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~後発医薬品使用促進に向けた地域での取組み~

ドキュメント内 みずほ情報総研レポート vol.11 (ページ 38-43)

社会政策コンサルティング部 マネジャー 

田中 陽香

すべきは、後発医薬品の使用割合は、地域に よって大きな違いがあることである。平成27 年5月時点での国全体の後発医薬品の使用割合 は、58.8%であるものの、もっとも使用割合の 高い県と低い県の間では20ポイント以上の差 が見られる。

このように、後発医薬品の使用状況について は、地域ごとにそれぞれ事情も異なることか ら、厚生労働省は平成20年度より、後発医薬 品の使用に関し、都道府県単位で関係者を集め た協議会を開催することを委託事業とし、地域 単位での取組みを促進してきた。こうした地域 単位での取組みは、全国一律での施策だけでは 他人事となりがちなことを、地域の身近な関係 者での議論により、自分事としてとらえる機会 ともなり、具体的な取組みの実行にもつながる ものとなっている。そこで、本稿では、後発医 薬品の使用促進に大きな役割を果たすことが期 待される地域単位での取組みについて紹介する こととする。

(1)都道府県レベルでの後発医薬品使用対策 後発医薬品の使用に関して都道府県のレベル で医師会、薬剤師会、保険者の代表者、有識者 等の関係者が集っての協議は、平成16年度に 富山県において「ジェネリック医薬品利用促進 研究会」が設置されたのが端緒となった。その 後、いくつかの県で自発的に後発医薬品につい ての協議会が設置、検討がなされていたが、平 成20年度より厚生労働省が後発医薬品の使用 促進に関する協議会の運営を都道府県への委託 事業としたことにより、協議会設置の動きは全 国各地に広がっていった。

関係者が集っての都道府県協議会は、必ずし も後発医薬品の使用に前向きではない関係者も いたため、地域によってその名称は様々で、「後 発医薬品適正使用」であったり、「後発医薬品 安心利用」というようなものも用いられていた。

そうした背景のもと、協議会では後発医薬品を 積極的に使用するための土壌を作るための議論 ばかりではなかったが、後発医薬品の使用促進

2. 地域での後発医薬品使用対策

(資料)滋賀県ホームページ http://www.pref.shiga.lg.jp/e/imuyakumu/generic/files/100330manual.pdf 図表1 滋賀県後発医薬品採用マニュアル(滋賀県後発医薬品安心使用促進協議会)の抜粋

に資する具体的な取組みに向けた議論を展開し てきたところも多い。都道府県協議会による具 体的取組みとして実行されてきたものとして は、一般住民や医療機関関係者等を対象とした 実態調査の実施、後発医薬品の使用促進のため の計画の策定や目標の設定、後発医薬品の採用 を判断するためのツール類(評価基準、採用マ ニュアル、後発医薬品リスト等)の作成、啓発 資料(リーフレット・ポスター等)の作成・配布、

セミナー・シンポジウム・研修会の開催、地域 協議会の開催が主なものとして挙げられる。

上記の取組みのうち、後発医薬品の評価基準 や採用マニュアルについては、それまで後発医 薬品の採用に積極的ではなった機関が、より安 心して使用できる後発医薬品を選ぶ際の手助け となるものとして、都道府県内の関係機関向け に発信されていた。

また、多くの都道府県において、地域の実 情を反映できる具体的なものとして作成されて いるのが、後発医薬品の採用リストである。掲 載されている情報の項目や単位、情報源はさま

ざまであり、地域によって同じ有効成分ごとの メーカー別の採用病院数や病院ごとの採用メー カー名が分かったりする。メーカー別の採用病 院数が分かると、後発医薬品の採用を検討する 際に複数のメーカーの間で比較検討し採用する 後発医薬品を選定する作業に十分な人員を割く 余裕のない規模の小さい医療機関や薬局にとっ ては、「採用病院数が多い」=「ある程度使用実 績が積み上げられている」≒「安心して使用でき る後発医薬品である」という代替的な指標とし て参考にされる。さらに、地域の入院医療を担 う医療機関の院内採用薬と同じメーカーのもの 採用するということは、患者が退院して地域に 戻った際に、同じ医薬品を使い続けることがで きることになるため、地域の基幹病院等の採用 後発医薬品に関する情報は、周辺の医療機関や 薬局にとっても参考になると思われる。その他、

一部地域では、卸業者の在庫情報をもとにリス トを作成し、地域で流通している後発医薬品が 分かるようになったり、リストに薬価(作成時 点のもの)の情報も盛り込んでいる場合もある。

