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ホップ代数を用いた相空間形式の弦の量子化

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(1)

ホップ代数を用いた相空間形式の弦の量子化

著者

別所 泰輝

学位授与機関

Tohoku University

(2)

修士論文

ホップ代数を用いた相空間形式の弦の量子化

東北大学大学院 理学研究科 物理学専攻

素粒子・宇宙理論研究室

別所 泰輝

平成24年

(3)

目次

1章 序章 4 1.1 研究の目的 . . . 4 1.2 論文の構成 . . . 5 第2章 弦理論の概略 7 2.1 弦の作用 . . . 7 2.2 Polyakov作用の持つ対称性 . . . 8 2.3 弦理論で用いる世界面の座標. . . 9 2.4 共形対称性 . . . 11 2.5 運動方程式 . . . 11 2.6 弦理論のスペクトル . . . 12 2.7 経路積分による量子化と正規順序積 . . . 13 第3Hopf代数のツイストによる弦の量子化(配位空間) 15 3.1 古典的な汎関数変分としてのHopf代数 . . . 15 3.1.1 H-module代数とは . . . 15 3.1.2 Hopf代数とは. . . 16 3.2 Hopf代数による弦の量子化 . . . 18 3.2.1 Hopf代数によるWick縮約 . . . 18 3.2.2 量子化をHopf代数のツイストと捉える . . . 20 3.2.3 経路積分での正規順序積の意味 . . . 22 3.3 時空の対称性 . . . 24 3.3.1 量子対称性としてのツイストされたHopf代数とそのmodule代数への作用 24 3.3.2 対称性としてのツイストされたHopf代数 . . . 26 3.3.3 ツイストされたHopf代数の作用と真空期待値V.E.V. . . 29 3.4 経路積分での対称性 . . . 30 第4Hopf代数のツイストによる量子化(相空間) 33 4.1 Hamiltonian形式の経路積分による弦の量子化 . . . 33 4.1.1 Hamiltonian形式の経路積分 . . . 33 4.1.2 Hamiltonian形式の経路積分期待値V.E.V. . . 34 4.2 Hamiltonian形式での古典的なHopf代数 . . . 37 4.2.1 Hamiltonian形式での古典的なH-module代数Aの導入 . . . 37 4.2.2 Hamiltonian形式での古典的なHopf代数Hphの導入 . . . 38 4.3 Hopf代数による弦の量子化(Hamiltonian形式) . . . 38

(4)

4.3.2 量子化をHopf代数のツイストと捉える(Hamiltonian形式) . . . 40

4.4 時空の対称性 . . . 42

4.4.1 ツイストされたHopf代数とそのmodule代数への作用(Hamiltonian形式) 42 4.4.2 量子対称性としてのツイストされたHopf代数(Hamiltonian形式) . . . 44 第5章 まとめと議論 50 付録A Minkowski型経路積分とEuclid型経路積分の関係 53 付録B Hopf代数の導入 56 B.1 言葉の定義 . . . 56 B.2 代数と余代数 . . . 56 B.2.1 代数 . . . 56 B.2.2 余代数 . . . 57 B.2.3 代数射 . . . 58 B.2.4 余代数射. . . 58 B.2.5 代数,余代数のテンソル積 . . . 58 B.2.6 双代数 . . . 59 B.3 Hopf代数 . . . 59 B.3.1 対合射S . . . 59 B.3.2 Hopf代数の定義 . . . 59 B.3.3 普遍包絡環によるHopf代数の具体例 . . . 59 付録C 2-cocycle condition 62 付録D Hopf代数の元の随伴作用 63 付録E 一般座標変換によるGreen関数の変化 65 付録F Poincaré変換はツイスト要素Fを変えない 67 付録G 定数B場のある自由な弦のHamiltonian形式の経路積分 69 付録H Hamiltonian形式での生成汎関数とGreen関数 71 付録I Hamiltonian形式でのWick縮約とツイスト要素Fphの関係 75 付録J 一般座標変換の生成子 77 付録K B変換の生成子 78 付録L B変換によるGreen関数の変化 80

(5)

1

序章

1.1

研究の目的

物質の最小構成要素である素粒子の振る舞いを統一的に理解することが素粒子理論の目的であ る.現在までに行われた様々な素粒子実験及び天文学などの観測事実に矛盾しない理論として,素 粒子標準模型という場の量子論が知られている.素粒子標準模型は既知の素粒子現象を高い精度 で説明することに成功している一方,説明できていないことも幾つかあり,その一つが重力相互 作用である.素粒子標準模型に重力を媒介すると考えられている重力子と呼ばれる素粒子を組み 込むと,繰り込み不可能性と呼ばれる問題が発生し,意味のある量子論を構築することができな い[1].そのため未だ重力を含む量子論の性質は解明されていない.しかし,全ての素粒子相互作 用を統一的に理解するには,重力の量子論の性質の解明が不可欠である. 今現在重力を含む量子論の有力候補とされているものに弦理論がある[2].弦理論では物質の最 小構成単位として点粒子ではなく1次元の長さを持った弦を考える.典型的な弦の長さはPlanck 長さ程度と考えられており,現在観測可能なスケールよりも十分短いため,本来1次元の長さを 持った弦であるが低エネルギー領域では点粒子に見え,現在までの実験事実に矛盾しない.弦に は2つの端点を持つ開いた弦(開弦)と,端点を持たない閉じた弦(閉弦)が考えられ,それぞ れが特定の振動モードにある時にそれが素粒子に見えると考える.特に閉弦のある振動モードに 重力子に相当する状態があり,弦理論が重力を自然に含むと期待される理由の一つになっている. また重力子の繰り込み不可能性の問題についても,弦が1次元の大きさを持っている為に矛盾な く処理できると信じられている.以上のことから弦理論が重力を含む量子論になると期待されて いる. 一方重力の古典論であるEinsteinの一般相対性理論は重力を時空の幾何学として捉えており, 時空の背景に依存せず定式化されている.したがって,弦理論が重力の量子論であるならば,時 空の背景に依存しない定式化が行えると考えるのが自然である.しかしながら,現時点での弦理 論は特定の背景を仮定しその上で摂動的に定義されている.しかも量子化できている背景は時空 が平坦な場合や対称空間など特定の簡単な場合に限られ,それ以外の場合では量子化が困難なこ とが知られている.これは一般の曲がった背景や,ゲージ場上では弦の相互作用が非線形となり, 量子論としての解析が困難になるためである.従って,背景に依存しない定式化を行うためには, まずより一般の背景上での定式化を理解することが必要である. 一般の背景上での量子化を行う手法の一つにHopf代数[3, 4]のツイスト量子化[5, 6]と呼ばれ る物がある.この手法ではHopf代数及びそのツイスト[7]というものを用いることで,一般座標 変換により移りあう事のできる異なる背景上の量子化を互いに関連付けることができる.それに より,ある背景上で量子化が行えていれば,その背景から一般座標変換により移ることのできる 別の背景上での量子化を直ちに得ることができる.これにより,通常の方法では量子化が困難な 背景上での量子化が可能となる. 弦理論の背景としては,計量場gµνだけでなく2階反対称テンソル場Bµνがあることが知られ

(6)

ている.従って背景にB場のある時の量子化についても当然行う必要があるが,一般にB場のあ る背景での量子化は困難なことが分かっている.Hopf代数による量子化手法では,ある背景での 量子化と一般座標変換を直接的に結び付ける事が可能になる.この状況を考えるに,B場に対す る変換をHopf代数により記述できれば,B場のある背景上においても量子化が可能になると期待 される.そのための足がかりとして,最近の研究にてGeneral Geometry[8]という考え方が提唱さ れている.このGeneral Geometryでは計量とB場を同列に扱う事を考える.すなわち,計量の変 化は一般座標変換として扱い,B場の変化はB変換と呼ばれる変換として扱う.そのため,Hopf 代数が一般座標変換だけでなくB変換まで含むように拡張できれば,B場のある背景上での量子 化が可能になると期待される.そのためには,これまでの配位空間でのHopf代数を,相空間も含 むHopf代数に拡張する必要があり,まずその事を本論文では明らかにする. ⼀般相対性理論 (⼀般座標変換) Generalized Geometry (⼀般座標変換 + B変換) 古典論 量⼦論 配位空間での ツイスト量⼦論 計量 背景 相空間での ツイスト量⼦論 量⼦化 +B場 拡張 計量 図 1.1: フローチャート 図1.1は前段落までの流れを整理したフローチャートであり,理論を考える背景,その背景上で の古典論及び量子論をまとめている.上段がこれまでの配位空間でのツイスト量子化に対応し,下 段が本論文で構築する相空間でのツイスト量子化に対応する.これまでの配位空間でのツイスト 量子化では背景として計量を考え,一般座標変換による量子化の変化を取り扱うことができる.本 論文では背景として計量に加えB場がある場合を考え,相空間でのツイスト量子化を構築するこ とで,一般座標変換に加えB変換による量子化の変化を取り扱うことを可能にする.特にB場の ゲージ変換が量子化に及ぼす影響に関して,一般座標変換の場合と同様に明らかにする.またもっ とも簡単な定数B場の場合について,通常の量子化とツイスト量子化の等価性を具体的に示す. 本論文で構築する相空間でのツイスト量子化を用いれば,一般座標変換とB変換により移りあ うことのできる背景での量子化間の関係が明らかになる.従ってある背景での量子化が与えられ ば,そこから一般座標変換及びB変換により移ることのできる曲がった,B場の入った背景上で の量子化を容易に得ることができる.これにより,従来量子化が困難であった背景上でも量子化 が行えるようになる.

