博 士 ( 環 境 科 学 ) 重 光 雅 仁
学 位 論 文 題 名
Geochemical studies on particulate nitrogen and its isotope ratio in the western subarctic Pacific
(西部北太平洋亜寒帯域における粒子状窒素化合物及び そ の 同 位 体 比 に 関 す る 地 球 化 学 的 研 究 )
学位論文内容の要旨
生物が窒素を利用できるかできないかは、局所的な生態系や全球的な生物地球化学の多 くの面を制御している。また、窒素は陸上と海洋での正味の基礎生産速度をしばしば制限 する。したがって、地球上における窒素循環を解明することは、陸上及び海洋の生態系の 理解を進めるうえで非常に重要である。窒素のような生元素の循環に関する研究では、そ の安定同位体比が有カなツールとして利用されている。著者は、海洋中の粒子状窒素化合 物及びその同位体比を用いて、生物地球化学的な窒素循環に関する以下の3つの疑問につ いて研究を行った。
(1)陸上土壌において粘土鉱物層間に固定されたアンモニウムイオンは、海洋に供給 された後も、溶出あるいは海洋中に存在するアンモニウムイオンと交換せず、陸上 で 固 定 さ れ た 際 の 情 報 を 氷 期 ー 間 氷 期 ス ケ ー ル で 保 持 し う る の か ?
(2)現在、鉄制限といわれている西部北太平洋亜寒帯域において、氷期―間氷期スケ ールで、堆積物中に保存されている有機態窒素及びその同位体比は過去の海洋循環 を記録しうるのか?
(3)海洋における深海への有機物輸送に関し、近年「バラストモデル」という概念モ デルが提案された。この概念モデルは、海洋における沈降粒子中主成分のバラスト 鉱物(炭酸カルシウム、オパール、陸起源粒子)の沈降量が、2000m以深への有機物 輸送量を決定しているということを提唱する。また、そのバラスト鉱物の中で最も 重要であるのは炭酸カルシウムだといわれている。オパールの生産が高い西部北太 平洋亜寒帯域において、このパラストモデルが成り立つのか?また、そのモデルは 粒 子 状 窒 素 化 合 物 及 び そ の 同 位 体 比 に ど う い う 影 響 を 及 ぼ す の か c こ れ ら に つ い て 行 っ た 研 究 の 結 果 の 概 要 は 、 以 下 の と お り で あ る 。
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(1)海洋堆積物に保存されたアンモニウムイオンは、主にェア口ゾルとともに陸上か ら海洋に輸送され、その同位体比変動は、エア口ゾル輸送量の多寡と関係しているよ うであった。このことは、堆積物中のアンモニウムイオンは、海洋に運ばれた後も、
海洋内で保存され、その同位体比は、陸上で固定された際の情報を保持している可能 性があることを示唆する。
(2)西部北太平洋亜寒帯域で氷期に生物生産が低かったのは、間氷期と比ベ成層化が 強化したためであるというこれまでの仮説を裏付ける結果を得た。このことは、当該 海域 にお いて 、有機態窒素の同位体比が過去 の海洋循環を記録しうることを示す。
(3)バラストモデルという概念が、西部北太平洋亜寒帯域においても適用されうるこ とを示した。また、当該海域において最も重要なバラスト鉱物はオバールであること を示した。さらに、このモデルを用い、表層における同位体比を保持したまま沈降す る粒子状窒素化合物を想定すると、粒子状窒素化合物及びその同位体比の深度方向へ の変動をよく表現できることが分かった。
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学 位 論 文 審 査 の 要 旨
主 査 教 授 乗 木 新 一 郎 副 査 教 授 吉 川 久 幸 副 査 准 教 授 渡 辺 豊 副 査 准 教 授 中 塚 武 副 査 准 教 授 山 中 康 裕
副 査 サ ブ グ ル ー プ リ ー ダ ー 本 多 牧 生 ( 海 洋 研 究 開 発 機 構 む つ 研 究 所 )
学位論文題名
