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マイクロ衛星打ち上げ用空中発射システムに関する調査研究報告書

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Academic year: 2021

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システム技術開発調査研究

18-R-3

マイクロ衛星打ち上げ用

空中発射システムに関する調査研究

報 告 書

平成 19 年 3 月

財団法人 機械システム振興協会

委託先 財団法人 無人宇宙実験システム研究開発機構

この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。

URL: http://keirin.jp/

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わが国経済の安定成長への推進にあたり、機械情報産業をめぐる経済的、社会的諸条件は急 速な変化を見せており、社会生活における環境、防災、都市、住宅、福祉、教育等、直面する 問題の解決を図るためには、技術開発力の強化に加えて、ますます多様化、高度化する社会的 ニーズに適応する機械情報システムの研究開発が必要であります。 このような社会情勢に対応し、各方面の要請に応えるため、財団法人機械システム振興協会 では、日本自転車振興会から機械工業振興資金の交付を受けて、機械システムの調査研究等に 関する補助事業、新機械システム普及促進補助事業を実施しております。 特に、システム開発に関する事業を効果的に推進するためには、国内外における先端技術、 あるいはシステム統合化技術に関する調査研究を先行して実施する必要がありますので、当協 会に総合システム調査開発委員会(委員長 政策研究院 リサーチフェロー 藤正 巖氏)を設置 し、同委員会のご指導のもとにシステム技術開発に関する調査研究事業を実施しております。 この「マイクロ衛星打ち上げ用空中発射システムに関する調査研究報告書」は、上記事業の 一環として、当協会が財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構に委託して実施した調査研 究の成果であります。 今後、機械情報産業に関する諸施策が展開されていくうえで、本調査研究の成果が一つの礎 石として役立てば幸いであります。 平成19年3月 財団法人機械システム振興協会

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はじめに 本報告書は、財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構が、平成18年度事業として、 財団法人機械システム振興協会から受託した「マイクロ衛星打ち上げ用空中発射システムに関 する調査研究」の実施内容をまとめたものである。 我が国の宇宙開発は、1955 年の「ペンシルロケット」の打ち上げから今年で 51 年、1970 年の「おおすみ」の成功から今年で36 年が経過した。この間、国の積極的な支援、米国から の技術導入等もあり短期間で最先端技術を獲得するまでに至り、世界の商業市場においては技 術的には欧米に比肩する存在となったものの、価格競争力では大きく出遅れている。現在、天 気予報、カーナビゲーション、衛星放送等と宇宙は我々の生活にとって切り離せないものにな ってきている。しかし、使用されている衛星は何れも米国製であり、国家支援の実効的な成果 が現れてこない。我が国の宇宙開発の主流は、先端技術開発を目指したもので、これら技術は そのまま商用に利用できるものは少なく、技術の熟成、コスト低減等の産業技術開発のための 更なる施策が求められる。また、宇宙開発は膨大な資金投資を要することから、大企業の独占 的な産業であるが、宇宙開発の低コスト化を推進し宇宙の敷居を下げることにより、中小企業、 ベンチャ企業の参入を促し、我が国宇宙産業のプレーヤ拡大を図る必要がある。これらの施策 が、宇宙利用の促進による市場の拡大及び新規市場の創成につながり、我が国の宇宙産業界の 活性化に寄与するものと期待される。 世界的に宇宙の高コスト化体質が指摘され、1980 年代からミッション当たりのコスト低減 を狙い、複数ミッションを大型衛星に搭載し大型ロケットで打ち上げる大型化の傾向を辿って きた。このため、1 機当たりのコスト増を招き、これまで以上に信頼性、品質管理が厳しくな り更なるコスト増を招くという悪循環を繰り返してきた。また一時期、ロケット及び衛星の不 具合が続き、大型衛星による複数ミッションの全損を招く事態が発生した。これらを契機とし て、プロジェクトコストの低減及びリスク分散の観点から、個別のミッションに対応した小型 衛星が見直されつつある。昨今、宇宙開発技術及び民生部品の宇宙転用技術の進展に伴い、衛 星の小型低コスト化が可能となったことから、今後の衛星市場は大型、小型の 2 極化に進もの といわれている。米国、欧州、中国、韓国では、200kg 以下の小型衛星に着目し、災害監視、 安全保障、ミッション実証、ベンチャ企業によるアイデア実証、技術者育成、教育等への利用 促進が図れるとして、国家機関及び民間機関において積極的なマイクロ衛星技術の開発が進め られている。経済産業省、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構においても、マ イクロ衛星の利用産業は初期投資が少ないことから事業リスクが小さく、新規企業の宇宙への 参入、新規宇宙利用産業の創生が期待できるとして、平成 17 年度よりマイクロ衛星に係わる 利用ニーズ及び技術調査を開始した。この結果、小型衛星の普及には、機動的な低コスト打ち 上げ機会の提供が求められている。 世界の打ち上げ市場を見ると、1 トン以下の衛星を単独で打ち上げるロケットは少なく、小 型衛星打ち上げは他の衛星との相乗り(マイクロ衛星にあっては、ピギーバック)打ち上げに 頼らざるを得ず、打上機会及び打上時期が極端に制限されている。特にピギーバック打ち上げ においては、打上時期及び打ち上げ軌道の自由度が全くなく、衛星も学術目的に限定されてお

