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みずほ情報総研レポート vol.11

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みずほ情報総研株式会社コンサルティンググループ

に所属するコンサルタントが、企業経営分野・公共

政策分野・社会科学分野・環境分野・情報通信分野

・工学分野等のトピックスを専門的見地から採り上

げ、論述したレポート集です。

※「みずほ情報総研レポート」はweb上でも閲覧することができます。 http://www.mizuho-ir.co.jp/publication/report/index.html

(3)

日本の省エネ政策の検討状況と短期的に想定される動きについて ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・18

環境エネルギー第2 部 コンサルタント 桐原 貴大

廃棄物・リサイクル法体系の一元化に向けて ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・25

環境エネルギー第1部 コンサルタント 水上 碧

後発医薬品のさらなる使用促進のために ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・36

~ 後発医薬品使用促進に向けた地域での取組み ~ 社会政策コンサルティング部 マネジャー 田中 陽香

わが国医療産業の海外展開のあり方に関する考察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・41

ICTを活用した効果的で効率的な医療の輸出 社会政策コンサルティング部 コンサルタント 日諸 恵利

未就学児を中心とした子どもの情報通信端末の利用実態と効果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・52

~ 保護者の意識調査の結果から ~ 経営・IT コンサルティング部 コンサルタント 岡松 さやか

技術動向レポート

国土地理院の標高タイル・ベクトルタイルに見る地理空間情報の活用促進の可能性 ・ ・ ・ ・ ・60

情報通信研究部 チーフコンサルタント 井上 敬介

ハイパフォーマンスコンピューティング技術が切り開くものづくり ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・66

サイエンスソリューション部 マネジャー 山出 吉伸

対 談

「みずほグローバルアグリイノベーション」を通じて結ぶ日本式農業とアフリカ ・ ・ ・ ・ ・74

(4)

2015年12月に、地球温暖化防止を目指す新 たな国際協力の枠組み「パリ協定」がCOP21(国 連気候変動枠組み条約第21回締約国会議)で採 択された。米国や中国を含むすべての国が、温 室効果ガス削減の自主目標を提出し、着実に実 施していくことが規定された。さらに産業革命 前からの気温上昇を2度未満に抑える目標を明 記した上で、1.5度に抑えるよう努力する意思 も示した(1)。加えて2015年9月には持続可能な 開発目標が国連で採択され、従来の貧困撲滅に 焦点を当てた目標から、すべての国を対象に環 境対策に注力した開発目標が合意され、各国が 「持続可能な成長」の実現に向け舵を切った(2) 日本は経済大国として、低炭素化の率先した 取組みが求められる立場にあるが、2030年の 温室効果ガスの削減目標(2013年度比26%削 減、1990年比18%削減)は、欧州連合(EU)の 目標(1990年比40%削減)と比べると見劣りす る。また昨今の国内における火力推進の動きに 対しては、英国や米国における火力発電に対す る規制強化や、「ダイベストメント」と呼ばれ る化石燃料に関わる企業からの投資撤退等の世

はじめに

界的な潮流に逆行しているとの指摘もあり (3) 日本の取組みに対する世界の目はますます厳し くなりつつある。 日本は今後、規制や経済的手法などあらゆ る政策ツールを総動員して、世界に遅れること なく、再生可能エネルギーと省エネの一層の 拡大に力を注ぐべきであるが、環境税はそのた めの重要なツールである。経済協力開発機構 (OECD)によれば、環境税(あるいは環境関連 税)には、エネルギー製品に対する「エネルギー 課税」、自動車やその他の輸送手段に対する「車 体課税」、および廃棄物や天然資源等に対する 「その他の課税」があり、いずれも価格シグナ ルを通じて、汚染者である企業や消費者が環境 汚染の費用を確実に考慮に入れることで、消費 における排出削減や生産技術の向上等を促すこ とができる点に特徴がある(4)。加えて、環境 税には政府に歳入をもたらすなどのメリットも ある。 環境税を用いて税制を環境負荷に応じたもの に変えていこうとする「税制グリーン化」(5) 動きは、特に欧州諸国で過去20年余り、「環境 税制改革(Environmental Tax Reform)」や「環 境財政改革(Environmental Fiscal Reform)」

昨年度に引き続き、国際的に注目を集める税制グリーン化の最新動向について、対象国を日本、 欧州、北米、豪州の計16カ国に拡大し、政府関係者など各国の税制の専門家に対するヒアリン グ調査をもとに整理した。また、各国の取組みを比較し、そこから示唆される日本の税制グリー ン化の課題や今後の方向性について論じた。

社会動向レポート

国内外における税制グリーン化の最新動向と日本への示唆

環境エネルギー第1部 地球環境チーム チーフコンサルタント 

元木 悠子  

コンサルタント 

内藤 彩

(5)

として実践され、その動きは年々広がりを見せ ている。筆者らは、国内外における税制グリー ン化の取組みについてこれまで2年間、調査を 行ってきた。昨年、欧州主要国の状況について 取りまとめたところであるが(6)、本稿では対 象を16カ国(日本、ドイツ、英国、フランス、 イタリア、スウェーデン、デンマーク、フィン ランド、スイス、アイルランド、ポルトガル、 オランダ、ベルギー、米国、カナダ、豪州)に 拡張し、政府関係者など各国の税制専門家に対 するヒアリング調査を行った。本稿ではその成 果を踏まえ、各国の税制グリーン化の最新動向 を整理するともに、各国の比較を通じて、今後 日本が取組むべき課題や方向性などについて、 筆者らの意見を述べたい。 図表1に、日本および諸外国の環境税の税 額と構成、そして環境税の税収がGDP全体に 占める割合を示した。これを見ると、日本の GDP比率は1.5%程度(約7.4兆円)であり、米 国(0.7%)やカナダ(1.1%)を上回るが、豪州

1. 国内外における税制グリーン化の取

組み

(2%)、欧州(1.8 ~3.9%)より小さく、最も大 きなデンマークとは2.5倍の開きがある。税収 構成は国により違いがある。今回調査した16 カ国のうち、オランダを除くすべての国で、「エ ネルギー課税」と「車体課税」が環境税収全体 の9割以上を占めている。残る「その他の課税」 には廃棄物やリサイクル、公害関連、天然資源 や生態系保全などを目的とする様々な税があ り、中には、オランダ、デンマーク、フランス のように環境税全体の10%割前後とかなりの 割合を占める国もある。 以下では、日本、欧州、北米、豪州、それぞ れの地域で、どのような「税制グリーン化」の 取組みが行われているかを具体的に見ていきた い。各地域の主な環境税の導入状況については 図表2を参照されたい。 (1)日本 エネルギー課税には、化石燃料の輸入・採取 段階で課税される石油石炭税と、石油製品の流 通段階で燃料ごとに課税される揮発油税、地方 揮発油税、石油ガス税、軽油引取税、航空機燃 料税、販売電力に対して課税される電源開発促

(資料)OECD, Database on instruments used for environmental policy等よりみずほ情報総研作成。

(6)

(注1)日本の地球温暖化対策税は石油石炭税の一部、フランスの炭素税は石油製品内国消費税等の一部。 (注2)ベルギーの埋立税・水質汚濁税・地下水税はフラマン地方、廃棄物税・取水税はワロン地方の地方税、米国の自動車 登録税・自動車使用税はニューヨーク州の地方税、カナダの自動車燃料税・LNG税・炭素税・タイヤ税・バッテリー 税・鉱物採取税はブリティッシュ・コロンビア州の地方税。 (資料)ヒアリング調査および各国政府資料をもとにみずほ情報総研作成。 図表2 各国における主な環境税の導入状況

(7)

