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Time PerspectiveとPersonalityとの関連 II 一一

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(1)

茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学・芸術)30号(1981) 79−95      79

Time PerspectiveとPersonalityとの関連 II

一一

サ象学的分析

     *

厓nO喜夫・吉田昭久

(1980年10月20日受理)

On Time Perspective and Personality II: A Phenomenological Analysis        *

likio HITAKA and Teruhisa YosHIDA

(Received October 20,1980)

前論文で,筆者らは,従来,社会的,文化的要因あるいは,パーソナリティや発達的要因との関連 でなされてきたtime perspectiveに関する研究を,批判的に検討した。そこでは,まず,ミンコフ スキーにおける人間存在とその「生きられる時間」との関連を取り上げ,さまざまな精神病者の問題 は,その「生きられる時間」の変容に起因することを指摘した。その研究から示唆されることは,病 者に対するかかわりは,病者が自己の空間一時間的なperspectiveを再構築する際の助力にあるとい

うことであった。さらに,ミンコフスキーと同じく現象学的方法により精神病者における時間性の問 題を追求したビソスワソガーの研究を取り上げ,世界内存在としての存在様式の変容という観点から なされた,エレン・ウェストの症例,及び躁うつ病者の本質を,過去・現在・未来という時間的対象 の志向的構造契機から分析する方向の重要さを指摘した。さらに,フラソクルにおける生きることの 意味と「未来」への志向性との関連について取り上げ,人間存在の問題は,「仮の生活」という未来 性の阻まれた状況をいかに乗り越えるかにあるとするフラソクルの観点は,現代人の生きる意味の喪 失という現在的課題にまで連なることを指摘した。そして,以上のような現象学的・精神病理学的な 人間存在の把握の視点,即ち「実存」としての人間をとらえる観点から,心理学における時間とパー

ソナリティとの関連について検討を加えた。

そこでは,オールポート,マスロー等の指摘した,従来のパーソナリティ論における未来性の軽視,

即ち,パーソナリティを過去から説明することに対する疑義は,今日においても生きた課題であると いうことであった。また,レヴィンの理論体系におけるtime perspectiveの位置を検討し,その中 で,time perspectiveの定義に含まれる「心理学的過去」「心理学的未来」といった概念が,多義 的な解釈を生み,レヴィンの理論化に依拠した研究も,それらの「語」の充分な定義がなければ,曖 昧にならざるを得ないことを指摘した。

次に,前論文の課題である,time perspectiveに関する研究を概観し,その現象把握の方法の 検討を通して,第1に,従来の方法では,そこで捉えられた被験者のtime perspectiveは,個人

*茨城大学教育学部教育臨床心理研究室研究生(Research Student, Laboratory of Educational Clinical Psychology, Faculty of Education, Ibaraki University)

(2)

の想像力や予測力を測る結果に終る可能性を指摘し,第2に,得点化の問題,すなわち,time per一 spectiveの広がりを物理的な時間の長さに還元することの困難iさを問題とした。以上の問題は,結 局のところ,従来の心理学における人間と時間との関連についての捉え方の曖昧さに帰着する。そし て,人間と時間との関連性の問題は,レヴィソのようにパー一ソナリティを個の存在様式と切り離した ところで追求する観点からでは捉え切れないものであることを指摘し,人間存在と時間性との関連を 捉える方法の吟味を含めて,人間存在とは,どのような構造を持つのか,さらには,筆者らのtime

perspective把握の具体的方法について検討することを次の課題とした。

さて,本論文では,上述した課題を追求することになるが,本論に入る前に,前論文で提示した目 次概要の変更について,述べておきたい。前論文では,因子分析法による操作的検討の後に,現象学 的検討を加えるという構成を持っていたが,筆者らが前論文から追求してきた問題意識にそえば,む しろ,本論文では,現象学的検討に重点を置くべきであると考え,以下のように現象学的方法による time perspectiveの把握の可能性について検討することとした。ちなみに,本論文の目次構成を示 せば以下のごとくである。

lll人間存在と時間性

lll−1 人間と時間との関連に関する最近の諸研究 lll 2 人間存在とその時間性

Ill 3 人間存在とtime perspective

rV time perspectiveに関する深層個別面接法的接近 lV−1 深層個別面接のための面接視点の構造化

「V−2 被対象者の選定と具体的面接手続き

〜L3 整理視点の設定と面接結果 V 現象学的検討

今後の課題

lll 人間存在と時間性

lll−1 人間と時間との関連に関する最近の諸研究

本節では,最近のtime perspectiveに関する研究を中心として取り上げ,さらに,その現象把 握の方法について,検討を加えていきたい。なお,筆者らは,既にtime perspectiveに関する諸研       1)

?フ概観を行なっているので,詳しくは,それに譲り,ここでは,論述に必要なかぎりでの言及にと

どめたい、,

まず,個人の持つtime perspectiveに対し,その所属する階級による差がどのような影響を持つ

かについて検討した研究を概観してみよう。ケソドールとスィブリィ(Kendall, M. B.&Sibley,       2)R.F.)は,レザソ(Leshan, L. L.)によってなされた,中産階級の子どもは,下層階級の子ども

に比べて,より未来志向的であり,後者は,現在志向的な傾向を持つこと,さらには,前者はより長 いtime perspectiveを持つという仮説を方法論的な観点から吟味し,次のような結果を示している。

