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博 士( 水産 学) 山下 民治 学 位 論 文 題 名

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博 士( 水産 学) 山下 民治

学 位 論 文 題 名

魚肉ねり製品の物性に及ぼす副原料の影響に関する研究      学位論文内容の要旨

  魚 肉 ね り 製 品 は , そ の 地 方 で 捕 れ る 魚 を 利 用 し て 多 種 多 様 の 特 徴 を 持 っ た 製 品 が 生 産 さ れ て い た 。 し か し , 原 料 魚 の 漁 獲 が 減 少 し , ま た ス ケ ト ウ ダ ラ 冷 凍 す り 身 の 普 及 に っ れ て , 魚 肉 ね り 製 品 は 画 一 化 さ れ た も の に な っ て き た 。 そ こ で , 魚 肉 ね り 製 品 に 種 々 の 待 徴 を 付 与 す る た め に は 新 し い 原 料 魚 を 開 拓 す る と 共 に , で ん 粉 や 植 物 タ ン バ ク 質 , 鶏 卵 等 の 副 原 料 の 性 質 を 有 効 に 利 用 す る こ と が 必 要 と な る 。 そ こ で 本 研 究 は , 多 種 多 様 の 物 性 を 持 っ た 魚 肉 ね り 製 品 を 製 造 す る 際 に 必 要 な 基 礎 的 な 知 見 を 得 る た め に , こ れ ら 副 原 料 の 魚 肉 ね り 製 品 の 物 性 に 及 ほ す 影 響 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 に 行 な っ た 。

  第1章 で は 魚 肉 ね り 製 品 の 物 性 に 及 ほ す で ん 粉 の 種 類 の 特 徴 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し て , 主 に , 肉 糊 の 加 熱 温 度 や 加 熱 時 間 , 坐 り , 戻 り 等 の 加 熱 条 件 の 面 か ら 比 較 検 討 し た 。 第2章 で は で ん 粉 添 加 魚 肉 ね り 製 品 の 欠 点 の ー つ で あ る 低 温 貯 蔵 中 の 品 質 劣 化 ( 物 性 変 化 ) を 防 止 す る こ と を 目 的 と し て , で ん 粉 の 種 類 や 添 加 量I水 分 量 ,pH, 添 加 物 等 の 影 響 に つ い て 検 討 し た 。 第3章 で は 大 豆 と 小 麦 タ ン バ ク 質 の 魚 肉 ね り 製     I  一

品 の 物 性 に 及 ぼ す そ れ そ れ の タ ン バ ク 質 の 特 徴 を 明 ら か に し た 。 第4章 で は 鶏 卵 お よ び そ の 成 分 の 魚 肉 ね り 製 品 の 物 性 に 及 ほ す 影 響 を 明 ら か に し た 。 ま た , 魚 肉 ね り 製 品 に は 用 い ら れ て い な い カ ゼ イ ン 添 加 の 影 響 に つ い て も 検 討 し た 。 得 ら れ た 結 果 は 以 下 の 通 り で あ る 。

(1) 肉 糊 に 添 加 さ れ た で ん 紛 は 加 熱 , 糊 化 す る こ と に よ っ て , 加 熱 ゲ ル の 弾 カ の 補 強 効 果 を 発 揮 す る こ と が 出 来 る 。 肉 糊 に 添 加 し た で ん 粉 の 糊 化 温 度 は , 多 量 の 水 と 其 に 加 熱 さ せ た と き の 糊 化 温 度 よ り も8〜15℃ 高 く な る こ と を 明 ら か に し た 。 で ん 粉 を 添 加 し た 肉 糊 の 加 熱 ゲ ル の ゼ リ ー 強 度 を 最 大 に す る 温 度 (Tm) は 、 も ち 米 , 夕 ビ オ カ で ん 紛 は75〜80

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℃,もちとうもろこしでん紛は80℃,ハイアミロースとうもろこしでん 粉は85℃,じやがぃも,小麦,さっまいも,とうもろこし,葛でん粉は 90℃で,でん粉の種類で異なっていた。また,Tmで加熱したときの肉 糊加熱ゲルのゼリ一強度の補強効果はTmの高いでん粉の方が大きい傾 向にあった。