1.2

論文の構成

第2章では本論文で必要となる弦理論の知識を整理する.弦理論の作用,弦理論の持つ対称性, 弦の運動方程式,弦理論のスペクトル,経路積分による弦の量子化を定義する.第3章では配位 空間でのツイスト量子化の手法を与える.経路積分のWick縮約をHopf代数により再構築し,そ れを更に発展させツイスト要素Fというもの用いて代数にツイストという操作を行い,ツイスト 量子化の手法を与える.この量子化の立場では,経路積分における正規順序積の意味及び,一般

(7)

座標変換の下での量子化の応答がより明らかになる.第4章では相空間でのツイスト量子化の手 法を与える.前章にて与えた配位空間でのツイスト量子化では,弦理論が対称性として持つB変 換が量子化に与える影響を議論することが難しい.第4章ではB変換が量子化に与える影響を議 論するため,相空間でのツイスト量子化を構築する.そのために相空間での経路積分量子化を確 認し,その後前章にならいツイスト量子化を構成する.第5章では本論文で新しく構築した相空 間でのツイスト量子化について整理し,その意味及び適応方法を議論する.付録には相空間での 経路積分量子化の確認,Hopf代数の定義,ツイスト量子化の詳細な計算などを記した.付録を参 照する必要がある際は,その旨を随時記す.

(8)

2

弦理論の概略

ここでは,本論文で用いる弦理論の基本的事項を簡単に整理する.弦理論の量子化として経路 積分による方法を考え,初めに弦の作用としてPolyakov作用を導入する.そして弦理論が持つ対 称性を確認し,弦理論のスペクトルをみる.次にLagrangian形式の経路積分によって弦を量子化 し,その性質を議論する.ここでの議論は主に[2]に基づく.

2.1

弦の作用

弦理論では1次元の広がりを持った弦がd次元時空を運動する事を考える.今後このd次元時 空のことを標的空間と呼ぶ.弦が運動すると,その運動の軌跡は標的空間中で2次元面をなす.こ れを世界面と呼ぶ.世界面上の点を指定するために,座標(t, σ)を導入する.σは世界面上で空間 方向の位置を示し,tは同じく世界面上で時間方向の位置を示すための座標である.(t, σ)により 世界面のある1点が指定されると,その1点は同時にd次元標的空間の1点も指定する.標的空 間中の座標をXµ, (µ = 0, 1, 2, . . . , d − 1)とすると,世界面はd個の埋め込み関数Xµ(t, σ)とし て記述することができる.このようにして弦理論は埋め込み写像Xµにより,2次元の世界面上の 場の理論と捉えることが出来る. 次に弦の運動を決定する作用を与える.点粒子の場合には,その作用Sparticleは点粒子の運動し た軌跡である世界線の長さに比例し Sparticle= −m ˆ dt q − ˙XµX˙µ. (2.1) と書ける.ただしドット ˙ はt微分を表し,標的空間の添え字の上げ下げは標的空間の計量gµν により行う.点粒子との類推により,弦の作用SNGは,弦が運動した軌跡である世界面の面積に 比例すると考え,作用を SNG = − 1 2πα0 ˆ Σ dtdσ q −det(∂a bXµ) (2.2) と考える.積分領域のΣは世界面を表す.添え字a, bは世界面上の添え字を表し(a, b = 0, 1), σ0 = t, σ1 = σである.またα0はReggeスロープと呼ばれる量で,標的空間の長さの2乗の次元 を持つ定数である.開弦の場合は この作用SNGはNambu-Goto作用と呼ばれる.Nambu-Goto 作用では世界面上の場Xµが平方根の中に入っており,経路積分量子化により場の量子論の構築 に困難が生じる.この問題は点粒子の場合(2.1)でも同様に起きる.点粒子の場合は独立な世界線 計量γtt(t)を新たな自由度として導入し,作用を古典的に等価な次の作用に書き換えることで解決 できる: Sparticle0 = 1 2 ˆ dtγ−1X˙µX˙µ− γm2  . (2.3) このSparticle0 であれば,場の量子論を構築する時に平方根の困難は生じない.ここで言う古典的 等価性とは,新たに導入した計量γttに対する運動方程式を用いれば,(2.3)が(2.1)に帰着する

(9)

標的空間 世 界 面 図2.1: 世界面 ことを意味する.これと同様のことを弦の作用についても行う.すなわち,独立な世界面の計量 γab(t, σ)を新たな自由度として導入し,Nambu-Goto作用を古典的に等価なPolyakov作用に書き 換える: SPolyakov= − 1 4πα0 ˆ Σ dtdσ√−γ γab∂aXµ∂bXµ. このPolyakov作用では平方根の困難は解決されており,経路積分での取り扱いが容易である.以 下本論文ではLagrangian形式の弦の作用として,このPolyakov作用SPolyakovを採用し,特に断 らない限り単に作用Sという場合はPolyakov作用のことを指すものとする.このPolyakov作用に は世界面上の座標に対するゲージ自由度があり,計量をMinkowski平坦ゲージγab =diag(−1, +1) にゲージ固定することができる: SM[X] = − 1 4πα0 ˆ Σ dtdσ(−∂tXµ∂tXµ+ ∂σXµ∂σXµ). (2.4) 以下Minkowski計量を持つ作用の事を本論文ではSM と書く.

2.2 Polyakov

作用の持つ対称性

先にゲージ固定の際にPolyakov作用のゲージ自由度を用いた.具体的にPolyakov作用は以下 の対称性を持つ: 1. d次元標的空間でのPoincaré対称性: d次元標的空間のLorentz変換Λと並進aに対して, X0µ(t, σ) = ΛµνXν(t, σ) + aµ γab0 = γab(t, σ) の変換に対する対称性.

(10)

2. 世界面座標(t, σ)の一般座標変換に対する対称性: 世界面の座標を一般座標変換により, (t, σ) 7→ t0(t, σ), σ0(t, σ) とした際に, X0µ(t0, σ0) = Xµ(t, σ) γab0 (t0, σ0) = ∂σ c ∂σ0a ∂σd ∂σ0bγcd(t, σ) の変換に対する対称性. 3. 世界面座標(t, σ)の局所Weyl対称性: X0µ(t, σ) = Xµ(t, σ) γ0ab(t, σ) = e2ω(t,σ)γab(t, σ)

の変換に対する対称性.Nambu-Goto作用は3.の局所Weyl対称性を持たないが,Polyakov 作用では余分な自由度として世界面の計量γabを入れたことで,Wely対称性が現れている.

2.3

弦理論で用いる世界面の座標

本論文では相空間における弦理論の構成を議論するが,その際世界面上の座標の入れ方を具体 的に考える必要が生じるため,ここでは用いる座標についてまとめておく. (t, σ)座標: 1次元の大きさを持つ弦が標的空間を運動した際にできる世界面上に(t, σ)座標は張られる.世 界面上に弦の長さ方向にσ,時間方向にtをとる.この(t, σ)座標はMinkowski型計量γab= ηab = diag(−, +)をもつ. (σ, τ )座標: (t, σ)座標のtに対して Wick回転 (2.5) τ = it を行い,世界面の計量をEuclid化した座標を(σ, τ )座標と呼ぶ.この(σ, τ )座標はEuclid型計量 γab= δab=diag(+, +)である.

(11)

世 界 面

Minkowski型計量

図2.2: (t, σ)座標系 世 界 面 Euclid型計量 図2.3: (σ, τ)座標系 w座標: (σ, τ )座標から ( w = σ + iτ ¯ w = σ − iτ なる座標変換によってw座標が構成される.w座標は計量γw ¯w = γww¯ = 12, γww= γw ¯¯w = 0を持 ち,wとw¯は独立な座標変数と捉えられる. w座標で書いた作用SE はしばしば用いられ, SE[X] = 1 4πα0 ˆ Σ d2σ (∂σXµ∂σXµ+ ∂τXµ∂τXµ) である.Euclid型計量での作用であるため,全体の符号が変わっていることに注意する.Euclid 型計量での作用についての詳しい議論は付録Aに載せた.この作用はw座標を用いれば SE[X] = 1 2πα0 ˆ Σ d2w∂Xµ∂X¯ µ と書ける.ただし∂ := ∂w∂ , ¯∂ := ∂ ¯w であり,Jacobianを計算すれば分かるように,d2w = 2dσdτ である. z座標: w座標からさらに ( z = ei ¯w = eτ +iσ ¯ z = e−iw = eτ −iσ の座標変換によってz座標が構成される.z座標は計量γz ¯z = γzz¯ = 2z ¯1z, γzz = γz ¯¯z= 0を持ち,z とz¯は独立な座標変数と捉えられる.

