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博士(歯学)長峯杏介 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(歯学)長峯杏介 学位論文題名

Expression of PTHrP in mucoepidermoid carcinoma      ( 粘 表 皮 癌 に お け る PTHrP の 発 現 )

学位論文内容の要旨

  PTH.副甲状 腺ホル モン・上 皮小体 ホルモン は、血清 カルシウム濃度の恒常性を維持 する ために働 くホル モンで、 骨芽細胞 のもつPTH受容 体と結 合してRANKLを発 現し、そ のRANKLが前破 骨細胞 のもつ受 容体RANKに 結合する ことで 破骨細胞を誘導・活性化し、

骨吸 収を促進 する。

  副 甲状 腺 関 連タ ン パ クPTHrPはPTHと同 一の受容 体と結 合し、PTHと同 様の生理 活性 を 示 すホルモ ン様タ ンパクで 、PTHの 発現が 副甲状腺 に限局 している のに対 し、PTHrP は 多くの組 織・細 胞で普遍 的に産生 されており、とくに乳がんや前立腺癌の骨転移に伴 う 高 カ ルシ ウ ム 血症 の 発 現に は 腫瘍細 胞の産生 するPTHrPが関与 している ことが 知ら れ ている。 しかし 、口腔が んでのPTHrP発現 について はこれ までほとんど検索されてお ら ず、さら に骨転 移以外の 腫瘍悪性 形質との関連についても不明な点が少なくない。そ こ で、今回 、口腔 がん細胞 株におけ るPTHrPの発現の 有無に っいて検索を行うと共に、

腫 瘍を構成 する細 胞が多彩 で、かつ 良性腫瘍に近い形質をもっものから悪性度の高いも の ま で 形態 学 的 なら ぴ に 生物 学 的性状 がvariationに 富む唾 液腺腫瘍 である 粘表皮癌 に ついてもPTHrPの 発現を検 索した 。

  粘 表皮癌は 最も発 生頻度が 高い唾 液腺悪性 腫瘍で、耳下腺や口蓋腺に好発する。1945 年 にStewartに よ り粘 表 皮 腫と し て 報 告さ れ 、1972年WHO分類 で は 粘表 皮腫の 名称で 良 性腫瘍に 分類さ れていた 。しか し本腫瘍 の中には局所再発や転移を生じるものがある こ と か ら、1992年 のWHO分 類で は 悪 性 腫瘍 に分 類され、2005年分類 でも継続 して悪 性 腫 瘍として 分類さ れている 。粘表 皮癌にみ られる幅広い生物学的性状の違いを組織学的 悪 性 度 で分 類 す る試 み が なさ れ て いる 。2005年WHO分 類 では 、5つの 組織 学的特 徴、

す なわち嚢 胞成分 の割合、 神経周 囲浸潤、 壊死、分裂像の多さ、退形成の程度をスコア リ ング化し 、これ により良 性腫瘍 に近い低 悪性度腫瘍、中悪性度および高悪性度腫瘍に 分 類する試 みがな されてい る。こ の分類は 粘表皮癌の治療にあたって有効な分類である が 、症例の 中には 形態的に 低悪性 度腫瘍で あっても転移するものがあり、腫瘍のもつ生 物学的悪性度をより的確に把握する方法の確立が望まれている。

口 腔 扁 平上 皮 癌 細胞 株 に おけ るPTHrPの 発現 をWestern blotによ り検討し たとこ ろ、

口腔癌細胞株HSCー2,ー3,―4では程度の差はみられるがいずれもPTHrPを高発現していた。

し か も その 程 度 は骨 転 移 の頻 度 が 高い 前 立 腺がん細 胞株PC3に比べ てもより 高いも の であった。

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  次に、北大病院歯科診療センターで、粘表皮癌と診断された21症例を対象として PTHrPの発現を免疫染色にて検索した。粘液産生細胞ではPTHrP発現細胞は少なく、中 間細胞と類表皮細胞でPTHrPの発現を示す細胞が多い傾向がみられた。腫瘍全体に占め る構成細胞ごとのPTHrP陽性率を求め、腫瘍の悪性度との関連について検討した。その 結果、類表皮細胞におけるPTHrP陽性率は転移再発を来した7症例と予後良好であった 14症例の間で差は認められなかったが、PTHrP発現中間細胞の多い症例ではPTt{rP陽性 率と予後との間に有意な相関が認められた。

