茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)37号(1988)107−127 107
Time PerspectiveとPersonalityとの関連皿 一「実存不安」を指標として一
吉田昭久*・小熊 均**
(1987年9月12日受理)
On Time Perspective and Personality VH:
Existential Anxiety
Teruhisa YosH⑩A*and Hitoshi OGuMA**
(Received September 12,1987)
は じ め に
不安は,人間存在を考えるとき,避けることのできない課題であるが,その不安を突き抜け,本
来の「実存」に達するための,積極的に意味づけられた不安を, 「実存不安」と言う。一左不安は,時間概念と大きく関わって来る。それは,人間存在の持つ不安は,人間存在の有
限性の中での, 「自由のめまい」と言えるものであり,逆に全可能性から生じて来るものだからでもある。この, 「今」に,あるいは現在にないことを未来に予測したり見通したりする人間の能力
は,「実存不安」に規定されている。このように「実存不安」を位置づける時,それは,Time
Perspectiveの問題と深く関わって来る1)。そこで本論文では, 「実存不安」に焦点を当てて論究 する。本論文の概要を示せば,以下の通りである。I r実存不安」測定の問題
1−1 「実存不安」の測定可能性
1−2 「実存不安」の心的構造1−3 「実存不安」測定のための具体的質問項目の作成 H 大学生を対象とした質問紙調査
皿一1 第一次調査 皿一2 第二次調査
皿一3 分析的検討の目的と方法 皿 因子分析的検討の結果と解釈
皿一1 第一次調査
*茨城大学教育学部教育臨床心理研究室
**都留文科大学文学部
108 茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)37号(1988)
皿一2 第二次調査
皿一3 第一次・第二次調査の連関
I r実存不安」測定の問題
1−1 「実存不安」の測定可能性
「実存する」とは,本来的な意味において連続性を持つ瞬刻の問題であり,「実存する」その瞬 間においては,一般的意味における不安は問題とならない。しかも,本来の「実存」は,不安を突
き抜けることによってのみ到達することが可能となる。しかし,現実的・具体的な社会状況にある
「実在者」としての我々が,本来の「実存」に達するということは容易ではなく,従って「実存不 安」は,我々の「日常性」においては,明確には覚知し得ない。我々にとって,本来の「実存」に
達することが不可能事であるとすれば, 「実存的に生きる」ということは, 「実存」に達する過程 において, 「より実存的に生きる」という,相対的な位置づけでしかあり得ない。 「実存不安」は,「実存」に目覚めさせる「時」の契機となり得るものであるが故に,完全な「実存」の状態に達し
得ない我々は,相対的な意味で,より「実存的な生き方」をすることを通してしか, 「実存不安」に脅かされることはないと言える。換言すれば,我々は常に, 「実存」と「実存不安」との「間」
の中に存在する状態にある。そこで,より「実存的」に生きている という状態は,それだけ「実
存不安」に脅かされているという仮説が成り立つ。本研究においては, 「実存する」程度と, 「実存不安」とは,相補的関係にあるとする前提に立
ち,相対的な意味において.どれだけ「実存的に生きている」かを測定することにより,相対的・
間接的水準ではあっても, 「実存不安」は測定可能であるとする立場に立つ。
1−2 「実存不安」の心的構造
人の「生き方」に関して,具体的な個々の「生きる」状況を抜きに,質問紙の水準でそれを捉え
ることは困難な課題ではあるが,浅学な知見によれば. 「実存的な生き方」を測定し得る尺度は,殆ど作成されなかったと言ってよい。
そこで,本研究においては,「実存する」ということの心的世界を,仮説的に構造することによ
り, 「実存不安」への接近を試みる。まず,「実存する」という心的世界の仮説的な構造化に際しては, 「実存」が, 「生」と「死」
とを対極とする「存在」であることを前提とすることから, 「生命」という範疇を置く。
次に, 「実存」は,単に「生存」するだけではなく,自らの存在の仕方を問い,自らの「生」全 てを「投げかけ」ることが出来得た時に「実存する」ことになる。この「投げかけ」は, 「何かを
為す」ことに連なり,これを「しごと」という範疇で表わした。ここで「労働」という「ことば」
を用いなかったのは, 「労働」は,人間がその生活に役立つように,「手,脚,頭などを働かせて,
自然資料を変換させる過程」2)であり,概念的に異なる相を示す「ことば」であるからである。こ こでの「しごと」とは,どんなに些細なことに見えても,又社会的な「生産」という視点からは程遠 いものであっても,その個人のかかわり方によって「しごと」となり得るものを言う。
吉田・小熊:Time PerspectiveとPersonalityとの関連W 109
さらに, 「愛」という範疇を置く。本来の「実存」へと突き抜けることの前提は,諸々の現存在 の制約から「自由」になることであり,しかも, 「閉ざされた」孤独の中では実現され得ないとい うことである。現実の中で「実存する」ということは, 「ひと」や「もの」との関係において,閉
ざされていたり,共時的に「生きる」存在から切り離されていることではなく,他の「実存」に対 して開かれているのみならず,他の「実存」との触れ合いを求める主体であり続けることである。
このような「開かれた」かかわりや触れ合いを求める心の働きを,「愛」とする。
このように, 「実存する」という心的世界を, 「生命」「しごと」「愛」の三つの範疇に分節し
たが,それを貝体的な側面から捉えるために,それぞれをさらに三つの視点に分節した。