進税の7つがある。また、石油石炭税に上乗せ して徴税される地球温暖化対策のための税(地 球温暖化対策税)が、2012年10月に導入され、 すべての化石燃料に対してCO2排出量に応じ た税率が等しく課税されている。税率は3年半 かけて 3 分の1ずつ引き上げられ、2016年4月 の最後の引上げを経て、最終的に289円 /tCO2 となる。地球温暖化対策税の税収は、エネルギー 対策特別会計に繰り入れられ、エネルギー起源 CO2の排出削減を目的とする事業に充当され ている。その他のエネルギー課税はすべて国や 地方自治体の一般財源に入る。 車体課税には、自動車の取得に対して課税さ れる自動車取得税と、保有に対して課税される 自動車重量税、自動車税、軽自動車税があり、 エコカー減税やグリーン化特例と呼ばれる燃費 に応じた軽減措置が設けられている。税収は基 本的に一般財源に入るが、自動車重量税の一部 は、公害健康被害補償財源として活用されてい る。なお、2017年4月の消費税率10%時点で自 動車取得税を廃止し、自動車税と軽自動車税の 取得時の新たな課税として環境性能割(仮称) を設置することが決まっている(7)。 その他の環境関連税はいずれも地方税で、税 収すべてを足し合わせても環境税収全体の1% に満たない。汚染関連では、2016年1月時点で、 三重県など28団体で導入されている産業廃棄 物税と福井県など14団体で導入されている原 子力関連税がある。資源分野では、法定税であ る狩猟税と、住民税に上乗せして徴収される森 林環境税が高知県など36団体で導入されてい る。このほか、特定の自治体で、遊漁税(山梨 県富士河口湖町)、砂利採取税(京都府城陽市 等2団体)等が導入され、地域の自然環境保全 などに税収が使われている。 (2)欧州 欧州における税制グリーン化の取組みは、 フィンランドの炭素税、スウェーデンやデン マークのCO2税など、1990年代初頭の北欧諸 国における取組みに端を発する。これらの国は、 既存のエネルギー課税に環境対策の観点をいち 早く取り入れただけでなく、今日に至るまで課 税を強化し続けている環境先進国である。その 後、エネルギー課税については、オランダやベ ルギー、英国、ドイツが北欧諸国に続く形で、 鉱油税や燃料税の新設や税率の引上げを行っ た。2000年代に入ると、EUが2003年に定めた 「エネルギー税制指令」(8)が駆動力となり、オラ ンダやドイツにおける環境財政改革など多くの 国で改革が進展した。さらに、EUの「エネル ギー税制指令」改正(CO2排出量に応じた課税 (炭素税)の新設と最低税率の引上げ)の議論(9) を受け、フィンランドやデンマークで、課税方 式の変更や課税対象の拡大、炭素税率の引上げ が行われた。またこの間、スイス、アイルラン ド、フランス、ポルトガルで炭素税が創設され た。炭素税を含むエネルギー課税の税収は一般 財源として、多くの場合、税収中立の観点から、 法人税や所得税等の減税や、社会保障費の削減 による雇用創出喚起等に活用されている。 車体課税に関しては、2000年代以降、それ までの排気量や重量から、環境に直結するCO2 排出量や排出ガスへの課税標準の転換が多くの 国で行われた。取得税では、英国の社有車税や フランスのボーナス・ペナルティ制度(Bonus-Malus)、アイルランドの自動車登録税などであ り、保有税ではスウェーデン、フランス、アイ ルランドの自動車税、フランスの年間ペナル ティ制度(Annual Malus)、ポルトガルの自動 車流通税などである。さらに2009年に、EUが 「CO2排出規則」と呼ばれる世界で最も厳しい 新車乗用車の2015年排出目標(130gCO2/ km)

(8)

を制定したことを受け(10)、フィンランドやオ ランダで取得税の課税標準の見直しが行われ、 また、ドイツ、フランスでは保有税の見直しが 行われた。すでに自動車税の課税標準をCO2 としていた英国では、2年度目以降の税率と比 べ、CO2排出量に応じた重課・軽課をより強化 した初年度特例課税(First-Year-Rate)を新 たに導入した。この制度は日本が2017年4月に 新たに導入する環境性能割(仮称)の検討にお いて参考とされた制度である。 その他の環境関連税に関しても、オランダ、 フランス、デンマーク、ベルギー、イタリアな どを中心に、日本で未導入のリサイクル関連(容 器包装税等)や公害関連(SO2税、NOx税、騒 音税等)、水資源保全(取水税等)を含む、様々 な税が導入されている。 このように、エネルギー課税、車体課税、そ の他の環境関連税いずれにおいても、欧州は、 北米や日本を上回る先進的な取組みを数多く実 施している。EUにおける「税負担を労働や所 得から消費や環境にシフトすべき」との方向性 も後押しとなり(11)、欧州は今後も世界のトッ プランナーとして、税制グリーン化を牽引する 役割が期待される。 (3)北米 米国、カナダともに、連邦レベルのエネルギー 課税として燃料物品税があり、主にこれらの税 収は基金化され、特定の目的に使われている。 米国では、ガソリンや軽油からの税収の大半は 道路整備等(幹線道路信託基金)に、残りの1% 程度は石油の流出事故対策等(地下貯留槽石油 漏出信託基金・石油流出信託基金)に充てられ ている。また、石炭からの税収は炭鉱労働者の 塵肺対策(塵肺信託基金)に、内陸水路航行船 の燃料消費からの税収は内陸水路の整備(内陸 水路信託基金)に充てられている。一方、カナ ダでは、燃料物品税からの税収の6割程度は一 般会計に入るが、残りは、ガス税基金に積み立 てられ、各州の道路整備等に充当されている。 米国、カナダともに、税率は非常に低い水準 である。米国では、1993年以降、ガソリンは約 6円/ L、軽油は約8円/ Lで固定されている。カ ナダでも、ガソリン(約 9 円)は1995年以降、軽 油(約4 円)は1988年以降、引上げが行われて いない。そのため特に米国では、税収縮小に伴 うインフラ整備資金の不足等が課題となってい る。一方で、環境に配慮した取組み(再生可能 エネルギー設備導入、バイオディーゼル精製、 次世代自動車購入等)に対する所得税控除等を 行うことで、こうした低い税率の下でも、企業や 消費者の経済的インセンティブを担保し、一定 の環境効果を見込むための工夫がなされている。 車体課税について見ると、米国では、連邦レ ベルで燃費に着目した取得時の課税があるが、 22.5mpg(243gCO2/ km相当(12))を基準値とす

る燃料多消費車税(Gas Guzzler Tax)のみであ る。保有税は基本的に州に権限が付与されてお り、例えばニューヨーク州では、重量に応じた 課税が導入されている。一方、カナダでは、連 邦レベルでグリーンレビー(Green Levy)と呼 ばれる燃費に応じた課税が導入されているが、 基準値が13L/ 100km(302gCO2/ km相当(13)) と欧州の2015年排出目標と比較すると低い水 準である。 なお、米国では、2016年2月に、オバマ大統 領が、任期最後となる予算教書において、石油 に対する新たな課税(fee on oil)の導入を提案 した。5年間で1バレル当たり10.25ドル(約8 円 /L)まで段階的に税率を引き上げ、税収は低 炭素型の交通インフラ整備等に充てられる(14) また、カナダでは、2015年10月に発足したト ルドー(Justin Trudeau)政権が「環境・気候 変動省」を設立するなど、両国ともに連邦レベ

(9)