すなわち,time spanの差に関しては,レザンの仮説を支持するが,動詞の使用という点で,中産 階級の子どもが,下層階級の子どもに比べて未来動詞の使用頻度が有意に少なく,過去動詞の使用が 多いことを示している。そして,前者は,より多くの語彙を持つため話が長くなること,従って,

time spanにおける差は, time orientationの階級差を反映したものではなく,物語の長さによ

(3)

日高・吉田:Time PerspectiveとPersonalityとの関連 H        81

・て作られた差かも知れないことを指摘しているご)この研究は藻者らが前謙で指摘した問題点,

すなわち,物語構成法で得られたデータは,個人のtime perspectiveを反映しうるかという指摘に とって,その裏付けとなる事実を提供していると言えよう。

ラム,シュミット,トロムスドルフ(Lamm, H. Schmidt,R. W.&Trommsdorff, G.)は,

従来の研究がtime perspectiveを単一の次元としてとらえてきたことを批判し, future orien一 tationの構造として,複数の次元(density, extension, optimismなど)をあげ,社会階級との 関連を検討している。中産階級の青年は,下層階級の青年より,イ)公的なものへの関心と同時に,

私的な関心と関連する希望や恐怖に結びついたfuture orientat ionにおいて,より長く志向づけら れていること。ロ)公的な領域における発展と,その過程に多く関わり,希望や恐怖の具体化は,自 武gに襯していると信じがちであることを報告しているご)

従来,time perspectiveは,単一の次元でとらえられることを仮定して研究が進められてきたが,

構造そのものを扱った研究は少なく,さらに検討を必要とするところであろう。

精神障害者とtime perspectiveとの関連にっいて,フークスとウェッブ(Foulks, J. D&

Webb, J,T.)は,うっ病者,アル中者,急性分裂病者と正常者間にはfuture orientationにおい て差違が認められたが慢性分裂病者では正常者との問に差は認められなかったこと,past exten一 tionについては,アル中者,急性分裂病者では正常者より短いextensionを示し,うつ病者は,過去

している。

マリファナ使用者と未使用者について,キングとマナスター(King, M. R&Manaster,G J、)は,使用者において,現在と将来への志向という点では未使用者との間に差はないが,過去に対 しては有意に志向づけられていることを報告していボ1

さらに,ヘロイン中毒者にMethadone maintenance治療プログラムを実施したヘニ・クとドミ ノ(Henik,W&Domino, G)は,中毒者において将来への考え,とくにfufure extension の水準における瀬プ・グラムの騨な影響性に関して言及している7

P

非行少年とtime perspectiveとの関連について,ディビッツとファルコフ(Davids,A.&

Falkof, B. B.)は,1959年に報告された非行群の方が,より将来へのorientationを持ち,特に年

少者でその顕著な差を見出している。そして,1974年の年少の非行者は,より幼児的,衝動的で,現      8)在志向を持つと指摘している。time OrientatiOnの変化には,社会的状況因が影響を与えている

と著者らは考えるが,この研究では,深く検討を加えていない。これに反し,状況的な要因を位置づ けることの必要性を指摘し研究を進めているのが,ランダウ(Landau,S. F.)である。彼は,イ)

全ての被験者は,基本的には未来志向を持つこと。ロ)収容者でも,囚人は,兵士と比べ,現在への 関心が大であるが,釈放が近づくにつれ,将来への関心が増加すること。ハ)非行群では,過去を否 定的に,未来を肯定的に知覚し,中でも収容された者は,現在を否定的に知覚することを見出してい

る。

上述した研究では,物語構成法,文章完成法,質問(紙)法がそれぞれ用いられている。前論文で 指摘した問題点は,以上の諸研究についてもいえよう。さらに,重要な問題は,time perspective

をどうとらえるかにあり,その概念の複数次元からなる構造化された捉え方の必要性については,す でに触れた。従って,従来の方法に変わるものとして何が提出し得るか,さらには,人間と時間との 関連をどう捉えるかが次の課題となる。それは,人間存在の本質を問うことを切り離しては考えられ

ない。

(4)

Ill−2 人間存在とその時間性

一般に,現代の科学的心理学における方法は,行動主義のブラ・クボックス・モデルに代表される よう評対象とされる燗の心理・意識}・直接に擬することは不可能であるとする暢を前提とし て来た。行動を説明するために依拠する,人間の内的(心理的)状態や過程は,観察可能な現象から 推論によって構成された概念に置き換えられる。そこでは,近代の自然科学的思考法,すなわち,主

・客の分離に根差した思考法がモデルとされている。いわば,人間の表出する現象は,自然現象のこ とく対象化され,分析的,操作的な手続きを経て,構成されたものとなる。従って,そこでの関心は,

人間の実在そのものよりも,行動の予測と制御に置かれることになる。

 これに対し,フッサールの創始した現象学的探究法は,上述した方法では接近不可能な意識そのも       11)のにせまるための根底的な方法を提起していると考えられる,,そこでは,自然科学的思考法を範とし

ているが故に心理学が見逃して来た,また,その方法にも由来する,現象を刺激と反応の図式へと還 元して研究が進められる実験的方法において切り捨てられた,人間経験の深い意味を探究しようとす る。その方法の基本的態度は,「事象そのもの」へという根本テーゼに従いつつ,一切の先入見を払 拭して現象そのものを,また,研究者の意識に現われるままの現象を,その意味,その本質構造を直 観によって把握し,忠実に記述しようとする。そして,次に,「自然的態度」において自明のものと

