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わが国の医療の特色と課題

ドキュメント内 みずほ情報総研レポート vol.11 (ページ 45-50)

ICTを活用した効果的で効率的な医療の輸出

2. わが国の医療の特色と課題

ており、これらの問題を解決するためには、医 療の効率化が不可避となっている。

医療の効率化としては、「医療の機能分化」「経 営管理の合理化」「政策決定の合理化」が挙げ られると考える。

「医療の機能分化」については、現在、政府 でも医療と介護の分離、病床機能報告制度や地 域医療計画の策定、在宅医療の推進といった取 組みが実施され、各地域で偏りなく必要な医療 が受けられ、かつ病院ごとに機能分化の上、連 携することで医療インフラの効率性を高める試 みがなされている。

「経営管理の合理化」としては、従来、他業 種と比較して圧倒的にICT化が進んでおらず、

かつ戦略的な

IT

投資もなされてこなかった医 療現場において、医療情報の電子化による情報 蓄積・利活用、現場オペレーションの効率化と いった工夫が求められている。

「政策決定の合理化」としては、現在、政府 の動きとして、限りある財源の中、医療経済的 な観点から、医療保険の保障範囲の選択に費用 対効果の考え方を導入するといった動きが見ら れている。

(資料)OECD Health Data 2015、World Health Statistics 2015よりみずほ情報総研作成 図表2 各国の医療費と健康水準

また、医療の効率化に関する大きな政府動向 としては「次世代医療

ICT

基盤協議会」が挙げ られる。「次世代医療

ICT

基盤協議会」は、「次 世代医療ICTタクスフォース」を前身とし、平

成27年

4月に健康・医療戦略推進本部に設置さ

れた協議体である。当該協議会では、ICTとい う切り口から、臨床現場の徹底的かつ戦略的な デジタル化及び生成デジタルデータの戦略的利 活用を行うことで、より高度で効率的な次世代 医療を実現することを目的とし、各種テーマ別

WG

に分かれて議論がなされている。具体的な テーマとしては、健康・医療分野における

ICT

化に係る基盤整備(次世代医療機器や病院シス テムの研究開発・実用化を推進を含む)、電子 処方箋の実現、医療情報連携ネットワークの普 及促進、地域包括ケアに関わる多様な主体の情 報共有・連携の推進等、革新的医薬品開発に資 するシミュレーション技術の更なる高度化等が 挙げられている。

(1)日本の医療機器産業の強みと弱み

日本の医療機器産業は、高度な微細加工技術 と豊富な素材を有し、特に診断系機器に強みを 有している。一方、わが国の治療系機器は輸入 超過であるが、市場成長は治療機器分野の方が 大きいという課題がある。また、弱みとしては、

現地化カスタマイズ(ex. Reverse Innovation)

といった現地ニーズへの対応が不十分であるこ と、世界トップ企業の事業規模や資金力を活か した周辺サービス(ex. 機器購入にあたっての 資金調達サポート、現地拠点をベースとした自 社によるメンテナンスサポート、経営コンサル ティング等)に比べると、わが国医療機器メー カーのサービスには制約があることといった点 が挙げられる。

今後、特に重要となる戦略としては「医療イ ンフラ構築へのコミット」と「人材育成」が挙 げられる。現地化カスタマイズや病院コンサル ティング等のサービスを提供可能にする医療現 3. 医療機器産業の海外進出における課題

(資料)各種資料よりみずほ情報総研作成 図表3 日本の医療機器産業の SWOT

場に立脚した情報収集を行うためには、医療イ ンフラ構築へのコミットを深める必要がある。

また、日本製品のユーザーやメンテナンス人材 を増やすための人材育成といった取組みも必要 になると考える。

(2)海外有力企業の成長戦略

欧米諸国のトッププレイヤーの戦略として は、資本規模の違いや薬事規制上の強み等と いった差はあれど、まさに上記で日本の課題と して挙げた「医療インフラ構築へのコミット」

と「人材育成」に力を入れているという点に特 徴がある。「医療インフラ構築へのコミット」

としては、新興国に対して、医療機器メーカー が医療保健分野の政策レベルから関与し、政策 目標達成のための支援や、官営企業とのパート ナーシップによる課題解決へのコミットを行う ことで、その後の展開につなげている。また、「人 材育成」としては、保健省と連携して大規模な 研修コースを提供したり、現地医師の留学支援 等を行うことで自社製品のユーザー層を増やす ことにつなげている。このような、時に大規模 投資を伴う現地医療への入り込みを通じて、新 興国における市場規模を伸ばしている欧米プラ イヤーに対し、相対的に、わが国の医療機器メー

