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一自己一環境認識および将来展望を指標として(の一

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(1)

Time PerspectiveとPersonalityとの関連V【

一自己一環境認識および将来展望を指標として(の一

吉田 昭久*・寺門 睦峰**・小熊  均***       ・

(1986年9月27日受理)

On Time Perspective and Personality VI:

Cognition of the Relation of Self to Surroundings and Future Perspective(ii)

Teruhisa YosHIDAヤMutsumine TERAKADo*覧md Hitoshi OGuMA***

(Received September 27,1986)

は  じ  め  に

前論文Dにおいて, 「自己一環境認識」と「将来展望」の構造化の妥当性を因子分析により検討 したが,本稿では,それに基づいて「自己一環境認識」と「将来展望」の構造の分析を試みた。

まず,因子分析により抽出された各因子と,Face sheetで捉えた学部,性,および年齢との間の 差の特徴について,一元配置の分散分析で検討した。出身地については,茨城県出身の学生だけに 片寄らぬよう,他県出身の学生も被調査者とすることによってノ)現代青年の意識構造を見ているた        3)

゚,ここでは出身地による差は問題としない。また,設問囹で得られた,「今の自分」の位置から 換算された予想する死亡年齢,過去および将来の主な出来事数についても,学部間,男女間,年齢 間のそれぞれの差を検討した。次に, 「自己一環境認識」で得られた各因子と,「将来展望」で得 られた各因子との間の相関を見た。さらに,設問團で得られた,予想する死亡年齢,過去および将 来の出来事に, 「自己一環境認識」と「将来展望」のどの因子が関係しているのかを見るために,

重回帰分析を行った。

以上,三つの分析を行うことによって,「自己一環境認識」と「将来展望」の関係性を検討する ことがここでの目的であるが,本論文の構成の概要を示すと以下の通りである。

1 因子分析に基づいた自己一環境認識と将来展望の構造 1−1 F勧ce sheetとの関連における分析結果 1−2 自己一環境認識と将来展望の相関 1−3 重回帰分析とその結果

皿 現代青年の自己一環境認識と時間性との関係 皿 現代青年の生き様の特徴

*茨城大学教育学部教育臨床心理研究室

**茨城県山方町立山方小学校

紳*都留文科大学文学部

(2)

1 因子分析に基づいた自己一環境認識と将来展望の構造

1−1 Face sheetとの関連における分析結果

Face sheetとの関連において,出身地を除いた,学部間,男女間,および年齢間において,そ れそれ差があるかどうかを,因子分析で得られた「自己一環境認識」と「将来展望」の各因子と,