ルでの取組みの進展が期待される。 以上の連邦レベルの取組みに加え、北米で は州レベルで独自の取組みが進められている。 カナダのブリティッシュ・コロンビア州(BC 州)は、2008年に炭素税を北米で初めて導入 し、欧州の仕組みと同様に、税収を企業や市民 に還流し、CO2削減と経済成長の顕著な実績 (デカップリング)を残している。BC州はこの ほかにも鉱物採取税やバッテリー税などの州独 自の環境税を導入している。また、2013年に キャップアンドトレード(C&T)制度を開始し たカナダのケベック州は、米国カリフォルニア 州との市場統合を行った上(2014年)、輸送燃 料を対象範囲に加えるなど(2015年)、制度を 拡張している。こうした環境先進地域(カリフォ ルニア州、ケベック州、BC州)の間で定期的 な議論が行われ、国を超え、州政府間で知見の 共有が図られているのが特徴である。今後もカ ナダでは、アルバータ州が2017年の炭素税導 入を表明したほか(15)、オンタリオ州もC&T制 度の導入を進めている(16)など、州レベルでの 先進的な取組みに注目が集まっている。 (4)豪州 豪州では、エネルギー課税、車体課税に加 え、オゾン層保護税や廃棄物税等も導入されて いる。車体課税の保有税など各州の裁量による 部分もあるが、基本的に環境税は、連邦政府が 管轄している。国全体の傾向としては、図表1 にある通り、環境関連税収がGDPの2%に相当 するなど、日本を上回る取組みの実施が伺える。 灯油、重油、LPG、天然ガスの税率が日本や 北米と比べ圧倒的に高く、また軽油に対してガ ソリンと同程度の課税を行っていることも、先 進的な取組みと言える。 近年の豪州の大きな動きに、2010年に導入 され、2014年に廃止された炭素価格付け制度

(Carbon Pricing Mechanism)がある。当初は、 産業界への影響を軽減するため、導入から5年 をかけて税率を段階的に25.4AUD/tCO2(約 2,200円)まで引き上げ、2015年に欧州排出量 取引制度(EU-ETS)と接続すること(変動価 格への移行)が予定されていた。しかし、EU-ETS価格の暴落と国内電力価格の高騰を受け、 労働党から保守党に政権交代した2014年7月、 炭素価格付け制度は廃止された。但し、2015 年9月 に 元 環 境 大 臣 の タ ー ン ブ ル(Malcolm Turnbull)氏が新たに首相に就任し、2016年内 に総選挙が予定されているなど、豪州の炭素税 を巡る情勢は流動的である。 本章では、エネルギー課税に焦点を当て、各 国の最新の税制の動向を踏まえ、「燃料別の課 税水準」と「炭素税の設計」の2つのポイント から比較・検討を行い、そこから示唆される日 本のグリーン化の方向性について、筆者らの考 えを述べたい。 (1)燃料別の課税水準に関する比較 はじめに、各国のエネルギー課税の税率を、 輸送用(ガソリン・軽油)と産業用(石炭・天然 ガス・重油)に分けて比較する。エネルギー消 費に対する税目には、物品税(Excise Tax)と して課す既存のエネルギー税と、化石燃料の炭 素含有量に応じて等しく課す炭素税(Carbon Tax)の二つがある。本稿では、これらの税の 合計をCO2排出量1トン当たりの税率に換算し た上で比較を行う。 (輸送用燃料) 図表 3 の輸送用燃料(ガソリン・軽油)につ いて見ると、日本の場合、ガソリンは北米、豪

2. エネルギー課税の比較と日本に対す

る示唆

(10)

(注)税率は2015年時点。但し、日本の地球温暖化対策税は2016年4月以降の税率。また、米国はニューヨーク州、カナダ はBC州の州税を含む。排出係数は特定排出者の事業活動に伴う温室効果ガスの排出量の算定に関する省令(平成18年 経済産業省・環境省令第3号)、為替レートはみずほ銀行外国為替相場2015年4月から10月の月中平均値。

(資料)EU(2015)EXCISE DUTY TABLESおよび各国資料をもとにみずほ情報総研作成。

図表3 輸送用燃料(ガソリン・軽油)の税率比較

(注)オランダの天然ガス(産業用)に対する課税は4段階に分けられており、ここでは最も税率の低い10.000m3以上を天然 ガス(大)、最も税率の高い170m3未満を天然ガス(小)と表示している。試算の条件は図表3と同じ。

(資料)EU(2015)EXCISE DUTY TABLESおよび各国資料をもとにみずほ情報総研作成。

(11)

州に次ぐ低い水準で、軽油は米国の次に低い。 地球温暖化対策税は、ガソリン税率の1%程度、 軽油税率の2%程度を占めるに過ぎない。 ガソリン、軽油ともに、最も税率が高い国は 英国で、日本の3倍程度である。また、米国、 英国、豪州、スイスを例外として、多くの国で、 ガソリンの税率が軽油を大幅に上回り、最大5 割程度の開きがある。リットル当たりに換算す ればその差はさらに広がり、軽油には税制上の 優遇措置が講じられていることが分かる。しか し、ディーゼル車の排ガスによる健康被害や大 気汚染のリスクに鑑み(17)、フランスでは2016 年の炭素税の引上げに伴う増税に加え、軽油に 対する追加課税を行った。ベルギーやスイスで も同様の取組みが予定されているなど、欧州で は軽油とガソリンの税率格差の是正に向けた動 きが強まっている。 (産業用燃料) 図表4の産業用燃料(石炭・天然ガス・重油) について見ると、日本の税率はいずれも低い水 準であり、そのうち、地球温暖化対策税は、石 炭税率の49%程度、天然ガス税率の42%、重 油税率の27%程度を占めている。最も高いデ ンマークとは、石炭で24倍、天然ガスで41倍、 重油で4倍程度の開きがある。 海外では、炭素税を導入している国の多くで、 既存のエネルギー税と同程度あるいはそれ以上 の炭素税が産業用燃料に課税されている。従来 のエネルギー税では、輸送用燃料と比較して産 業用燃料の税率を大幅に軽減していたのに対し て、温室効果ガスの抑制など環境の観点で導入 された炭素税の場合、産業用も含む幅広いエネ ルギー消費に等しく課税することが特徴と言え る。フランスやスイスなどの炭素税導入国は、 今後、炭素税率の引上げを通じて、産業用燃料 に係る税率を引き上げる予定である。これらの 国では、産業部門にも高い税率を等しく課した 上で、後述のようなきめ細やかな減免措置を講 じることで、経済への影響を緩和し、環境と経 済の両立を図ろうとしている。 (2)炭素税の制度設計に関する比較 次に、燃料への課税のうち、日本の地球温暖 化対策税を海外の炭素税と比較するため、日本 および炭素税を導入している海外8カ国(フィ ンランド、スウェーデン、デンマーク、スイス、 アイルランド、フランス、ポルトガル、カナダ BC州)の制度の特徴を、炭素税率と、炭素税 収の使途および軽減措置により比較する。 (炭素税率) 図表5の炭素税率の推移を見ると、日本の地 球温暖化対策税の税率は極めて低い水準である 上、2016年4月に289円 /tCO2に引き上げられ た後、現時点ではさらなる引上げは予定されて いない。 一方、海外では、顕著な税率の引上げが行 われている。例えばフランスでは、2014年の 導入時の税率7EUR/tCO2(約950円)を、2020 年に8倍の56EUR(約7,600円)、2030年に約15 倍の100EUR(約13,500円)に引き上げようと している。また、2008年に12CHF/tCO2(約 1,500円)の炭素税を導入したスイスでは、直 近のCO2の削減実績を踏まえて税率を定める こととしており、2018年時点で最大120CHF (約15,300円)に引き上げる予定である。前年 のEU-ETS価格の年間平均値をもとに翌年の 炭素税率を定めるポルトガルのような事例で は、国際的な炭素価格のトレンド次第では、将 来の大幅な税率の引上げもあり得る。なお、将 来の炭素価格については、複数の国際機関が試 算を行っており、これを平均すると、2030年 の炭素価格はCO2排出量1トン当たり約1万円

(12)

