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博士(水産学)福永健治 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(水産学)福永健治 学位論文題名

活性酸素ストレスによる生体障害とその防御 学位論文内容の要旨

  生体が 恒常性を維持している間は、活性酸素や反応性の高い酸素の中 間代 謝物などの生成を抑制するシステムや消去系が十分に機能し、それ らの障害が生体に及ぶことはない。しかし、生体が恒常性を喪失したり、

酸化 的ストレス環境下に置かれた場合は、過剰に活性酸素を生成し、生 体成 分に対し無秩序に酸化的に作用し、種々の障害、疾患を誘発する。

また 、直接、酸化ストレスが生体に及び、障害が発現するような場合の みな らず、食生活の変化やあらゆる公害に見られるような環境の変化も 酸化 ストレスによる健康障害を顕在化させる恐れがある。このような観 点に 立ち医学的、栄養学的見地から、様々なモデル、実験動物を用いて 活性 酸素の関わる障害発現機構が研究されている。一方、目的によって は、 ヒトのモデルとして種々の病態、障害の研究においてラットなどの 実験 動物に代わり魚類を用いることの有用性が嘱目されている。進化の 過程 から見れぱ、魚類は脊椎動物の根幹に位置し、酸素代謝、異化作用 など の生理機能にっいてもヒトをはじめとする高等動物と多くの共通点 が見 られることも知られている。活性酸素による障害を解析するとき、

生体 膜の酸化的損傷が問題となるため、元来、高度不飽和脂肪酸を生体 膜構 成成分としている魚類を用いる方が、より明確に評価できることが 期待できる。本研究では、活性酸素による生ヰ本障害防御機構を解析する にあ たり、養魚、養殖システムヘの応用面でも注目されているオゾンを

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酸 化 ス ト レス 源 とし 、魚 類を 実験 動物と して 検討 した 。すな わち 、水 産 資源としても重要なニジマス(On CWZノりむ朋凪′fノメみを用い、オゾン曝 露 に よ る 生体 へ の酸 化的 障害 の発 現とそ の防 御機 構に っいて 検討 した 。   Wedemeyerら は 、 低 濃 度 長 時 間 (0.Olppm,24〜96時間) のオ ゾン 曝 露 に よ る ニジ マ スへ の影 響を 検討 し、標 的器 官は 鰓で あり、 鰓の 機能 障 害 に よ る 呼吸 お よぴ 浸透 圧失 調が 障害の 主要 因で ある として いる 。し か し 、 こ の 場合 、 オゾ ン曝 露に よる 直接的 な酸 化ス トレ スの影 響な のか 、 あ る い は 、飼 育 環境 の変 化に よる 二次的 な要 因の ため に障害 が発 現す る の か は 、 個体 差 が極 めて 大き いた めに不 明確 のま まで ある。 この 様な 問 題 点 を 踏 まえ 、 本研 究で は、 オゾ ン曝露 によ る直 接的 な生体 酸化 障害 の 発 現 機 構 解明 、 なら ぴに 生体 防御 機構の 解明 を目 的と して基 本的 には 、 オ ゾ ン 濃 度 を1.5ppmの 高 濃 度 に 設 定 し 、 短 時 間 の 曝 露 を 行 っ た 。   第 一 章 では 、 オゾ ン曝 露に より 惹起さ れる 血液 およ ぴ鰓の 障害 にっ い て 、 血 液 学的 性 状お よぴ 鰓形 態変 化、機 能、 構成 成分 変化お よび 酸化 障 害 防 御 系 に及 ぽ す影 響を 指標 とし て検討 した 。そ の結 果、オ ゾン 曝露 に よ る 酸 化 的損 傷 、障 害は 鰓に は認 められ なか った が、 赤血球 の著 しい 変 形 、 膨 化 のほ かmetHbの 生 成 、 溶 血 が 認め ら れ た 。こ のよう に、 障害 を 受 け た 赤 血球 は 、酸 素運 搬能 の喪 失なら びに 二次 鰓弁 内への 凝集 を起 こ し 、 そ の 結果 、 呼吸 不全 にと もな う窒息 によ り死 に到 らしめ るも のと 結 諭 さ れ た 。ま た 、こ のと き、 赤血 球の膜 構造 タン パク 質は消 失し 、構 成 成 分 で あ る膜 脂 質の 過酸 化、 タン パク質 の酸 化が 起こ り、著 しく 酸化 的 損 傷 を 受 けて い るこ とが 確認 され た。ま た、 オゾ ン曝 露によ る酸 化的 障 害 防 御 系 への 影 響を 検討 した とこ ろ、血 漿お よび 赤血 球の抗 酸化 性成 分 が 著 し く 消耗 し 、赤 血球 中の 活性 酸素消 去系 酵素 活性 の不均 衡化 の進 行 を 招 く こ とが 明 らか とな った 。以 上、本 章の 結果 から 、オゾ ン曝 露に よ る第一義的標的は赤血球であることを明らかにした。