(12)

世 界 面

図2.4: w座標系 図2.5: z座標系

2.4

共形対称性

作用は2.2節で示した3つの対称性に加え,共形対称性を持つ.共形対称性とは共形変換,すな わち2直線の交わる角度を変えない変換(等角写像)の下で,作用が不変であることを言う.w座 標での一般の共形変換は任意の正則関数f,反正則関数f¯に対し, 共形変換: ( w 7→ w0 ¯ w 7→ ¯w0 w0 = f (w), w¯0 = ¯f ( ¯w) と表され,Polyakov作用SEには共形対称性がある.共形不変な場の理論のことを共形場理論と いい,弦理論は共形場理論の1つである.世界面の一般座標変換× Weyl変換のゲージ自由度によ り,世界面を平坦ゲージにゲージ固定してもなお残っている対称性が共形対称性であり,共形変 換は座標変換ではなく,2点の距離を実際に変化させる変換である.

2.5

運動方程式

場Xについての変分をとると δXSE = − 1 πα0 ˆ Σ d2zgµνδXXµ∂ ¯∂Xν = 0 = − 1 πα0 ˆ Σ d2zgµνδXXµ∂∂X¯ ν = 0 (2.6) であるから,運動方程式は ∂ ¯∂Xµ= ¯∂∂Xµ= 0 (2.7) である.運動方程式の解Xµは,∂Xµ を正則関数にするもの,もしくは∂X¯ µ を反正則関数にす るものである.ただし(2.6)では部分積分を行い表面項の寄与がないとしている.この部分積分に

(13)

おいて一般には表面項の寄与があるが,本論文では以下のように境界条件を課し,表面項を零に している.それぞれの条件はNeumann境界条件及び周期的境界条件と呼ばれるものである. 1. Neumann境界条件 開弦の自由端条件に相当し, ∂aXµ(t, σ = l) = ∂aXµ(t, σ = 0) = 0 と境界条件を課す. 2. 周期的境界条件 閉弦の周期的境界条件に相当し, Xµ(t, σ = l) = Xµ(t, σ = 0) ∂aXµ(t, σ = l) = ∂aXµ(t, σ = 0) γab(t, σ = l) = γab(t, σ = 0) と境界条件を課す.

2.6

弦理論のスペクトル

基本的に閉弦の場合について議論する.運動方程式(2.7)から,on-shellの場合に場Xは ∂Xµ:正則 ¯ ∂Xµ:反正則 である.したがってLaurent展開により一般に ∂Xµ(z) = −i r α0 2 ∞ X n=−∞ αµn zn+1 (2.8a) ¯ ∂Xµ(¯z) = −i r α0 2 ∞ X n=−∞ ˜ αµn ¯ zn+1 (2.8b) と表すことが出来る.展開係数αµn, ˜αµnは留数定理により求めることが出来,それぞれ生成消滅演 算子と同様の代数関係 [αµm, ανn] = mηµνδm+n,0 [ ˜αµm, ˜ανn] = mηµνδm+n,0 [αµm, ˜ανn] = 0 を満たす.αµm, ˜αµm(m > 0)が消滅演算子,αµm, ˜αµm(m < 0)が生成演算子として働く.(2.8a)(2.8b) を積分することにより,場Xについて Xµ(z, ¯z) = xµ− iα 0 2 p µln |z|2+ i α0 2 12 ∞ X m=−∞ m6=0 1 m  αµm zm + ˜ αµm ¯ zm  pµ= 2 α0 1 2 αµ0 = 2 α0 1 2 ˜ αµ0

(14)

を得る.ただし,xµは弦の位置の零モードで,pµは弦の標的空間での運動量である.. 弦の振動の励起状態は,調和振動子の場合と同様に弦の基底状態|0; kiに生成演算子αµm, ˜αµm (m < 0)を作用させることで構成できる.ただし|0; kiのkは弦の重心運動量を表し,|0; kiは全ての消 滅演算子で消される弦の基底状態を表す.基底状態に生成演算子を作用させ,弦の第一励起状態 を作ることを考える.作られる弦の状態にPoincaré対称性を要求すると,可能な弦の状態は質量 0の状態のみとなり,具体的には 開弦: eµαµ−1|0; ki 閉弦: eµναµ−1α˜ν−1|0; ki となる事が知られている.ただし振動方向はeµkµ = 0, eµνkµ = eµνkν = 0でありeµ ∼= eµ+ γkµ, eµν ∼= eµν+ aµkν+ aνkµの同一視も行う.つまり各µ, νの添え字はd − 2方向のみ走る.こ れは作られる弦の状態のうち,1方向は負ノルムとなり非物理的なため考えず,もう1方向は残り のD − 2方向と独立でないため勘定しない事による.1 これらの第一励起状態から αµ−1|0;ki →ゲージ粒子Aµ αµ−1α˜ν−1|0; ki →重力場gµν, B場Bµν,ディラトンΦ に相当する振動状態が現れることが知られている.

2.7

経路積分による量子化と正規順序積

次に弦理論のLagrangian形式の経路積分による量子化を説明する.弦理論のユークリッド化さ れたPolyakov作用はz座標では SE[X] = 1 2πα0 ˆ Σ d2z∂Xµ∂X¯ µ と書ける.弦理論で相関関数は経路積分により決定され,任意の頂点演算子をOで表せば hOi0 = ´ DXOe−SE ´ DXe−SE (2.9) と定められる.ここで分母は規格化因子である.この相関関数を摂動論的に計算する場合は経路 積分ではWick縮約をとることになる.しかし頂点演算子Oは局所演算子であるために自己縮約 により発散が生じてしまう.この問題を回避するために経路積分では自己縮約はとらないという ルールを恣意的に課す必要がある.これを正規順序なる物を用いることで表現する.正規順序を 表す記号を: O :と定め : F [X] := N . F [X] N :=exp  −1 2 ¨ d2zid2zjGµν(zij) δ δXµ(z i) δ δXν(z j)  (2.10) と定義する.ここで記号.はN に含まれる汎関数微分が頂点演算子に作用している事を表してお り,Gµνは世界面上の自由場のGreen関数である.ここでGreen関数は Gµν(zij) = hXµ(zi)Xν(zj)i0 1BRST量子化の立場での説明

(15)

で与えられる.このGreen関数の値は世界面のトポロジーに依存し,例えば閉弦の場合にz座標 では, Gµν(zij) = hXµ(zi)Xν(zj)i0= − α0 2 η µνln |z ij|2 となる.このように正規順序化されたものを経路積分に挿入すれば,Wick縮約によって現れる自 己縮約の発散項と正規順序から来る発散項がちょうど相殺し,相関関数がwell-definedとなる. 正規順序化された頂点演算子同士の積は : F [X] :: G[X] :=exp  + ¨ d2zid2zjGµν(zij) δF δXµ(z i) δG δXν(z j)  : F [X]G[X] : (2.11) と表すことが出来る.ただし δF δX, δG δXはそれぞれF [X],G[X]にのみ作用する汎関数微分である. この表式は経路積分中で: F [X]G[X] :には発散が無いために,本来: F [X] :: G[X] :にあるはず の発散項を付け加える事をしている.

(16)

3

Hopf

代数のツイストによる弦の量子化

(配位空間)

前章では弦理論の量子化を経路積分により行った.第3章では配位空間でのツイスト量子化を 構築する.初めにLagrangian形式の経路積分量子化が,Hopf代数のツイストと呼ばれるものを 用いた量子化で再構築できる事を示す.その後,このツイスト量子化の見地から経路積分量子化 での正規順序積の意味や,理論の対称性,特に一般座標変換について議論する.ここでの議論は 主に[5, 9, 6]に基づく.

3.1

古典的な汎関数変分としての

Hopf

代数

3.1節ではツイスト量子化を行う為の準備を行う.特にHopf代数及びそのmodule代数という ものを古典的な汎関数変分と汎関数を考えることで導入する.Hopf代数の詳細付いては付録Bに 示す.

3.1.1 H-module 代数とは

弦理論で相関関数を計算する時,頂点演算子を経路積分に挿入する.ここでは後にHopf代数の module代数となる,弦の状態に対応するXµの汎関数の全体を考える. 標的空間での弦の振動状態はXµにより表される.同時にXµ(z) (µ = 1, 2, . . . , d)は世界面Σ上 の座標z ∈ Σを入れると,標的空間の座標X ∈ Rdを与える埋め込み写像 埋め込み写像X : Σ 3 z 7−→ X(z) ∈ Rd である. 場Xを用いて作られる任意の関数F [X] ∈ C∞(Rd)を考える.F は標的空間Rdで定義されて いる関数であるが,埋め込み写像Xの引き戻し 引き戻しX∗: C∞(Rd) −→ C∞(Σ) によって世界面上で定義された関数F[X(z)] (X∗F )(z) = F [X(z)] (3.1) と捉えることができる.X∗は関数を引き戻す作用を表し(3.1)で定義される.同じく標的空間の 1-形式Ω1(Rd)についても引き戻し 引き戻しX∗: Ω1(Rd) −→ Ω1(Σ)

(17)

により世界面上の1-形式Ω1(Σ)と捉えられる. Ω1(Rd) 3 ω = ωµdXµ7−→ X∗ω = X∗(ωµdXµ) = ωµ[X(z)]∂aXµ(z)dza∈ Ω1(Σ) 同様に標的空間Rd上で定義された任意の高階のテンソル場も,引き戻しにより世界面Σ上で定 義されたテンソル場と捉えられる.このことから,標的空間Rdで定義されたの場Xの任意の関 数は引き戻しにより世界面Σ上の場と捉えられる.そのため,弦理論では標的空間Rdでの弦の 状態を世界面上の関数Xµ(z),すなわち頂点演算子として捉える.