となり(18)、欧州の取組みは、これらに比肩を 取らない意欲的な目標と言える。加えて、この ように将来の炭素価格を明示することは、企業 が投資判断を行う際の不確実要因を取り除くこ とにもつながり(19)、実際にカナダBC州では このような効果を見越して、導入時に5年先ま での炭素税率を予告し、広く周知を行った(20)。 (炭素税収の使途・軽減措置) 図表6に示したとおり、日本の地球温暖化対 策税の税収はすべてエネルギー対策特別会計に 入り、エネルギー起源CO2削減を目的とする 事業に充てることで、環境面の効果を高めよう としている(「財源効果」と呼ばれる)。一方、 海外では、環境面の効果はすべて税率の引上げ による省エネ行動等の誘因(「価格効果」と呼 ばれる)に委ね、税収は一般財源に入る。世界 で最も高い炭素税1,120SEK/tCO2(約16,000 円)を有するスウェーデンでは、1991年に環境 税制改革を行い、税収中立の観点から、炭素税 やSO2税の導入およびエネルギー消費に対す る付加価値税の課税開始のタイミングで、増収 分を法人税率の大幅な引き下げ(1990年53%、 1991年30%、2015年22%)に充てることで、企 業の負担軽減を図った。こうした取組みはフィ ンランドやカナダBC州においても実施されて いる。 このほかにも、欧州では、国際競争にさらさ れる企業の保護や炭素リーケージ(21)の防止、炭 素税と排出権による二重の負担の回避等を目的 に、EU-ETS対象企業への課税が免除されてい る(22)。またEU-ETS対象外であっても、これ は日本でも講じられている措置であるが、対策 余地の少なさや小規模農家への影響緩和等を目 的に、農業部門に対する課税を軽減している場 合もある。また、フランスのように、炭素税導 入に伴う急激な価格上昇を回避するため、初年 度のガソリンと軽油の炭素税率を据え置く一方、 エネルギー税の課税部分を炭素税分とその他に 分け、炭素税分を2年目以降に徐々に引き上げた ケースもある。このように、海外では税収の活 用や細やかな減免措置を通じて、産業への影響 (注1)スイスの2018年の炭素税率は96 ~120CHF/tCO2と幅があるが、ここでは最も高い税率を適用。 (注2)為替レートは、みずほ銀行外国為替相場2015年4月から10月の月中平均値。 (資料)ヒアリング調査および各国政府資料をもとにみずほ情報総研作成。 図表5 各国における炭素税率の推移と見通し

(13)

を回避し、経済と環境の両面で最大限のプラス の効果を得るための工夫がなされている。 (3)日本のエネルギー課税の今後のグリーン化 の方向性 日本と海外の比較を踏まえ、エネルギー課税 のさらなるグリーン化の進展に向け、今後、日 本が実施すべき点を以下のとおり整理する。 (エネルギー課税の税率引上げ) まず、(1)で見たように、日本より高額のエ ネルギー課税を導入している国が欧州に多数あ ○エネルギー税率(特に炭素税率)引上げ による「価格効果」の最大化と、企業の 不確実性要因を取り除くための「将来の 炭素価格」の明示 ○税収の経済活性化への活用 り、また、「税負担を労働や所得から消費や環 境にシフトすべき」という動きが世界的な潮流 となりつつあるなか、日本においても、地球温 暖化対策税の税率の大幅な引上げに加え、揮発 油税や軽油引取税など既存のエネルギー課税の 炭素税化についても検討していくことが必要と 考えられる。日本の地球温暖化対策税のCO2 削減効果は2%程度とされているが(23)、効果の 大半は、「財源効果」によるものである。今後 は税率を引き上げ、海外のように「価格効果」 を最大化することが必要である。 地球温暖化対策税に対して、日本の産業界か らは、「課税の廃止を含め、抜本的に見直すこ とが喫緊の課題」との反対の声が根強いが(24)、 世界の情勢は大きく変わりつつある。2015年 には、シェルやトタルなどの石油メジャーが、 「炭素価格付け制度は我々にとり負担となるが、 炭素価格付け(carbon pricing)が将来の投資へ (注1)税率は2016年1月時点。但し、日本の地球温暖化対策税は2016年4月以降の税率。 (注2)税収は取得可能な直近の値。但し、日本の地球温暖化対策税は2016年度(平年度)の見込値。 (注3)為替レートは、みずほ銀行外国為替相場2015年4月から10月の月中平均値。 (資料)ヒアリング調査および各国政府資料をもとにみずほ情報総研作成。 図表6 各国における炭素税の概要

(14)

のロードマップを明確にする」と声明を出した ほか(25)、74カ国1,000以上の企業が参画する「炭 素価格付けパネル(Carbon Pricing Panel)」が 国連事務総長の指揮の下に設置されるなど(26)、 炭素税を歓迎する意向を示す民間セクターも増 えている。これより、日本は今後「価格効果」 の最大化に向けた税率の引上げを行うことが望 ましく、その際は、企業にとっての不確実性を 取り除くため、カナダBC州やフランス、スイ スで実施されているように、長期的な「将来の 炭素価格」の見通しを示していくことが一層重 要と考えられる。 (税収の経済活性化への活用) 現在の日本の地球温暖化対策税は、海外の多 くの国と異なり、税収の使途をエネルギー起源 CO2削減策に限定している。これは「財源効果」 として、環境面の効果を最大化するための措置 であるが、そうではなく、法人税減税や社会保 障改革と一体となった、十分な「価格効果」を 有する大型炭素税などの「カーボンプライシン グ」の導入が有効であるとの提言も環境省の有 識者会議から出されている(27)。こうした施策を 国内で実際に展開するに当たっては、(2)でみ た海外の事例が参考になる。税収相当分を法人 税減税や社会保障費の削減として活用すること は、ドイツやスウェーデンなどに多くの実績が ある。加えて日本のように莫大な財政赤字を抱 える国にとっては、アイルランドで実践された ように、税収を赤字補填の財源とすることも、 今後極めて重要な選択肢になると考えられる。 続いて、車体課税に焦点を当て、各国の最新 の税制の動向を踏まえ、「標準的な車に係る課 税水準」と「燃費に応じた税制の導入状況」の

3. 車体課税の比較と日本に対する示唆

2つのポイントから比較・検討を行い、そこか ら示唆される日本の車体課税のグリーン化の方 向性について、筆者らの考えを述べたい。 (1)標準的な車の取得・保有・走行に係る税負 担の比較 はじめに、各国の乗用車の取得・保有・走行 に係る税負担額を比較する。対応する税目には、 車体課税(取得・保有)に加え、車の取得や走 行時の燃料消費に係る消費税やエネルギー税が ある。本稿では、これらの税を合計した上で、 比較を行う。 図表 7 にあるように、取得に係る税はドイ ツと英国を除くすべての国で導入されており、 CO2や燃費を課税標準に採用している国が多 く、日本のように価格のみを課税標準とする国 はむしろ少数である。保有に係る税は、カナダ を除くすべての国で導入されており、取得税同 様、多くの国でCO2や燃費が単独であるいは 重量や排気量など他の要素との併用で、課税標 準として採用されている。 以上の各国の税体系を当てはめ、日本の 2015年度燃費基準相当の燃費を有する標準的 なガソリン車と、同クラスのディーゼル車を、 12年間保有した場合の税負担を計算した。 図表8を見ると、日本の場合、税負担(ガソ リン車約127万円、ディーゼル車100万円)の5 割程度が車体課税によるもので、その多くは保 有に係るものである。また、ガソリン車とディー ゼル車を比較すると、日本のケースではガソリ ン車とディーゼル車が同じ重量、排気量クラス となり、これによる税負担は同じとなる。一方、 ディーゼル車には、車両価格による負担増より も大きな燃費による減税効果があり、さらに、 軽油のエネルギー税率が低いため、結果、取得・ 保有・走行いずれにおいてもディーゼル車の税 負担が軽い。