(2)てん粉を添加した肉糊の加熱ゲルのゼリー強度は,添加したでん 扮の膨潤度とは関係なかったか,アミログラムのブレークダウン値が大 きく,でん粉粒の壊れやすいもの程小さいこ.とが認められた。(1)と

(2)の結果から,てん紛による肉糊グルの補強効果は,加熱糊化した でん粉粒子による充填効果であると考えられた。

(3)ニ種類のでん粉を混合して添加した肉糊の加熱ゲルのゼリー強度 や圧出水分率は,でん紛の混合比率とそれらのでん粉を単独で添加した ときの加熱ゲルのゼリ―強度や圧出水分率から推定できることが分かっ た。

(4)肉糊の坐りによるゼリー強度の増大とでん粉添加によるグルの補 強効果を生じる加熱温度域は異なり,これらニつの効果は加算されず,

加熱ゲルのゼリー強度の補強に対して見掛け上競合的であり,でん紛の 添加によって肉糊の坐りの効果が隠されることが分かった。一方,でん 粉は肉糊の60℃加熱によるゼリ―強度の低下(戻り)に対しては影響を 及ぼさないことが分かった。

(5)でん粉を添加した肉糊加熱ゲルを低温で貯蔵すると、貯蔵中に物 性が変化する。変化の度合いは,じやがぃもや葛,さっまいものような 地下でん粉を添加した方が,とうもろこしや小麦,米のような地上てん 紛を添加した場合よりも大きいことか分かった。でん粉の添加量を約2

%以下,pHを中性付近にすると低温貯蔵中の物性変化が小さかった。

また,pHによる影響はでん粉か糊化する前(肉糊)よりも糊化後(加 熱ゲル)の方が大きいことを明らかにした。でん粉を添加した肉糊はで ん粉の糊化温度以上で60分間以上加熱してゲルを製造すれぱ,貯蔵中の グルの物性変化を小さくできた。

  (6)でん粉添加ゲルの低温貯蔵中の物性変化は,とうもろこし油の添 加で抑制されたが,卵白やコンドロイチン硫酸ナトリウムには効果カjな

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か った 。ま た, グルタミン酸ナトリウムでは促進された。糊料の添加で は , そ の 粘 度 が10mp.s以 上 あ れ ば , 抑 制 効 果 が 認 め ら れ た 。

(7)肉 糊加熱 ゲル のゼ リ―強 度は 肉糊 のす り身畳 を一定にした場合,

植 物タ ンバ ク質 の添加により署しく補強された。一方,水分量を一定に した場合は,植物タンバク質の添加に伴う加水と魚肉タンノ`ク質量を少 な <す る必 要性 から,加熱ゲルのゲル強度と保水性は低下した。待に,

添 加量 が15%に なると,植物タンバク買自体のゲル形成能が大きな影響 を与えるようになった。

(8)水 分量一 定で 大豆 タンバ ク質 を添 加し た肉糊 は70℃以上,小麦タ ン バク 質を 添加 した肉糊は80℃以上の温度で加熱すると弾カのあるゲル が 形成 され た。 また,90℃で長時間加熱した場合のグルの弾力低下は、

小 麦タ ンバ ク質 を添加したゲルの方が大豆タンバク質よりも大きかった

(9)植物タンバク質を添加した肉糊加熱ゲルのゼリー 強度の補強効果 は , 大 豆 タ ン バ ク 質 で は3%NaCl溶 液 に 不 溶 性の 成 分 が 関 与 し て お り ,小 麦タ ンバ ク質では不溶性であることおよびそれ自体のグルのゼリ ー 強度 と高 い正 の相関関係にあることが認められた。これらの結果から