まず, 「生命」の範疇においては,①生と死の対置 ②生の実感 ③生の苦悩 に分節する。
「生と死の対置」においては, 「生命」が有限であるということを認識し, 「死」を意識する時 に,現在の「生命」の尊さを受け止めているか,あるいは, 「死」をそのまま受け入れつつ「いま」
を真剣に生きようとしているか といった側面が問題となる。「生の実感」では, 「生命」そのも の, 「生きている」というそのことを実感しているか,そしてまた,それを肯定的に感じているか。
現実の「生」は過去の「生」の総括の上にのみ成り立つものとして捉えられているか。「生命」に
「どうしようもなさ」を感じているか といった側面を問題とする。「生の苦悩」では,「生命」
そのものへの疑惑を持ち, 「生命」の一瞬の意義を意識するという視座から,現実に「今」,「生き ている」ことの苦しみを受け止めているか という側面が問題となる3〕。
「しごと」の範疇では,①「しごと」の価値 ②「しごと」の実感 ③「しごと」の虚無 の三
つの視点に分節される。rrしごと』の価値」では, 「しごと」をどう捉えているか。 「しごと」が「何かを為す」とい
うことと,一義的に一致して受け止められるか。「しごと」は誰でも持ち得るし,また,個々のか かわり方のいかんによっては,どんなものでも「しごと」になり得ると捉えられているか を問題
とする。「rしごと』の実感」においては,自分なりの「しごと」を持っているか。 「しごと」に充実感を感じているか。また,自らの「しごと」に全力でかかわっているか といった側面が問題と なる。さらに「rしごと』の虚無」では,単なる虚無感ではなく,「しごと」に全力を投入したと
しても,尚,その中に「ひと」の持たざるを得ぬ, 「どうしようもなさ」や「しごと」することの 無意味さを感じ取っているか という側面を問題とする。
「愛」の範疇は,①実感②「かかわり」 ③「出会い」 の三つの視点に分節する。
「実感」においては,「ひと」に対して,無条件的な愛(共感)を感
表1 ノ歯鷺醗轟 じることが出来るカ》・輔物を含む「生命」全般に対して燃を持てるか。さらには,現実に「生きる」自分自身をありのままに受容出来
範疇 視 点 るか といった側面を問題とする。「かかわり」では,真剣に「ひと」
生命 監難対置 とのかかわりを求めた上で尚その「かかわり」の中に「孤独」を
生の苦悩 実感しているか。「ひと」とのかかわりを大切にしているか。「共感」
しごと ヒ鵬難 できる「仲間」を持っているかという側面が問題となる・「出会い」
しごとの虚無 においては,「出会い」を「個」の歴史性の視座から,瞬間のものと 愛 蕊弩り してではなく詠雛を持つものとして捉え得る焼単独者としての
出会い 「ひと」と「ひと」との関係性の質として捉え得るか。「もの」の見
110 茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)37号(1988)
方,見えている「もの」が,質的に回転,転換した体験を持ったか。さらには,回転されたものが,
自己の内に現在に至るまで継続して内在化されているか。「個」の歴史性を含めて, 「個」の開示 を為し得るか。即ち,自己の内的世界について, 「開かれた」という体験があるか といった側面 が問題となる。
以上を,構造化して整理したものを,表1に示す。
1−3 「実存不安」測定のための具体的質問項目の作成
「実存する」ということの心的世界の構造の,各範疇・各視点に関して,それぞれの範疇・視点 に適合するように具体的質問項目を作成し,研究室ゼミナール・メンバーの検討課題として各項目 を検討した。「生と死の対置」9, 「生の実感」6,「生の苦悩」7, 「rしごと』の価値」6,
「rしごと』の実感」6,「『しごと』の虚無」6,「愛の実感」7, 「かかわり」6,「出会い」
6の,計59項目を暫定的に作成した段階で,各項目への反応のバラッキを検討するために,茨大生 25名を対象に,5段階評定で予備的な調査を実施した。その結果の分析を基に,反応にかたよりの 見られる項目は訂正し,新たに項目を作成・追加し,各範疇・各視点に属する項目を8項目設定し
て,合計72の項目を作成した。次に,この72項目の具体的質問項目に関して,①各項目が調査者側の範疇・視点の意味づけ,お
よび意図に適合しているか ②各項目に「はい」と答えた場合と,「いいえ」と答えた場合とでは,どちらがより実存的と考えられるか の二点について,大学教官9名(教育学部,教養部,人文学 部の哲学,心理学関係教官)に検討を依頼した。その結果,主に次の各点が指摘された。
。項目が意見に対する賛否を問う形式や現在の自分の状態や構えを問う形式など,混乱している。
。「遊び」「しごと」「どうしようもない」「ひと」など,特殊な意味あいを持たせた「ことば」
として使用しているが,これはテストを受ける側の受け止め方で,回答に大きな差が生ずる危 険がある。実存的な考え方に立つ人も立たぬ人も,共通な内容のものとして受け止め得る日常
的表現をする必要がある。。「しごと」の概念が捉えにくい。
。「出会い」の項目において,特に,抽象的な質問形式では,必ずしも実存的な意味での「出会
い」を測定出来るとは限らない。。建て前と本音が相剋するように,項目を,もっと具体的な日常行動のレベルにおける質問に
した方がよい。これらの問題点の指摘を基に,再度ゼミナールにおいて検討を加え,その結果,各項目を,次の
点に留意して修正した。。項目の表現を,全て体験,または意見に統一する。
。「遊び」「しごと」「どうしようもない」「ひと」などの,特殊な意味あいを持たせた「こと
ば」は訂正せず,その上で各項目の全体的表現をよりわかりやすくする。。具体的な行動水準を示す質問項目内容は,より建て前的な価値を含む回答となる恐れがあるの
で取らない。以上のような再検討の後に,各範疇・各視点8項目,計72項目の具体的質問項目を作成した。
吉田・小熊:Time PerspectiveとPersonalityとの関連W 111
1 大学生を対象とした質問紙調査