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欧州は、スウェーデン、ドイツ、フランス、 英国、イタリアなど、国産自動車メーカーを有 する国の課税水準が低く、デンマークやオラン ダなど課税水準の高い国とは10倍以上の開き がある。また、2(1)のエネルギー課税と同様、 デンマーク、オランダ、ベルギーのように、大 気汚染や健康被害等の観点から、ディーゼル車 に追加的な税を課す国もあり、こうした動きは 年々広がりを見せている。このほかEUでは車 の取得や走行時に19 ~ 25%と高い付加価値税 がかかるため、総じて日本よりも高い税負担と なっている。 北米と豪州は、車体課税の負担水準が低いこ とに加え、特に米国は、他地域よりエネルギー 税率が突出して安いこともあり、走行に係る税 負担が小さくなっている。 (2)燃費に応じた税制の導入状況―燃費を変化 させた場合の税負担額の比較- 次に、ガソリン車およびディーゼル車に対す る課税が、燃費の違いによって、どの程度変化 するかを検討する。 図表 9 は、(1)で用いた標準的な車に加え、 2種類の代替車(一定程度燃費が良い車と燃費 の悪い車)を用意し、基準時からの税負担の増 減を、ガソリン車とディーゼル車をそれぞれ試 算した結果である。代替車の燃費については、 EUの排出目標(2021年95gCO2/ km)が、現状 (2015年130gCO2/ km)から3割程度の改善を 求めていることを踏まえ、基準時からの変化率 (注1)ベルギーの車体課税はフラマン地域、スイスの保有税はジュネーブ州、米国の保有税はニューヨーク州の場合。 (注2)米国の売上税はニューヨーク州とニューヨーク市の合計、カナダの売上税は連邦付加価値税とBC州売上税の合計。 (注3)車体課税、消費税、エネルギー税の税率は2016年1月時点。為替レートは、みずほ銀行外国為替相場2015年 4月 から10月の月中平均値。 (資料)ヒアリング調査および各国政府資料をもとにみずほ情報総研作成。 図表7 各国における乗用車の取得・保有に係る税等

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をそれぞれ30%とした。 これを見ると、日本の増減の幅(ガソリン車 約46万円、ディーゼル車約36万円)は、北米と 豪州を上回るものの、欧州のいずれの国よりも 小さい。日本と欧州を比較すると、欧州の増減 の幅は日本の1.5 ~10倍程度である。また、オ ランダ、デンマーク、アイルランドなど増減の 幅が大きい上位の国ほど、その大半を車体課税 が占めており、特に燃費に応じた重課が徹底し ている。 こうした税制も寄与し、EU全体での2014 年の乗用車の平均排出量は123.4gCO2/ kmで、 2015年目標を前倒しで達成した(28)。より一層 厳しくなるCO2排出目標や排ガス規制の達成 に向け、欧州各国は今後も、CO2排出量や燃費、 排出ガスに応じた税制の強化を図り、環境性能 に優れた車(エコカー)の普及を加速化してい く見通しである。 (3)日本の車体課税の今後のグリーン化の方向性 日本と海外の比較を踏まえ、車体課税のさら なるグリーン化の進展に向け、今後、日本が実 施すべき点を以下のとおり整理する。 ○燃費に応じたメリハリの効いた税制(燃費 課税)の導入 ○燃費課税の両輪となる燃費規準の厳格化 (注1)乗用車(ガソリン車:ディーゼル車)の設定は次の通り。車体価格180万円:210万円(税抜)、排気量1,800cc:2,000cc、 車両重量1.5t:1.6t、燃費15.3㎞ /L:18.4㎞ /L(JC08モード)、馬力142PS(共通)。排出係数2.32kgCO2/ L、年間 走行距離10,000km、耐用年数12年の想定のもと計算。燃費はカタログ燃費。

(注2)ガソリン価格(税抜)は IEA, Energy Prices and Taxes, Volume 2015 Issue 4の2015年第 2 四半期、第 3 四半期 の各国平均値。為替レートは、みずほ銀行外国為替相場2015年 4 月から10月の月中平均値 (注3)図表 7 の制度を各国に当てはめて計算。税率は2016年 1 月時点。但し、ベルギーのフラマン地域、スイスのジュネー ブ州、米国のニューヨーク州に加え、フランスの取得税はパリ市、イタリアの車体課税はローマ市、オランダの 保有税は北ホラント州、豪州の保有税にはニューサウスウェールズ州の税率を適用。 (資料)ヒアリング調査および各国政府資料をもとにみずほ情報総研作成。 図表8 標準的な自動車1台当たりの取得・保有・走行に係る税負担額

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(燃費に応じたメリハリの効いた税制の導入) まず、(1)や(2)で見た通り、今回の調査で 改めて、日本は、車の燃費やCO2排出量など の環境性能による税負担の増減が、欧州と比べ て極端に小さいことが明らかとなった。日本が 今後目指すべきは、欧州のように、車の環境性 能に応じた重課・軽課を徹底する、よりメリハ リの効いた税制(燃費課税)である。 日本では、2017年4月に、自動車取得税に代 わり新たに、燃費性能に応じて課税する環境性 能割が導入される。しかし、燃費による免税ラ インは2015年度よりむしろ後退している(29)。 エコカー減税などで基準の強化が継続的に図ら れてきた経緯を踏まえれば、今回の環境性能割 の設計は極めて異例であり、エコカー購入イン センティブの後退やエコカー開発意欲の低下に つながりかねない。また、事実上の減収となり、 地方財政にも影響しかねない。 「平成28年度与党税制大綱」によれば、環境 性能割の税率区分は 2 年毎に見直しが行われ る。制度導入後速やかに、燃費改善やエコカー 技術開発の動向、地方財政への影響等に関する 検証を行い、環境の観点から相応の見直し案の 提案を行っていくことが肝要である。さらに ユーザーの税負担額の大きさや税収の観点から みれば、日本の場合、取得税より保有税(自動 車重量税、自動車税、軽自動車税)の重要性が 高い。今後は、燃費課税の導入など、保有税の 恒久的な税制グリーン化の仕組みの検討に着手 すべきと考える。 (注)試算の条件は図表8と同じ。 (資料)ヒアリング調査および各国政府資料をもとにみずほ情報総研作成。 図表9 異なる燃費の自動車1台当たりに係る税負担額変化

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(燃費基準の厳格化) 欧州における税制の強化(課税標準のCO2へ の変更、減税基準の厳格化等)の背景には、た ゆまぬ努力を要する厳しいCO2排出目標があっ た。日本にも同様の燃費基準があるが、目標 値は2015年度16.8km/L、2020年度20.3km/L (138gCO2/km相当、114gCO2/km相当(30))と、 欧州(2021年95gCO2/km)や米国(2025年143g CO2/mile[89gCO2/km相当(31)])と比べると 見劣りする水準である。日本の過去の燃費推移 を見る限り、目標は容易に達成される見込みで あり(32)、これではさらなる技術開発のインセ ンティブが働かない。 今回取り上げた以外の国(例えば中国)でも、 日本よりも厳しい燃費基準の導入が検討されて いる(33)。世界屈指の自動車大国として、世界 の潮流に乗り遅れることなく、燃費基準の厳格 化と燃費課税との両輪で、自動車のグリーン化 を進めていくことが必要と考えられる。 本稿では、2年におよぶ調査成果を踏まえ、 国内外16カ国の税制グリーン化の最新動向を 整理した。その結果、昨年度と同様、程度の差 はあるにせよ、いずれの国においても税制グ リーン化の取組みが活発化しつつある状況が伺 えた。 とりわけ欧州では、環境課税へのシフトの方 向性がEUおよび加盟国間で共有され、多くの 国で毎年のように環境税の税率引上げが行われ ていた。また、炭素税については、スウェーデ ン、スイス、フランスなどで導入当初の10倍 以上に相当する炭素税を導入あるいは今後も予 定しており、こうした価格の「見える化」が、 企業にとっても不確実性をなくす、歓迎され得 る政策と分かった。欧州では、環境税を、「環境」