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り、商用目的の衛星には門戸が開放されていないのが実情である。諸外国においては、次世代 の低コストで相応性の高い打ち上げ手段の実現を目指した開発、検討が進められており、小型 衛星対応として低コスト化を追求した空中発射システムに係わる多くの研究が進められてい る。また、空中発射システムは、将来の再利用システムに係わる技術開発のための1ステップ としても位置付けられている。 我が国の衛星打ち上げは、大型衛星の打ち上げ能力を持つH-IIA ロケットしかなく、開発中 のGX ロケット及び計画中の新固体ロケットも打ち上げ能力としては 1 トン以上を有するもの であり、諸外国で検討されている小型衛星の普及に必要な小型ロケットの検討は成されていな い。我が国の衛星打ち上げ用のロケットの開発、製造及び打ち上げは、独立行政法人宇宙航空 研究開発機構(JAXA)がロケットの先端技術開発を目的として進めてきたもので、打ち上げ 商業市場への投入を目的としてリカリングコストの低減を目指して開発されたものではない。 2006 年 6 月の総合科学技術会議において、JAXA での開発終了後に民間移転し宇宙活動の活 性化を図ることとなったものの、打ち上げは民間からJAXA に委託し種子島宇宙センタから打 ち上げるものである。 日本の衛星打ち上げ射場としては、JAXA の種子島宇宙センタ及び内之浦宇宙空間観測所の 2 ヶ所があるが、日本の特異な状況である漁業対策のために打上期間は漁期を避けた年間 190 日間に限定されていることから、商業打ち上げにとっては大きなマイナスになる。 本調査研究は、小型衛星の普及啓発に有効な打上げ手段として、即応性が高く低コストな空 中発射システムの実現性について調査を行うものである。 ロケットシステムとしては、打ち上げ整備が簡単であることから即応性に有効であり、開発、 製造、運用において低コスト化に有効な固体ロケットシステムをベースとする。 平成19年3月 財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構

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目 次 序 はじめに 1 調査研究の目的... 1 2 調査研究の実施体制... 2 3 調査研究の内容... 6 第 1 章 低コスト打上げシステムの事例調査・分析 ... 7 1.1 各種打上げシステム調査... 7 1.1.1 地上発射... 7 1.1.2 空中発射... 14 1.1.3 海上発射... 17 1.1.4 その他... 20 1.2 打上システムのトレードオフ... 22 1.3 諸外国における空中発射システムの位置付け ... 25 1.4 諸外国の空中発射システム検討動向... 26 1.4.1 米国... 26 1.4.2 ロシア・ウクライナ・カザフスタン... 52 1.4.3 イスラエル... 67 1.4.4 フランス... 71 1.4.5 スペイン... 73 1.4.6 中国... 75 1.4.7 総括... 76 1.5 空中発射システムに係わる法規制等... 79 1.5.1 宇宙法の調査及び対応... 79 1.5.2 国内法の調査及び対応... 95 1.5.3 打上げ安全... 112 第2章 空中発射システムの構想検討... 115 2.1 ミッションシナリオの検討... 115 2.2 主要構成システムの検討... 123 第3章 ロケットシステム構想検討... 134 3.1 ロケットシステム構想... 134 3.2 ロケットシステム低コスト化の課題整理... 153