して定立されている外的世界の超越的存在について,判断を中止し,一切の定立を「カッコに入れて」

排除しなければならない。これが,いわゆる「現象学的還元」である。それによってフッサ ルは,

意識の本質,つまり,「志向性」を明らかにし,世界とはその「志向性」によって構成,定立された      121

烽フであることを見出し,その解明を現象学固有の課題としたのである。この「志向性」の定位こそ,

近代科学の主・客分離に根ざした思考法を越える,従って,デカルト主義の影響によって麻痺されて

@      13)

いる心理学を解放するための理論的な基礎を提供したと言えよう。

しかしながら,探究の方法としては,根底的なものであるとしても,研究者の主観性に依拠するが

故に, 「科学」的立場からは,いくつかの難点を認めざるを得ない。       14)

すなわち,「現象学的還元」を遂行することの困難さである。それは,フ・サール自身の生涯にわ たる紆余曲折した探究からもうかがえよう。従って,未だ一般の「科学的」な方法の持つ随意性を持 たないように思われる。その探究の成果は,研究者自身に依存した名人芸的なものにならざるを得な い側面を持ち,追試し,共同主観化することが困難であると言えよう。

さらに,メル・一・ポソティ(Merleau−Ponty, M.)も指摘するように,完全な「還元」の困難i さであ謂すなわち翫に成功しても研究者自身の持つ個体的,文化的轍拘束性を反映する可能 性を持つということが指摘される。例えば,ハイデッガーの実存の本来性,非本来性の基準,不安の

@      16)

T念などに,彼自身の人生の理想,時代的状況の反映を見てとれよう。

従って,上述の困難を回避するのに必要とされることは,「自明でない」,「異質だ」と考えられ る「世界」との接触を不断に,継続してゆくことであり,そのことによって自分自身の「自明性」を 問うことにあるだろう。それには,最近の学問の趨勢ともいえる,比較思想,比較社会学等を含む比 較文化の視点を,さらには,比較精神医学などの視点を把持しつつ,その上に立って人間を「問う」

@         17)

アとにあると言えよう。

さて,以上の観点から,人間存在とその時間性について,ハイデッガーの考えを中心に検討してみ

よう。

元来,ここで用いられている時間性という概念は,フッサールの時間に関する研究に由来すると考

(5)

日高・吉田:Time PerspectiveとPersonalityとの関連 H       83

えられるが,それは,自然的あるいは通俗的に用いられている時間に対して,根源的な意味を付与さ れて用いられている。フ・サ ルにおいては,超越的自我とそのノエマとしての世界との関係におけ る自己構成が,時間性として明らかにされ,時間性とは,根源的な体験の流れの基本的な形式を指し,

「今」すなわち「現前」と,過ぎ去った印象を「今」に保つ「過去把持」(Retention),そして,ま       18)

ウに,来たらんとする「今」を先取る「未来把持」(Protention)の三つの地平よりなっている。

ハイデッガーにおいては,そのようなフッサールの考えが,現存性の存在としての「関心」(Sorge)

の意味が時間性として捉えなおされる。

19)

彼は,現存在の持つ根本的構造を,「世界内存在」として特徴づける。これは,人間を,その全体 性において捉える上で,最も適切な概念であると考えられる。「世界」と共に,「世界」の内にある 存在としての人間,常に,何かとの関係(性)の内に存在するものとしての人間を捉える点において である。さて,その「世界内存在」という在り方は,「現存在」(Dasein)のrDa」を検討していく

ことで明瞭となり,それは,「被投性」と「投企」という二つの契機から成る。「被投性」とは,現 存在がどこから由来し,どこへ行くかも不明なままに,投げ出されていることを意味し,気分という

20)

「情態性」のうちに,示されることになる。一方,「投企」は,「了解」の働きのうちに示され,存 在可能なものとしての現存在を特徴づける。すなわち,現存在は,常に,自己が在り得るところのも

21)

のとなる。従って,現存在は,単に「被投性」として投げ出されているだけでなく,その様に投げ出 されつつも,自己を存在可能なものとして「投企」するものとなる。この二つの契機を,ハイデッガー は,「被投的投企」と呼ぶ。それが,人間の現実性を示すことになる。

       23)

ウらに,現存在は,その全体性と本来性という観点から根底的な解釈が加えられることになる。全 体性からみれば,現存在とは,誕生と死との間にあり,「終りへの存在」である。そして,本来性と いう点から捉えるなら,「ひと」の世の中に頽落している現存在は,死への非本来的な在り方におい て「在る」こととなる。反対に,死にかかわる存在の本来的な在り方においては,自己の死の可能性 に近づき,「関心」に基づいた,良心の自己へ向かっての呼びかけの内に,不安を目覚めさせ,その ことによって,現存在を本来的な可能性に連れ戻すことになる。rDa」とは,そこで存在が,あらわ に示される場を意味しているが,現存在が自己の本来性へ立ち戻り,そのrDa」において現われる存 在みずからにかかわりを持っことが険存」の意味である。そして,非本来性から本来性への転換は,

現存在の決意,すなわち,死へと先駆する中でなされることになり,その「先駆的覚悟性」によって 全体性と本来性は,特微づけられる。従って,そのことにより,現存在の存在の意味が,時間性とな る。すなわち,「先駆的覚悟性」において現存在は,最も自己の存在可能のうちに,自己自身へと到 来することとなり,そこには,「将来」という意味が含まれている。また,その「先駆的覚悟性」に おいて現存在は,すでに,投げ出されたままの自己を引き受けることによって本来的となり,そのこ とは,「既在」という性格を持っこととなる。さらに,「先駆的覚悟性」によって,孤立した自己に 対するのではなく,自己の状況に気を配りつつ本来的に実存するということは,「現前」を意味する ことになる。つまり,未来,過去,現在という時間概念に対応する,以上の三つの意味の統一が時間 性となる。そして,その時間性の特徴は,将来の優位ということになり,自己が自己の外に出ること        24)