4. おわりに

だけでなく「経済」にとっても最大限プラスと なるように設計し、デンマークやスウェーデン では、経済成長を実現しながらCO2排出量を 削減するデカップリングの顕著な実績を残して いる。日本も、税制グリーン化を通じて、持続 可能な成長の実現を目指すべきであろう。 海外には、エネルギー課税や車体課税は勿 論、汚染に係る税や資源に係る税など幅広い税 が導入されている。これらはいずれも「第4次 環境基本計画」で掲げた「低炭素社会」、「循環 型社会」、「自然共生型社会」、「安全が確保され る社会」の構築に寄与するものである。日本で はこれまで、地方が率先して森林環境税や産業 廃棄物税を導入してきたが、フロン税、取水税、 地下水税、容器包装税、排水税、騒音税、漁業 税など、未導入の税がまだいくつもある。国が 主導するのみならず、地方が特色を生かし、自 治体が率先して導入に取り組むことに期待し たい。 冒頭に述べたように、「パリ協定」や「持続 可能な開発目標」が採択された今こそ、2030年、 2050年、あるいはその先を視野に入れ、日本は あらゆる施策を総動員してCO2の大幅削減や持 続可能な成長の実現に取り組まなければならな い。世界の取組みに注目しつつ、日本において 税制グリーン化を推進するための方策等につい て、さらなる検討を深めていきたい。 (1) 外務省「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議 (COP21),京都議定書第11回締約国会合(CMP11) 等 」(2015年12月28日 )http://www.mofa.go.jp/ mofaj/ic/ch/page18_000435.html

(2) United Nations, 2015, Transforming Our World:

The 2030 Agenda for Sustainable Development, A/RES/70/1.

(3) E3G, 2015, Japan isolated as USA leads the way

in G7 move beyond coal.

(4) OECD, 2 0 1 0 , Taxation, Innovation and the Environmentなど。

(19)

(5) 環境省「税制全体のグリーン化の推進に関するこ れまでの議論の整理(中間整理)」(2012年9月4日) http://www.env.go.jp/press/files/jp/20610.pdf (6) 社会動向レポート「日本および欧州における税制 グリーン化の最新動向」(みずほ情報総研 元木悠 子・内藤彩、2015年2月) http://www.mizuho-ir.co.jp/publication/report/2015/ mhir09_greentax_01.html (7) 財務省「平成28年度税制改正の大綱」 http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/ outline/fy2016/20151224taikou.pdf

(8) Council Directive 2003/96/EC – Energy taxation Directive.

(9) 2011年に欧州委員会により提案がなされたものの、 発効には全加盟国の承認が必要であり、現在まで 実現に至っていない。

(10) Regulation (EU)No 333/2014, Regulation (EC)

No 443/2009.

(11) European Commission, 2 0 1 3 , Annual Growth

Survey 2014など。

(12) 1mpg = 0.425km / L、1L= 2.32kg CO2で換算。 (13) 1L = 2.32kgCO2で換算。

(14) Budget of the United States Government, Fiscal

Year 2017

https://www.whitehouse.gov/sites/default/files/ omb/budget/fy2017/assets/budget.pdf

(15) Government of Alberta, Climate Leadership Plan, Carbon Pricing.

http://www.alberta.ca/climate-carbon-pricing.cfm

(16) Ontario, Cap and trade.

https://www.ontario.ca/page/cap-and-trade

(17) OECD, 2014, The Cost of Air Pollution.

(18)国際エネルギー機関(欧州連合の値を採用)、米国

環境保護庁、英国エネルギー・気候変動省の試算 結果を基に平均値を算出。(出典)IEA, 2015, World Energy Outlook 2 0 1 5、EPA, 2015, The Social Cost of Carbon、DECC, 2015, Updated short-term traded carbon values used for UK public policy appraisal.

(19) Global Council on Economy and Climate, 2014,

Better Growth, Better Climate.

(20) Pedersen, T., F. and Elgie, S., 2015, A template for

the world: British Columbia’s carbon tax shift.

(21)炭素リーケージとは、炭素価格が地域毎に異なる ことにより、生産拠点(CO2発生源)が、炭素価格 のより低い地域に移転すること。 (22)一方、産業界への過度な優遇措置は炭素税の効果 を損なうとの指摘もあり、スウェーデンでは、産 業界に対する軽減措置(本則税率の60%)を2018年 にかけて段階的に廃止する予定。(出典)Andersen, M., S., 2 0 1 5 , Reflections on the Scandinavian Model: Some Insights into Energy-Related Taxes

in Denmark and Sweden、Ministry of Finance Sweden, 2015, Environmental taxes in Sweden.

(23)地球温暖化対策税の価格効果や財源効果について は、環境省「地球温暖化対策のための税の導入」 http://www.env.go.jp/policy/tax/about.htmlを参照。 (24)日本経済団体連合会(2015)「平成28年度税制改 正 に 関 す る 提 言 」https://www.keidanren.or.jp/ policy/2015/075_honbun.html#s3-4を参照。

(25) BG, BP, Eni, Royal Dutch Shell, Total, 2 0 1 5 ,

“Letter to UNFCCC.”

(26) Carbon Pricing Leadership, “Leaders Unite in

Calling for a Price on Carbon”.

http://www.carbonpricingleadership.org/carbon-pricing-panel (27) 環境省気候変動長期戦略懇談会(2016)「提言~温 室効果ガスの長期大幅削減と経済・社会的課題の 同時解決に向けて~」http://www.env.go.jp/press/ teigen.pdfを参照。関連して、第3回懇談会(2015 年11月29日)における伊藤元重委員の発言「炭素 税や環境税の導入による相当な税収は必ずしも環 境対応に使わなければいけない訳ではない。環境 税のメリットは、環境コストを消費者や企業に 理解してもらうことを通じて行動を変容させるこ と。その副産物である税収分を、産業界への理解 を醸成するため法人税を引き下げる、あるいは国 民の理解を醸成するため、社会保障の保険料負担 を低くするといった議論がおそらく2020年以降、 非常に重要な政治経済的問題としてあがってく る。」http://www.env.go.jp/policy/kikouhendou/ kondankai03/gijigaiyou.pdfを参照。

(28) EEA, 2 0 1 5 , Monitoring CO2 emissions from

passenger cars and vans in 2014.

(29)日本経済新聞(2015年12月11日)「車買うとき、 17年度からは 燃費良いほど税率低く」を参照。 (30) 1L = 2.32kgCO2で換算。 (31) 1mile = 1.60934kmで換算。 (32)国土交通省「乗用車の燃費・CO2排出量」http:// www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr 1 0 _ 0 0 0 0 2 4 . htmlを参照。

(33) ICCT, 2 0 1 4 , “Development of test cycle

conversion factors among worldwide light-duty vehicle CO2 emission Standards.”