皿一1 第一次調査
実験日時および場所は,以下の通りである。
1971年12月2日〜12月4日の間,茨城大学における授業時間を用いて実施。所要時間は約45分。
被調査者は,茨城大学の男子および女子学生合計235名である。質問票は,ApPendix 1−i〜1一 Vに示す〔1〕の部分である。回答は,7段階評定とし,被調査者に,各項目と自己の考えとの一 致の程度によって,両端が「はい」「いいえ」で示された線分上の7段階のいずれかに回答するよ う要請した。な紅各質問項目を調査者が一項目づっ読み上げる,強制速度法により調査した。ま
た,調査開始に先立ち,Appendix 1−iの〔1〕に示す注意書きを,インストラクションとして読み上げた。
豆一2 第二次調査
質問票は,Appendix 1−i〜1−Vに示す通りである魁調査のお願い, Face Sheet,回答の際の
注意点,設問,連絡先記入欄から構成されている。 「調査のお願い」では,調査の目的と内容を示した。ここでの調査の方法は,被調査者各自へ質問票を直接配布し,各自記入する方法を取ったた ぬこの部分が,第一次調査のインクトラクションにあたる。「Face Sheet」では,まず,調査年 月日を記入させた。これは,被調査者の都合の良い日時に回答してもらったの}喬調査期間を明確 にするためである。次に,被調査者の所属する大学が一つの大学に偏っていないことを確認するた めに,大学名を記入さ辻 さらに,一つの学部に偏
表2 被調査者の大学分布及び有効データ数 っていないことを確認するため,学部名を記入させている。また,調査対象を,大学生の中でも,特に
被調査 有効データ数大 学 名
者 数 男 女
茨城大学 227
87 122
千葉大学
30
8 1927 に性別を確認し,年齢差による各設問に対する傾向 宇都宮大学
@政大学
24
R0
911
14
P9
日本女子大学 14 0 14
14 「回答の際の注意点」には,貝体的な調査の方法
東海大学坙{大学
13 P3
12 P0
00
東京家政大学 11 0 9
g ヨンにあたる。 「連絡先記入欄」は,本研究が調査
専修大学逞t商科大学
85 44 41
中央大学 4 3
1 4 しており,実験対象者に協力を依頼する時のための
明治大学 4 3
1 4 ものである。
慶応義塾大学 2 2 0 2
東邦大学
1
01 1 調査期間は,1985年11月21日〜11月30日である。
玉川大学結椏d機大学
11 00 11
} 調査方融特定の調査場所は設嚇調査員が被
学習院大学 1 0 0 0 調査者個人に直接質問票を配布し,回答後個々に回
昭和大学
1
0 00 収する方法を取った。
計 390 153 207
360 本研究における課題は,日常生活および人生に対
する態度に関するものであり,各質問に回答するた
112 茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)37号(1988)
めには,自己についての概念や行為を意識化・対象化出来ることが前提となる。発達心理学的知見 によれば,それが可能となるのは,一般的に,自己意識の確立される青年期以降とみなされる。
そこで,被調査者を四年制大学3年次生以上の者としている。大学生の中でも,特に3年次生以 上としたのは,具体的・現実的に,自己の将来設計を考え始める時期と対応するからである。
被調査者数は390名であり,被調査者の大学分布と
被調査者数,および有効データ数の内訳を表2に示した。
学部は,教育・文・理・農・工・商・海洋・医・薬・法
は い等,多くの学部にわたっている。 、、 Σ
第二次調査における点数化の方法は,第一次調査と同
様,図1に示すように, 「はい」から「いいえ」の方向 7 6 5 4 3 2 1 で,7,6,5,4,3,2,1点と配点して行なった。
図1 「実存不安」の得点化
II−3 分析的検討の目的と方法
本研究で仮設した, 「実存する」という心的世界の構造は,具体的質問項目の水準において,ど
のような次元を構成するものであるかを明確化するために,因子分析的検討を行ない,また,合わ
せて各項目の妥当性の検討を行なうことを課題とした。第一次調査においては,72項目の調査の結果を用いて因子分析を行なった。相関は,ピァソンの 相関係数,因子抽出はセントロイド法,因子軸の回転はVarimax法に拠っている。
第二次調査においても,第一次調査と同様,因子分析を行なった。因子分析の方法としては,ピ アソンの相関係数を用い,主因子法により因子行列を求め,Varimax回転して最終的な因子行列を 求めた。第二次調査に関する統計的処理は,主にSPSS統計パッケージを用い,東京大学大型計算 機センター「HITAC M−280」で行なっている。
皿 因子分析的検討の結果と解釈
皿一1 第一次調査
Appendix 2に,各因子に関して,各項目の回転後の因子負荷量,および各因子の因子寄与率を示す。
因子分析の結果七つの因子が抽出された。全体的に因子寄与率は低いが,この七つの因子を解 釈の対象とした。各因子に含まれる項目番号と,項目内容から命名された因子名は表3に示した。
表3 「実存不安」に関する因子名及び各因子に含まれる項目番号(第一次調査)
因 子 因 子 名 因子に含まれる因子負荷量L300001以上の高得点順の項目番号
第1因子
「生の実感」の因子2.54.9.42.52.14.34.45,53.23.59.56.33.27.16.62
第2因子
「生の苦悩」の因子44.70.41.35.46.29.72.18.31.
第3因子
「『しごと』の虚無」の因子38.40.60.57.50.
第4因子
「『ひと』との『出会い』」の因子28.37.20.7.8.55.71.30,
第5因子 「『しごと』の虚無」の因子
43.25.51.64.69.
第6因子 「かかわり」の因子
1.39.36.49.13.4.
第7因子 「『もの』との出会い」の因子
66.24.26.67.63.