I[X] : Map(Σ, Rd) → Cなる任意の関数I[X]を考える.Map(Σ, Rd)というのは埋め込み写像

Xを意味する.I[X]の例としては I[X] = ˆ d2zρ(z)F [X(z)] (3.2) という汎関数が考えられる.ρ(z, ¯z)は任意の重み付け関数である.この重み付け関数ρとしてDirac デルタ関数を選んだ場合 F [X](zi) = ˆ d2zδ2(z − zi)F [X(z)] (3.3) となり,ziに局所的な汎関数を考えることができる.これら(3.2)と(3.3)は量子化後にそれぞれ 積分された頂点演算子と局所頂点演算子に対応する. さて,複素数Cに値を持ち,埋め込みX及びその微分を引数に持つ汎関数I[X]の全体集合A を導入する.I1[X], I2[X] ∈ Aとして,これらの積を I1I2[X] = I1[X]I2[X] (3.4) と定義する.(3.4)の右辺はC × C = Cであるので,左辺はI1I2[X] ∈ Cである.従ってI1I2 ∈ A が分かり,Aには自然な代数構造が入る.I1,I2が共に局所的であった場合は,I1I2は双局所的 である.弦理論で頂点演算子の2点相関関数を考える時は,この状況に対応する.A上の代数の 積をmを m : A ⊗ A −→ A m(F ⊗ G) = F G ただしF, G ∈ A と定義する.このm積は明らかに可換で結合法則が成り立たつ.以上A上の代数のことをH-module 代数と呼ぶ.弦理論を経路積分により量子化する時は,H-module代数は正規順序のとられた頂点 演算子の同士の代数に対応している.1

3.1.2 Hopf 代数とは

3.1.1節でH-module代数Aを定義したが,Aに作用する代数としてHopf代数Hを導入する. 頂点演算子が引数としている埋め込みXの変化 Xµ7−→ X0µ= Xµ+ ξµ (3.5) 13.2.3節にて詳しく述べる.

(18)

を考える.ことのきξµ= ξµ[X]ならば,この変化は標的空間の一般座標変換(diffeomorphism)で ある.この変化を引き起こす演算子として eξ : Xµ7→ X0µ ξ = ˆ d2zξµ(z) δ δXµ(z) (3.6) なるeξを考える.ξµが十分小さい場合は,より一般にAに作用する写像として, eξ : A −→ A を定めることができる.従って無限小の一般座標変換により頂点演算子がどのように変化するか は,この変分演算子ξを作用させることで調べられる.最も簡単な場合で確認すれば, ξ . Xµ(z) = ˆ d2z0ξν(z0)δX µ(z) δXν(z0) = ˆ d2z0ξν(z0)δνµδ2(z − z0) = ξµ(z) となり,任意のAに対しても正しく作用するのは明らかである.ここで,.の記号は汎関数微分 がH-module代数の元に作用していることを表すのに用いた.(記号.の正確な意味については次 段落で述べる.) このξはAの元に作用する汎関数ベクトル場であり,このようなξの全体集合をXで表す.ま たXのうちξがXを含まずzのみの関数である部分集合をCで表す.つまりCは一般座標変換で ない部分に対応し,世界面Σから標的空間Rdへの埋め込み写像Xの変化を表す.今後量子化を 行う際にこのCが重要な役割を果たす.Xの元ξがAの元F [X]に作用する事を記号.を用いて, ξ . F [X]と書く事にする.(ξ . F [X]) ∈ Aであるので,XはAに連続して作用することができる. そこでXの要素を入れ替えて2回連続で作用させる事で,Lie括弧積を自然に導入する.すなわ ち,X上でLie括弧積を [ξ, η] . F : = ξ . (η . F ) − ξ . (η . F ) ξ, η ∈ X = ˆ d2z  ξµδη ν δXµ− η µ δξν δXν  (z) δ δXν(z) (3.7) と定義することで、XはLie代数になる.上の括弧積がLie括弧積の3要件を満たすのは明らかで ある.XにLie代数の構造が入ったので,C上にXの普遍包絡環H = U (X)を定義できる.そし てこの普遍包絡環は自然なcocomutativeなHopf代数Hの構造を持つ事が知られている.ここで 持つHopf代数Hの構造は以下である.(詳しくは付録Bを参照.)

(19)

Hopf代数   Hopf代数 H = U (X) の上に,演算µ, ι, ∆, , Sが定義されている. µ(ξ ⊗ η) = ξ · η , ι(k) = k · 1 ∆(1) = 1 ⊗ 1 , ∆(ξ) = ξ ⊗ 1 + 1 ⊗ ξ (1) = 1 , (ξ) = 0 S(1) = 1 , S(ξ) = −ξ (3.8) ただしξ, η ∈ X (ξ, ηは基関数) , k ∈ C   このとき,Hopf代数HのH-module代数Aのm積に対する作用の仕方を ξ . m(F ⊗ G) = m∆(ξ) . (F ⊗ G) (3.9) と定義する.この式が成り立つことを共変性があると言う.共変性は汎関数微分の際にLeibniz則 が成り立つことを意味する.

3.2 Hopf

代数による弦の量子化

2.7節では経路積分による量子化を確認した.ここではHopf代数のねじれによっても量子化が 行える事をみる.更に経路積分量子化で正規順序積を用いることの意味がツイスト量子化を行う ことでよりはっきりする.

3.2.1 Hopf 代数による Wick 縮約

ツイスト量子化が経路積分量子化と等価であるためには,少なくとも両方で計算した相関関数が 一致しなくてはならない.経路積分量子化では2点相関関数の真空期待値V.E.V.を求める際に,

Wick縮約により計算する.ツイスト量子化もまずはそれに習いHopf代数によってWick縮約を とることを考える. まずは発見的に次の2つの写像を考える. N−1. : A −→ A , N−1=exp 1 2 ¨ d2z1d2z2Gµν(z1, z2) δ δXµ(z 1) δ δXν(z 2)  τ : A −→ C , τ (I[X]) = I[X] X=0

N−1Hopf代数Hの元であり,それがH-module代数Aの元に作用し別のH-module代数の

元に変えている.いま,Green関数にX依存性はないので,特にN0−1∈ U (C)である.τの方は

H-module代数Aの中に入っている弦の場Xの値を0にする写像である.この二つの写像を組み 合わせて,経路積分期待値(3.10)を次の合成写像で書くことができる.

(20)

hI[X]i0 = τ ◦ N−1. I[X] (3.10) この表式はただ単に経路積分量子化のやり方をHopf代数で書き換えたに過ぎないので,以後この (2.9)を単に経路積分V.E.V.と呼ぶ.経路積分の時はそのままでは自己縮約による発散が発生した が,この(3.10)の表式にも同じ発散が生じる.経路積分ではこの自己縮約を取り除くために,経路 積分に挿入されている頂点演算子は正規順序化されたものであると手で条件を課していた.従っ てHopf代数で書く場合もこの正規順序化を行う必要がある.正規順序化をHopf代数で書けば, 自己縮約の発散項を取り除くように, : F [X] : (z) = N . F [X](z) (3.11) と書ける.ただしこのN は以前経路積分量子化で正規順序化するときに使っていた(2.10)である. この正規順序化する為のHopf代数N はWick縮約を取る為のHopf代数N−1とHopf代数の元 として逆であるので,従って局所演算子1つだけの経路積分V.E.V.は h: F [X] : (z)i0 = τ ◦ N−1. (N . F [X](z)) = τ (F [X](z)) となる.つまり正規順序化された局所頂点演算子が一つだけ挿入された経路積分V.E.V.は,頂点 演算子が定数項を持たない限り0となる.次に2つの正規順序化された局所演算子の積の経路積 分V.E.V.に対しては, h: F [X] : (z1) : G[X] : (z2)i0= h(N . F [X](z1)) (N . G[X](z2))i0 = hm [(N ⊗ N ) . (F [X](z1) ⊗ G[X](z2))]i0 = τ ◦ N−1. m [(N ⊗ N ) . (F [X](z1) ⊗ G[X](z2))] = τ ◦ m∆(N−1) (N ⊗ N ) . (F [X](z 1) ⊗ G[X](z2))  と計算できる.ここで∆(N−1)(N ⊗ N )の部分の作用について考える.そのために F :=exp  − ¨ d2z1d2z2Gµν(z1, z2) δ δXµ(z 1) ⊗ δ δXν(z 2)  (3.12) というH ⊗ Hの元を考え,このF及び正規順序積を行う演算子N を F :=exp(F ) , N :=exp(N) と書く.(2.10)からNの具体的な表式はわかるので,余積によって ∆(N ) = ∆  −1 2 ¨ d2z1d2z2Gµν(z1, z2) δ δXµ(z 1) δ δXν(z 2)  = −1 2 ¨ d2z1d2z2Gµν(z1, z2) ×  δ δXµ(z 1) δ δXν(z 2) ⊗ 1 + 2 δ δXµ(z 1) ⊗ δ δXν(z 2) + 1 ⊗ δ δXµ(z 1) δ δXν(z 2)  = N ⊗ 1 + 1 ⊗ N + F