(20)

昨年末に開催されたCOP21で「パリ協定」が 合意された。これは京都議定書の代わりとなる 新たな法的枠組みであり、条約加盟国の全てが 参加する初めての枠組みとなっている。本協定 の中では、地球の気温上昇を産業革命以前の水 準と比べて2度より十分低く抑え、1.5度に抑 えるための取組を推進することが言及されてお り、それに向けた対策の実施が各国に求められ ることになる。 このパリ協定に先立ち、途上国を含め世界中 の国々がCO2等の温室効果ガス排出量の削減 目標を掲げている。わが国も2030年度までに 2013年度比で26%削減を掲げており、パリ協 定を経てこれが国際公約となった。この“26% 削減”を策定するに当たり、前提となったの が長期エネルギー需給見通し(2015年7月)であ り、その中でわが国の2030年度時点での電源 構成等が定められた。同見通しにおいては、徹 底した省エネルギーの推進を通じた大幅なエネ ルギー効率の改善が見込まれており、石油危機 後並みの抜本的なエネルギー効率の改善が必要 とされている。 上述の通り、わが国の温室効果ガスの削減目

はじめに

標は大幅な省エネ対策の実現を前提としている。今回のパリ協定においては26%削減の数 値目標の達成は義務とはなっていないが、数値 目標の達成に向けた取り組み状況がレビューさ れることとなっており、国が実施していく対策 が5年毎に国際的な視点から評価されることに なる。従って、省エネ推進に向けて国がこれま で以上に対策を講じていくことは確実な情勢で あり、それに応じて企業にも省エネ対策が求め られることになるだろう。 本稿では、わが国の省エネ政策に着目して その検討状況について整理し、そこから想定さ れる短期的な省エネ政策の動きについて言及 する。 わが国の省エネ政策は日本全体をカバーすべ く、産業・業務・家庭・運輸の各分野において 検討が進められているところであるが、本稿で は一般の企業に対して影響が大きいと推察され る産業・業務部門に着目し、検討が比較的進ん でいる政策の中から重要と考えられるものにつ いて提示する。

1. 省エネ政策の最近の検討状況

2015年末のパリ協定を受け、各国の温室効果ガス削減目標が定まった。本稿では、削減目標 の達成に向けてわが国で検討が進みつつある省エネ政策を整理し、そこから想定される今後の省 エネ政策の動きについて考える。

社会動向レポート

日本の省エネ政策の検討状況と短期的に想定される

動きについて

環境エネルギー第 2 部 コンサルタント 

桐原 貴大

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(1)省エネ取組状況に応じた事業者のクラス 分け評価 エネルギーの使用の合理化等に関する法律 (以下、「省エネ法」という)では、一定規模以 上のエネルギーを消費する事業者に対して、国 へのエネルギー使用状況の報告(定期報告)を 義務付けている。この定期報告においては、事 業者に対して中長期的に見て年平均1%のエネ ルギー消費原単位改善の努力目標を課している ところである。 しかしながら、この努力目標を達成できて いるのは定期報告書を提出している事業者の 約2/3であり、残りの約1/3の事業者は目標を 達成できていない状況にある(図表1)。事業者 のより一層の省エネ努力を促すため、国は現 在、省エネ取組状況に応じて事業者をクラス分 けして評価する政策を検討中であり、1%削減 努力目標の達成状況やベンチマーク制度(次節 で後述)の目標達成状況等に応じて、事業者は SクラスからCクラスまでに分類される予定で ある。Sクラスを獲得した事業者は優良事業者 として公表される一方で、Bクラス、Cクラス に分類された事業者は国からの指導等の措置が 集中的に講じられる見込みであり、これまでよ りもメリハリのある対応が2016年度から開始 されることになっている(図表2)。 (2)業務部門におけるベンチマーク制度の導入 (1)で述べた1%の努力目標は過去の自社と の比較であり、省エネ対策を継続して進めてき た事業者にとっては、次第に省エネ余地量が小 さくなってしまい、いずれエネルギー消費原単 位の改善状況が頭打ちになってしまうことが想 定される。他方、そのような事業者を同業他社 と比較した場合、省エネ取組が非常に進んでい るケースもあり(図表3)、既に省エネが進んで いる事業者を公正に評価できる制度の導入が望 まれることとなった。このような背景から導入 された制度が“ベンチマーク制度”であり、「特 定の業種・分野について、当該業種に属する事 (資料)資源エネルギー庁 「取りまとめ(案) 参考資料集」 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会(第15回)(2015年8月) 図表 1 直近 5 年間におけるエネルギー消費原単位の平均年間変化率別の事業者数

(22)

業者の省エネ努力を可視化するとともに省エネ 取組が他社と比較して進んでいるか遅れている かを明確にし、非常に進んでいる事業者を評価 するとともに、遅れている事業者には更なる努 力を促すための制度」として2008年・2009年 にエネルギー多消費型の産業部門に対して導入 された。同制度に基づき、各社の省エネ取組状 況を客観的に判断するための評価指標と、そ の目標水準が設定され、現在では6業種10分野 に対してベンチマーク制度が運用されている (図表4)。 業務部門においては、震災前からベンチマー ク制度の導入が検討されていたものの、現在ま で同制度が導入されていない。震災後、2014年 度には「業務部門における省エネ取組の評価制 度に関する研究会」が設置され、業務部門の 代表的な6業種(ショッピングセンター、スー パー、百貨店、業務用ビル、コンビニエンスス トア、ホテル)について検討が進められてきた。 また、2015年11月には「未来投資に向けた官 民対話」の中で安倍総理が「製造業向けの省 エネトップランナー制度を、本年度中に流通・ サービス業へ拡大し、3年以内に全産業のエネ ルギー消費の7割に拡大する」という方針を示 していることから、業務部門へのベンチマーク 制度導入の検討はこれまで以上に進んでいくと 考えられる(図表5)。業務部門における上記6 業種において、現時点で最も検討が進んでいる のがコンビニエンスストアであり、唯一ベンチ マーク指標やその目指すべき水準の案が提示さ れたところである(2015年10月)。 現在、産業部門におけるベンチマーク制度の 対象事業者は国にベンチマーク指標を報告して おり、これは業務部門ベンチマーク制度におい ても同様の運用になる見込みである。各社が既 に収集している情報から算出できる指標となれ ばよいが、場合によっては新たな情報を企業内 で収集する必要が生じることもあるだろう。現 在検討中の業種全てがベンチマーク制度の対 象となった場合、エネルギー消費量ベースで は業務部門の約5割をカバーすることになると されていることから、新制度の導入による影響 (資料)資源エネルギー庁 「ベンチマーク制度に関する今後の方針について」 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会 工場等判断基準ワーキング グループ(第3回)(2015年12月) 図表 2 事業者クラス分け評価制度におけるクラス分類の基準とクラス別の国の対応

(23)

を受ける事業者も多いと想定される。また、例 えば主に百貨店業を営む事業者であったとして も、その一部としてスーパー業を営んでいる場 合、それが一定以上のエネルギー量を超えてい れば、両方のベンチマーク指標を報告しなけれ ばならない可能性がある点にも注意が必要であ る。換言すれば、多角的に事業を営む事業者で あるほど、国への報告項目が増え、事業者負担 も増加してしまう可能性があるということであ る。従って、現在ベンチマーク制度の導入に向 けて検討が進んでいる業務部門6業種を営む事 業者は、それが主たる事業であろうと従たる事 (資料)各種資料より著者作成 図表 3 ベンチマーク制度の導入の背景(イメージ) (資料)資源エネルギー庁 「取りまとめ(案) 参考資料集」 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会(第15回)(2015年8月) 図表 4 産業部門におけるベンチマーク制度の設定状況

(24)