吉田・小熊:Time PerspectiveとPersonalityとの関連W 113
因子解釈は,便宜上10.300001以上の因子負荷量を持つ項目を取り出して行なった。
第1因子にっいてみると,この因子に対する因子負荷量が1α300001以上で しかも,他の因子 において負荷量が小さく,この因子の解釈を明確にする項目番号因子負荷量,所属する範疇およ び視点を挙げると,表4の通りである。各項目内容に関しては,Appendix 1。i〜1−Vを参照された い。表4の16項目の項目内容から,第1因子は, 「生の実感」を表わすものと解することが出来る。
それは,各項目の所属する範疇力㍉主に「生命」であり,視点としては「生の実感」に属する項目 であることによる。第2因子におい乙因子負荷量が10、300001以上であり,他の因子における負
荷量が小さいものは9項目(表4)である。この9項目の内容から判断しηこの因子嫉 「生の苦悩」を表わすものと解釈可能である。範疇でみると種々のものが含まれている斌どれも生きて
行く上での苦悩に結びついたものであるからである。第3因子において抽出される項目は,5項目(表4)である。この5項目の内容検討から,この 因子嫉 「rしごと』の虚無」を表わすものと解釈出来る。この5項目の殆ど魁我々が前提とす
る方向とは逆の方向で高い負荷量を持っていることが示されたことは興味深い。第4因子について は,表4の通りである。この8項目から判断してこの因子は, 「rひと』との『出会い』」を表 わすものと解釈することが出来る。第5因子において抽出される項目は,5項目(表4)である。
この5項目の項目内容から判断して,この因子も「『しごと』の虚無」と解釈されよう。
第6因子において抽出される項目は,6項目(表4)である。この6項目から判断して,この因
子を,「愛」の範疇に含まれている「かかわり」を表わす因子と解釈することが出来る。第7因子 にっいて見ると,表4の通りであるがこの5項目から判断して,この因子を, 「出会い」を表わす 因子と解釈した。第4因子も同様に,「出会い」を表わす因子と解釈された規第4因子が「ひと」
との出会いであるのに対し,第7因子は「もの」との出会いを主に示すものであり,同じ「出会い」
でも質の異なるものであることを示唆している。
表4 「実存不安」の第1〜第7因子の各因子に含まれる項目番号(第一次調査)
因子 項目恥
因子負荷量
視 点因子 項目Nα
因子負荷量 視 点,1 .58665
D57243 生 命 生の苦悩カ 命 生の苦悩
薔因 1言60
.45459
D43217 B43169しごと しごとの価値
オごと しごとの虚無 オごと しごとの価値9
.56678しごと しごとの実感 57 .34151
愛 実感 42 .53815 生 命 生の実感子
50 .31899しごと しごとの価値 第
ll .52694D49052
生 命 生の実感
カ命 生の実感
1早
.71643D69921 愛 出会い、 出会い1
34 .48773 生 命 生の苦悩第
20 .66599 愛 かかわり45 .48662 生命 生と死の対置
4 7
.43134 愛 出会い 53 .47264しごと しごとの価値 因 8
。39469 生 命 生の実感因
23 .39916しごと しごとの価値 子
55 .38390しごと しごとの実感 子
器 .37818D36375 カ 命 生の苦悩愛 実感
鮎
一.37251
D33494
しごと しごとの実感
、 出会い 33 .36314 生 命 生の実感
第
43 .50037しごと しごとの虚無
銘62 .35272 D34952 D30763
生 命 生の実感 カ命 生と死の対置 カ 命 生の苦悩
&子 ll器 .47382
D40563−.36662
D34598
しごと しごとの虚無
オごと しごとの実感オごと しごとの実感しごと しごとの虚無
44 。57254
愛 かかわり 第
31 .567ioD40291 愛 かかわり、 かかわり
第
70.56456
生 命 生の苦悩6
36 .39602 愛 かかわり41
.52664 しごと しごとの虚無 因
49 .37575 愛 かかわり2
35.50618
生命 生の苦悩子
13 .36651 愛 出会い46
.50053
生命 生の苦悩4
.32194 生命 生と死の対置因
29.41532 しごと しごとの虚無
66 .54662 愛 出会い72
.41324
愛 実感夢
24一.53444
愛 出会い子
18.39673 しごと しごとの実感 因
26 .46718しごと しごとの実感
31 .32812
生命 生と死の対置子
67一.43643
生 命 生の実感 63 .43514 愛 出会い唾
114 茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)37号(1988)
皿一2 第二次調査
表5「実存不安」の項目別平均点
「実存不安」の各項目の平均点と標準偏差は,表 及び標準偏差
5に示す通りである。 項 目 番 号 平 均 点 標 準 偏 差
Varimax回転後の因子行列は, Appendix 3に示 81 S355650194 1.8350
P8438
03
45556 16137す。因子は10因子まで求めたが, 因子負荷量が §1 32444Q9167 R9528
1.8286
P8656 P963607
43944 22053io.30000i以上の項目を各因子から抽出し,表6に,
ll 4 1083
S 1833
19049P7772
10
49194 20032各因子に含まれる項目番号と,項目内容から命名さ
{122972 1.6683
S8806 ! 1770913 4・3472 i 20108 れた因子名を示した。 揺 50944 】 17010
R1889 20840
i6 53667 i 1.8310第1因子に含まれる項目は,表7に示した14項目
毒 44389S0778S56111 17762
@ 20137
@ 19396
20
50861 19537である。具体的質問項目をみると,内容の点から二 ll 39278R7611 20084Q1068
23
53611 16361 1つに大別される。一方は, 「生きている」あるいは
認
31222Q.3972
19724 P621726
44333 18498「為している」ことに対する疑問であり(項目3馬
ll
37083T1861 R622218194
P9822 i19019
30