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第4章 支援システム構想検討... 166 4.1 空港... 166 4.1.1 大樹町多目的航空公園... 166 4.1.2 下地島空港... 172 4.2 航空機... 177 4.2.1 民間機及び軍用機... 177 4.2.2 欧州における類似技術の動向調査... 183 4.3 母機搭載方式... 187 4.4 組立整備、発射管制、追跡管制に関する運用構想 ... 196 4.5 発射管制、追跡管制システムの構想... 206 第5章 ミッション解析... 227 5.1 全備50トン級ロケット: 空中発射、陸上発射、洋上発射の比較検討 ... 227 5.2 全備9トン級ロケット : 空中発射打ち上げ方式の比較検討 ... 238 5.3 ミッション解析結果まとめ... 264 4 調査研究の成果(まとめ)... 266 5 調査研究の今後の課題及び展開... 272 参考文献... 274 [資料編]

参考資料-1Financial Responsibility Requirements as Determined by the Maximum Probable Loss (MPL) Process... A1

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1 調査研究の目的 宇宙開発技術及び民生部品の宇宙転用技術の進展に伴い、衛星の小型低コスト化が可能とな ったことから、今後の衛星市場は大型、小型の 2 極化に進ものと言われ、小型衛星による新規 市場の創出が期待されている。欧米では、200kg 以下のマイクロ衛星に着目し、災害監視、安 全保障、ミッション実証、ベンチャ企業によるアイデア実証、技術者育成、教育等への利用促 進が図れるとして、積極的なマイクロ衛星技術の開発が進められている。経済産業省、独立行 政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構においても、マイクロ衛星の利用産業は初期投資 が少ないことから事業リスクが小さく、新規企業の宇宙への参入、新規宇宙利用産業の創生が 期待できるとして、平成 17 年度よりマイクロ衛星の利用ニーズ調査を開始した。 しかし、これら低コストマイクロ衛星の利用促進を図るためには、低コストでかつ機動的な 打ち上げ機会の確保が必須であることから、低コスト小型打ち上げ手段の実現が望まれている。 低コスト実現の最も有効な手段として、諸外国では主として航空機を使用した空中発射システ ムの検討が進められている。空中発射システムは、打ち上げ射場が不要なこと、衛星の軌道に 適した場所からのロケット発射が可能なこと等から、機動的な低コスト実現手段として、本格 的な検討が進められるようになった。 本調査研究では、マイクロ衛星の打ち上げに供する小型で廉価な打ち上げシステムの調査研 究として、空中発射システムに係わる法規制、技術課題等について検討を行う。

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2 調査研究の実施体制 本調査研究の実施体制は、財団法人機械システム振興協会内に「総合システム調査開発委員 会」を、財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構内に「次世代衛星輸送インフラ検討委員 会」を設置し、本調査研究の計画、実施状況、実施結果について意見・アドバイスをいただき ながら進めた。技術検討、評価は財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構で実施したが、 検討に必要な情報収集は外注作業として企業に請け負わせて実施した。また、基本となる固体 ロケットシステムに係わる解析、打ち上げに必要な支援システムの検討は、機構の技術要求に 基づき専門企業に再委託し実施した。 委託 再委託 外注 外注 各役割・構成は以下のとおりである。 ・財団法人機械システム振興協会、総合システム調査開発委員会は、全体の進行や作業状況の チェックを行い、成果報告書を確認する。 ・財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構は、外注先からの技術情報、再委託先からの解 析、検討結果を元に、技術動向分析、システム検討、全体のとりまとめを行う。 ・次世代衛星輸送インフラ検討委員会は、大学、省庁、独立行政法人宇宙航空研究開発機構等 財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構 (USEF) 総合システム調査開発委員会 次世代衛星輸送インフラ検討委員会 財団法人機械システム振興協会 株式会社アイ・エイチ・アイ・エアロスペース :ロケットシステム解析、支援システム検討、ミッション解析 シー・エス・ピー・ジャパン株式会社 :低コスト打上げ及び空中発射システムに係わる情報収集 三井物産エアロスペース株式会社 :国内空港、航空機及びその運行に関連する情報収集