ノよって,視界が開けてくるが故に,脱自的な性格を持つと,ハイデッガーは論究している。

以上のように,根源的な時間を人間存在の存在の意味として,統一的にとらえる視点は,サルトル

(Sartre, J. R)にも受け継がれていく。すなわち,彼も,時間性を一つの組織された構造としてと らえなければならなレミ 瀦摘しそれを対自の存在論的離そのものとしてとらえている。対自は,

「それがあるところのものでない」という仕方で過去であり,「それがないところのものである」と

(6)

して未来なのである。そして,その二つの契機の脱自的統一である, 「それがあるところのものでも       26)

ヘやなく,それがまだないところのものである」として,現在となる。

上述してきたような,人間存在と時間性との関連から示唆されることは,人間は,時間のうちに存 在するのではなく,その「脱自」という在り方そのものとして根源的に時間を生きているということ であろう。いわば,「瞬間」 瞬間」自己の生から死という全体を引き受けつつ実存することが人間 の本来的在り方ということになる。このような視点は,近代合理主義の源と考えられるデカルトの思 想,すなわち,思惟する精神を人間の本性とし,他は,延長する物質として捉えようとする考えから は,導くことの出来ぬところであろう。そこでは,人間以外の生命体は物質として規定され,動物は 自動機械という位置に置かれることになる。それは,自己の肉体すら物質として捉えることにもなる。

従って,そこには,生命から分離した純粋な精神が存在するということになり,同時に,人間は「死       朗       しかし,生死の問題は,「実存」を問う近・すべきもの」であるということを忘却する結果となる。

現代の思想家のみの関心事ではなく,仏教,その他の宗教において問われてきた問題でもあった。従 って,筆者らは,さらに,人間の存在,その時間との関連を明確化すべく,仏教における人間と時間 との把握に触れ,time perspectiveを考える上での基本的な論点を捉えることにする。

lll−3 人間存在とtime perspective

仏教とは,ブッダ(Buddha,仏陀)の教えであり,ブッダとは,「目覚めた者」(覚者)を意味し,

それが,インド・ネパールの釈迦族出身のゴータマ(Gotalna,盟曇)・ブッダの説いた教えに始ま        28)

驍アとは,周知の事である。ゴータマ・ブッダは,この現実世界を「無常」の世界であり,「苦」の 世界であると捉え,「一切皆苦」という言葉に示されるように,彼自身の生における苦悩の問題であ

り,それは出家の原因であったとも言えよう。 「苫」の超越は彼にとっての修業の目的であり,「苦」

の現実を見きわめ,解脱することによって覚者へと到る道を歩んだのである。ここで「苦」とは,人 間・個体の持つ欲望に端を発し,その欲望はたえず実現を求めて止まず,実現された時それはさらに 新たなる欲望を生起しつづける。しかもその欲望は,一人自己の持つものだけでなく,他者をもまた 持つ欲望であるが故に,そこに人間の間の争いの根源を見てとることができる。その欲望が自己の生 命の維持にかかわるものを越えて,さらに求めることに執着する時,それは,他者との熾烈な争いを 生むこととなる。そこでは,他者との間に支配一被支配の関係を生み,他者を支配する権力を求め ることとなる。このような欲望への執着を立ち切ることが,ブッダの教えの根本であった。さらに

「苦」は,人間にとって回避することの出来得ない「生病老死」に由来するものでもある。個体とし ての人間が,何か自己の存在を常住不変のものと思い,それに固執すればするほど苦悩は強まること となる。これに対し仏教においては,常住不変のものの存在を否定(「諸法無我」)し,一切は無常 のうちにあること(「諸行無常」)を説く。そして,このような真理を見きわめっくすことを通して,

「苦」を消滅させること(「浬藥寂静」)を目ざすことになる。

以上のような,人間をも含めた世界…切を「無常」と捉える観点から,時間はどのように捉えられ ることになるか。 「諸行無常」,すなわちあらゆる現象界を,不生不滅,常住不変のものではなく常 に生成流転し生滅変化すると捉えるなら,時間にもなんらその実体としての性格を付与することなく,

一切は「刹那(瞬間)」のうちにあることは明らかであろう。人間を「主体」として捉えるなら,現 在の一瞬間をおいて他にはないこととなる。従って,人間存在にとって重要なものは,刻々に過ぎ去 る現在の「刹那」ということとなり,この一瞬一瞬に自己の全力をもって対峙すること以外にはない

(7)

日高・吉田:Time PerspectiveとPersonalityとの関連 H       85

こととなる。このような考えは,フロム(Fromm,E.)が,人間における「持つ様式」と「ある様式」

を区別し,「ある様式」における時間は,「今ここ」にのみ存在することと捉え,さらに「持っ様式」

においては,過去に蓄積したものに縛られるとし,金,土地,名声,社会的地位,知識,子ども な どを指摘していることと通底する。そして,未来は過去となるものの予測である とする時,過去と 同じく「持つ様式」で線され,人は未来を「持つ」という表現をすることとなぎ1)