36028 2208。 146,47,70,29,71),もう一方は,対人関係におけ
ll
36444Q.80B3 22044 1
P772433
37833 レQ0557 る孤独を表わすものである(項目44,32,48,1,ll 55111 16756
Q6889 18230 36
40611 19324 [ 49,39,20)。孤独とは,「生きる」ことへの疑問が 1;52500 19786
S150。 19434 1
39
6 1 1 1 1 1 2076 140 35278 18583
対人態度として表出し,人と人との関係性を懐疑す ll ll8召 1 纈1
43
28722 i i8480ることである。このような視座から,第1因子を, 麗 4,0194 i 1 8889 1
T7333 1 16322
46 294】7 18732
「生への疑問」と解釈した。
麗
21472 1 1564928222 17237
49
3.7194 1 8858 1第2因子に含まれる項目は,表7に示す7項目で
il
31472R3944S347218979 、
撃撃撃撃戟@153
4330618582 1
ある。具体的質問項目の視点は「実感」であり,項 ll 47472S3500 18298Q0331
56
37694 1 17974目の共通性は,老いた人や植物,自分の心臓の鼓動 ll 59 1器 1 躍1
45944@ i 17399
や脈拍,あるいはまた,大自然に対峙している自分
§1 22917 135444T6611
13867 Q0612 P3442
63 47玉94
19808といった, 「生命」を「感じる」ということである。
ll
46750R0917 18845 P8191
66
43000 20287項目16においても,「死」に接することによって,
器
23500S3861 16283P727569
297221.6075
それと対置する「生」(「生命」)を感じていると捉 l ll
38472R5444 20485P709672 44861
16839表6 「実存不安」に関する因子名及び各因子に含まれる項目番号(第二次調査)
因 子 因 子 名 因子に含まれる因子負荷量1.30000似上の高得点順の項目番号
第1因子
「生への疑問」の因子44.32.35.48.46.1.49.39.47.41.20.70.29.71.
第2因子
「轟の実感」の因子59.42.10.14.33.16.19.
第3因子
「『ひと』とのかかわり」の因子2B.37.20.62。7.
第4因子
「仕事の価値づけ」の因子60.38.50.11.15.40.25.43.48.23,22.
第5因子
「生へのとりくみ」の因子8.52.9.2.70.1.69.
第6因子
「『しごと』の虚無」の因子18.55.29.71.27.41.9.
第7因子
「出会い」の因子66。24.26.63.7.30.
第8因子
「生の苦悩」の因子72.36.41.12.56.
第9因子
「かかわりの狭さ」の因子6.57.13.
第10因子 「仕事の意味づけ」の因子
51.53.70.
■
吉田・小熊:Time PerspectiveとPersonalityとの関連町 115 え得る。ここから,第2因子を,「生命の実感」と解釈した。第3因子では,表7に示す5項目でいのち
ある。 「愛一出会い」という視点に属する項目が多いが,具体的質問項目の内容をみると,「rか
かわり』あえるrひと』」(項目28,29),「共感できる真のr仲間』」(項目20),「方向性を開い てくれたrひと』」(項目7)といったように,全体として「ひと」と「出会う」というよりは,「ひ と」との触れ合い方,かかわり方の次元での意味づけが強い。項目62においても,「日常生活の中で 大切にする」ことの中に, 「ひと」とのかかわりを大切にするという視座が含まれていると考えられる。このように見ると,第3因子は,「rひと』とのかかわり」と解釈することが出来る。第4 因子は,表7に示す11項目である。各項目の具体的質問項目の視点をみてもわかるように, 「しご
と」に関する項目のまとまりである。内容をみると,「社会的な意味でのr生産性』 につながる rしごと』」「rひと』に認められ役立つ『何か』」に価値を置いており,「大人の『あそび』」
や「高度に機械化された現代社会」の中における「しごと」には,あまり価値を置いていないこと がうかがえる。項目23では,直接的には「しごと」に触れていないが,「r生命』に意味を見い出 す」ことは, 「rしごと』に意味を見い出す(rしごと』の意味に気づく)」ことに通底する。
「しごと」という「ことば」を用いた意図は, 「誰でも持ち得るし,又,そのかかわり方いかんで
は,どんなものでも, rしごと』になり得る」という意味づけからのものであったが,この因子に
属する項目における「しごと」の内容は,価値的な意味を持ち,「労働」の意味づけが強い。以上から, 「しごと」と区別して, 「仕事の価値づけ」と解釈した。
第5因子では,表8に示した7項目である。各項目の視点は多様であるが,質問項目の内容をみ ると,自分の「生き方」や「しごと」,人に対しての姿勢を表わす内容である。ここから,第5因 子を, 「生へのとりくみ」と解釈した。第6因子に含まれる項目は,表8に示した7項目であるが
具体的質問項目の視点からもわかるように, 「しごと」に関する項目である。視点の異なる項目27においても,「El常自分が行なっている一つ一つの事柄」とは,言い換えれば「しごと」のことで
ある。全体的に,「真剣に自分をぶつけられるr何か』」を持たず, 「自分のrしごと』をr為す』よう」努めていず,自分の行為に「r無意味さ』を感じ」ていることを表わしている。以上から,
第6因子を,「しごとの虚無」と解釈した。第7因子に含まれる項目は,表8に示した6項目で,
このうち5項目の視点が,「愛一出会い」である。項目26における「読書」は,項目63で表現して
いる「あること」の一っであり,読書は,「考える」ことあるいは,その対象や内容との「出会い」をもたらすと捉えることが出来る。このように見ると,第7因子を,「出会い」と解釈出来る。
第8因子を見ると,表8に示す5項目が特徴的な項目である。視点は多様であるが,具体的質問
項目の内容の共通性は,「後悔」したり, 「孤独さ」や「自己のどうしようもなさ」を感じたりす ることは,苦しみというものである。 「『人間』として生きられない」というのも,苦痛を生み出す状況を反映したものである。ここから,第8因子を, 「生の苦悩」と解釈した。第9因子は,表