  近年、腫瘍をとりまく微小環境が注目を浴びている。これまで問質は正常細胞から構 成されていると考えられてきたが、腫瘍問質に存在する線維芽細胞は、TGF‑日やVEGF など、通常の線維芽細胞ではほとんど発現のみられないタンパクを発現していることが 明らかになってきた。腫瘍問質に存在する線維芽細胞は、正常細胞とは異なった形質を 発現することから、Cancer−associated fibroblasts (CAF)と呼ぱれ、CAFとがん細胞 との相互作用が注目されている。0 SMAは筋線維芽細胞や血管平滑筋に発現し、線維芽 細胞では通常発現していないが、CAFでは高発現しており、CAFの有用なマーカーとな っている。しかし、がん細胞がCAFを誘導するメカニズムの詳細については未だ不明な 点が多い。本研究では、ロSMA免疫染色を行い粘表皮癌組織におけるCAFの発現につい ても検討した。

  正常粘膜においては、上皮下の結合組織にみられたa SMA陽性細胞は全てCD34陽性 の血管内皮細胞でCAFの性格をもつ線維芽細胞はほとんど認められなかった。粘表皮癌 ではa SMA陽性を呈する線維芽細胞が認められたが、粘液産生細胞周囲ではaSMAを発 現する線維芽細胞はごく少数が認められるにすぎなかった。類表皮細胞が増生している 部分では、腫瘍問質にa SMA陽性線維芽細胞が増生している部分もみられたが、血管以 外に陽性を呈さない部分もみられた。一方、中間細胞を主体としている部分ではばSMA 陽性線維芽細胞が広範にみられ、このようなa SMA陽性線維芽細胞の周囲にはCD34陽 性小血管の増生もみられた。

  CAFが発現するVEGFにより血管新生が誘導されることや、TGF‑ロによりがん細胞に EMT (Epithelial mesenchymal transition:上皮聞葉移行)が生じさることが報告され ている。粘表皮癌を構成する細胞の中でPTHrPを産生する頻度の高い中間細胞の周囲に CAFが多くみられたことはPTHrPによりCAFが誘導され、さらにCAFによりEMTが生じ ている可能性が考えられた。さらにCAFの中に径の小さな新生血管が豊富に認められた ことは、PTHrPを産生する中間細胞が多い粘表皮癌では転移や再発の頻度が高いことと の関連性を支持するものと考えられた

まとめ

1,粘表皮癌でPTHrPの発現を検索したところ、PTHrPは中間細胞や類表皮細胞で高頻   度に発現する傾向がみられ、とくに中間細胞でPTHrPの発現が多い腫瘍では転移再   発の可能性の高いことが示された。

2.Q SMAに陽性を示すCAFは粘表皮癌組織でも問質に豊富に存在していたが、とくに   中間細胞の周囲にCAFが多く認められる傾向があり、その周囲に微小血管が豊富に   存在したことから、血管新生との関連性が示唆された。

3.このような所見は、粘表皮癌における腫瘍の悪性度とPTHrP発現は相関しており、

  PTH:rPの発現が腫瘍の予後予測因子のーっとなる可能性を示唆するものであった。

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学位論文審査の要旨 主査   特任教授   戸塚靖則 副 査    教 授    進 藤 正 信 副 査    教 授    北 川 善 政

学 位 論 文 題 名

Expression of PTHrP in mucoepidermoid carcinoma      ( 粘 表 皮 癌 に お け る PTHrP の 発 現 )

  審査は,審査員全員出席の下に,申請者に対して提出論文とそれに関連した学科目につ い て 口 頭 試 問 に よ り 行 わ れ た . 審 査 論 文 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る .

  粘表皮癌は唾液腺悪性腫瘍の中で最も発生頻度が高く,耳下腺や口蓋腺に好発する,腫 瘍を構成する細胞が多彩で,形態学的にも生物学的性状にもvariationに富む.粘表皮癌 における幅広い生物学的性状の違いを5つの組織学的特徴から低悪性度腫瘍,中悪性度お よぴ高悪性度腫瘍に分類する試みがなされ,治療法の選択に広く用いられているが,時に は生物学的悪性度と一致しなぃヽこともあり,生物学的悪性度をより的確に把握する方法の 確立が望まれている.