以上の様な観点は,「人」が未来に何を想像するか,予測するか といったことが重要であるので はなく,むしろ,「瞬間」 「瞬間」をどのようにその「人」の「生」として生きているか というこ

とが重要であるとする視点を提起していると言える。それ故,その[瞬間」が,「人」の全存在を掛 け,充実し十全なものである時,「人」は永遠を生きる という性格を持っこととなる。

このような視点は,従来のtime perspectiveに関する研究の欠落点を埋めるに充分な視点である と考えられるが,さらに筆者らのtime perspectiveに関する視点を,ミンコフスキーの所論に触れ っっ検討してみよう。

ミンコフスキーは,過去は記憶によって捉えられるものであることから,「生」とのかかわりにお いて棘を顛敏元として考えてい器曽未来は,「翻性」と「鵬」,「欲望」と「希望」,そ して「祈り」と「倫理的行為の追求」という六っの基本的撒の中で[生きて採ぎ)とする.「活 動性」は,生ける存在のすべての行動を一つに結びついている共通の基盤であり,「より大きくなる」

という創方で示される。それは「活動的塒続」であり,「未来へ方向づけられた持続」であ課 他方「期待」は, 「活動性」と同一平面に位置するが対立する現象として位置づける。 「活動性」は 未来へと赴くが,「期待」は予見された未来が現在になるのを「待つ」ことだからである。このよう な二っの現象の上に位置するのが,「欲望」と「希望」である。それらは,前二者を乗り越え「より 遠く」を目指し,「人」を間接的なものとの関係におき,「人」が未来の内に持つ展望(perspec一 ti・・)を広げ拶1「欲望」によ。て生きる未来は,「翻性」の領界を越えた間接的妹来であざ1)

それは,対象を固定することによって内的自我の領界を創造する。ミンコフスキーは,「人生は欲望 なしにも可能であるが訣して活動肋しには可能では調と指胤,「希望」は「鵬」よりも

さらに遠味来を開くものとす81)「祈り」と「鯉的行為の追求」は洪により高度妹来を轍す る現象であり,「祈り」は「希望」が小さく見える情況においてみられ,「間接的な未来」を越えて

「果てまで」行く絶対的なものへと到達する。それによって「永遠なるものの観念」が湧出し,「積 極的な価値における永遠」に触れることとな器1そして,「倫理的行為鎚求」は,燗存在にとっ て根源的なものであり,それによって未来そのものは「理想」となって現出することとな課

以上の現象群は,次のように表現することが可能となる。即ち,「自我一此処一今」という統 合された離とみなされる「われ在り」は詩間・空間の密馳続を示げ1)「わ鮪つヨま,「わ れ在り」より大きな幅の盤であり,「騨」の現象と蹴;すぎ1さらに「われ属す」は「倫助行 為の追求」によって生じ,「人」をして人類の前に情況づけることを可能とする。「人」は,「生の 飛躍」を,この広大帳望へと方向づけ泊己の可能性を開き,体験す8)こととなる。

これまで述べて来たことは,従来のtime perspectiveの研究が,未来に対しても過去にっいても

「人」が認識・予見するかぎりでのperspectiveを研究の対象として来たことを明示している。

しかし,このような認識におけるperspectiveは,人間存在を「実存」と捉える立場からすれば,

その「生」の一部を捉えているに過ぎず,むしろ要求されることは,仏教でいう「瞬間」の生という ことにも連なる,「私一比処一今」を基点に,どのようなperspectiveのもとに「世界」を「生 きて」いるかに直接的に接近することであろう。

(8)

IV time PersPectiveに関する深層個別面接法的接近

r》−1 深層個別面接のための面接視点の構造化

面接視点の構造化について述べる前に,筆者らが,現象学的研究法として面接法を取り上げる視点 を明確にしよう。心理学研究法のひとつとして,面接法は,臨床心理学の領域で,診断あるいは治療        42)

フための面接に,さらには,調査面接として社会調査の領域で取り上げられて来た。筆者らは,上記 の面接法によるさまざまな成果を継承するが,さらに面接法を取り上げる根拠を以下の点に置く。す なわち前論文で検討を加えた,ミソコフスキー,ビソスワソガー等,精神病理学者が,その現象学的