(21)

となる.よって ∆(N ) = ∆(eN) = e∆(N ) = eN ⊗1+1⊗N +F = eN ⊗1e1⊗NeF = eN ⊗ 1 1 ⊗ eN eF = (N ⊗ 1) (1 ⊗ N ) F = (N ⊗ N ) F である.したがって F = N−1⊗ N−1 ∆(N ) F−1= ∆ N−1 (N ⊗ N ) が示される.つまり知りたかった∆(N−1)(N ⊗ N )の部分は F = N−1⊗ N−1 ∆(N ) =exp  − ¨ d2z1d2z2Gµν(z1, z2) δ δXµ(z 1) ⊗ δ δXν(z 2)  のHopf代数上での逆であることがわかった.それはつまり ∆(N−1)(N ⊗ N ) =exp  + ¨ d2z1d2z2Gµν(z1, z2) δ δXµ(z 1) ⊗ δ δXν(z 2)  である.従って,∆(N−1) (N ⊗ N )の部分の作用は,テンソル積にまたがる部分にのみWick縮 約を取り,自己縮約は取らないようになっている.以上のことをまとめれば,それぞれ正規順序 化された2つの局所演算子の積の経路積分V.E.V.はツイスト要素Fを用いて, h: F [X] : (z1) : G[X] : (z2)i0 = τ ◦ mF−1. (F [X](z1) ⊗ G[X](z2))  (3.13) と書ける.ここで現れたF ∈ H ⊗ Hを今後ツイスト要素という名前で呼ぶことにする.

3.2.2 量子化を Hopf 代数のツイストと捉える

3.2.1節での議論から,2点相関関数の経路積分V.E.V.をHopf代数で書き直すとツイスト要素 を用いて書けることがわかった.この節ではこの議論をさらに推し進め,Hopf代数によって弦理 論のV.E.V.を定める方法を考える. まず,ツイスト量子化のセットアップは • H = U(X)を汎関数ベクトル場のHopf代数とする. • Aを古典的な汎関数の代数とする.(Aはm積のH-module代数の構造が入っている.) • ツイスト要素Fとしては2-cocycle conditionを満たすものを用いる.

(22)

とする.ここで”2-cocycle conditionを満たす”というのは

(F ⊗id)(∆ ⊗ id)F = (id ⊗ F)(id ⊗ ∆)F (3.14)

が成り立つことを意味する.この2-cocycle conditionという条件はV.E.V.の値がWick縮約の取り 方(縮約の順序)に依存しない事を保証している.いま用いているツイスト要素(3.12)は2-cocycle conditionを満たす.2 ツイスト要素Fが与えられると,ツイストされた Hopf代数HFを作ることができる.[7] ツイストされたHopf代数   ツイストされたHopf代数の元はHopf代数と変わらず HF = U (X) であり,この上に演算µ, ι, ∆F, , SFが定義されている.µ, ι, はHopf代数の時と変わらない が,∆F, SFについてはツイストされており ∆F(h) = F ∆(h)F−1 SF(h) = U S(h)U−1 , U = µ(id ⊗ S)F (3.15) ただし,h ∈ HF = U (X) とする.  

Hopf代数がツイストされることに合わせて,H-module代数Aの方もツイストされHF-module

代数AF になる.AF の元はAと変わらないが,その上での積はツイストされmFに変わる. mF(F ⊗ G) := m ◦ F−1. (F ⊗ G) := F ∗F G このmF は結合則を保つ.また,いま用いているツイスト要素(3.12)はGµν(z1, z2) = Gνµ(z2, z1) であるため,mF は可換積F ∗F G = G ∗F Fである. このHF-module代数AF の元に対してのV.E.V.の取り方を以下のように定義する. I[X] ∈ AF V.E.V. : τ(I[X]) (3.16) τ : AF −→ C

I[X] 7−→ τ (I[X]) = I[X] X=0 H-module代数Aに対するV.E.V.の取り方では,正規順序化N .を作用させてから,τ を作用さ せていたが,HF-module代数AF に対しては単にτ を作用させるだけとする. AF の元同士の積のV.E.V.については,AF 上の積が∗F であることに注意すれば, V.E.V. : τ (F ∗F G) (3.17) 2付録C参照

(23)

F, G ∈ AF

となる.このV.E.V.の求め方は

τ (F ∗F G) = τ ◦ mF−1. (F ⊗ G)

であるので,経路積分V.E.V.の取り方(3.13)と一致している.2-cocycle conditionが結合則を保 証しているので,n個のAF の元の積も同様に V.E.V. : τ (F1∗F F2∗F · · · ∗F Fn) と定義することができる.このV.E.V.もやはり経路積分V.E.V.と一致する. 以上のことから,(3.12)のツイスト要素Fによる量子化の方法は,経路積分量子化と同じV.E.V. を与える.このツイスト要素Fによる量子化の方法が,理論の作用SEを与えるのではなく,ツイ スト要素Fを与えることによって決定されている点が重要である.しかも,いま用いている(3.12) のツイスト要素FはGreen関数GにX依存性が無く,F ∈ U (C) ⊗ U (C)であるから,世界面の トポロジーを変えたときにはそれに合わせてGreen関数を変えるだけでよい.つまり,Hopf代数 のねじれによる量子化(ツイスト量子化)では,ある古典的なHopf代数とそのH-module代数が 与えられており,それに加えてツイスト要素が与えられれば,そこからツイストされたHopf代数 HF とツイストされたmodule 代数AFが定まりV.E.V.を定めることができる.このツイスト要 素として別な物を用いれば,異なる量子化を行うこともできる.つまりツイスト要素が量子化を決 定している.このように,ツイスト量子化ではツイスト要素FによってHopf代数H,H-module 代数がそれぞれツイストされ,Hopf代数HF,HF-module代数AFになることを量子化とよぶ.

3.2.3 経路積分での正規順序積の意味

経路積分量子化において,経路積分中に挿入する頂点演算子が正規順序化されていなくてはな らない事情を,Hopf代数の立場から解釈する.ここでは古典的なHopf代数HとそのH-module

代数A,経路積分量子化で用いるWick縮約と正規順序積,ツイスト量子化で用いるツイストさ れたHopf代数HF とツイストされたmodule代数AF の関係について整理し,確認する. まず経路積分量子化を整理して捉えるために,正規順序化Hopf代数Hˆ及び正規順序化Hˆ-module 代数Aˆを導入する.これらの正規順序化された代数の元はツイストされたHopf代数HF とツイ ストされたmodule代数AFから写像∼により得ることができる.すなわち, HF 3 h ∼ −→ ˜h = N hN−1 ∈ ˆH AF 3 F ∼ −→: F := N . F ∈ ˆA と定義する.HˆはHF の内部自己同型である.正規順序化Hˆ-module代数Aˆの元はN の作用に よって自己縮約から来る発散項が取り除かれており,経路積分中に挿入される頂点演算子を表す. 図で各代数を整理すると, H −−−−−→ Hツイスト F −→∼ Hˆ O O O A −−−−−→ Aツイスト F ∼ −→ Aˆ となっている.一番左の(H, A)が古典的なセットで,真ん中の(HF, AF)と右の( ˆH, ˆA)は量子的 なセットで,(HF, AF)がツイスト量子化に対応しており,( ˆH, ˆA)が従来からの経路積分量子化に

(24)

対応している.正規順序化Hˆ-module代数Aˆの元は正規順序化されておりAの元とは違うが,そ の上に入っている代数構造としては,古典的なH-module代数Aに入っている構造と変わらずm 積が入っている.このことはAFの2つの元の積に写像∼を作用さてると見ることができる.す なわち, : F ∗F G : = N . (F ∗FG) = N .m ◦ F−1. (F ⊗ G) = N .m ◦ ∆(N−1)(N ⊗ N ) . (F ⊗ G) = N N−1m ◦ (N ⊗ N ) . (F ⊗ G) = m ◦ (N ⊗ N ) . (F ⊗ G) = m(: F : ⊗ : G :) =: F :: G : (3.18) と計算でき,Aˆの2元はAのときと同様なm : ˆA ⊗ ˆA → ˆAなる積で掛け合わされる.同じく正 規順序化Hopf代数Hˆについても,その元はHの元とは違うが,その上に入っている代数構造は Hに入っている構造と同じである.すなわち,(3.8)で定義したµ, ι, ∆, , SがHˆ上にも同様に定 義される.これにより,(HF, AF)上での計算を写像∼により( ˆH, ˆA)上での計算に焼き直してみ ると, h . F −→ N . (h . F ) = N hN∼ −1N . F = ˜h. : F : h . (F ∗F G) ∼ −→ N . [h . (F ∗F G)] = N h . mF−1. (F ⊗ G) = N h . m∆(N−1)(N ⊗ N ) . (F ⊗ G) = N hN−1. m [(N ⊗ N ) . (F ⊗ G)] = ˜h . (: F :: G :) などとできる.正規順序化Hˆ-module代数Aˆの元に対してのV.E.V.を定義する必要があるが, これはツイストされたmodule代数AF に対してのV.E.V.の定義(3.16)によってAF の元F の V.E.V.が V.E.V. : τ(F) = τ ◦ N−1. (N .F) = τ ◦ N−1. :F : と定められている事,やAF の2つの元F, Gの積のV.E.V.が τ (F ∗F G) = τ ◦ m ◦ F−1. (F ⊗ G) = τ ◦ N−1. (: F :: G :) となることから,正規順序化Hˆ-module代数Aˆの元に対してのV.E.Vを V.E.V. : τ ◦ N−1 . (I[X]) I[X] ∈ ˆA

と定義する.この正規順序化Hˆ-module代数Aˆに対するV.E.V.の定め方は(2.9)の経路積分V.E.V. の定め方と一致しており,正規順序化Hˆ-module代数Aˆの元とその代数は経路積分に挿入される 正規順序化された頂点演算子とその代数同一視すべきことが分かる.このことから,経路積分量 子化は,実は正規順序化代数( ˆH, ˆA)による量子化であることが分かる.