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の研究者等で構成し、調査研究計画、システム要求、構想検討の妥当性審査を実施する。 ・再委託先の株式会社アイ・エイチ・アイ・エアロスペースはロケットシステム解析、支援シ ステム検討、ミッション解析を実施する。 ・外注先として、シー・エス・ピー・ジャパン株式会社は低コスト打上げ及び空中発射システ ムに係わる情報収集を、三井物産エアロスペース株式会社は国内空港、航空機及びその運行 に関連する情報収集を実施する。

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総合システム調査開発委員会の委員名簿を以下に示す。 総合システム調査開発委員会委員名簿 (順不同・敬称略) 委員長 政策研究院 藤 正 巖 リサーチフェロー 委 員 埼玉大学 太 田 公 廣 地域共同研究センター 教授 委 員 独立行政法人産業技術総合研究所 金 丸 正 剛 エレクトロニクス研究部門 副研究部門長 委 員 独立行政法人産業技術総合研究所 志 村 洋 文 産学官連携部門 コーディネータ 委 員 東北大学 中 島 一 郎 未来科学技術共同研究センター センター長 委 員 東京工業大学大学院 廣 田 薫 総合理工学研究科 教授 委 員 東京大学大学院 藤 岡 健 彦 工学系研究科 助教授 委 員 東京大学大学院 大 和 裕 幸 新領域創成科学研究科 教授

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財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構内に置かれた「次世代衛星輸送インフラ検討委員 会」の委員名簿を以下に示す。 氏 名 所 属 ・ 役 職 委 員 雛田 元紀 宇宙科学研究所名誉教授 委 員 青木 節子 学校法人慶應義塾大学総合政策学部教授 委 員 稲谷 芳文 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部宇宙航行システム研究系教授 委 員 小川 博之 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部宇宙航行システム研究系助教授 委 員 景山 正美 防衛省 技術研究本部 航空装備研究所 システム研究部長 委 員 徳留 真一郎 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部助手 オブザーバ 宇賀山 在 経済産業省製造産業局宇宙産業室 宇宙開発係長 オブザーバ 松田 聖路 株式会社アイ・エイチ・アイ・エアロスペース オブザーバ 金岡 充晃 シー・エス・ピー・ジャパン株式会社 オブザーバ 松本 加奈 三井物産エアロスペース株式会社 オブザーバ 知久 多喜眞 財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構 オブザーバ 金井 宏 財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構 事務局 冨士 隆義 財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構 事務局 佐々木 謙治 財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構

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3 調査研究の内容 調査研究の内容は、以下の 5 項目について行った。項目毎に本節 1 章~5 章にまとめている。 (1)低コスト打上げシステムの事例調査・分析 空中発射システムの他、陸上、海上からの発射システムについての事例調査も実施し、技術、 コスト面からのトレードオフを実施し、空中発射システムのコスト低減等に係わる有効性を確 認した。 (2)空中発射システムの構想検討 空中発射システムのシステム構想検討を実施し、打ち上げサービス提供のための必要な航空 機、ロケットシステム、航空機へのロケット搭載、発射管制、追跡管制等の構成要素の洗い出 しを行った。 (3)ロケットシステム構想検討 開発、リカリングの低コスト化を実現するために、既存技術の利用、民生部品等の適用、低 コスト化のための技術開発等の他、ロケットの整備、打ち上げ、発射管制及び追跡管制作業の コスト低減を可能とするロケットシステムの構想検討を行った。 (4)支援システム構想検討 発射管制システム、追跡管制システム等に係わる構想検討を行った。検討は JAXA の既存シ ステムの活用の他、海外を含めた商業利用が可能なシステム、新規開発についても検討を行っ た。 (5)ミッション解析 国内外の利用可能な航空機を利用した空中発射システムのミッション解析を実施し、陸上発 射に対する有効性を検討した。