研究を進める上で,依拠してい 表1構造化された面接視点および具体的な面接視点        るものが,患者の表現するもの,

とりわけ言語表現にあるという

世界

分節  f係性された雌

行  為  性 感     性 点である。個々の実存へと接近

1.肉体の確認 2,不健康の許容 するためには,その実存自体に

肉   体 ・内容  ・時 ・内容  ・程度

・理由 ・時   ・理由 自らの世界を「語らせる」こと

生   命

L他の生命への配慮

@・内容  ・留度

2,動・植物とのふれあいに伴う感情

@・内容  ・程度 が不可避であると考えている。

・理由 ・時   ・理由

1,自然とのふれあい 2.自然に対する感情 そして,そこで得られた実存自

自   然 ・内容  ・時・理由 ・内容  ・程度

E時   ・理由 体の言葉そのものの検討を通し

1、しごとの選択 2,しごとの実感 て,個の内的世界を記述してゆ

し ご と ・内容  ・理由 ・内容  ・程度

・時   ・理由 くことを重視する。ミソコフス

かかわり

1,重要な他名との出会い

@・内容  ・誰が

2,かかわりにおける充実感

@・内容  ・程度 キーにおいては,そこから病者

・時   ・理由 ・時   ・理由

の本質が現象学的直観によって

1,牛きがいとなる対象の選択 2.生きがいとするものに対する感情

生きがい ・内容  ・理由 ・内容  ・程度 析出され,ビソスワンガーにお

o ・時   ・理由

L生活様式の受容 2.技能獲得に伴う感情 いては,病者の世界内存在の変

技能・生活 ・内容  ・理由 ・内容  ・程度

E時   ・理由 容の様式が掴み取られていった。

1 │・芸術

1.工芸・芸術への興味・関心

@・内容  ・理由

2芸術の享受に伴う感情

@・内容  ・積渡 しかし,そこには,Ill−2にお

・時   ・理由 いて指摘した現象学的方法に内

1政治的・経済的イテ†ロキーの受容 2,1学ぶ1ことに伴う感情

学問・思想 ・内容  ・理由 ・内容  ・程度 在する問題,さらには,個々の

・時   ・理由

1.所有対象のひろがり 2所有対象に対する充足感 実存が,その「ことば」によっ

所   肩 ・内容  ・理由 ・内容  ・時

E理由 て示す,真に意味する内容は何

地   位 1,所属集団内での位置確認

@・内容  ・理由

2地位獲得に伴う満足感

@・内容  ・Hl1由 かを見出すことの困難さがある

体制内位置 1.体制内地位に対する興味・関心

@・内容  ・理由

2.体制内地位獲得に伴う満足感

@・内容  ・理由

と考えられる。事実,彼らの研 究は,病者との継続的な面接を もとになされたものである。従 って,筆者らの研究においても上記¢庶を考慮しつつ,心理臨床における個別面接法としての深層面 接法を用いて,面接対象者が話す内容を,面接者側のあらかじめ設定した構造枠に基づいて継続的,

段階的に面接を行ない,言葉の検討が容易なものとなるよう配慮した。

time perspectiveに関する基本的な観点は,前節において示したが,さらに,その観点から個々 の対象者のtime perspectiveを捉えるべく,表1に示したような面接視点及び具体的面接視点を設 定した。 r人」を生から死へという流れの中で捉えるなら,「人」は,その生誕とともに,いわゆる

自然との関係性を基底に持ちつつ,そのヒに,さらに重層的に重なる歴史的,文化的,社会的な関係

(9)

