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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

     博 士 ( 水 産 学 ) 村 田 高 勇 学 位 論 文 題 名

化学指標による北太平洋の植物プランクトン生物量 および群集組成とその変動の解析

学位論文内容の要旨

  海洋における植物プランクトン生物量および群集組成を見積もるために,古くから 顕微鏡観察が行われたきたが,ピコブランクトンを含むその生物量と群集組成の正確 な見積 りには多大 な労カと技 術を要する 。近年,高 速液体ク口 マ卜グラフ イー (HPLC)により植物 色素を分離・定量し,植物ブランクトン分類群の光合成色素組 成の特徴を利用し,植物プランクトン群集組成を調べる研究が多く行われている。し かしその研究は赤道域,熱帯域また沿岸域に関しては多いが北部北太平洋を中心とし た研究は少ない。そこで本研究ではHPLCを用いて植物色素を分離・定量し,北太平 洋中央部,西部,東部(アラスカ湾)およびべーリング海における植物プランクトン 群集組成の空間的変動を明らかにすることを目的とした。また今までほとんど行われ ていない冬季観測を行い,冬季北太平洋およびぺーリング海の植物ブランク卜ン生物 量および群集組成を明らかにするとともに,冬季と夏季の比較から北太平洋における 植物プランクトン生物量と群集組成の季節的消長を明らかにすることを目的とした。

  夏 垂 iヒ 太 里 注 塾 よ 変 釜 二 ! ! 22海 ! 三 壷 竝 ろ 撞 物 Z弖22ヒ2謹 集   夏季観測 は1996,1997,1998年およ び1999年の6―8月 の間に北太 平洋中央部

(180° ,175゜30 E), 西部(155゜E),東部( アラスカ湾,145゜v)およびべ ーリング海南東部(165゜W)の南北ライン上において行われた。色素分析の結果,

夏季のほとんどの海域においてフコキサンチン(珪藻指標),19´一ヘキサノイルオキ シフコキサンチン(ハブト藻指標),19 ーブタノイルオキシフコキサンチン(黄金色 藻指標),ク口口フィル6(緑藻指標),ア□キサンチン(クリブト藻指標)および ゼアキサンチン(シアノバクテリア指標)が確認された。色素組成は海域ごとに変動 していたが,夏季北太平洋においては主に19,−ヘキサノイルオキシフュキサンチンお

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よびフコキサンチンが優占する色素組成から,珪藻およびハブト藻が優占種であり,

その他の分類群として黄金色藻,緑藻,渦鞭毛藻,シア//ヾクテリアおよびクリブト 藻が存在していた。珪藻およびハブト藻が優占する中央部亜寒帯域,亜熱帯域および アラスカ湾においては鉛直的な群集組成の変動がほとんど無かった。しかし中央.部移 行領域および西部においてはク口口フィルa濃度の変動が大きく,また表層部でシア //ヾクテリアが最も優占する海域があり,その海域では深度に伴い優占種がシアノバ クテリアから珪藻およびハブ卜藻ヘ変化していた。また強い水温躍層の発達していた ぺーリング海南東部においては主に珪藻が優占していたが,観測海域の狭い範囲で植 物プランク卜ン生物量および群集組成が変動し、同時に鉛直的変動も大きい傾向に あった。この植物プランクトン群集組成の変動にはべーリング海の強い季節躍層の発 達 , 栄 養 塩 濃 度 お よ び 栄 養 塩 組 成 が 影 響 し て い る と 考 え ら れ る 。   釜 至 ヨ ヒ 太 壬 謹 蠱 よ 亜 釜 二 ! 』22海 ! 三 蠱 竝 歪 撞 物Z222b2雛 集 組 成   冬季観測は北太平洋中央部(180゜)、西部(165°E)およびべーリング海(180

°)の南北ライン上において1998年2月に行われた。冬季の海洋表層は冷却と荒天に より混合し,水温・塩分の均一な混合層が100一200mの厚さで発達していた。混合層 中では栄養塩等の化学成分がほぼ均一に分布していた。ク口口フィルa濃度は亜熱帯 域 ,移 行 領域 , 亜寒 帯 域, ベ ーリ ン グ海 の 順 に低 く (一 元 配置 の 分散 分析 , pく0.05),夏季と逆の傾向を示した。フコキサンチンおよび19 −ヘキサノイルオキシ フコキサンチンが優占する色素組成から、植物プランクトン優占種は珪藻およびハプ ト藻であり,19 ーブタノイルオキシフコキサンチンおよびク口口フィルbが多く存在 したことから黄金色藻および緑藻がそれらに次ぐ種であった。しかしシアノバクテリ ア指標色素のゼアキサンチンの濃度から,夏季に亜熱帯や移行領域で多いシアノバク テリアが冬季は少なかった。冬季の植物ブランクトン群集組成は単純であり,観測が 行われた海域中での変動は小さく、また鉛直的な変動もなかった。その理由として観 測海域全域で激しい鉛直混合がおきていたこと,常に栄養塩が十分に供給されていた こ と, ま た動物ブラ ンクトンに よる捕食圧 が小さかっ たこと等が 考えられる 。   埴物Z弖22ヒZ生物量と誰墓組成の垂範変動