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  第二章では、生体内抗酸化性成分として重要なV.C,V.EおよびV.C/V.E 混 合 物 の 投 与 に よ る 障害 抑 制 効 果 を 血 液 学 的 性 状 およ び 鰓 形 態 変 化 、 機 能 、 構 成 成 分 の 変 化 およ び 酸 化 障 害 防 御 系 に 及 ば す影 響 を 指 標 と し て 検 討 し た 。 その 結果、 いず れの 投与 群にお いて も供 試魚 の挙動 はも とよ り、

全 て の 検 討 項 目 に っ いて 著 し い 改 善 、 す な わ ち 酸 化的 損 傷 の 軽 減 効 果 が 認 め ら れ た 。 ま た 、 溶血 に 起 因 す るHb由 来 の 鉄 の 過酸 化 反 応 へ の 関 与 を 検 討 す る 目 的 で 鉄 の 特異 的 な キ レ ー タ ー で あ る デ スフ ェ 口 キ サ ミ ン の 急 性 毒 性 抑 制効 果にっ いて も検 討し たが、 その 抑制 効果 はほと んど 認め ・ら れ ず 、 赤 血球 膜機能 の指 標で あるNa゛/K゛ATPase活性 の低下 抑制 がわ ずか に 認 め ら れ た に す ぎ なか っ た 。 こ の こ と は 、 溶 血 によ るHbか ら の 鉄 の 遊 離 は ほ と ん ど 起 こ ら ない こ と を 示 唆 し て い る 。 以 上の 諸 事 実 、 お よ び 第 一 章 で 確 認 し た 膜 構 成脂 肪 酸 か ら の 過 酸 化 脂 質 生 成反 応 の 進 行 に っ い て は オ ゾ ン 分 子 自 身 の ポテ ン シ ャ ル か ら は 説 明 で き ない 。 す な わ ち 、 オ ゾ ン 以 外 の 活 性 酸 素 種 が血 液 中 に お い て 派 生 し て い るこ と を 強 く 示 唆 す る ものと考えられた。

  そ こ で 第 三 章 で は 、ノ カvitro系 で 赤 血球 の障 害に 対する 血漿 の影 響に っ い て 検 討 し た 。 分 離赤 血 球 へ の 血 漿 の 添 加 は 、 オゾ ン 曝 露 初 期 で は 、 酸 化 障 害 に 対 し 抑 制 的に は た ら く が 、 時 間 の 経 過 にと も な い 、 反 対 に 酸 化 促 進 的 に 作 用 す る こと が 認 め ら れ た 。 同 時 に 赤 血球 の 活 性 酸 素 消 去 系 I酵 素 活 性の 不均 衡化 が引 き起こ され た。 すなわ ち、SOD活性 の低 下は 認め ら れ な か っ た がGSH‑PxやCatalase活 性 は 低 下 し た。SOD活 性 の 維 持 は 、 02‐ の 不 均 化 に よ っ てH202を 産 生 す る が 、 そ れ を 無 毒 化 す るGSH‑Pxや Catalaseの 活 性 低 下 によ り 蓄 積 し たH202か ら ヒ ド 口キ シ ラ ジ カ ル な ど の 極 め て 反 応 性 の 高 い 活性 種 の 生 成 が 考 え ら れ る 。 事実 、 オ ゾ ン 曝 露 に よ り 赤 血 球 内 に 明 ら か なH202の 生 成 蓄 積 が 認 め ら れ 、し か も 血 漿 が そ の 生 成 に 促 進 的 に 関 与 し て い る こ と を 確 認 し た 。 ま た 、Hbを 極 め て 安 定 な

・ ー834―ー

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COHbに 変換すると、抗酸化性成分の維持、脂質過酸化物の生成が抑制さ れ、赤血球の障害は顕著に抑制された。このことは、oxyHbが安定なCOHb に変換されることでmetHbが・生成されず、したがってoxyHbからの02‐の 生成はもとより、これより派生する反応性の高い活性種の生成が抑制さ れた結果である。この場合、鉄の安定なキレーターであるDTPAの添加実 験からHbからの遊離鉄の関与は否定され、Hb鉄の形態で過酸化触媒に与 っていることを明らかにした。

  以 上の結果から活性酸素ストレスによる生体障害の進行は、オゾン曝 露系では赤血球を第一義的標的とし赤血球中のHbからの02ーの生成、活 性酸素消去系酵素活性の不均衡化に伴うH202の蓄積、Hb鉄の形態での過 酸化触媒作用によるヒド口キシラジカルなどの極めて反応性の高い活性 種の派生など一連の反応の進行による生体構成成分の攻撃に起因するも のであると結諭し、これらの障害はV.CやV.Eなどの抗酸化性物質によっ て効果的に抑制されることを明らかにした。