(25)

ただしツイストされた代数(HF, AF)による量子化と正規順序化代数( ˆH, ˆA)による量子化では, 標的空間の背景への依存性が異なる点に注意する必要がある.というのは,( ˆH, ˆA)の量子化では V.E.V.は写像τ ◦ N−1 : ˆA → Cにより定まるが,N−1には背景依存のあるGreen関数が含まれ ているので,V.E.V.の定め方が背景に依存している.V.E.V.の定め方が背景に依存するというの は,量子論における真空が背景に依存していることを意味する.したがって,経路積分量子化では 一般座標変換などで標的空間の計量が変わった場合などに,その時空のに合った真空に変える必要 がある.一方のツイストされた代数(HF, AF)による量子化の側では,V.E.V.は写像τ : AF 7→ C により定まるので,V.E.V.の定め方が背景に依らず,その真空も背景と関係なく決めることがで きる.ツイストされた代数(HF, AF)による量子化では背景の変化はは唯一ツイスト要素Fに影 響する.これらのことからツイストされた代数(HF, AF)による量子化は,経路積分量子化よりも 背景の変化をより上手く扱うことができ,より一般的な量子化といえる.この性質は3.3にてより 明らかになる.

3.3

時空の対称性

3.2節では量子化をHopf代数のツイストとして定式化した.すなわち,ツイストされたHopf代 数HFとツイストされたmodule代数AFを考え,頂点演算子はAFの元であり,それらの積はツ イストされた積∗F によってとられ,V.E.V.は簡単に写像τ : AF 7→ Cによって求められれる事

をみた.H-module代数Aがツイストされたmodule代数AF へ変わったのは,Hopf代数Hがツ

イストされたHopf代数HF へと変化した事に付随している.3.3節ではそのHopf代数自身のツ イストに注目する.まずはツイストされたHopf代数の一般的な構造を議論し,その後,弦理論が 標的空間に持っている一般座標変換などの対称性と,Hopf代数のツイストの関係について詳しく 見ていく.

3.3.1 量子対称性としてのツイストされた Hopf 代数とその module 代数への作用

3.2.2節で説明したツイストの方法について引き続き説明する.まずはHopf代数HがHFにツ イストされると共変性(3.9)を保つために,それに伴いH-module代数AもAF にツイストされ なくてはならないことを確認しておく. ツイスト要素FによってHopf代数がツイストされたHopf代数HF になる時,余積∆は ∆F(h) = F ∆(h)F−1 h ∈ HF へと変更され,同時にmoduleのm積を mF = m ◦ F−1 と変更すれば,共変性(3.9)は保たれる.確認すると,h ∈ HF及びF, G ∈ AF として, h . mF(F ⊗ G) = h . m ◦ F−1. (F ⊗ G) = m ◦ ∆(h)F−1. (F ⊗ G) = m ◦ F−1F ∆(h)F−1. (F ⊗ G) = mF∆F(h) . (F ⊗ G) (3.19)

(26)

となり,共変性は保たれる.第一行目から第二行目に移る際に,(H, A)に対する共変性(3.9)を用 いた.従って,ツイストされた後でも共変性を保つためにはH → HF, A → AFはセットで変換 されなくてはならない. 量子化を考えると,ツイストされたmodule代数AF と写像τ : AF → Cのセットが量子論の V.E.V.を定めていた.元々古典的なHopf代数Hは標的空間の一般座標変換や世界面の埋め込み の変化などの変換を表していた.故に量子化された後(ツイストされた後)の対称性の生成子はツ イストされたHopf代数HF が表すと考えられる.言い換えれば,古典的な時空の対称性を表す Hはツイストによって量子対称性HFに変換される.その量子対称性の変換はV.E.V.の中では, 頂点演算子をI[X] ∈ AF,量子対称性の生成子をh ∈ HF として, τ (h . I[X]) (3.20) と表される. この対称性について議論するために,慣れ親しんだ経路積分量子化に一旦戻って考える.まず h . F は写像∼によって, h . F −→ N . (h . F ) = N hN∼ −1N . F = ˜h. : F : (3.21) h ∈ HF , F ∈ AF と移される.積に対しても同様に h . (F ∗F G) ∼ −→ ˜h . (: F : ⊗ : G :) (3.22) h ∈ HF , F, G ∈ AF となる.HˆのAˆへの作用における共変性を確認すると,(3.19)の両辺にN を作用させて, N h . mF(F ⊗ G) = ˜hN . (F ∗F G) = ˜h . m(: F : ⊗ : G :) = N h . m ◦ F−1. (F ⊗ G) = m ◦ ∆(N h)∆(N−1)(N ⊗ N ) . (F ⊗ G) = m ◦ ∆(˜h)(: F : ⊗ : G :) となり,( ˆH, ˆA)についても共変性は成り立っている.繰り返しになるが,正規順序化module代 数Aˆは経路積分によりV.E.V.を求めた際に発散が生じないようにしてあるため,経路積分外で は逆に発散している.そのため,これらのAˆに関する表式は経路積分中でwell-definedとなるも のである.それではこれらの表式を経路積分に入れてみれば,1つの局所演算子の場合については D˜h. : F :E 0= τ ◦ N −1. (N hN−1N . F ) = τ (h . F ) (3.23) となり,2つの局所演算子の積については, D˜h . (: F :: G :)E 0 = τ ◦ N −1 .h˜h . m ◦ (N ⊗ N ) . (F ⊗ G)i = τ ◦ h ◦ N−1. m ◦ (N ⊗ N ) . (F ⊗ G) = τ ◦ h . m∆(N−1)(N ⊗ N ) . (F ⊗ G) = τ (h . (F ∗F G)) (3.24)

(27)

となる.(3.23),(3.24)を見ると左辺は正規順序化module代数の元である頂点演算子に対称性の 変換として正規順序化されたHopf代数が作用している.一方の右辺はツイストされたmodule代 数の元である頂点演算子に対称性の変換としてツイストされたHopf代数の元が作用している.こ れは( ˆH, ˆA)を用いる経路積分量子化でも(HF, AF)を用いるツイスト量子化でも対称性の変換に 対して両者は同じV.E.V.を与えること意味しており,両方の量子化を行き来することは常に可 能である.また,対称性の生成子の仕方については,左辺の経路積分量子化では˜hが正規順序化 Hopf代数Hˆの元として作用している,一方右辺のツイスト量子化ではhがツイストされたHopf 代数HF の元として作用している.これは古典的な対称性h ∈ Hが正規順序化やツイストによっ て量子対称性に変化することを示している.また,後で見るが,対称性の変換として実際に一般 座標変換などを行う際には,経路積分量子化よりもツイスト量子化の方が変換をより簡単に記述 することができる.

3.3.2 対称性としてのツイストされた Hopf 代数

さて,いよいよツイスト量子化において,時空の対称性がどのように捉えられるのか議論する. ここでは時空の対称性として,標的空間の一般座標変換を考えていくが,ここで説明する方法は その他の対称性についても適応できる一般的なものである. まずは標的空間の汎関数ベクトル場としてξ ∈ Xを考える.このξを対称性の生成子とする. この生成子による有限の対称性変換はu = eξ ∈ H = U (X)とかけ,この uはgroup-likeで ∆(u) = e∆(ξ)= u ⊗ uとなる.この対称性変換によって標的空間の座標Xµは u . Xµ= Xµ+ ξµ+ O(ξ2) := X0µ

と変換される.以後無限小変換を考えるので,O(ξ2)は無視する.I[X] ∈ Aについては,u . I[X] =

I[X0]となる.uが古典的な一般座標変換の場合は,ξ = ξ[X]となるわけである.u ∈ HがHopf 代数Hの他の元に作用するときは,Lie括弧積で作用し, δ δX0µ(z) : = u . δ δXµ(z) = ∞ X n=0 1 n!ξ n. δ δXµ(z) = eξ δ δXµ(z)e −ξ = u δ δXµ(z)u −1 (3.25) となる.ただし(3.25)中の記号.はこれまでの意味とは異なり,Hopf代数Hの元がHの元に作 用していることを表すために用いた.今後記号.をこの意味でも用いる.また,第二行目から第 三行目に移る際の詳細は付録Dに記した.この新しい汎関数微分の下でも δ δX0µ(z1) . X0ν(z2) = u δ δXµ(z)u −1 u . X0ν(z2) = u δ δXµ(z) . X 0ν(z 2) = u . δνµδ2(z12) = δµνδ2(z12) (3.26)