(資料)各県ホームページより筆者作成

名称 規格 薬価 メーカー 名称 規格 薬価 メーカー

7

6 1

9 1

埼玉 熊谷地域における卸業者 取扱卸業者名

5 2

9 5

5 4

兵庫 県内138病院、1572薬局 採用病院数、採用薬局数

5 4

3 2

8 1

8 1

8 1

5 5

高知 県内5病院

2 1

8

2 6

7

後発医薬品 リストの情報源

医薬品 コード

栃木

掲載内容 薬効

分類 一般名 その他

先発医薬品

図表2 後発医薬品リストの情報源や掲載情報

(2)より顔の見える地域レベルでの後発医薬品 使用対策の取組み

こうした県レベルでの取組みとあわせて、い くつかの県では、具体的な活動を進めるため に、より顔の見える関係性が築きやすい単位で ある保健所管轄地域ほどの単位で協議会をつく る取組みが進められている。その中でも最も活 発な取組みがなされているのが福岡県であり、

平成23年度より筑紫地区と飯塚地区で福岡県 ジェネリック医薬品使用促進協議会のモデル事 業として地域単位での協議をはじめ、各種取組 みを進めてきたことを皮切りに、北九州地区、

福岡地区、八女筑後地区と県内の複数の地域に おいて地域協議会での検討を進めてきている。

ただし、単に医療機関、薬局、保険者等の代 表者が集って単に後発医薬品の使用を促進す るべく議論する場を作っても、「汎用リストを作

成する」というような具体的な作業が見えない となかなか議論が進まない。そのため、福岡県 の各地区では、保険者(国保)が被保険者に対 しての差額通知事業やジェネリック医薬品希望 カードの配布を共同で行うことや、それぞれの 地区で多く使用される後発医薬品を選定し、地 域において共同で備蓄しようという試みを進 めてきた。

その中の一例として挙げられるのが、後発医 薬品の備蓄のための体制整備である。筑紫地 区、飯塚地区とも地域協議会のもとに備蓄体制 等検討委員会を設け、地域の基幹病院の薬剤部 と薬局の代表者がメンバーとなり、具体的な体 制整備のための検討を行った。地域における後 発医薬品選定基準を作成・公表し、実際に地域 において共同で備蓄する後発医薬品を選定、選 定した後発医薬品を地域の基幹薬局に備蓄し、

(資料)福岡県ホームページ http://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/106555_17822914_misc.pdf 図表3 筑紫・飯塚地区をモデル地区とした地域協議会

後発医薬品の融通を行った。また、地域で選定 した後発医薬品についてはそのリストをポス ターにもして、一般の患者も薬局で目にするこ とができるようにした。

国全体として後発医薬品の使用促進をさらに 進めていくには、同時に薬価や診療報酬等、国 の医療保険政策も大きな影響を与えるものであ る。事実、過去には何回も後発医薬品の使用割 合を高めるべく、診療報酬等での誘導がなさ れてきた。特に平成24年度の診療報酬改定で、

医師が薬を処方する際、商品名ではなく成分名

(一般名)で処方する一般名処方に対し加算が 導入された際には、後発医薬品の使用割合が大 きく伸びた。また、平成26年度改定において、

DPC

病院(入院診療費を病気の種類と診療の内 容によって分類された

DPC

という区分に基づ いてあらかじめ国が定めた1日当たりの定額部 分と出来高による部分とを組み合わせて計算す る方式を採用している病院)の機能評価係数の 一つとして後発医薬品が盛り込まれたことによ り、入院医療における後発医薬品の使用も進ん だのではないかと考えられる。

こうした誘導策は即効性があり、目に見えて 使用が進むものではあるが、後発医薬品を使う 側の医師、薬剤師をはじめとした医療者、さら にはエンドユーザーたる患者の意識を変えるに は、マスコミ等を通じた普及啓発と並んで、地 域の顔の見える関係での地道な取組みが重要に なると思われる。それには、国や県レベルで広 域での検討だけではなく、地域協議会のよう な、ある程度狭い範囲で具体的な作業項目を設 定しながら、議論を繰り返していくという取組 みは、一定の効果があるものと思われる。

止めることのできない高齢化により医療費が 増え続ける中、効率化できる部分で医療費を抑

3. まとめと考察

え、その分を新薬の開発等、これまで治療する ことができなかった分野で使用できるようにす るということは必要不可欠なことである。そう した一端を担うという考えのもと、各地域にお いて、地域の実情に応じた創意工夫を行いなが ら、後発医薬品の使用促進に向けた具体的な取 組みを期待したい。

本稿は、平成27年5月29日の行政改革推進会 議歳出改革ワーキンググループ重要課題検証サ ブ・グループで筆者が行った発表内容をもとに したものである。

ドキュメント内 みずほ情報総研レポート vol.11 (ページ 38-43)