日高・吉田:Time PerspectiveとPersonali七yとの関連 1        87

表2 具体的質問項目       の中に投げ込まれ,自己の生命 の維持を基本とする世界へのか

節   係性された

行   為   性 感      性

かわりを作り出す。そのかかわ

1肉体の確認 2不健康の許容

肉   体 Qあなたは,自分自身のからだ ォをどのようなことを通して確

Qあなたが自分自身のからだにっ

@いて健康・不健康を感じるのは

りの中で「人」は,個別的な

認しますか。 どんなことですか。 perspectiveから世界を捉え,

L他の生命への配慮

pあなたが食物として出された動・

2.動・植物とのふれあいに伴う感情

pあなたが動物や植物とのふれあ 逆に,世界からの反照を通して

生   叩

植物を食べるのに配慮すること ヘどんなことですか。

いを通じて感じるのは,どんな

アとですか。 perspectiveの帰趨点としての

1.自然とのふれあい 2.自然に対する感情 自己を見出すことになる。しか

Qあなたが自然とふれあうのはど Qあなたが自己をとりまく自然に

自   然 んなことを通してですか。 っいて感じるのはどんなことで し,そのperspectiveは,世界

すか。

1.しごとの選択 2.しごとの実感 の多様性に応じて錯綜し,自己

し ご と Qあなたが日々のしごととしてい

@ることはどんなことですか。

Qあなたが日々のしごとで感じる

@のはどんなことですか。 を様々な様相において捉える。

かかわり

1.重要な他者との出会い pあなたが自分にとって大切だな

@と思う人との出会いはどんなご

2.かかわりにおける充実感 pあなたにとって人とのかかわり

@においての充実した感じとはど

時には,端的にかかわりを持つ ゥ己として,時には,自己のか

とですか。 んなことですカも

L生きがいとなる対象の選択 2,生きがいとするものに対する感情 かわりそのものを反照する自己 生きがい Qあなたが生きがいとしているの

ヘどんなことですか。

Qあなたが自分の生きがいに対し

@て感じるのはどんなことですか (実存)として位置づける。そ

技能・生活

L生活様式の受容

pあなたが日々のくらしの中で受

@け入れている衣・食・住のよう

@な生活はどのようなものですか。

2.技能獲得に伴う感情 pあなたが生活に伴う技術を獲得

@することで感じるのはどんなこ

@とですか。

して,そのようなかかわりは,

u人」が無機的自然に還るとと

1.工芸・芸術への興味・関心 2芸術の享受に伴う感情 もに消失すると言える。以上の

工芸・芸術 Qあなたが興味・関心を持ってい

@る工芸・芸術はどんなものです

Qあなたが芸術を味わうことを通

@して感じるのはどんなことです ような観点から,「人」の一生

か。 か。

1政治的・経済的イデかギーの受容 2.「学ぶ」ことに伴う感情 を貫いてかかわりを持つものと

学問・思想 Qあなたは政治や経済の問題につ

@いてどのような考えや思想を支

Qあなたが学び知ることを通して

@感じるのは,どんなことですカも して,表1の縦軸に示したごと

持し,行動していますか。 く4つの重層的な範疇を立て,

1.所有対象のひろがり 2.所有対象に対する充足感。

所   有 Qあなたが所有したいと思ってい

@るのはどのようなものですか。

Qあなたが現在所有しているもの

@に対して感じるのはどんなこと さらに各々の範疇を,自己から

ですか 世界へと,その広がりを増し,

地   位

1.所属集団内での位置確認 pあなたが自分の属する集団の中

@で得ている地位はどのようなも

@のですか。

2.地位獲得に伴う満足感 pあなたにとって満足できる地位

@とはどのようなものですか。

かつ抽象的なものへと向かう方

?ナ3つづつに分節し,合計12

体制内位置

1.体制内地位に対する興味・関心 p体制内における地位についてあ

@なたが持つ興味・関心はどのよ

@うなものですか。

2.体制内地位獲得に伴う満足感 pあなたが体制内の地位を獲得す

@ることで感じるのは,どのよう

@なことですか。

に範疇化した。また個々のpers−

垂?モ狽奄魔? 単なる観念として捉 えるのではなく,具体的な事実 性を持つものとして捉えるため,

「人」の生の基礎としての関係性に関して,行為性と感性の2視点を立て横軸とした。面接視点の縦 軸と横軸をクロスさせて出来た各メッシュごとに,具体的面接視点を表1のように設定した。この具 体的面接視点に基づき,表2の具体的質問項目が導出される。

W−2 被対象者の選定と具体的面接手続き

前節までで筆者らは,従来のtime perspectiveに関する研究における,その理論化と現象把握の 方法に批判的検討を加え,さらには,筆者らのtime perspectiveに関する研究の視点を明らかにし っっ,現象学的検討の対象として,面接によって得られた「ことば」そのものの検討の必要性を述べ た。従って,調査の目的は,そのような方法を具体的に個々の対象者に適用し,検討することであり,

(10)

表3 被対象者のプ・フィール       さらには,被対象者がどのようなti me perspectiveを現実に持つのかを明らかに

することにある。しかも,面接の内容とい

Nq 年齢 出身地 面接態度 年齢 出身地 面接態度

1 22 栃木県 積極的・表面的 22 23 神奈11県 積極的・表面的 う点から考えると自己の行為あるいは感性

宮城県 テ岡県

積極的・表面的 マ極的・内省的

23 Q4

21 Q3

福井県 ネ木県

積極的・表面的

マ極的・表面的 (感情)等を1分に対象化し,かつそれに

4 23 北海県 積極的・表面的・一ガ多 25 21 茨城県 積極的・表面的 ついて述べることの可能性が要求される。

福島県 テ岡県

積極的・表面的 マ極的・内省的

26 Q7

21 Q0

茨城県 逞t県

積極的・内省的

マ極的・内省的 発達心理学的知見によれば,それは,青年

7 22 Lll形県 積極的・表面的 28 20 茨城県 積極的・表面的 期以降において,いわゆる自己意識の確立

静岡県

?骭ァ

積極的・表面的 マ極的・表面的

29 R0

21 Q1

茨城県

?t県

積極的・表面的

マ極的・表面的 を待って可能となる。このような知見を踏

10 22 千葉県 積極的・表面的 31 22 茨城県 積極的・表面的 まえ,本研究においては,年令20才〜25才

埼玉県

?骭ァ

積極的・表面的 マ極的衷面的。韻多

32 R3

24 Q3

福島県

?骭ァ

積極的・内省的

マ極的・表面的 の青年を面接対象者として選定した。

13 21 山口県 積極的・ム面的 34 23 福島県 積極的・内省的 面接の方法は,あらかじめ対象者に面接

14 21 茨城県 積極的・表面的 35 23 東京都 積極的表莇信語量多

15 21 茨城県 積極的・表面的 36 22 山ri県 積極的・表面的 を依頼し,期日,時間を指定し,被対象者

16 23 茨城県 積極的・表面的 37 24 茨城県 積極的・内省的 と相談の上,面接に応じてもらった。面接

17 22 徳島県 積極的・表面的 38 21 栃木県 積極的・内省的

18 22 茨城県 積極的・内省的 39 21 青森県 積極的・表面的 場所は,対象者が,心理的負担を受け

19 22 京都府 積極的・表面的 40 25 茨城県 積極的・表面的・言語量多

ず,気楽に話せることを考慮し,喫茶店に

20 24 茨城県 積極的・表面的諦謁多 41 23 茨城県 積極的・表面的

21 21 大分県 積極的・表面的 42 22 Lu形県 積極的・表面的 て行なわれた。面接に要した時間は,一人 平均2時間であった。具体的質問項目は,

表2に示してあるが,すべて「どのような」

あるいは,「どんなこと・もの」という質問形式を取っている。それは,面接者側で言語反応を一義 的に決定することなく自由に答えることができるよう配慮したためである。なぜなら反応として出さ れた「ことば」の中に個々の対象老が持つperspectiveが反映されていると考えるからであり,その perspectiveが対象者にとって事実性を持つなら,面接者側の規定する,内容から理由に到るまでの 質問に答えることが可能であると考えられるからである。面接は,できるだけ対象者の話の流れを中 断しないよう配慮し,日常の会話に近い形で進められた。被対象者の言語反応は,カセットテ プに よって全て集録される。面接に応じてくれた被対象者のプロフィーヨレを示せば,表3のようになる。

この表から面接内容は,茨城的地域特性を排した現代青年の意識を反映していると考えられる。

四一3 整理視点の設定と面接結果

前節で述べた面接による内容は,テー一プから,被対象者が話した「ことば」そのままを忠実に,面 接視点ごとに,カードに記入し,表に整理した。その「ことば」をtime perspectiveとの関連で検 討するため,次のような整理視点を立て,言葉を分類した。