, 植物 タン バク 質による肉糊ゲルの補強効果も吸水膨潤した不溶性成分 による充填効果と考えられた。

(10)植物タンノヾク質の添加は,肉糊中のミオシン重鎖の多量体形成を 阻 害す るこ とが 分かった。その原因は,植物夕ンバク質自体が肉糊の坐 り に 関 与 し て いるTG aseの基 質とな るこ とか ら, 競合的 に肉 糊中 のミ オ シ ン 重 鎖 の 架 橋 重 合 を 抑 制 し た 結 果 と 推 察 さ れ た 。

(11) 鶏卵 成分 の肉瑚 への 添加 量は ,全卵 と卵 白は5%添加において,

弾カの補強効果が現れたか,,でん紛や植物タンバク質による補強効果に 比 較す れぱ 小さ いことが分かった。一方,卵黄には加熱グルの弾カの補 強 効果 は認 めら れず,添加量か多くなる程弾カは低下した。また,弾カ の 補強 効果 は, 卵白成分の中ではオボァルブミンによることか明らかと なった。

(12) 全卵 や卵 白,卵黄は肉瑚の坐りによるゼリー強度の増加に対して は やや 抑制 的に 作用することか分かった。また,卵白と卵黄は,いずれ も 肉糊 の60℃加 熱による戻りを抑制する効果のあることが認められた。

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卵白成分で戻りを抑制する効果のみられたのは,オボアルブミン,コン アルブミン,オボムコイドであり,卵黄成分では水溶性画分であった。

(13)カゼインは加熱ゲルのゼリ一強度の低下を起こし,坐りを抑制し た。また,肉糊中のミオシン重鎖の3量体以上の形成を著しく阻害する ことか分かった。カゼインは水溶性のために充填効果がなく,肉糊中の ミオシン相互作用の希釈とTG aseによるミオシン重鎖の架橋重合の競 合的な阻害によって加熱グル形成と坐り反応を低下させていることが示 唆された。

  本研究ては,でん紛,植物タンバク質,鶏卵,カゼインの魚肉ねり製 品の物性に及ぽす影響を明らかにし,これらの副原料の合理的使用に対 してその理論的根拠を明らかにした。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

魚肉ねり製品の物性に及ぼす副原料の影響に関する研究

  魚肉 ね り 製品 は その 地 方 で漁 獲 され る 魚 を利 用 し て多種多 様の特徴 を持った 製 品 が生 産 さ れて い た。 し か しス ケ トウ ダ ラ 冷凍 す り身が 全国的に 普及する に つ れ て、 魚 肉 ねり 製 品は 画 一 化さ れ たも の に なっ て きた。 そこで魚 肉ねり製 品 に 種 々の 特 徴 を付 与 する た め には 新 しい 原 料 魚を 開 拓する と共に、 でん粉や 植 物 夕 ンパ ク 質 、鶏 卵 等の 副 原 料の 特 性を 有 効 に利 用 するこ とが必要 である。 本 研 究 はこ れ ら 副原 料 の魚 肉 ね り製 品 の物 性 に 及ぼ す 影響を 詳細に検 討し、副 原 料 の 合 理 的 利 用 を 図 る た め の 理 論 的 根 拠 を 明 ら か に し て い る 。   本 研 究 に よ っ て 得 ら れ た 結 果 は 以 下 の よ う に 要 約 さ れ る 。 1. 魚 肉 肉糊 に 添加 さ れ たでん 粉は加熱 糊化する ことによっ て、加熱 ゲルの弾 カ   の補 強 効 果を 発 揮す る こ とが で きる 。 で ん粉 の 糊 化温度は 、でん粉 の種類で   異な っ て いた 。 もち 米 、 タピ オ カで ん 粉 は7580'C、 もちとうも ろこしで ん   粉は80'C/ヽ イア ミ ロー スとうも ろこしで ん粉は85'C、 じゃがいも 、とうも   ろこ し 、 小麦 で ん粉 等 は90'Cで、 こ の温 度 が 高い 方 が魚肉ゲル の弾力補 強効   果が 大きかっ た。