(28)

と計算されるので,今まで通りの汎関数微分とDiracデルタ関数δ2の関係は保たれる.(3.26)の 第三行目から第四行目に移る際にξ . C = C, C ∈ (c − number)を用いた.また,∆(u) = u ⊗ u 等から, ∆  δ δX0µ  = (u ⊗ u)∆  δ δXµ  (u−1⊗ u−1) = δ δX0µ ⊗ 1 + 1 ⊗ δ δX0µ (3.27) であるから,δXδµ 同様にδXδ0µ も基関数であることが分かる.交換関係は,  δ δX0µ(z 1) , δ δX0ν(z 2)  = u  δ δXµ(z 1) , δ δXν(z 2)  u−1 = 0 (3.28) なので,汎関数ベクトル空間Xの基底として,δX0µδ(z 1)と δ δX0ν(z 2)は独立である.これらのことか ら δ δXµ 同様に δ δX0µ を基底として用いてXを張ることができる.h ∈ U (C) ⊂ Hなるhに対 しては h0 := u . h = uhu−1 となり,これはhに含まれるすべてのδXδ を単に δXδ0 に変えれば良いことを意味する.例えば正 規順序化演算子N ∈ HはN0 = uN u−1の変換で,中に含まれる全ての δXδ を δXδ0 に変えればよ い.F ∈ U (C) ⊗ U (C) ⊂ H ⊗ Hに対しては F0 : = u . F : = ∆(u)F ∆(u−1) = (u ⊗ u)F ∆(u−1) (3.29) とuによる変換を定義する.より一般にh /∈ U (C)の場合も含めて考えれば,uが汎関数微分の係 数ξµにも作用していくことになるので,上のようにはならない事に気をつける必要がある. さて,一般座標変換によってツイスト要素Fは上(3.29)のようにF0に変換される.F0の具体 的な形を求めると F0 = u . F =exp  − ¨ d2z1d2z2Gµν(z1, z2) δ δX0µ(z 1) ⊗ δ δX0ν(z 2)  (3.30) である.この新しいツイスト要素F0 が2-cocycle condition(3.14)を満たすのはδXδ0 が基関数な事 と(3.28)が成り立つことから明らかである.(付録CのF に対する2-cocycle conditionの証明に て,δXδ0 が基関数な事と(3.28)が成り立つことを用いて証明しており,F0 の2-cocycle condition の証明でも同じ事を繰り返すことができる.) ここまでは古典的なHopf代数Hに対するuの作用を見てきたが,今度はツイストされたmodule 代数AF に対するuの作用を見ていく.ツイストされたHopf代数HF とツイストされたmodule 代数AF の元は古典的なH, Aと元は変わらないので,HF のAF に対する作用の仕方はHのA に対する作用と同じで, I[X] ∈ AF , u ∈ HF I[X0] = u . I[X]

(29)

である.積についてはAの時とは異なる振る舞いをし, F [X], G[X] ∈ AF , u ∈ HF u . (F [X] ∗FG[X]) = u . m ◦ F−1. (F [X] ⊗ G[X]) = m ◦ ∆(u)F−1. (F [X] ⊗ G[X]) = mF◦ ∆F(u) . (F [X] ⊗ G[X]) (3.31) となる.最終行の∆F(u).を見ると分かるが,uがツイストされたHopf代数HF の元として作用 している.この作用をツイストされた一般座標変換と呼ぶことにする.また,同じ式を違う形に 書くこともできて, u . (F [x] ∗FG[X]) = u . mF−1. (F [X] ⊗ G[X]) = m ◦ ∆(u)F−1. (F [X] ⊗ G[X]) = m ◦ ∆(u)F−1(u−1⊗ u−1)(u ⊗ u) . (F [X] ⊗ G[X]) = m ◦ F0−1(u . F [X] ⊗ u . G[X]) = F [X0] ∗F0 G[X0] (3.32) とも書ける.こちらの(3.32)見るに,一般座標変換がツイストされたmodule代数AF に作用す ると,その弦に含まれる座標変数がXµ7→ X0µとなるのみならず,AF上の積がmF → mF0と変 わっている.これはすなわち,ツイスト要素がF → F0と変化したことを意味している.この一 般座標変換を行う写像をρ : AF → AF0とすれば, F [X]−−−−−−−−→ ρ(F [X]) = u . F [X]一般座標変換 F [X] ∗FG[X]−−−−−−−−→ ρ (F [X] ∗一般座標変換 F G[X]) = ρ(F [X]) ∗F0ρ(G[X]) と書ける.ρは一般座標変換を行う写像なので,背景を変えることに相当しており,背景の違う2 つのツイスト要素FとF0をρが関連付けている.より具体的に見てみれば,(3.30)の新しいツイ スト要素F0は F0 =exp  − ¨ d2z1d2z2G0µν(z1, z2) δ δXµ(z 1) ⊗ δ δXν(z 2)  G0µν(z1, z2) = Gµν(z1, z2) − ∂ρξµ(z1)Gρν(z1, z2) − Gµρ(z1, z2)∂ρξν(z2) (3.33) と,一般座標変換の影響をGreen関数Gに押しつけた形で書くこともできる.3Green関数が変 わったということは標的空間の背景が変化したことを意味している.このことから分かるのは,勝 手な一般座標変換をすると,ツイスト要素Fが変化する. これらのことを量子化の観点から理解すると,(3.31)の見方と(3.32)の見方で2通りの理解が できる. 最初に(3.31)の立場での見方を説明する.まず,理論を量子化するにはツイスト要素Fを決め る必要がある.ツイスト要素Fを決めれば,古典的な代数(H, A)はツイストされた代数(HF, AF) に変わるので,古典的な一般座標変換u ∈ Hはツイストされた一般座標変換u ∈ HF に変わる. 3詳細な計算はEに記す.

(30)

従って,量子化された後では一般座標変換はツイストされたHopf代数HFの作用として書かれる ことになり,2つの局所演算子の積に作用する場合にはツイスト余積∆Fによって作用することに なる.つまり(3.31)の立場では,すべての古典的な一般座標変換は量子化された後ではツイスト された一般座標変換へと変わっている.なお,量子化のツイスト要素Fは変わらない. 次に(3.32)の立場での見方を説明する.こちらの立場でも理論を量子化するにはツイスト要素 F を決める必要がある.ツイスト要素F を決めれば,古典的な代数(H, A)はツイストされた代 数(HF, AF)に変わる.ここまでは同じである.ここで,(3.32)式第四行目に着目すると,uが F [X], G[X]に対して,それぞれ古典的なHopf代数Hの作用と同じ作用の仕方をしている.この 作用によってF [X], G[X]はそれぞれ,F [X]−−→ F [Xu. 0], G[X] −−→ G[Xu. 0]と古典的な一般座標変 換と同じ変換をされる.そしてさらに,ツイスト要素Fがuの影響によってF0に変わっている. これはつまり,局所演算子の一般座標変換を古典的にX 7→ X0 と行うならば,ツイスト要素を F 7→ F0と変える必要がある事を意味している. 一つ注意しておきたいが,Poincaré変換の場合は状況が幾分特殊なことである.というのはF 節にて示しているが,Poincaré変換の生成子Pµ, Lµνに対しては変換パラメータをθµ, µνとして, 交換関係∆(eθµPµ), F = ∆(eµνLµν), F = 0が成立する.従って,(3.31)の立場で言えば,ツ イストされたPoincaré変換の作用が古典的なPoincaré変換の作用と全く同じになる.なぜならば h ∈ U (P)として,ツイスト余積がF ∆(h)F−1 = ∆(h)となり古典的な余積と一致するためであ る.また(3.32)の立場で言えば,Fで示している通り,Poincaré変換はツイスト要素Fを変えな い.このことから,Poincaré変換においては局所演算子の座標変換を古典的にX 7→ X0と行うだ けで良いことが分かる. 我々が普段,一般座標変換を理論の対称性と呼ぶときには,標的空間の計量を変えることは意 味していない.したがって,標的空間の計量を変えないような変換(すなわちPoincaré変換)が普 通の意味での対称性といっているものである.式で書けば,Poincaré変換のようにに標的空間の 計量を変えないような座標変換はu ∈ HF として, F0 = u . F = F と書ける.このような座標変換uが,我々が普段理論の対称性と呼んでいる変換である.

3.3.3 ツイストされた Hopf 代数の作用と真空期待値 V.E.V.

これまで考えてきた座標変換X 7→ X0の真空期待値V.E.V.への影響を考える. ツイストされたmodule代数AFの元I[X]に対して変数変換は,u ∈ HF として I[X0] = u . I[X] I[X], I[X0] ∈ HF と書かれる.座標変換後のmodule代数の元はXではなくX0で書かれており,V.E.V.を取ると きの写像はτからτ0にする必要がある.ここでτ0とは τ0: A → C τ0(I[X0]) = I[X0] X0=0

(31)

なる写像である.このτ0はτ を用いて

τ0 = τ ◦ u−1. (3.34)

と書くことができる.これから変数変換とV.E.V.の関係

τ0(I[X0]) = τ ◦ u−1. (u . I[X]) = τ (I[X]) (3.35)

がある.つまり変数変換をしてもV.E.V.は不変であるという好ましい性質が分かる.(3.35)この 関係式を使って様々な恒等式(ward identityなど)を出すこともできる.