予想する死亡年齢,過去および将来の出来事数のそれぞれについて検討した。結果は,表1に示す 通りである。

表1.因子分析結果およびTime Perspectiveの事項とFace sheetとの関連

事項 学    部 年    齢

要因 因子 F SIG F SIG F SIG

第1因子

4.848**

0.0008

0,100 0.7521 0,853

0.5133

第2因子

2.455*

0.0455

9.004**

0.0029

0,214

0.9564

自己

第3因子

3.229*

0.0127 14587*ホ 0.0002

1,305

0.2610

第4因子

1,187

0.3160

0,569

0.4512

0,108

0.9906

1

第5因子

1,183

0.3177 α083 0.7731

0,298

0.9188

環 第6因子 4β02** 0.0012

2,623

0.1062

0,962

04409

境 第7因子

0,223

0.9257

11.247**

0.0009

0,758

0.5805

認 第8因子

0,774

0.5425

2,845

0.0925 2.930*

OJ 131

識 第9因子

2,277

0.0606 3.977* 0.0469

0,588

0.7094

第10因子 L189 0.3153

0,538

0.4636

0,289

0.9190

将 第1因子

1,326

0.2598

0,205

α6509

1,753

0.1218

第2因子 3.000* 0.0186 4517* α0342 α740 0.5937

来 第3因子 α344 0.8481

0,024

α8774

0,546

0.7415

展望

第4因子

0,584

0.6742

2,265

0.1332

1,125

03465

第5因子 2.945* 0.0204 0310 0.5782

0,635

0.6729

予想する死亡年齢 L598 0.1744 4.401* 0.0366

1,543

0.1757

過去の出来事数

1,042

0.3856

0,676

0.4115

0,305

09095 将来の出来事数

2.414*

0.0486

2,155

0.1430

0,809

0.5438

注)*5%水準で有意差あり  **1%水準で有意差あり

1−2 自己一環境認識と将来展望の相関

因子分析をもとに各々の因子得点を求め,「自己一環境認識」と「将来展望」の関係を見るため に,両者の各因子間の相関係数を求めた。結果は,表2に示した。

1−3 重回帰分析とその結果

因子分析によって得られた,「自己一環境認識」と「将来展望」の各因子が,設問團で記述され た, 「今の自分」の位置から換算された予想する死亡年齢,過去に起こった主な出来事数,および 将来に起こるであろう主な出来事数と,どのように関係しているのかを見るために,重回帰分析を 行った。その結果は,表3に示した通りである。なお,ここでは,結果が膨大であるため,それを

まとめた形で表示している。

(3)

表2 自己一環境認識および将来展望の各因子間の相関関係

将来展望 「行為性にあら 第1因子 「行為性にあら 第2因子 「知識・技術の修 第3因子 「自己充足感に 第4因子 「日常生活にあ 第5因子

自己一

ツ境認識 われる刹那性」 フ因子 ォ」の因子 われる将来展望 得に示される将来 W望性」の因子 示される時間展 ]性」の因子 ]性」の因子 らわれる将来展 u人間関係にお 第1因子

ッる関係性狭量

一〇.4033 o羅0.000

 0.2215 o=0.000

 0.2988 o=0.000

一〇.1954 o=0.000

一〇.0845

o=α053

化」の因子

(一} (+} (+} (+)

 第2因子

u対人関係にお ッる現実自己拒

一〇.1720 o=0.000

 0.2633 o=0.000

一〇.0238 o=0.325

一〇.0744 o=0.078

一〇.1464 o=0.002

否」の因子

(一} (+) (一)

 第3因子

u もの に対 キる非執着性」

一〇.0043 o=0.467

一〇。0992 o=0.029

 0.0185 o=0.362

一〇.0571 o=0.138

 α2029 o=0.000

の因子

(一) (+}

 第4因子

u もの に対 キる観念的こだ

 0.0483 o=0.178

一〇.0383 o=0.232

一〇.2141

o=α000

一〇.1665 o=α001

一〇.2437 o=0.000

わり」の因子

(一) (一} (一)

u人問関係にお 第5因子

ッる選択性」の

一〇.0703 o=0.089

 0.0410 o=α217

一〇.1036 o=0.024

一〇.0522 o=0.159

一〇.1618 o=0.001

因子

(一) (一)

 第6因子

u自己所有物に ホする執着性」

一〇.0350

o=α252

 0.0579 o=0.134

一〇.1256 o=0.008

一〇.0890

o=α044

一〇.0149

o=α388

の因子

(一) (一)

第7因子 α0616 一〇.0266 一〇.0176 一〇.1926 一〇.0115 P=0.119 P=α306 P=0368 P=0.000 P=0.413  第8因子

u自己行為性に ホする自己対象

一〇3291 o=0.000

 0.0309 o=0.278

 0.2058 o=α000

 0.0356 o=0.248

一〇.0958

o=α033

化」の因子

(一} (+} (一)

u交友関係にお 第9因子

ッる他者依存」

一α1434 o=0.003

一α1561 o=α001

一〇.1177 o=0.012

一〇.1418 o=0.003

一〇.1851

o=α000

の因子

(一) {一) (一} (一} (一}

第10因子

u健康感に対する自己確信」の

 0.0877 o=0.047

一〇.0578 o=0.135

一〇。0314 o=0.274

一〇.0164 o=0.377

一〇.0669 o=0.100

因子

(+}

注)+は正の相関があることを示し,一は負の相関があることを示す

表3 Time Per卵ectiveにおける事項と自己一環境認識および将来展望の各因子との関係

  要因事項

自己一環境認識 将  来  展  望

予想する 第2因子(+)「対人関係における現実自己拒否」の因子 死亡年齢 第10因子(+)「健康感に対する自己確信」の因子

過去の o来事数

第2因子1−→「対人関係における現実自己拒否」の因子 謔R因子(一)「 もの に対する非執着性」の因子 謔P0因子(→「健康感に対する自己確信」の因子

将来の o来事数      * 謔P因子(+)「人間関係における関係性狭量化」の因子

第4因子(+)*「自己充実感に示される時間展望性」の因子

注)表中の+は+に寄与し,一は一に寄与していることを示す

*は,5%の有恵差はないが,それに近似であることを示す      ㌔

(4)