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第 1 章 低コスト打上げシステムの事例調査・分析 1.1 各種打上げシステム調査 打ち上げロケットには軍事等の目的に運用されているものと、商業打ち上げのために運用さ れているものがある。ここでは、H-IIA ロケットの他、既に商業打ち上げ展開している代表的 な打ち上げシステムについて調査を行った。 1.1.1 地上発射 (1) H-IIA 我が国の基幹ロケットとして位置付けられ、宇宙開発事業団(当時)が開発し、2007 年度よ り民間移転する大型衛星の打ち上げロケットである。ピギーバック打ち上げを標準的に整備す ることで、計画中である。 H-IIA の諸元を、表 1.1.1-1に示す。 表 1.1.1-1 H-IIA 諸元 全長:52.5m 直径:4m 打ち上げ時重量:285 トン GTO:4.15 トン SSO:3.6~4.4 トン 2 段ステージ φ4m×9.2m ドライ重量:3.3 トン 推薬:16.7 トン、LOX+LH2 推力:137kN(Vacuum) 1 段ステージ φ4m×37.2m ドライ重量:14 トン 推薬:100 トン、LOX+LH2 推力:1098kN(Vacuum) 固体ブースタ φ2.5m×15.2m 重量:75 トン/ SRB-A 推薬:65 トン/SRB-A 推力:2,250kN(SL)/SRB-A 射場 種子島宇宙センター ピギーバック 50kg のピギーバック打ち上げを 標準装備することとして開発中

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(2) Ariane 5 欧州の Ariane Space 社が運用するロケットで、南アメリカのギアナ宇宙センターから打ち 上げられている。Ariane Space 社は、欧州 12 カ国の 53 社が出資して 1980 年 3 月 26 日に設立 された。企業の国籍別の出資比率は、フランス 57%、ドイツ 19%、イタリア 7%、ベルギー4%な どとなっており、本社は出資比率が最大のフランス、パリにおかれている。 Ariane 5 の諸元を、表 1.1.1-2 に示す。 表 1.1.1-2 Ariane 5 諸元 全長:46~52m 直径:5.4m 打ち上げ時重量:746 トン GTO:6 トン SSO:9.5 トン 2 段ステージ φ5.4m×4.7m ドライ重量:4,540kg 推薬:14.9 トン、LOX+LH2 推力:64.8kN 1 段ステージ φ5.4m×23.8m ドライ重量:14,700kg 推薬:170 トン、LOX+LH2 推力:960kN(SL)、 1,350kN(Vacuum) 固体ブースタ φ3.05m×31.6m 推薬:240 トン/SRB 推力:5,000kN(SL) 射場 ギアナ宇宙センター ピギーバック (ASAP:Ariane Structure for Auxiliary Payload) ピギーバック打ち上げを標準的に装 備し、唯一ユーザーズマニュアルを 整備しているロケットである。 120kg 衛星×8 機 300kg 衛星×4 機 (or 300kg×2 機+120kg 衛星 6 機)