  北太平洋亜寒帯域および移行域において,冬季2月および夏季6‑―8月に行われた 調査から 北太平洋における植物プランク卜ン生物量および季節変動を明らかにし た。

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  冬季2月においては,移行領域・亜寒帯域共にク口口フアルa濃度が約0.5 ugl・ ̄で あり,またフコキサンチンおよび19|−ヘキサノイルオキシフコキサンチンが優占する 色 素組成から ,優占していた植物プランクトンは珪藻およびハプ卜藻であった。

  移行領域の6月においてク口口フィルa濃度は0.3−0.5ルgl・1であり,冬季のク口口 フィルa濃度よりも低い。また表層部でゼアキサンチンが多く,フコキサンチンおよ び19.―ヘキサノイルオキシフコキサンチンが少なかったことから,シアノバクテリア 生物量が高く珪藻およびハプ卜藻は少なかった。8月になると表層部のク口口フィル a濃度が1.0ルgl,tまで増加し,19'‑ヘキサノイルオキシフコキサンチンの濃度が高 く,フコキサンチンの濃度は6月とほとんど変わらなかった。この事実から8月はハ プ 卜 藻 の 生 物 量 が 増 加 し , 珪 藻 は 相 対 的 に 少 な か っ たこ と が考 え ら れる 。   亜寒帯域においては6月に表層部の栄養塩が冬季よりも大きく減少し,ク口口フイ ルa濃度が1ルgl 以上の値を示していた。19.−ヘキサノイルオキシフコキサンチンお よびフコキサンチンが多い色素組成から,ハプ卜藻および珪藻が優占していた。8月 になるとク口口フィルa濃度が約0.5ロgl・lへと減少し,またフコキサンチンの濃度が 減少し、ゼアキサンチンの濃度が増加していたことから,6−8月の間に珪藻の減少と シアノバクテリア生物量の増加があった。

  北太平洋の植物プランク卜ン生物量と群集組成に移行領域と亜寒帯域で異なった季 節変動が見られ,その要因として水柱の安定性や水温等の物理的な要因や動物プラン クトンの捕食圧等の影響が考えられる。

植物2互22b2色素の日固変動

  夏季北太平洋亜寒帯域において培養実験を行い,HPLCによる色素分析に加えて真 核藻類と原核藻類の計量に有効なフ口ーサイトヌ一夕ーを用いて,植物プランク卜ン 色素の日周変動について調べた。色素組成から培養中の植物プランクトン群集組成に 日周変動は見られず,同時にフ口ーサイ卜ヌーターの分析結果から真核藻類,シアノ バクテリアともに細胞数の変動は小さかった。植物プランク卜ン細胞中のク口口フイ ルaを初めとするほとんどの色素量は午前中から正午にかけて減少し,正午から夕方 にかけて増加していた。しかしゼアキサンチンは他の色素と異なり,日中に増加し深 夜.にかけて減少するという傾向を示した。ゼアキサンチンの他の色素と異なる日周変 動はOmata anci Murata (1983)が示したようにゼアキサンチンの強光から細胞を防 御 す る と い う 生 理 的 な 役 割 を 持 つ こ と が 原 因 で あ る と 考 え ら れ る 。

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学位論文審査の要旨 主査    教授    米田義昭 副査    教授    松永勝彦 副査    助教授   築田   満

学 位 論 文 題 名

化学指標による北太平洋の植物プランクトン生物量 および群集組成とその変動の解析

  本 研 究 は 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ イ ー(HPLC) に よ り 海 洋 の 植 物 プ ラ ン ク ト ン 色 素 を 分 離 ・ 定 量 し , 植 物 プ ラ ン ク ト ン 分 類 綱 の 光 合 成 色 素 組 成 の 特 徴 を 利 用 し , 植 物 プ ラ ン ク ト ン 群 集 組 成 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し て 行 わ れ た . 研 究 対 象 海 域 は 北 太 平 洋 中 央 部 , 西 部 , 東 部 ( ア ラ ス カ 湾 ) お よ び べ ー リ ン グ 海 と し , 夏 季 と こ れ ま で 殆 ど 行 わ れ て い な い 冬 季 の 植 物 プ ラ ン ク ト ン 生 物 量 お よ び 群 集 組 成 を 明 ら か に し , 植 物 ブ ラ ン ク ト ン 生 物 量 と 群 集 組 成 の 季 節 的 消 長 を 明 ら か に し た . 得 ら れ た 成 果 の 概 要 は は 下 記 の 通 り で あ る .