H 現代青年の自己一環境認識と時間性との関係

前論文4)において,現代青年は,「自己一環境認識」の意識構造として,人を気にし,今の自分 を尊重できず,依存という形で人とのかかわりを常に求め,しかも現代が現実性として競争社会で あるが故に,相互の不信を招き,依存の願望も満足し得ず,交友関係において象徴的なように,つ かず離れずの表面的な人間関係を持つようになっていることを示した。また, 「もの」に対しても 自己が直接関係するところでは差別的な「こだわり」を示し,関係が直接でなくなると執着しない というように,矛盾した意識構造を持つことを指摘した。

 現代青年の時間性,即ち存在様式に関しては,自己存在の一貫性,連続性の保持の困難さから,       5)

サ代青年は,将来に対する自己の「使命感」の持ちにくい状況の中で生きており,「将来展望」に おいても,将来に対する期待が限定されたところで生きていることを指摘した。これは,自己の持 つ不安を自覚することからの逃避であり,生き方に一貫性のない不確定な場の中に自己を置いてい ることの証左でもある。このような心理現象が生じるのは,現代社会にあっては,個は観念や幻想 の追求,言ってみれば「あれか,これか」の二分法的発想の中に自己の身を置き,意識と行為とが 常に矛盾の中で引き裂かれるからであり,観念があくまで観念であってまさに自己そのものではな いからである。観念は,常に移ろい揺れ動くものであり,それ故,循環的な矛盾の世界,即ち自己 を表面的水準で落ち着かせるための相対の世界を自己の内に必然化することになる。6)

このような視座を踏えて,ここでは相対的に時間性を三つに区分した。

まず第一に,刹那的時間性と「自己一環境認識」との関係について見ると,表2に示すように,

「刹那性」の因子と負の相関があるのは, 「人間関係における関係性狭量化」, 「対人関係におけ る現実自己拒否」,「自己行為性に対する自己対象化」,「交友関係における他者依存」の4因子 であり,正の相関があるのは,「健康感に対する自己確信」の因子である。毎日を無目的に過ごす

ことを示す,「刹那性」の因子と,「自己一環境認識」の各因子との関係からは,一見しては対象 世界に対する「こだわり」のなさを示すように思慮される。他者を気にせず,「今」の自己を拒否

しない方向での相関を示しているからである。しかし,「自己対象化」の因子が負に,「健康感に 対する自己確信」の因子が正に相関していることを考慮すると,対象世界に対する「こだわり」の なさを示すものとは受け取り難い。「自己対象化」とは,他者への配慮・尊重を前提とするもので あり,一方,健康に対する自己確信とは,さまざまな様相を示す自己の肉体(body)の上で生かさ れている自己を,観念的に操作し,その時々の肉体の状態を尊重せず,認めていないことを示すか

らである。他者や自己の肉体を尊重せずして,他者を気にせず, 「今」の自己を拒否せず,他者に 依存せず,しかも,表面的にかかわらないということは,どの様な在り様を意味するのであろうか。

「こだわり」とは,自己が自己の内的世界に価値的に位置づけるものを,強固な対象として持つこ とである。一方現代の社会状況は,情報過多の様相の中で,善悪の規準すら不明瞭になり,何に「こ だわり」を置いていいか分からない状況にある。しかしながら,自己の内なる心的動因は,意識す る・しないは別として,社会的な成功であり,他者からの承認である。

このような状況と合わせ考えると,刹那的時間性と「自己一環境認識」の関係における【刹那性1

は,「こだわり」の対象があっての「なんとなく」過ごす状態ではなく,現代の特徴でもある観念

追求の結果, 「こだわり」の対象を何に置くかは個の内的世界において画一的にありながら,現実

(5)