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(3) Soyuz Soyuz ロケットは旧ソビエト連邦が開発した弾道ミサイルをベースとして開発されたロケッ トで、ベースとなる弾道ミサイル(R-7、R-7a)は、世界初の人工衛星「スプートニク」、世 界初の有人飛行を行ったボストークを打ち上げている。これまでに 1,700 機以上の打ち上げ実 績を有している。 商用打ち上げとして、1996 年に仏露の合弁会社として STARSEM(パリ)が設立され、カザフ スタンのバイコヌール基地から打ち上げが行われている。現在、STARSEM 社は欧州の Ariane Space 社の傘下にあり、2008 年からは Ariane 5 と同様にギアナ宇宙センターから打ち上げら れる。 Soyuz の諸元を、表 1.1.1-3 に示す。 表 1.1.1-3 Soyuz 諸元 全長:46.1m 直径:2.68m 打ち上げ時重量:305 トン GTO:4.9~5.5 トン SSO:9.5 トン 4 段ステージ φ3.3m×1.5m ドライ重量:6,535kg 推薬:5,350kg、UDMH+N2O4 推力:78kN 3 段ステージ φ2.66m×6.7m ドライ重量:23,755kg 推薬:21.4 トン、LOX+Kerosene 推力:298kN 2 段ステージ φ2.15~2.95m×28m ドライ重量:101,925kg 推薬:95,400kg、LOX+Kerosene 推力:977kN 1 段ステージ φ2.68m×19.8m 構造重量:42,984kg×4 基 推薬:39,200kg×4 基、LOX×Kerosene 推力:813kN×4 基 射場 現在:カザフスタンバイコヌール基地 2008 年以降 ギアナ宇宙センター ピギーバック ピギーバック打ち上げ枠を用意し、大学 等の超小型衛星打ち上げに協力してい る。

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(4) ROCKOT ROCKOT は、旧ソビエト連邦の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の SS-19 を転用した衛星打上げロケ ットで、SS-19 を含めて 140 機以上の打ち上げ実績を有している。1995 年に独露合弁会社とし て商業打ち上げ会社 EUROCKOT(独:ブレーメン)を設立した。 ROCKOT の諸元を、表 1.1.1-4 に示す。 表 1.1.1-4 ROCKOT 諸元 全長:29.15m 直径:2.5m 打ち上げ時重量:107 トン LEO:1,950kg SSO:1000kg 3 段ステージ φ2.5×1.3m ドライ重量:1,600kg 推薬:4,965kg、UDMH+N2O4 推力:20kN 2 段ステージ φ2.5m×6.1m ドライ重量:1,485kg 推薬:10,710kg、UDMH+N2O4 推力:240kN(Vacuum) 1 段ステージ φ2.5m×17.2m ドライ重量:5,695kg 推薬:71,455kg、UDMH+N2O4 推力:1,870kN(SL)、2,070kN(Vacuum) 射場 ロシア プレセツク基地 ピギーバック ピギーバック打ち上げとして標準化 はされていないが、大学等の超小型衛 星の打ち上げに協力している。

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(5) Dnepr Dnepr は、旧ソビエト連邦の ICBM の SS-18 を転用した衛星打ち上げロケットで、SS18 を含 めて約 160 機の打ち上げ実績を有している。ロシアの宇宙局とウクライナの国家宇宙局によっ てコスモトラス社が 1997 年に設立され、商業打ち上げを開始した。 Dnepr の諸元を、表 1.1.1-5 に示す。 表 1.1.1-5 Dnepr 諸元 全長:34.3m 直径:3m 打ち上げ時重量:211 トン LEO:4,500kg SSO:2,300kg 3 段ステージ φ3m ドライ重量:2,456kg 推薬:1,910kg、UDMH+N2O4 推力:18.6kN 2 段ステージ φ3m ドライ重量:4,374kg 推薬:36,740kg、UDMH+N2O4 推力:755kN(Vacuum) 1 段ステージ φ3m ドライ重量:11,620kg 推薬:147,900kg、UDMH+N2O4 推力:4,520kN(Vacuum) 射場 カザフスタン バイコヌール基地 ピギーバック ピギーバック打ち上げとして標準化は されていないが、大学等の超小型衛星 の打ち上げに協力している。