( ! ) 璽 季 北 太 平 洋 お よ ぴ べ ー リ ン グ 海 に お け る 植 物 プ ラ ン ク ト ン 群 集   全 て の 海 域 に お い て フ コ キ サ ン チ ン ( 珪 藻 指 標 ) ,19 . ヘ キ サ ノ イ ル オ キ シ フ コ キ サ ン チ ン ( ハ プ ト 藻 指 標 ) ,19 ・ ブ タ ノ イ ル オ キ シ フ コ キ サ ン チ ン ( 黄 金 色 藻 指 標 ) , ク ロ ロ フ イ ル ら ( 緑 藻 指 標 ) , ア ロ キ サ ン チ ン ( ク リ プ ト 藻 指 標 ) お よ び ゼ ア キ サ ン チ ン ( シ ア ノ バ ク テ ル ア 指 標 ) が 確 認 さ れ た . 色 素 組 成 は 海 域 ご と に 変 動 し , 夏 季 北 太 平 洋 , に おい ては19 .ヘ キサ ノイ ルオ キ シフ コキ サ ン チ ン お よ び フ コ キ サ ン チ ン を 主 成 分 と す る 色 素 組 成 か ら , 珪 藻 お よ ぴ ハ ブ ト 藻 が 優 占 種 で あ り , そ の 他 の 分 類 群 と し て 黄 金 色 藻 , 緑 藻 , 渦 鞭 毛 藻 , シ ア ノ バ ク テ リ ア お よ び ク リ プ ト 藻 が 存 在 し て い た . 珪 藻 お よ び ハ ブ ト 藻 が 優 占 す る 中 央 部 亜 寒 帯 域 , 亜 熱 帯 域 お よ び ァ ラ ス カ 湾 に お い て は 鉛 直 的 な 群 集 組 成 変 動 が ほ と ん ど 無 か っ た . し か し , 亜 寒 帯 と 亜 熱 帯 の 中 間 に 位 置 す る 移 行 領 域 に お い て は ク 口 ロ フ イ ルa濃 度 の 変 動 が 大 き 〈 , ま た 表 層 部 で シ ア ノ バ ク テ リ ア が 最 も 優 占 す る 海 域 が あ っ た . そ の 海 域 で は 深 度 に 伴 い 優 占 種 が シ ア ノ バ ク テ リ ア か ら 珪 藻 お よ び ハ プ ト 藻 へ 変 化 し て い た . ま た 水 温 躍 層 が 顕 著 な べ ー り

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ング海南東部は観測海域の狭い範囲で植物ブランクトン生物量および群集組成 が変動し,同時に鉛直的変動も大きい傾向にあった.これは水温躍層の発達の 強弱による栄養塩供給が影響していると結論した・

(2)冬 季北 太平洋 およ ぴべ ーリン グ海 にお ける 植物プ ラン クトン群集組成   冬季は水温・塩分の均一な混合層が100‑200mの厚さで発達し,混合層中で は栄養塩等の化学成分がほぼ均一に分布していた.ク口口フイルa濃度は亜熱 帯域,移行領域,亜寒帯域,ベーリング海の順に有意性に低く,夏季とは逆の 傾向を示した.色素組成から,植物ブランクトン優占種は珪藻およびハプト藻 であり,黄金色藻および緑藻がそれらに次ぐ種であった.冬季の植物プランク トン群集組成は夏季に比べて単純であ・り,鉛直的な変動も小さかった.その原 因は有光層内の鉛直混合による栄養塩が十分であり,かつ低温により動物プラ ンクトンの捕食圧が小さかったためと推定した・

(3)植物プランクトン色素の日周変動

  植物プランクトン色素の日周変動について検討した結果,植物プランクトン 群集組成に日周変動は見られず,同時にフローサイトメーターの分析結果から 真核藻類,シア//ヾクテリアともに細胞数の変動は小さかった.一方.ク口口 フイ´レaおよびゼアキサンチンを除く補助色素色素量は午前中から正午にかけ て減少し,正午から夕方にかけて増加していた.しかし,ゼァキサンチンは日 中に増加し深夜にかけて減少するとぃう傾向を示した.ゼアキサンチンの他の 色素と異なる日周変動tまOmata and Murata (1983)が示したようにゼアキサン チンの強光から細胞を防御するとぃう生理的な役割を持つことが原因であると 考えられる.光合成色素の種類によって生体内における明・暗期における代謝 活性に相違があるとぃう興味深い現象を見いだした・

  審査委員は本研究が植物ブランクトン光合成色素の分離・定量を応用し,北 部北太平洋を中心とする海域の生物群集の特徴を明確にした成果を含んでいる ことから,審査委員は申請者に対して博士(水産学)の学位を授与するに値す るものと判定した.

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