との遊離の結果,無目的に毎日を過ごすことを余儀無くする状態を示していると考えられる。現代 社会においては,あること,あるいはあるものにこだわればこだわる程,自己が苦しむことになる のは目に見えている。何故なら,「こだわり」は,「ここに一今」存在する個の体験そのものだか らである。「思い」を通して見る自己は,自己そのものではなく,「思い」の中で行為する自己も また,自己の体験ではなくなってしまう。快楽追求の世の中で,苦しみを体験することは,自己の 無力感7)を直に味わうことに連なるからである。自己の存在価値を見い出すために,相対の世界の 中でそれを捜し求めようとすれば,それが観念的世界のものである以上失敗に終わり,やるべきこ

とは何か と観念の世界で分かってはいても,現実には何も生み出し得ない。

このことに関して,鈴木は,「この宗(宗とは,よく事に通達して,r思い』という媒介を入れ ずに,その理を洞察すること)をよく会していないと,言語文字についてまわることになる,概念 の上で分析せられたものを,そのまま経験の事実にあてはめんとすると,経験は事実でなくなる。

      8)

鮪鮪メは矢面に立たないで,傍観者の位置に離れることになる」と言っている。即ち,刹那的時間 性,またはその存在様式は,自己の直接的な体験を恐れて,そこから逃げ,諦めの世界の中で生き

る生き方と言えよう。しかし,相対的に刹那的時間性と将来展望的時間性とを比べると,前者の方 が後者より,自己に接近した時間性と言うことができる。何故なら,両者とも自己の体験,即ち事 実の世界からは遠のいてはいるが,後者が,観念の世界で「時」を期待しながら表層的な満足感に

      9)

オがみついているのに対し,前者は,事実の世界を「自覚」できないまでも,そこでは満足しきれ ないが故に「なんとなく」過ごすことになると考えられるからである。

次に,「将来展望」における時間性と「自己一環境認識」の関係について見てみよう。時間性の 第4因子,「自己充足感に示される時間展望性」は,自己の期待する将来の「時」から投影される

「今」の充足感と考えることができ,従って,その世界は有限の世界であり,期待される「時」を

「持つ」という水準から考えると,時間展望(time persp㏄tive)というよりは,「将来展望」

として位置づけることができる評)そこで,表2に示す「将来展望」の時間性の因子,第2因子から 第5因子までのそれぞれと,「自己一環境認識」における各々の因子との相関を見ることによって

「将来展望」と「自己一環境認識」の関係を検討する。

「将来展望」という時間性は,目的を持った生き様を示す時間性である。まさしく,「持つ」生 き様であり,将来に対する展望を「持つ」ことによって,現在の自己を自己たらしめることになる。

紙数の関係で,因子間の相関を総括的に検討するが,表2を見ると, 「自己一環境認識」における 第1因子「人間関係における関係性狭量化」,第4因子「 もの に対する観念的こだわり」,第

9因子「交友関係における他者依存」と,将来展望性との関係が特徴的である。それぞれ,将来展 望性と第1因子が正の,第4因子と第9因子が負の相関関係を示している。その他の関係を見ても,

第5因子「人間関係における選択性」,第6因子「自己所有物に対する執着性」とは負の相関を示

す。そこでは,他者とつき合う際,ある観念的な選択基準を持ってかかわらないという意識がある

にもかかわらず,第1因子「人間関係における関係性狭量化」と正の相関を示しているように,他

者を気にし,他者に対し気を使い,その一方で,第4因子「 もの に対する観念的こだわり」と

負の相関があるように, もの に対しては,こだわりがないといった,矛盾した意識を持つこと

を示している。また,第9因子の「交友関係における他者依存」において,刹那的時間性,将来展

望的時間性の何れとも負の相関を示すが,このことは,「将来展望」が,ある対象に対する目的,

(6)

目標を「持つ」11)存在様式であることを考慮すると,その目的,目標が,現代社会においては,競 争における成功や他者からの承認とならざるを得ない以上,他者を自己にとっての敵とし,その結 果人間不信に陥り,それ故に他者に依存せず,むしろ依存することができない状況の中で「生きる」

青年の,深層の心理を反映したものと見ることができよう。依存的に他者と交われば交わる程,常 に他者は自己と相対化される存在でしかないが故に,自己の心的世界において,その「かかわり」

は満足できないものとなり,その中で看得する不安をごまかすためにも,さらに他者と関係を持と うとする。そこでは,他者との人間的関係の過程は無視され,ただひたすら他者の実在が求められ,