8に示した3項目である。これらの項目の視点は「愛」であるが,特に「ひと」に対する「愛」の
内容を表わしている。「ひと」に対して,軽蔑したり異和感を持ったりし,また,「自分がどう『生きる』かということとあまり関係なく,いっも幅広く気軽に人と接して」いない,ということを示
している。「ひと」に対して,こだわりのあるかかわり方であることから,第9因子は, 「かかわ
りの狭さ」と解釈出来る。第10因子に含まれる項目は,表8に示した3項目であり,具体的質問項
目の内容をみると,「自分の生き方に直接っながる『こと』」「自分の全力をr投げかける』こと」116 茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)37号(1988)
表7 「実存不安」の第1〜第4因子の各因子に含まれる質問項目(第二次調査) ,
因子
項目晦 項 目 内 容 因子負荷量 視 点44 多勢の中にいる時でも,人間としての「孤独さ」をいつも感じている。 .62944
愛一かかわり
32 .58222
愛一かかわり
35
いま 日常的な常識の中で「生きている」ということが,自分の苦しみとなっている。
.48315 生命一生の苦悩第
48 友人との「語り合い」や「討論」などの中で満足することはあるが,そのことの
u無意味さ」をいっも感じる。
.45629しごと一しごとの虚無
46 自分の意志に反して現在「生きている」ことの疑問が,自分の問題となっている。 .44069 生命一生の苦悩
1
1
人間としての「孤独さ」を超越することが出来ないからこそ,いつも「ひと」と「ひと」との「かかわり」を大切にしている。
一.40233
愛一かかわり
49「ひと」と「ひと」とのかかわりの中で自分の「孤独さ」を忘れている。
一,39034愛一かかわり
39
友達との「おしゃべり」を楽しいものと感じる。
一.38635愛一かかわり
因
47 罐麟 識聡野会的立場や噂心が著しく傷つけられるのを避けられな .38408 生命一生と死の対置
子
41 現在の自分が「為している」ことの中で「どうしようもない」自己を感じている。 .35036
しごと一しごとの虚無
20 深い所で「共感」できる真の「仲間」を持っている。一.33627 愛一かかわり
70 自分が何故「生きている」のかを,自分自身に よく「問う」乙とがある。 .32271 生命一生の苦悩 29 自分が日々,行なっていることの「無意味さ」を感じている。 .30494しごと一しごとの虚無
71 日常 自分のしている「しごと」の中に,充実感を味わい得ないでいる。 ,30475しごと一しごとの実感
59
.64810
愛一実感第
42 新たに発芽する植物に接する時,「生命」のもっ「何ものか」を感じる。.61081
生命一生の実感2
10 年老いた人達の顔に刻まれたしわに,その人達の「生きた年輪」を感じる。 .58074 愛一実感14
ほんのささやかな「生命」に「生」の重みをずっしりと感じる。 .48516 生命一生の実感因
33 自分の心臓の鼓動や脈はくを感じ取る時,自分が「生きている」ことを感じる。 .43730 生命一生の実感子
16.41122
生命一生と死の対置19 大自然の持つ静かさや猛々しさに接する時,「どうしようもない」自己の中に 自らの「生命」を感じる。 ・
.32518 生命一生の実感
第
28 自分も相手もお互いに「開かれた」ままで「かかわり」あえる「ひと」を持ってい
驕B
.80984 愛一出会い37 自分の「あるがまま」の姿で真に「かかわり」あえる「ひと」を持っている。 .77417 愛一出会い
3
20 深い所で「共感」できる真の「仲間」を持っている。 .55447
愛一かかわり 因
62 趣味や余暇を日常の生活の中で大切にすることに充実感を感じる。 .31897 生命一生の苦悩
子
7 いかに「生きる」べきかを模索していた時に,方向性を開いてくれた「ひと」がいる。
.30059 愛一出会い 60 社会的な意味での「生産性」につながらない「しごと」は,あまり「価値」がないニ感じている。
.60253しごと一しごとの価値
38 .42840
しごと一しごとの価値
第
50子どもにとっての「あそび」は「しごと」であるが,大人の「あそび」は「しごと」にはなり得ない。
.40772
しごと一しごとの価値
11
。40639しごと一しごとの価値
4
15 人間にとっての「しごと」には,価値のあるものとないものがあると言える。 .39418しごと一しごとの価値
40 自分に与えられた「こと」を大過なく果たすのが,結局,人生を有意義に過ごすこニにっながると感じる。
.39360しごと一しごとの虚無
因
25 高度に機械化された現代社会に生きる人間は,どのような「しごと」を持とうとも機械の一部品をなす働きに過ぎないと感じる。.36678
しごと一しごとの虚無
43 何をやったとしても,人間のすることは高がしれていると感じる。 .32621しごと一しごとの虚無 子
48 友人との「語り合い」や「討論」などの中で満足することはあるが,そのことのP無意味さ」をいつも感じる。
.31598しごと一しごとの虚無
23
自らが何の「職業」も持てないとしても,人間としての「何か」を成し遂げ得る「しごと」を持ち得る。
一.30874 しごと一しごとの価値
22「生命」に意味を見い出すのは,「死」を意識した時であると感じる。
.30502 生命一生と死の対置吉田・小熊:Time PerspectiveとPersonalityとの関連W 117
表8 「実存不安」の第5〜第10因子の各因子に含まれる質問項目(第二次調査)
因子 項目Nα
項 目 内 容 因子負荷量 視 点8
過去に自 が隣した」1つ1つのことを,現在の のr生 」の中に,はっきりと位置づけようとしている。
.56835
生命一生の実感第
52いま,自分の「生きている」状態をはっきりさせながら,現在の自分の「生きる」道をいっも,決定しようとしている。
.50788
生命一生の実感5 9
現在の自分にとって「生きていく」のに必要な自分の「しごと」を「為す」よう日々努めている。
.45925
しごと一しごとの実感因
2 .45896
生命一生の苦悩70 自分が何故「生きている」のかを,自分自身に よく「問う」ことがある。
.37812
生命一生の苦悩子
1 人間としての「孤独さ」を超越することができないからこそ,いつも「ひと」とuひと」との「かかわり」を大切にしている。 .32922 愛一かかわり
69 いっも自らに役立つ「しごと」と役立たない「しごと」とに分けて,自分に与えら
黷ス「こと」にかかわっている
.30134