第1の整理視点として「実存的不安」が設定された。本来的実存は,その全体性(誕生から死)を 担いつつ,投企する(ハイデッガ )という点にっいては,前述した。従って,より実存的に生きる

ということは,同時に長いtime perspectiveを持つということが想定される。しかし,「実存」す ることは,一瞬一瞬の問題であるため,ここでは,「実存的不安」を,相対的に実存的な生き方をし ているかどうかという観点から間接的にとらえることとす説)しかも,その際,「実存」を,生きて いる具体性の中でとらえるために「しごと」,「かかわり」,「生命」のサブ視点を設定した。この

ような観点から反応語を分類した結果は,表4に示した。

(11)

日高・吉田:Time PerspectiveとPersonalityとの関連 H       89

表4 実存的不安を反映する反応語の例示       生きていることの意味・価値 を追求することは,同時に未来

否定語と 反応語総

蒋理 サブ 特  微  的  反  応  語 肯定語の 数に対す へと志向しつつ「生きる」こと

視点 視点 割  合 る出現率

・仕事は規則IT:しくやっていること。 に他ならない(フランクル)。

/l)

・仕事はバイト.やっぱ金貰ってるから。・肉体を使って金銭を貰うという感覚でしか仕事という

ィえ方できない。・学生だから勉強が一番の仕事。

84/ 〆108

V8%

10唐S1

また,倫理的行為を追求しつつ,

カきることは,未来そのものを

・真剣に考えてやる事そういう事じゃない。 「理想」として生きることに連

・仕事っていうと自分がより良く生きられる為に他の人

フ為にもやってやるとか。 24舶8 32% なる(ミンコフスキー)。同時

・(仕事)自分が生物として死ぬまで生きる為に,より良

@く生きる為にやっている事だって思います。 22% にそれは,自己という一個の存

・初めて知り合った人達と旅先とか全然知らなかった人

ェそういう風に近づいてきて,自分も近づく。 在者を越えて,人類の未来を追

(2)

・(大切な人との出会い)迷っている時は動けん時で進学 キる時とか職を決める時とか小さな事で言ったらいっ マいあります。・酒飲んだ時本心とはいかなくてもかなり本心に近い部

94/146

求することにも連なる。従って,

サれは,「瞬間」 [瞬間」のう

かか 分で話し合える機会はけっこうあります,酒飲む機会 ェ多いから。・話してると,思ってる事話すってのは気持ちいい,ス

@.キリする。 65%

146/341 ちに,広大なtime perspec−

狽奄魔? 持ちつつ生きることにな

・同じ環境にいる人,おもしろいと思った話題について

bし合っている時,同じ事をやっている時に自分は他 る。故に,第2の整理視点とし

人を求めてるから。・自分にとって益にならない人間は大切な人じゃない。 て「未来志向性」を設定した。

・人の生き死にに出会った場合,人間の根底に基本的な 43% さらに,それを上述した観点か

問題にたち返る事ができる。・自分がこうあるべきだ,こうありたいと思っている様 52/146

ら「自己」と「社会」のサブ視

な生き方,資質を持っている様な人との出会い大切だ。 35%

点に分節して捉えることとした。

・病気の時も利益じゃない。

(3) ・病気でず一っと寝てるとね,健康だったんだなあって

「う感じはすごくします。 8レ87 分類された特徴的反応語を示せ

・(健康)心身共に良好の時,あんまり感じません。・やりたい事に体がついて行かないから不健康だって思

93%

87・含41 ば表5のようになる。

います, 第3に,「自然との距離」を

・宇宙の人きさなんか知ったんですけど人間なんてちっ

ロけなあっても無くてもいレ様なもんだ。 6/87 25% 整理視点として設定した。生き

・(不健康、ごたごたしてて酒飲んで寝るかっていう感じ

iで)自己嫌悪に陥る位こんな事をしてていいのか。 7% るということは,具体的に言え

(100%、 ば,自然としての自己の肉体を

通してなされる。そして,time perspectiveのあることが前提とされる,自己の死が自覚される時,やがて生命は消滅し,無機物へ 還る(自然に還る)ことを思い,それが,苦悩,不安を持たらすこととなる。その死の苦悩を超越す ることは,自己の自然性を実感することであり,さらに,そ相ま他の生命と「共に生き」てある自己 を発見し,自然の悠久の流れへと自己を統合することに連なる。しかも,そのことは,「瞬間」「瞬 問」の生において,無機的,有機的を問わず自然とのかかわりを持てるかと,いうことにある。「自 然」との距離が隔たりを増すにつれ,自己の自然性に思い到ることは不可能となり,さらには,自己 の死を実感化することが困難となる。それは,time perspectiveのなさを示している。以上の観点 から,さらに「無機的自然」 「有機的自然」の二つのサブ視点を設定し,反応語を分類した。その結 果を示せば,表6のようになる。

さらに,第4の整理視点として「私的所有へのこだわり」を設定した。ここで「私的所有」とは,

単に,私有財産といった経済学的使用法に限定されない。むしろ,既に述べたフロムの説く「持つ様 式」という根源的な意味において用いる。それは,物に限らず,地位,名声,知識などを含む全ての 対象を自己のものとし,自己との関連でのみ対象とのかかわりを持とうとする有り方を指す。「持つ 様式」で生きる時間は,過去であり,それは自己が蓄積した「もの」に縛られて生きることである。

参照

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