自己と対置する他者はあっても,共感し共応し合う他者はないことになる。「将来展望」の時間性 が,「時」を期待する観念の世界での生き様である時,観念の世界のものであるが故に,まさにこ

のような心的現象を生じるのであろう。他者との関係が,敵対的とならざるを得ない状況下では,

人 に対して「こだわり」を生じるのは当然であろう。

また,「将来展望」の時間性において, もの に対する「こだわり」がないのは,現代におい ては,物は金さえあれば十分満たされ,しかも,一度それが不必要となれば見境もなく捨ててしま

う といった消費を美徳とする状況を反映しているものと言えよう。

皿 現代青年の生き様の特徴

表3に示される重回帰分析の結果を基に,現代青年の生き様の特徴について検討すると同時に,

設問囹で得られた,具体的な過去および将来の出来事の内容を検討することによって,現代青年の 時間展望(time perspective)の様相について見てみよう。

表3を見ると, 「予想する死亡年齢」に関係する因子として, 「対人関係における現実自己拒否」

と,「健康感に対する自己確信」の二つの因子があり,その何れも「予想する死亡年齢」に対して,

正に寄与していることがわかる。これは,「今」の自己を肯定できず,しかも,自己の肉体をも受 容することができず,健康に対して過信的であればある程,自己の死を遠方に追いやることを示し ている。 「今」の自己を,他者と比較したところでしか肯定できないということは,その時々の自 己を許容できないことを示しており,また,自己の肉体に対して幻想的な自信を持つが故に,死を 忌み嫌い,死を自己の人生上の遠いところに置くのも首肯できるところであろう。しかし,何故現

代青年は,死を人間にとっての不可避的な必然として受け止められないのであろうか。「現実自己 拒否」ということは,他者を気にし,他者に対して引け目を感じ,自己の性格などに思い悩み,「今」

の自己を肯定していないことを意味している。引け目を感じたり,自己の性格などをくよくよと悩 むということは,自己にとっての価値の方向と,現実の自己との問に落差があるからであり,「こ こに一今」ある自己をそのまま認めることができず,受け入れられないことを示している。健康に 対する自己確信もまた,肉体(body)との一致性の上にある自己を,肉体と観念とに分離して,過 信的に健康であると思い込むことを示している。

死は,観念によって操作できるものではなく,璽璽人 は,この瞬間に死ぬ可能性の中に在る。しか

し 人 は,常に,明日も生きているであろうという,暗黙の前提の上に生きている。死があるが

故に,「今」の自己の生を大事とする態度は生じるが,現代青年は,観念によって死を現実から遠

(7)

ざけ,自己自身からも遠ざけてしまったと言えよう。

次に,「過去の主な出来事数」に関係する因子として,「対人関係における現実自己拒否」の因 子,「 もの に対する非執着性」の因子,「健康感に対する自己確信」の因子があり,これらす べてが負に寄与していることを示した。このことは,「今」の自己を拒否していず,駕もの に対 して執着を持ち,健康に過信的でない程「過去の出来事数」が多いことを示す。過去は, 「今」と 隔絶して分離できるものではなく,「現在における私のありかたに決定的な作用を及ぼし続け,現 在の私の自覚内容を規定し続けている1勿ものである。過去を否定するということは,現在の自己を 否定することにつながり,逆もまた真となる。「過去の出来事数」にこの3因子が関連して来ると いうことは,現代青年は,過去を観念ではなく事実として受け止めていることを示していよう。と すれば,死は観念の世界に位置づけ,過去は事実の世界に位置づけているということになる。しか

し,鈴木によれば野) もの に対する執着や「こだわり」を持つということは,ある対象を,「思 い」という媒介を通して見ることを意味することであり,ここでは,過去は観念的な水準での過去 として捉えられていると言えよう。時間性としての過去は,単なる物理的時間におけう過去ではな く,過去の自己の在り様である。それへの「思い」を持つということは,過去のその時点の自己 を,自己が意味づけるように意味づけているのであり,物理的時間における過去の自己を引きずっ た「今」を生きることを意味している。また, 「過去の出来事数」に もの が関係して来るとい