  副甲状腺関連タンパクPTHrPは乳がんや前立腺癌の骨転移において重要な役割を果た すことが知られているが,口腔がんではこれまでほとんど検索されていない,本研究は,

口腔扁平上皮癌細胞株と粘表皮癌についてP'J、,HrPの発現を検索し,さらに粘表皮癌を対 象 と し てPTHrPの 発 現 と 生 物 学 的 悪 性 度 と の 関 係 を 検 討 し た も の で あ る ,   まず,口腔癌細胞株におけるPTHrPの発現をWestern blotにより検討し,口腔癌細胞 株HSC‑2,.3,.4では程度の差はあるものの,いずれもPTHrPを高発現しており,しかも その 程度は骨 転移頻度が 高い前立 腺がん細 胞株PC3より 高いこと を明らか にした,

  次に,北大病院歯科診療センターで粘表皮癌と診断された21症例を対象としてPTHrP の発現を免疫染色により検索し,PI'HrP発現細胞は中間細胞と類表皮細胞で多く,粘液 産生細胞で少ないことを示した.生物学的悪性度との関係ついては,PTHrP発現中間細 胞の多い症例ではPl'HrP陽性率と転移・再発との間に有意な相関が認められること,な ら び に 類 表 皮 細 胞 で は 両 者 の 間 に 有 意 な 関 連 は な い こ と を 明 ら か に し た .   近年 ,腫瘍問 質に存在する線維芽細胞は,TGF‑BやVEGFなど,通常の線維芽細胞で はほとんど発現のみられないタンパクを発現していることが明らかになっている.これら の線維芽細胞は正常の細胞とは異なった形質を発現することから,Cancera8sociated fibrobh8t8(CAF) と呼 ぱ れ ,脚  ̄ とが ん 細 胞と の 相互 作 用が注目 されてい る.

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  そ こで ,血 管内 皮細胞 のマ ーカ ーで あるCD34とCAFの有用なマーカーであるaSMA の免疫染色を行い粘表皮癌組織におけるCAFの発現について検討し,中間細胞を主体と する 部分 でaSMA陽性の線維芽細胞が広範にみられ,またその周囲にはCD34陽性の小 血管の増生が認められることを明らかにした.一方,粘液産生細胞周囲ではaSMAを発現 する線維芽細胞はごく少数で,類表皮細胞が増生している部分では,腫瘍問質にaSMA陽 性の線維芽細胞が増生している部分もみられたが,血管以外に陽性を呈さない部分もみら れた,

  このように粘表皮癌を構成する細胞の中でPTHrPを高頻度に産生する中間細胞の周囲 にCAFが多 くみ られ たこ とは ,PI'HrPによ りCAFが誘導され,さらにCAFが発現する TGF一6に よりEMTが生じている可能性が高いと推論した,さらにCAFの中に径の小さ な新生血管が豊富に存在したことは,PTHrPを産生する中間細胞が多い粘表皮癌では転 移・再発の頻度が高いことを示唆するものと推論した,

  論文の審査にあたって,論文申請者による研究の要旨の説明後,本研究ならびに関連す る研究について質問が行われた.

主な質問事項は,以下の通りである,

  1)粘表皮癌を対象としたのは何故か

  2)図3と図4の関係,また図4の意味するのは何か

  3) PTHrPを前立腺癌より強発現する口腔癌で,前立腺癌ほど骨転移が問題にならない     のは何故か

  ¢ PTHrPと顎骨浸潤の関係について

  5冫PrHrP陰性症例におけるCAFの出現について   6) CAFによりEMTが生じるとはどういうことか

  いずれの質問についても,論文申請者から明快な回答が得られ,また将来の研究の方向 性についても具体的な回答が得られた.本研究は,粘表皮癌の中間細胞においてPTHrP の発現が高い腫瘍では転移・再発の可能性が高いことを明らかにし,.PTHrPの発現が粘 表皮癌の予後予測因子のーっとなる可能性を示した点が評価された.また,中間細胞の周 囲にCAFならびに微小血管が豊富に存在することを明らかにし.PI、HrPと血管新生との 関連性を示唆したことも高く評価された.本研究の業績は,口腔外科の分野はもとより,

関連領域にも寄与するところ大であり,博士(歯学)の学位授与に値するものと認められ た,

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参照

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