3.4

経路積分での対称性

3.3.2節ではツイスト量子化の方法により,対称性の変換をツイストされたHopf代数HF の元 の作用として見て扱ってきた.ここではこれらの対称性の議論が慣れ親しんだ経路積分量子化で はどのように捉えられるのかを確認しておく.経路積分量子化に捉え直すためには正規順序化代 数( ˆH, ˆA)の言葉で書くのが自然なため,ここでもそうしていく. まずは一般座標変換が正規順序化module代数Aˆにどのように影響するのかを見ていく.た だし,Aˆは背景の計量に強く依存するので,この議論はAF の場合とは幾分異なるものになる. H 3 u = eξなる古典的なHopf代数の元は正規順序化演算子N ∈ Hに対して, N0 = u . N = uN u−1 (3.36) と作用する.N0は座標変換された後のI[X0] ∈ Aに対する正規順序化演算子となる.正規順序化 演算子N は: F [X] := N . F [X]と働くが,この両辺に左から古典的Hopf代数の元u ∈ Hを作 用させると, u. : F [X] : = uN . F [X] = uN u−1u . F [X] = N0. F [X0] (3.37) なる等式が得られる.この(3.37)の右辺第三行目は座標変換された後のH-module代数Aについて 正規順序化を行っている.一方(3.37)の左辺は少し注意が必要である.というのは,: F [X] :∈ ˆAで あるにもかかわらず,u ∈ Hが作用しているからである.もし作用しているのがH 3 ˜ˆ u = N uN−1 ならば,(3.37)の左辺はu. : F [X] :=: u . F [X] :˜ となり全体がAˆの元に正規順序化されていて 経路積分にて発散が生じずwell-definedとなるのだが,実際はu. : F [X] :であるため,Aˆの元と して経路積分で発散が生じwell-definedでない.そこでここで新しく別の正規順序化module代数 ˆ A0を導入し,その上で経路積分がwell-definedになると考えよう.この新しい正規順序化module 代数Aˆ03.2.3節にてA F −→ ˆ∼ AとしてAˆを導入したように,AF0 ∼ 0 −−→ ˆA0として導入される.た だし,∼0はN0による正規順序化を表す.具体的には AF0 3 F [X0] ∼ 0 −−→◦F [X0]◦= N0. F [X0] ∈ ˆA0 と定義する.ここで同時に◦◦F [X0]◦◦なる新しい正規順序積の記号も導入した.AF, ˆA間に成り立っ ていた関係はすべて同様にAF0, ˆA0間にも成り立ち,F0 = N0−1⊗ N0−1 ∆(N0)等が成り立つ.

(32)

さて,新しい正規順序化module代数に対するV.E.V.の取り方を定義する必要がある.それにあ たり,3.2.3節での考え方と同様に,AF0に対するV.E.V.の取り方(3.34)からAˆ0に対するV.E.V. の取り方を決めることを考える.(3.32)を式変形すると, F [X0] ∗F0G[X0] = m ◦ F0−1. (F [X0] ⊗ G[X0]) = m ◦ F0−1. (F [X0] ⊗ G[X0]) = m ◦ ∆(N0−1)(N0⊗ N0) . (F [X0] ⊗ G[X0]) = N0−1. m(N0⊗ N0) . (F [X0] ⊗ G[X0]) = N0−1.◦F [X0]◦◦G[X0]◦ (3.38) となる.この(3.38)の左辺はAF0の元であるので,左辺のV.E.V.はτ0によりτ0(F [X0] ∗F0G[X0]) と定められる.従って(3.38)の両辺にτ0 を作用させると,τ0(F [X0] ∗F0 G[X0]) = τ0 ◦ N0−1. ◦ ◦F [X0]◦◦◦◦G[X0]◦◦となり,◦◦F [X0]◦◦◦◦G[X0]◦◦ ∈ ˆA0であるので,新しい正規順序化module代数Aˆ0に 対するV.E.V.の取り方を V.E.V. : τ0◦ N0−1 . I[X0] I[X] ∈ ˆA0 と定義する. 結局,u ∈ Hにより変数変換を行うと,正規順序化演算子がN −−→ Nu. 0と変わるために,正規 順序化module代数Aˆは新しい正規順序化module代数Aˆ0に変化する.Aˆ0とAˆの関係は積に対 しては, ◦ ◦F [X0]◦◦◦◦G[X0]◦◦= m  N0⊗ N0 . F [X0] ⊗ G[X0] = m N0⊗ N0 (u ⊗ u) . (F [X] ⊗ G[X]) = m [(u ⊗ u) (N ⊗ N ) . (F [X] ⊗ G[X])] = m [∆(u) (N ⊗ N ) . (F [X] ⊗ G[X])] = u . (: F [X] :: G[X] :) (3.39) となっている.これより,左辺◦F [X0]◦◦◦◦G[X0]◦◦∈ ˆA0のV.E.V.は τ0◦ N0−1. ◦F [X0]◦G[X0]◦ = τ0◦ N0−1. (u . (: F [X] :: G[X] :)) = τ0◦ uN−1u−1. (u . (: F [X] :: G[X] :)) = τ ◦ N−1. (: F [X] :: G[X] :) となり,右辺: F [X] :: G[X] :∈ ˆAのV.E.V.と一致する.これは望ましい結果である.ここで,写 像ρ : ˆˆ A → ˆA0を新たに定義する. ˆ ρ : ˆA → ˆA0 : F [X] : 7→ ˆρ(: F [X] :) = u. : F [X] := N0. F [X0] =◦◦F [X0]◦◦ この写像ρˆによって(3.37)及び(3.39)はそれぞれ,ρ(N .F [X]) = Nˆ 0. ˆρ(F [X])及びρ (N . (F [X] ∗ˆ F G[X])) = N0. ρ (F [X] ∗ FG[X])と書くことができ,これを見るに写像ρˆは代数準同型写像である.そして

(33)

各代数の関係を可換図式で整理すれば, AF ρ −→ AF0 N . ↓ ↓ N0. ˆ A −→ρˆ Aˆ0 となる.ここでツイスト量子化と経路積分量子化を比べてみる.(HF, AF)のセットを用いるツイ スト量子化では古典的な一般座標変換ρを行う場合は,それに合わせツイスト要素Fを変えなけ ればならなかったが,一方の経路積分量子化では古典的な一般座標変換ρˆを行うと,それに合わ せて正規順序積の取り方をN 7→ N0と変えなくてはならない.ただしPoincaré変換u ∈ U (P)の 場合は[u, N ] = 0であるので,N0= uN u−1 = Nとなり,正規順序は変わらない.ツイスト量子 化の際に述べたことの言い換えになるが,我々は普段は背景を変えない座標変換を対称性として みており,そのような変換の元では正規順序積演算子N は変わらないため,経路積分における正 規順序の取り方及びV.E.V.の取り方を変える必要はなかった.しかし背景を変えるような変換を 考える場合にはそれに応じて経路積分の正規順序の取り方及びV.E.V.の取り方を変えなくてはな らない.

(34)

4

Hopf

代数のツイストによる量子化(相

空間)

第3章ではLagrangian形式の経路積分量子化をツイスト量子化によって構成した.4節では Hamiltonian形式の経路積分量子化をツイスト量子化によって読み替え,ツイスト量子化の見地 から理論の対称性について議論する.

4.1 Hamiltonian

形式の経路積分による弦の量子化

4.1節ではHamiltonian形式の経路積分量子化について整理する.計算の詳細は付録G,Hに示 してあるので,ここでは主に結果のみ述べていく.

4.1.1 Hamiltonian 形式の経路積分

まず,B場の入ったPolyakov作用SEのLagrangianLEからLegendre変換によりHamiltonianHE

を求めると, HE(PE(σ, τ ), X(σ, τ )) = πα0PE· g−1PE− 1 4πα0∂σX · g∂σX + 1 2iPE · g −1 B∂σX − 1 2i∂σX · Bg −1 PE+ 1 4πα0∂σX · Bg −1 B∂σX となる.添え字の煩雑さを防ぐためAµBµ:= A · Bなる略記を用い,以後混乱を招かない場合に 限り添え字を省略する.ただしXµの共役運動量はPE = 2πα1 0{gµν∂τXν− iBµν∂σXν}である. HamiltonianHEが分かれば作用SEを書くことができ,世界面が平坦な場合は SE[PE, X] = ˆ d2σ (PE∂2X − HE(PE, X)) (4.1) となる.これからHamiltonian形式の経路積分は,任意の頂点演算子の挿入を· · · で表せば, h· · · i0= ˆ DPEDXexp [−SE[PE, X]] · · · となる. ここで(4.1)の作用SEを2次形式で書く.Hamiltonian形式の独立な場PE, Xを2次形式 uE(σi) := PEµ(σi) Xρ i) ! := PEµ(σi, τi) Xρ i, τi) ! , µ = 1, 2, . . . , d ρ = d + 1, d + 2, . . . , 2d

参照

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