しごと一しごとの虚無18 日々 自分のすることが「何か」を見つけ出せず,毎日を過ごしている。
.65845
しごと一しごとの実感第
55真剣に自分をぶつけられる「何か」を持っている。 一.52889
しごと一しごとの実感6
29自分が 日々行なっていることの「無意味さ」を感じている。 ・50621
しごと一しごとの虚無71 日常 自分のしている「しごと」の中に,充実感を味わい得ないでいる。
.47486
しごと一しごとの実感因
27.44721
生命一生の実感子
41 現在の自分が「為している」ことの中で,「どうしようもない」自己を感じている。.35503
しごと一しごとの虚無9
現在の自分にとって「生きていく」のに必要な自分の「しごと」を「為す」よう日々努めている。
一.30664
しごと一しごとの実感66 .77419
愛一出会い
第
24「本」によって,自分の「生きる」方向が大きく影響されたことはない。 一.73013
愛一出会い7
26 読書を通して「考える」ことの充実感を,いつも味わう。.46773
しごと一しごとの実感因
63 「あること」が「あるとき」から,自分の「生き方」を換える上で重要な意味を持った体験がある。。45456 愛一出会い
子 7
いかに「生きる」べきかを模索していた時に,方向性を開いてくれた「ひと」がい驕B ・34403
愛一出会い30 自分の「生き方」や「ものの見方」を180°転換させた「ひと」を持っている。
.32243
愛一出会い第
72 自分が「何か」を「為した」後や「ひと」との「かかわり」の中で,自分の行為や態度をいつも後悔する。
.41410 愛一実感
36
人間としての「孤独さ」を忘れ,補うために,人とのかかわりを持っている。 .37539 愛一かかわり8
41 現在の自分が「為している」ことの中で,「どうしようもない」自己を感じている。
.34605
しごと一しごとの虚無因 子
12 「人間」として生きられない状況に「個」がさらされる時,自らの「生命」を賭けるということに共感出来る。
.32383
生命一生と死の対置 56 自分の「生きる」道をはっきりと決めて「生きている」が,その中に疑問を感じ,いつも苦しんでいる。.31319 生命一生の苦悩
第 6
相手の持つ「ひと」としての軽薄さや愚かさを感じる時,軽蔑したくなる。 .54230 愛一実感9因 57 自分の「生き方」や「ものの見方」に合わない「ひと」に対して,いつも感覚的な
ル和感を持っ。 。49120
愛一実感子 13
自分が,どう「生きる」かということとあまり関係なく,いつも幅広く気軽に人とレしている。
一30380 愛一出会い第
51 自分の「生き方」に直接つながらない「こと」には,全力を投入してかかわっていネい。
.38815 しごと一しごとの実感10
53 自分の全力を「投げかける」ことが出来て,始めて「しごと」と言える。 .34242 しごと一しごとの価値子
70 自分が何故「生きている」のかを,自分自身によく「問う」ことがある。 一30549 生命一生の苦悩118 茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)37号(1988)
を「仕事」として価値づけ,さらには,それ 表9 「実存不安」得点の度数分布表
を仕事の意味としている内容である。また,
「自分が何故『生きている』のかを,自分自 級間 中心点 度数 Z値
確 率
理論度数身によくr問う』ことが」ないということは, 114−132 123 2 一2.73 0.0096
1.66
133−151 142 4 一2.25
0.0317 5.48
「しごと」を「仕事」としてしか捉えていな 152−170 161 7
一1.77
0.083314.40
171−189 180 27
一1.29
0.173630.02
いことを示している。ここから,第10因子を, 19レ208
199 53一〇.81
0.287449.69
「仕事の意味づけ」と解釈した。 lll編 lll ll
一〇.33
@0.15
0.3778 O.3945
65.32 U8.21
さ礁因子分析結果を用いて大学性 lll額 lll ll
1:曽 0.3271
O.215556.56 R7.26
風および年齢の差による「実存不安」の 1鵬ll lll 111:ll
0.1127O.0468 19.49
W.09
程度の差の有無を翻するための分析を行な 雛lll 1器 讐
1:ll 0.0154
O.0039 1:ll
った・ま或因子分析によって拙され傾 lll鰯 ll8 言
1:器 0.0008
O.0001 0.12 O,0ユ7
目にっいてのみ得点化し,分布を見た。因子 399−417 408 2
4.48
0.000004 0.00069負荷量が負の方向を示す項目は,逆点項目と
して点数化し,二つ以上の因子にまたがって
抽出された項臨因子負確の絶対齢大 表1°輩毒窪簾是の大学間差゜性差
きい方を採用して,得点化している。
次に,大掌性肌および年齢に関して, 項 水 準 π
王
s.D検定を行ない,差の有無を検討した。「実
茨城大学 209 229.8538.36
t 大学
0.3718
他大学 151
231.41 40.29 存不安」得点の度数分布表を表9に,分布曲 男 153 223.93 40.74
性別線を図2に示した。t検定の結果は,表10に
女 207 234.40
40.60
0.1270示した。大学,性別,年齢の全てにおいて, 20−22歳 312 229.68
37.61 年齢
O提とした仮説通り有意差はみられなかった。
23−25歳 47 238.7048.27
1.4676
度数 90
80 一
一実測値
一攪̲値70
〆・・へ, 、
60 f 、
I 、
50、 、
E@ 、 、 、 、
40 、@ 、@ 、a@ 、o 、
30
、
@ 、
20
、 C 、 f 、 f 、 、
、 Y 、、 、
10
、f 、
,@ 、、 、
C6rゆ
喝馳鱒 隔・
鴫 曽 o 働
0
123 142 161 180 199 218 237 256 275 294 313 332 351 370 389 408得点 図2 「実存不安」得点の度数分布曲線
吉田・小熊:Time PerspectiveとPersonalityとの関連W 119
皿一3 第一次・第二次調査の連関 表11第一次・第二次調査により抽出された
「実存不安」は,人間の存在にかかわる問
@ それ故に,個人的な差はあるとし
因子の比較(その1)
題であり,
第一次調査で 1. 2. 3. 4, 5. 6.