カーの取組みは、機器売りや小規模なサービス 提供といった「点」での販売戦略に留まってい ると言わざるを得ない。

上記をふまえ、わが国医療機器メーカーは、

新興国市場獲得に向けて、ALL JAPAN体制も 視野に入れた新たな戦略が求められる時期に来 ていると考える。

冒頭にご紹介したとおり、みずほ情報総研株 式会社では、みずほ銀行産業調査部との共同事 業として、医療機器メーカー、医療現場、医療

ICT

事業者といった医療産業輸出に関連する 様々な主体から有識者を招聘し、特に「医療イ ンフラ構築へのコミット」と「人材育成」とい う観点を中心として、海外展開のあり方に関す る検討会を実施した。とりまとめ内容は、以下 のとおりである。

(1)問題意識

検討会を実施する上での問題意識は、下記の 通りである。

□輸出戦略を検討するにあっては、成長著し い新興国市場をターゲットとする。

□新興国市場への医療輸出を行うにあたって 4. 検討会としての提言

(資料)各社IR情報等よりみずほ情報総研作成 図表4 欧米有力プレイヤーの戦略

は、日本の医療の強みを活かしつつ、輸出 対象国の現地事情をふまえ、現地の課題解 決に資するソリューションを提供すること が重要である。

□日本の医療の強みは、医療人材の質の高さ や医療現場のオペレーションを基盤とした

「コストパフォーマンスの高さ」にあるが、

輸出戦略を再考するにあたっては、「次世 代医療ICT基盤協議会」で議論が進めら れているような、ICTを通じてよりいっそ うの高度化と効率化が図られた日本式医療 モデルが国際競争力を有すると考える。

(2)日本式医療が世界展開を進めるためのパッ ケージ

日本の医療産業輸出を通じ、新興国における 課題解決に積極的にコミットすることで市場獲 得を目指す戦略としては、医療インフラにおけ るオペレーションの効率化支援、効果的な人材 育成・人材供給支援ツール提供を強みとした パッケージ輸出が効果的であると考えた。

そこで、具体策として、医療現場における

①「次世代診療支援システム」、②

IoT

化され た医療機器、③ それらを支える基盤データプ ラットフォームの導入という

3

点が有効である と考えた。

①「次世代診療支援システム」とは、わが国 及び現地の熟練医師の診療におけるノウハウを デジタル化し、新興国における医療現場の診療 スピードや診療精度の向上を図るためのシステ ムである。②

IoT化された医療機器は、検査デー

タを直ちに送信するなど、診療支援システムを 円滑に稼動させるにあたって必須となる。③基 盤データプラットフォームは、新興国でも導入 及び維持管理が可能な低コストモデルであるこ とを前提に、医療情報を扱うにあたっての標準 化やセキュリティ等への対応も備えた基盤を提 供することが必要である。

(3)パッケージにより実現できること

診療支援システム、

IoT

の医療機器、基盤デー タプラットフォームの

3

点により実現できるこ

(資料)WHO World Health Statistics 2014、IMF資料よりみずほ情報総研㈱作成 図表5 ASEAN 諸国の医療費

ととしては、「医療インフラ整備」「人材育成・

人材供給」に加え「現地医療の高度化」が挙げ られると考える。

「医療インフラ整備」としては、パッケージの 導入により、医療サービスが十分に供給できて いない地域におけるコメディカル等の活用を通 じたプライマリな医療サービスの提供や、医療

機関における熟練医師のノウハウ共通を通じた 高度な医療サービスの提供といった効果が期待 できる。また、診療技術そのものだけではなく、

同時にオペレーションの変革を支援することで、

日本が強みを有する効率的な現場運営のノウハ ウを現地医療現場に提供できると考える。

「人材育成・人材供給」としては、マンツーマ

(資料)WHO World Health Statistics 2014よりみずほ情報総研㈱作成 図表6 ASEAN 諸国の医療インフラ

       (1)CL=クリニック

(資料)・ インドネシア、マレーシア、フィリピン:「2013年海外情勢報告」(厚生労働省)

・シンガポール: Yearbook of Statistics Singapore, 2014

・タイ:Statistical Yearbook Thailand 2013 、「平成25年度新興国マクロヘルスデータ、規制・制度に関する調査」(経産省)

・ ベトナム: Statistic Yearbook of Vietnam 2013 図表7 ASEAN 諸国の病院内訳(1)

ドキュメント内 みずほ情報総研レポート vol.11 (ページ 45-50)