  本 研究より得られた知見は、飼育水中あるいは魚体を汚染している微 生物、寄生虫などを短時間に安全かつ極めて効果的に排除するために従 来用いられていなかった高濃度オゾンを積極的に利用し得る指針を包含 す る も の で あ り 、 魚 類 増 養 殖 分 野 で の 今 後 の 利 用 が 期 待 さ れ る 。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査

副 査 副 査 副 査

教授 助教授 助教授 助教授

高間浩蔵 鈴木鐡也 原   彰彦 板橋   豊

学 位 論 文 題 名

活 性 酸 素 ス ト レ ス に よ る 生 体 障 害 と そ の 防 御

   生命体は多かれ少なかれ種々のストレスに暴露されているが、生体防 御機構によってそのホメオスタシスが保たれている。しかし、恒常性を 喪失するような過剰ストレスの負荷にあっては種々の健康障害を誘発す る。とりわけ、酸化的ストレスは各種活性酸素を多量に生成し、生体成 分に対して無秩序に酸化的攻撃を起すとされ、 しかも食生活をはじめと する日常の生活環境の中にも酸化的ストレスによる障害発生の要因が随 所に存在する。したがって、酸化ストレスと健康障害に関してこれまで に多くの研究が主として医学的見地からなされてきたが、酸化ストレス に対する生体防御系の応答に関する知見は必ずしも充分でi まなく不明の 点が多く残されたままである。また、これらに関する研究に用いられて きた実験動物は、ラットやマウスなどのゲッ歯類が主であった。申請者 j ま、これらの点に着目し、魚類の酸素代謝や異物代謝などの生理機能が 高等動物のそれらと多くの点で共通していること、また魚類はその生体 膜構成分に高度不飽和脂肪酸を多量に含有していることなどから、活性 酸素種による生体障害の解析に魚類が格好な材料であると考え、水産資 源としても重要な魚種であるニジマスを実験動物とし、養魚システムで も利用されているオゾンを高濃度に暴露する実験系を用いて、酸化スト レス負荷における生体障害の発現とその防御機構を解明しようとした。

   本 研究で得られた成果について審査員一同が評価した点は、概略、

以下の通りである。@オゾン暴露による障害発生の第一義的標的は赤血

球であり、これまでに考えられていたエラ(鰓)機能に対する障害は二次

的現象であることを初めて明らかにした。@その機構について、赤血球

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(細胞内)で発生した02 −の消去酵素であるスーパーオキシドジスムター ゼ(SOD )は損傷を受けないが、H202 を分解するカタラーゼ(Catalase )や その他の有機ヒドロペルオキシドを分解消去するグルタチオンペルオキ シダーゼ( GSH −Px )の活性が著しく低下することを見出した。すなわち、

発 生 し た 02 − か ら SOD に よ り H202 が 生 成 す る が 、 H202 の そ の 後 の 処理が不充分 なために H202 が一方的に蓄 積する、所謂、活性酸素消去 酵素系の不均 衡化が起こること を発見した。◎生成 蓄積した H202 から より反応性の高い種々の活性酸素種が派生することを推定し丶その過程が ヘモグロビン型鉄によって触媒されることを見出した:@これら活性酸 素種により、赤血球裏打ち骨格タンバク質のアツキリン、スペクトリン が分解消失すること、血球膜構成脂質の過酸化・タンパク質の酸化が促 進されることから、血球の膨化変形、崩壊がもたらされることを認め、

それらによってエラ二次鰓弁が閉塞して呼吸機能を喪失し窒息死に至る と結論している。本研究において最も注目すぺき発見である活性酸素消 去酵素系の不 均衡化について 1 ま、◎分離赤血球および血漿を用いたin vitro 実 験に よ って 再度 確 認し、あわせ て H202 な どかち派生する活 性 酸素種の生成が遊離、型鉄ではなくヘモグロビン型のそれによって促進さ れることをも確認した。@上記の赤血球における酸化的障害の発現には 血漿成分が促進的に関与することを指摘し、とくに血漿脂質の過酸化が 誘因となって連鎖的に進行することを明らかにした。◎これらオゾンに よって惹起される種々の障害現象の進行;ま、ビタミンC やE に・よって効果 的に抑制・軽減できることを認めた。このことは、抗酸化性物質の摂取

(投与)によって予め生体の抗酸化能を高めておけば、高濃度オゾン暴露 に対してもそれによる障害を充分に防御し得ることを意味するものであ    る。

   本研究の成果は、これまで不明確のままであった酸化的ストレスによ

る健康障害発生の機構の一端を解明したものであるとともに、実用面で

も例えば、水産増‐養殖分野での高濃度オゾン利用技術の開発に対して

多大なる示唆を与え得るものであるとして高く評価される。よって、審

査員一同は、本論文が博士(水産学)の学位を授与されるに値するものと

判定した。

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