業であろうと、評価指標や目標水準について最 新の検討状況を注視しておく必要がある。 他方、産業部門のベンチマーク制度において も、導入から5年以上が経過しており、各業種 の省エネ進展度合いに応じて目指すべき水準の 見直しが進められているところである。また、 今般の電力自由化を踏まえて、電気供給業に関 するベンチマーク制度の規制対象の見直し等が 実施されており、産業部門においてもベンチ マーク制度の更なる検討が進められている。 (3)省エネ法における再生可能エネルギーの 扱いについて 現行の省エネ法では、エネルギーの使用の合 理化の対象が化石燃料に限定されている。従っ て、例えば太陽光発電等の再生可能エネルギー による電力を使う限りにおいて、一定の条件下 では、そのエネルギーの使用の合理化を求めら れることはなかった。ところが、2015年8月の 省エネルギー小委員会で提示された「今後更な る検討が必要な課題について」では、再生可能 エネルギーも省エネ法のエネルギーの使用の合 理化の範囲に含めて検討していくことが明言さ れており、今後、事業者にとっては化石燃料と 再生可能エネルギーの両方を足したエネルギー 使用量全体としてのエネルギーの使用の合理化 が求められていくことについて言及されてい る。これは省エネ法における“エネルギー”の 定義の拡大を意味し、同時に省エネ法のカバー 範囲の拡大を意味している。 これまでに見てきたように、省エネ法はその カバー範囲の拡大を続けているところである。 また、上記では触れていないものの、例えばトッ プランナー制度(1)においても、その対象製品 の範囲が拡大されつつあり、近年では“エネル ギーを自ら消費する機器”に加えて“自らエネ ルギーを消費しなくても、他の建築物や機器等 のエネルギーの消費効率の向上に資する機器 (断熱材やサッシ等)”が加えられた。今後、国 が主導して省エネ政策を促進していこうとする 姿勢は、パリ協定を受けて益々強くなっていく ことが想定される。

2. 今後想定される省エネ政策の動きに

ついて

(資料)資源エネルギー庁 「ベンチマーク制度に関する今後の方針について」 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会 工場等判断基準ワーキング グループ(第3回)(2015年12月) 図表 5 ベンチマーク制度の拡充の方針

(25)

しかしながら、国は規制だけを強めている訳 ではなく、支援措置も同時に実施していること について言及しておく必要があるだろう。例 えば2016年度の省エネ補助金は、予算案にお いて515億円が提示されており、前年度の当初 予算から100億円程度が増加している。ベンチ マーク制度に関しては、その導入とセットで補 助政策も検討中である。例えば、ベンチマーク 水準を達成した事業者からの提案や、ベンチ マーク制度上の目指すべき水準を達成するため の提案を、国として重点的に支援する仕組みの 検討を行っていく方向性が示されている。具体 的にどのような支援策が用意されるかは未定で あるが、規制と支援の両輪で、わが国全体とし ての省エネ促進を進めていく姿勢が見て取れ る。 また、本年から開始する電力自由化により、 省エネ法においても新たな法改正が加えられる 可能性がある。最近は多様な業種から電力業界 への参入が続いており、テレビCM等でもその 広告を目にすることが多くなってきた。それら の事業者は電力料金の低減を謳っていることが 多く、他事業者も触発されてわが国の電力価格 が全体として少しずつ下がっていくことが予想 される。そうなった場合、工場や事業所での電 力使用量が増加してしまう可能性が生じるた め、国として、省エネ促進の観点から対策を講 じていく必要がある。現在、国において本件の 検討に着手したところであり、欧米の先行事例 を踏まえつつ、わが国でも何らかの政策が電力 小売り事業者に講じられることが想定される。 昨年末のパリ協定を踏まえ、これまで以上に わが国の省エネ政策が強化されていくことが予 想される。本稿で言及した「クラス別評価」、 「業務部門におけるベンチマーク制度の導入」、

3. おわりに

「省エネ法におけるエネルギーの定義の拡大」、 「電力自由化を踏まえた法改正の可能性」は国 が進めようとしている省エネ政策の一部であ り、これらが政策として取りまとめられれば、 各事業者における事業活動に何らかの形で影響 が生じることは必至であり、事業者はより一層 の省エネに対する取組が求められることになる だろう。 また、これまで見てきたように、省エネ法は そのカバー範囲の拡大を通じて省エネ政策の充 実化を図っている。従って、これまで省エネ法 の定期報告の対象となっていない事業者が、あ る日以降、報告対象になる可能性がある。現在 の省エネ法の報告対象となっている事業者はも ちろんのこと、これまで報告対象となっていな い事業者についても、今後の省エネ政策の動向 に着目し、早めの対策を講じていくことが望ま れる。 (1) トップランナー制度:エネルギー消費機器の製造・ 輸入事業者に対し、3 ~ 10年程度先に設定される 目標年度において最も優れた機器の水準に技術的 進歩を加味した基準(トップランナー基準)を満た すことを求め、目標年度になると報告を求めてそ の達成状況を国が確認する制度 参考文献 1. 資源エネルギー庁 省エネルギー対策課「省エネ法 の改正について」(2014年4月) 2. 資源エネルギー庁「省エネルギー小委員会 取りま とめ(案)」 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エ ネルギー分科会 省エネルギー小委員会(第15回) (2015年8月) 3. 資源エネルギー庁「取りまとめ(案) 参考資料集」 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エ ネルギー分科会 省エネルギー小委員会(第15回) (2015年8月) 4. 資源エネルギー庁「今後更なる検討が必要な課題 について」 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エ ネルギー分科会 省エネルギー小委員会 (第15回) (2015年8月) 5. 日本フランチャイズチェーン協会「コンビニエン

(26)

スストアの省エネ法ベンチマークの策定について」 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネ ルギー分科会 省エネルギー小委員会 工場等判断 基準ワーキンググループ(第2回)(2015年10月) 6. 首相官邸「未来投資に向けた官民対話(第3 回)」 (2015年11月) 7. 資源エネルギー庁 「ベンチマーク制度に関する今 後の方針について」 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネ ルギー分科会 省エネルギー小委員会 工場等判断 基準ワーキンググループ(第3回)(2015年12月)

(27)

2000年に日本で「循環型社会形成推進基本 法」(以下、「循環基本法」ともいう。)が制定 されてから15年が経過した。この間、世界の 人口は増え続け、また新興国が目覚しい経済 発展を遂げるに従い、世界の資源利用量は増 している。国連環境計画(UNEP)の国際資源 パネル(1)による報告書では、20世紀に総物質 採取量は約8倍に増加していること、多くの資 源が生産の限界に達しつつあることが書かれて いる(2)。また、「持続可能な開発のための世界 経済人会議(WBCSD)」は、持続可能な社会へ のビジョンの中(Vision 2050 The new agenda for business)で、2050年までに資源効率を4 ~ 10倍高める必要があるとした(3)。 このような世界的な持続可能な発展のため の資源利用の問題意識等から、EUをはじめ諸 外国でも天然資源の利用量削減や資源の循環 的な利用の促進を進め、環境負荷を減らしてい くための検討や取組が進められてきた。また、 世界的な経済の停滞という背景の中で、EUを

はじめに

中心に、資源の効率的な利用の促進は多くのビジネスにとってその競争力と収益性の改善に つながるものであるとの認識のもと、廃棄物政 策と資源政策のリンクだけでなく経済政策・社 会政策ともリンクした、資源効率の向上及び資 源の循環的利用の促進の流れが大きくなって きている。 こうした流れを受けて、2015年度には3つの 注目すべき世界的な動きがあった。 ① G7エルマウ・サミットにおいて「資源効率 の向上」が謳われた 2015年6月に行われたG7エルマウ・サミッ トの首脳宣言では、「天然資源の保護と効率的 な利用は、持続可能な開発に不可欠である。我々 は、産業の競争力、経済成長と雇用、並びに環 境、気候及び惑星の保護のために極めて重要と 考える資源効率性の向上に努める」と述べられ ており(4)、首脳宣言においてこのような一文 が入れられた意義は大きいとされている。 循環元年といわれた2000年から15年が経過した。世界的には国連のSDGsの「持続可能な 消費と生産」目標やEUのCircularEconomyの新政策パッケージの発表、国内では廃棄物処 理法の見直しの議論の開始や5月のG7富山環境大臣会合の開催予定など、更なる「循環型社会」 形成への機運が国内外で高まっている。一方で、過去からの議論を振り返ると、循環型社会形成 推進基本法制定当時からの課題が今なお残されている。本稿では、過去の経緯を振り返りながら、 今後への期待を述べた。

社会動向レポート

廃棄物・リサイクル法体系の一元化に向けて

環境エネルギー第 1 部 コンサルタント 

水上 碧

参照

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