に及ばす影響
品 種NlとKFに つ い て , 生 重 約50gのCTと1〜3gのMTを3時 期 (5月13日 ,6月4 日,6月25日)に植付け,気象条件(日長および気温)が生育と収量に及ばす影響を調査した.
両 品 種 と も に , い ず れの 植付 け 期で もMTはCTに比 べて 生育 初期 のLAIは小 さか った が, そ の 後の増加速度が大きく,地上部最 大期のLAIにおける種イモ間 の差異は小さかった.また,
い ずれ の植 付け 期で もMTはCTに比べて塊茎肥大開始期は遅かっ たが,その後の塊茎乾物重増 加速度における種イ モ間の差異は小さかった.さらに,植付け期が遅くなるほど塊茎肥大期間が 短くなり,収量が低 下したが,(汀に対するMTの収量割合はいずれの植付け期でも約83%の類 似 した 値を 示し た. この ため ,CTとMTにおける生育と収量の差 異に及ばす気象条件の影響は 小さいものと推察さ れた.
以上 の結 果か ら, 早晩 性の 異な る品 種や 異 なる 環境 条件 下で もMTはCTに比べて約80% 以上の収量を示すことが明らかとなり,ウイルス病 に汚染されたCTを種イモに用いている地域 で はMTを 種 イ モ に 用 い る こ と に よ っ て 収 量 増 加 が 期 待 で き る も の と 結 論 さ れ た .
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学位論文審査の要旨 主査 教授
副査 教授 副査 教授 副査 教授
岩 間 和 人 幸 田 泰 則 山 口 淳 一 内 藤 繁 男
学位論文題名
Growth and Yield of Potato Plants Grown from MiCrotuberSinFieldS
( 圃場 に栽 培した バレ イシ ョの マイ クロ チュ ーバ ーにおける生育と収量)
本論文は図19,表17を含み,5章からなる総頁数108の英文論文であり,別に参考論文 2編が添えられている.
バレイショ(Solanum tuberosum L.)は通常,圃場で生産される塊茎(ロ)を種イモに用 いて栽培される.しかし熱帯・亜熱帯地域では,ウイルス病の影響により無病CTの生産 が困難であり,低収量の主要因になっている.このような地喊では,無菌条件の培養容器 内伽vitro)で生産されるパ、塊茎,マイクロチューバー(MT)の種イモとしての利用が注 目されている.しかし,MTの生産方法についてはこれまでにも多くの研究がなされてい るが,MTを種イモに用いた圃場栽培での生育と収量については不明な点が多い.本研究 では,北海道大学北方生物圏フイールド科学研究センター生物生産研究農場の圃場で,MT とCTを種イモに用いてバレイショを栽培し,生育と収量に及ぼす種イモの影響を明らか にした.
1. MTとCTにおける生育と収量の差異
晩生品種の農林1号について,生重約50gの(汀および0.5〜3gのMTを種イモに用いて,
生育と収量を4年間調査した.MTはcrに比べ,生育初期の根長と葉面積指数(LAI)が 小さく,塊茎形成開始期が7日,塊茎肥大開始期が14日遅かった.しかし,萌芽後40日 頃には両種イモが類似したLAIを示し,塊茎肥大開始期以降の塊茎乾物重増加速度にも差 異が認められなかった.また,ほば同時期に茎葉黄変期に至り,MTはCTの82%の収量
(4年間平均値)を示した.さらに,生重約50gのCT (Cont),1〜3gのCT,約Sgに切断
し たCT,1〜3gのMTおよび0.3‑0.5gのMTを種イモに用いて,種イモの大きさが生育と 収量に及ばす影響を調査した.Cont以外の種イモはいずれも類似した生育と収量を示すこ とが明らかになり,CTとrvrrにおける生育と収量の差異は主として種イモの大きさの差 異に起因すると推察した.
2. 品種の早晩陸,土壌水分条件および気象条件がMTとCTの生育と収量に及ぼす影響 生 重約50gのCTと ト3gのMTを種 イモに用いて,品種の早晩性との関係を4品種・系 統について調査した.早晩性の異なるいずれの品種・系統でも,LAIは生育初期にはCT に比べてMTの方が小さかったが,地上部最大期には類似した値を示した.また,地上部 最大期の塊茎乾物重はMTが(汀の約65%であったが,これ以降の増加速度はMTの方が 高く,MTはCTの86%の収量(4品種平均値)を示した.
晩生2品種について,萌芽約10月後の開花始めにビニールハウスを設置した圃場に灌 水区と無灌水区を設け,土壌水分条件との関係を調査した.両品種とも,土壌乾蝌こ伴う LAIの 低下は開花中期にはCTに比べMTの方が大きかったが,地上部最大期には無灌水 区のLAIは両種イモが類似した値を示した.また,地上部最大期における無灌水区での根 長と土層内における根長分布でも種イモ間に差異が認められなかった.さらに,CTとMT のいずれにおいても土壌乾燥によって塊茎乾物重増加速度は低下し,灌水区に対する無灌 水区の収量割合は約87%の類似した値を示した.
晩 生2品種を3時朔く5月13日,6月4日,6月25日)に植付け,気象条件(日長およ び気温)との関係を調査した.いずれの植付け期でも,LAIは生育初期にはCTに比べて MTの方が小さかったが,その後の増加速度が大きく,地上部最大期には類似した値を示 した‐また,MTはcrに比べて塊茎の肥大開始期は遅かったが,その後の増加速度におけ る種イモ間の差異は小さかった.さらに,植付け期が遅くなるほど肥大期間が短くなり収 量が低下したが,CTに対するMrの収量割合はいずれの植付け期でも約83%の類似した 値を示した.
これらの結果から,早晩一陸の異なる品種や異なる環境条件下でもMTはCTの約80%以 上の収量を示すものと推察し,ウイルス病に汚染されたCTを種イモに用いている地域で はMTを 種 イ モ に 用 い る こ と に よ っ て 収 量 増 加 が 期 待 で きる も のと 結 諭 した .
以上の研究成果は,in vz7roで生産されたバレイショのマイクロチューバーを圃場栽培で の無病種イモとして利用する栽培やこれに適する品種の育成に寄与する知見として学術的 に高く評価できる.よって審査員一同は,JacksonKaw氷arniが博士(農学)の学位を受け るのに十分な資格を有するものと認めた.
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