うことは,過去の自己への「思い」を「持っ」というように,自己を物化してしか位置づけちれな いことを意味していよう。

一方,「将来の出来事数」に関係する因子として位置づけられる因子は,表3から,「人間関係 における関係性狭量化」と, 「自己充足感に示される時間展望性」の2因子で,共に正に寄与して いることが示唆される。将来の出来事が数多くあがるということは,来たらんとする「時」を期待 するが故に,「今」が楽しいという意識と連関していると考えられよう。「今」の生が幻想的であ ればこそ,即ち観念的世界の中で生きていればこそ,将来の出来事が, 「今」の自己の生の延長上 に強く位置つくのであろう。「将来展望」という目標を持った生き様にしても,その目標は 人 を意識した目標であり,自己自身の意志や決断による目標ではないことが窺える。

前論文で示したが野)実際に書かれた過去および未来の出来事の内容を検討すると,過去の出来事 内容は,「学校」にかかわるものに共通に集中している。現在まで歩んで来た道が同じようなもの であるとすれば,過去の出来事内容も近似にならざるを得ない。現代は,価値が多様化し,選択の 自由の巾は広くあると言われるが,それは実に不確実な観念の世界の中のことであり,現代青年の 現実性(reality)は,非常に画一化した世界の中にあることの現れであろう。しかも,過去の出 来事内容は,将来の出来事内容の約半分しか挙げられておらず,このことからも,現代青年は,現 実のその時,その場における自己として生きるというよりは,他者を常に意識し,自己を尊重でき ず,それ故に過去の出来事内容は貧困とならざるを得ず,自己の存在そのものが不確定な中に在る ということができよう。

現代青年の生き様は,死を自己から遠ざけることにより,本来的に交換・比較不可能の一回性と しての自己の生を,他者の中に置くことによって,観念的には豊かではあるが,それが画一的であ ることを意識化できず,しかも,不鮮明・不透明な「時」を過ごしていると感じつつも,将来1と対

して期待しつつ生きると言うことができよう。造られた観念の中で生きる現代青年の多くは,かけ

(8)

がえのない自己の生を,他者との間に位置づけることでしか確かめられず,現代を特徴づける価値 の多様化や混乱の下で,仏陀の示した「無明」の中に在ると言えよう。

お  わ  り  に

本稿では,「自己一環境認識」や時間性における,学部間差,男女間差,および年齢間差の特徴 とその原因については,紙数の関係から言及しなかったが,この点に関しては,次の課題としたい。

総じて,現代青年は,今二つの道にさしかかっていると言えよう。その一つは,他から行為する よう操作されて生きる現状に気づくことにより,それを受け入れている自己を自覚15)する道であり,

他方は,意識と行為とが交わることなく分裂し,過去も将来もなく,他者ばかりでなく自己さえも 信じられず,現に体験している自己を自己として受け止められないといった,ピカートの言う,内 的連関性を失った,刹那的人間16)の道である。

なお,本稿は前論文17)の因子分析的検討に引き続き,「自己一環境認識」と「将来展望」の抽出 された因子間の関係から,現代青年のtime perspectiveの特徴について整理したものである。小 熊が担当した資料解析を基に,吉田が本稿の草稿を作成した。

1)吉田・寺門。小熊「Time PerspectiveとPersonahtyとの関連V一自己一環境認識および将来展 望を指標として一」『茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)』35,1986,pp.171−196.

2)乃 d.,pp.178−179を参照のこと.

3)∬b昭.,p.194のAppendix I−iVを参照のこと.

4)1b d., pp.185−188を参照のこと.

5)神谷美恵子『生きがいについて』(みすず書房,1980)を参照.

6)鈴木大拙『禅の思想』(春秋社,1975)を参照.

7)R.メイ,小野泰博訳『不安の人間学』(誠信書房,1963)を参照.

8)鈴木,前掲書,p.69.

9)久松真一『無神論』(法蔵館,1981)を参照.

10)吉田ほか,前掲論文,pp.187−188を参照のこと.

11)E.フロム,佐野哲郎訳『生きるということ』(紀伊国屋書店,1977)を参照.

12)木村敏『自覚の精神病理』(紀伊国屋書店,1970),p.129.

13)鈴木,前掲書,を参照.

14)吉田ほか,前掲論文,p.184.

15)久松,前掲書,を参照.

16)M.ピカート,佐野利勝訳『われわれ自身のなかのヒトラー』(みすず書房,1965)を参照.

17)吉田ほか,前掲論文.

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