7 1 因
因抽出された因子 トも,基本的に全ての人の問題である。大学,
ォ別,および年齢において,有意差が見られ
ネかったということは,このことを裏付けて 第二次調査で
隻感 曇悩
1 喜 毒 轟
至峯雲 薯畠器 奪り 毒あ崇
蓉垂翼
抽出された因子 ど 一 目 数
いる。 (29)35
1.生への疑問 1 (41)44. (20){71) 1.3949. 32.47、48. 9 46.σ0)
本研究では, 「実存不安」の構造を捉える 2,ために,十数年をおいた二次に渉る調査結果
撫感欝 10。19, 7
3.
棋榾因子分析を行ない,その構造を推測し
「ひと」との [62.かかわり
癬9
4た。そこで,第一次,および第二次の調査に 4 1
d事の価値づけ23. 翻:
25.43. 11,1522.i48) 10基づく因子分析結果を比較することによって, 5
生へのとりくみ12.9、52, 70. 8. 69. (1) 6「実存不安」の構造を探ってみよう。 a
「しこと」の虚無 (9}27, ll:29 55.71. 6 表11は,第一次,および第二次調査におい 乳 出会い 730. 器 6て抽出された,各々の因子の比較を示す表で & 1
カの苦悩 56
ω.72. 36 12. 4ある。第一次調査では, 「生の実感」 「生の 、
かかわりの狭さ 57, 13. 6. 3
苦悩」「『しごと』の虚無」「『ひと』との『出 十
10.仕事の意味づけ 53. {70〕 51. 2
会い』」「『しごと』の虚無」「かかわり」「『も フ』とのr出会い』」の7因子が抽出された。各
因子として抽出され
ネかった項目
34.45.
T4. 31.
寸64.
4. 67,
3.5.17.
Q1.58.61.
U5.68.
15
因子に含まれる項目の数 16 9 5
i 8
5 6 5 18 72因子に入る項目については,例えば第1因子 注〕 ・各セル内の番号は,項目番号である。
・⇔付きの番号は,二つ以上の因子にまたが?てとりあげられた項目で,かつ負荷量では,表を縦に通して見ると,表中の数字が 脚さか・たものである。
・因子に含まれる項目数において,(}付きの項目は数えておらず,合計が72になるよ
第1因子に含まれる項目の番号である。 うにしてある・
第二次調査では, 「生への疑問」 「生命のいのち
表12第一次。第二次調査により抽出された 実感」「『ひと』とのかかわり」「仕事の価 因子の比較(その2)
値づけ」 「生へのとりくみ」「『しごと』の虚
第一次調査で 「生命」に関する因子 「しごと」に関する因子 「愛」に関する因子
無」「出会い」「生の苦悩」「かかわりの狭さ」 抽出され姻子 1. 2, 3. 5. 4. 6. 7.
「仕事の意味づけ」の10因子が抽出された。
{研究においては,「生命」「しごと」「愛」 第二次調査で
箋感 委悩 薯畠虚 忌圭虚 碧り
抽出された因子 無 無 一 一
という三つの範疇を設定しているが,因子命
@ 星
1,生への疑問{29)35.ω
S4,46.㈹ (20)(7D1.39.49.
名を比較すると,双方の結果とも,因子をこ 金 2,轟の実感 14,1633.
に 42.59.
の三つに集約し得る。そこで,この範疇に即 孕 る
5,生へのとりくみ 2.9.52. 70. 69,
8, ω
して整理し表示すれば表12のようになる。 學 8.生の苦悩 56. {ω72, 36.
表12をみると,多少のバラツキはあるもの 喜 生
4.仕事の価値づけ 23. 38.4α50.
U0. 2543.
の・「生命」「しごと」「愛」の交絡する部 攣
6.「しごと」の虚無 (9)27. 1829.41. 5571、分に多くの項目が入っていることが示されて
10.仕事の意味づけ 53. (70) 51. 1 いる.「生命」と「しごと」,「しごと」と霧 「ひと」との3. かかわり62. 躍
「愛」, 「愛」と「しごと」の交絡する部分に 署 7,出会い 7.30,
12幡α3
畢入る項目は,1〜2項目だけである。この結9.かかわりの狭さ 57. 11…
、