Geochemical studies on particulate nitrogen and its isotope ratio in the western subarctic Pacific
( 西 部 北 太 平 洋 亜 寒 帯 域 に お け る 粒 子 状 窒 素 化 合 物 及 ぴ そ の 同 位 体 比 に 関 す る 地 球 化 学 的 研 究 )
生物 が窒素を利用できるかできないかは、局所的な生態系や 全球的な生物地球化学の多 くの面 を制御している。また、窒素は陸上と海洋での正味の基 礎生産速度をしばしば制限 する。 したがって、地球上における窒素循環を解明することは 、陸上及び海洋の生態系の 理解を 進めるうえで非常に重要である。窒素のような生元素の 循環に関する研究では、そ の安定 同位体比が有カなツールとして利用されている。著者は、海洋中の粒子嚇違!素化合 物 及びその同位体比を用いて、生物地球化学的な 窒素循環に関する以下の3つ の疑問につ いて研 究を行った。
(1)陸上土壌において粘土鉱物層間に固定された アンモニウムイオンは、海洋に供給 された後も、溶出あ るいは海洋中に存在するアンモニウムイオンと交換せず、陸上 で 固 定 さ れ た 際 の 情 報 を 氷 期 ー 間 氷 期 ス ケ ー ル で 保 持 し う る の か ?
(2)現在、鉄制限としゝわれている西部北太平洋亜寒帯域において、氷期ー間氷期スケ ールで、堆積物中に 保存されている有機態窒素及びその同位体比は過去の海洋循環 を記録しうるのか?
(3)海洋における深海への有機物輸送に関し、近 年リヾラストモデル」という概念モ デルが提案された。 この概念モデルは、海洋における沈降粒子中主成分のバラスト 鉱物(炭酸カルシウム、オパール、陸起源粒子)の沈降量が、2000mピ!、深への有機 物輸送量を決定して いるということを提唱する。また、そのバラスト鉱物の中で最 も重要であるのは炭 酸カルシウムだといわれている。オバールの生産が高い西部北
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太平洋亜寒帯域において、このバラストモうっレが成り立つのか?また、そのモデル は 粒 子 状 窒 素 化 合 物 及 び そ の 同 位 体 比 に ど う い う 影 響 を 及 ば す の か ? こ れ ら に つ い て 行 わ れ た 研 究 結 果 の 概 要 は 、 以 下 の と お り で あ っ た 。
(1)海洋堆積物に保存 されたアンモニウムイオンは、主にエア口ゾルとともに 陸上か ら海洋に輸送され、その同位体比変動は、工ア口 ゾル輸送量の多寡と関係しているよ うであった。このことから、堆積物中のアンモニウムイオンは、海洋に運ばれた後も、
海洋 内で 保存 され 、そ の同位体比は、陸上で固定された際の情 報を保持している可能 性が示唆された。
(2)西部北太平洋亜寒 帯域で氷期に生物生産が低かったのは、間氷期と比べ成 層化が 強化したためであるというこれまでの仮説を裏付 ける結果を得た。このことから、当 該海 域に おい て、 有機 態窒素の同位体比が過去の海洋循環を記 録しうることが示唆さ れた。
(3)/ヾラストモデルという栂鰰t西部ゴヒ太平洋亜寒帯域においても遺彌され うるこ とを示した。また、当該海域において最も重要な バラスト鉱物はオパールであること を示 した 。さ らに 、こ のモデルを用い、表層における同位体比 を保持したまま沈降す る粒 子状 窒素 化合 物を 想定すると、粒子状窒素化合物及びその 同位体比の深度方向へ の変動をよく表現できることを明らかにした。
審査 委員 一同 は 、こ れら の成 果を高く評価し、また研究者として誠実かつ熱心 であり、
大学 院博士課程における研鑽や修得単位などもあわ せ、申請者が博士儀訪蘇!旧pの学位 を受 ける のに 充 分な 資格 を有 する もの と判 定し た。
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