2. で ん 粉を 添 加し た 魚 肉ゲ少 のゼリー 強度は添 加したでん 粉の膨潤 度とは関 係   がな か っ たが 、 アミ ロ グ ラム の ブレ ー ク ダウ ン 値 が大きく 、でん粉 粒の壊れ   易い も の では 補 強効 果 が 小さ か った 。12の 結 果か ら、でん 粉による 魚肉ゲ   ルの 補強効果 は加熱糊 化したで ん粉粒子 による充填 効果であ ると考え られた。

3, 魚 肉 肉糊 の 坐り に よ るゼリ ー強度の 増大と、 でん粉添加 によるゲ ルの補強 効   果を 生 じ る加 熱 温度 域 は 異な り 、こ れ ら こつ の 効 果は加算 されず、 見掛け上   競合 的 で あり 、 肉糊 の 坐 り効 果 はで ん 粉 添加 で 隠 されるこ とが分か った。つ   まり 坐 り 効果 が 期待 で き ない 場 合に で ん 粉の 添 加 は著効を 示すこと を明らか   にし た。

4. で ん 粉を 添 加し た ね り製品 の欠点で ある貯蔵 中の品質劣 化が早い 点は、じ ゃ   がい も等の地 下でん粉 を添加し た方が、 小麦やとう もろこし でん粉よ りも顕著   であ った。

5. で ん 粉添 加 ねり 製 品 の低温 貯蔵中の 品質低下 はとうもろ こし油や 粘度が高 い

夫 雄彦       仁 伸 徳久       上 野 関猪 今 授授 授       教 教教 助 査査 査 主副 副

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  糊料(メチルセル口ース、アルギン酸塩、グアーガム等)の添加で抑制され   た。

6.魚肉ねり製品のゼリー強度は肉糊のすり身量を一定にした場合は、植物タン   バク質(大豆及び小麦夕ンノヾク質)粉末の添加により著しく補強された。一   方、水分量を一定にした場合は、植物夕ンバク質の添加に伴う加水と魚肉夕   ンバク質量を少なくする必要性から、加熱ゲルのゼリー強度と保水性は低下   した。特に添加量が15%になると、植物夕ンバク質自体のゲル形成能が大き   な影響を与えるようになった。

7.植物夕ンバク質を添加した魚肉加熱ゲルの補強効果は、大豆夕ンノヾク質では   3%食塩に不溶性の成分が関与しており、小麦夕ンバク質では不溶性であるこ   と及びそれ自体のゲルのゼリー強度と高い正の相関関係にあることが認めら   れた。これらの結果から植物夕ンノヾク質による魚肉ゲルの補強効果も吸水膨   潤 し た 不 溶 性 成 分 に よ る 充 填 効 果 で あ る と 考 え ら れ た 。 8.植物夕ンバク質の添加は魚肉肉糊中のミオシン重鎖の架橋形成を阻害した。

  その原因は植物タンノヾク質が肉糊中の坐りに関与している内因性トランスグ   ルタミナーゼの基質となるために競合的にミオシン重鎖の架橋形成を阻害す   るためであることを推測した。

9.鶏卵成分の魚肉肉糊への添加は全卵と卵白は弾カの補強効果を示したが、で   ん粉や植物タンバク質による効果に比較すれば小さいことがわかった。卵白   と卵黄は肉糊の60'C加熱による戻りを抑制する効果のあることが認められた。

10.カゼインの添加は加熱ゲJレのゼリー強度の低下を起こし、坐りを抑制した。

  カゼインは水溶性のために充填効果が無く、また肉糊中のミオシン相互作用   の稀釈と内因性トランスグルタミナーゼによるミオシン重鎖の架橋形成の競   合的阻害によって魚肉加熱ゲ丿レの形成能を低下させることが示唆された。

  以上のように、本研究はねり製品に経験的に用いられている代表的副原料   (でん粉、植物夕ンバク質、鶏卵等)を合理的に使用するための理論的根拠を 明確にした点、およびカゼインのように副原料として不適当な理由を解明した 点は極めて高く評価される。したがって、審査員一同は本論文が博士(水産学)

の学位を受けるに十分な内容を有するものと認定した。

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