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(6) Minotaur I Minotaur I は米国のオービタルサイエンス社が運用する 4 段式の固体ロケットで、ICBM の Miniteman 2 をベースに空中発射の Pegasus の 2 段と 3 段を組み合わせた小型衛星打ち上げロ ケットである。2000 年 1 月から運用を開始し、昨年 12 月までに 6 機の打ち上げ実績(6/6 成 功)を有する。 Minotaur I の諸元を表 1.1.1-6 に示す。 表 1.1.1-6 Minotaur I 諸元 全長:19.2m 直径:1.7m 打ち上げ時重量:36.2 トン 全段固体ロケット LEO:640kg SSO:335kg 4 段ステージ φ1.3 m イナート重量:126kg 推薬重量:770kg 最大推力:35kN 3 段ステージ φ1.3 m イナート重量:1,369kg 推薬重量:15,014kg 最大推力:118kN 2 段ステージ φ1.3m 推力:268kN(Vacuum) 1 段ステージ φ1.7m 推力:935kN

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(7) Falcon 1 Falcon 1 は SpaceX が商業打ち上げを目的として開発した 2 段式のロケットで、1 段ステー ジがパラシュートにより回収される一部再利用ロケットである。2006 年 3 月に初飛行を行った が、1 段ステージの燃料漏れによる火災が発生し打ち上げは失敗に終わっている。Falcon 1 は 商業打ち上げのためにコスト低減を目的として開発されたロケットで、打上費は約 6.7M$とい われている。 Falcon 1 の諸元を 1.1.1-7 に示す。 表 1.1.1-7 Falcon 1 諸元 全長:21.3m 直径:1.7m 打ち上げ時重量:38.5 トン LEO:670kg SSO:430kg 2 段ステージ φ1.7m 推薬:RP-1/LOX 推力:31kN(Vacuum) 1 段ステージ φ1.7m 再利用 (パラシュート回収) 推薬:RP-1/LOX 推力:343kN 射場 Omelek、バンデンバー グ、ケープカナベラル

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1.1.2 空中発射 空中発射システムは、航空機に搭載したロケットを高々度で航空機から分離し、ロケットの 打ち上げを行うもので、大規模な射場が不要なこと、航空機により高々度で打ち上げることに よりロケットを小型にできること等から、低コスト化が図れるとして開発されたものである。 現在、商業打ち上げを実施している空中発射ロケットとして、米国のオービタルサイエンス 社が運用している Pegasus がある。 「Pegasus XL」 Pegasus は NASA の B-52 航空機を使用した 1990 年の初飛行から約 40 機の打ち上げ実績を有 しており、現在、Pegasus-XL は母機として L1011 に搭載し、滑走路、ロケット支援施設を有す る下記 7 施設(図 1.1.2-1)を利用して、米国のオービタルサイエンス社が運用している。 ・ケネディ宇宙センタ(フロリダ:Eastern Range) ・バンデンバーグ空軍基地(カリフォルニア:Western range) ・ドライデンフライトリサーチセンタ(カリフォルニア:Western range) ・ワーロップ飛行施設(バージニア) ・Kwajalein レンジ(太平洋) ・カナリア諸島(大西洋) ・アルカンタラ(ブラジル) 図 1.1.2-1 Pegasus の運用施設 Pegasus-XL を搭載した母機(L1011)は、空港を離陸し予定した打ち上げ海域において、高 度約 11.9km、速度マッハ 0.8 でロケットを分離する。分離されたロケットは、母機との安全確

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保のために 5 秒間自由落下した後に点火される。ロケットは点火後即座にズームアップマヌー バを開始する。

Pegasus-XL の飛行シーケンスを図 1.1.2-2 に、諸元を表 1.1.2-1 に示す。

図 1.1.2-2 Pegasus 飛行シーケンス (高度 400nmi 円軌道打ち上げ)

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表 1.1.2-1 Pegasus XL 諸元 全長:16.9m 直径:φ1.27m 翼幅:6.7m 重量:23,130kg LEO:450kg 3 段 ステージ φ0.97 m×1.34m イナート重量:126kg 推薬重量:770kg 最大推力:36kN(Vacuum) 2 段 ステージ φ1.28 m×10.27m イナート重量:1,369kg 推薬重量:15,014kg 最大推力:726kN(Vacuum) 1 段 ステージ φ1.28 m×1.34m 翼幅:6.7m イナート重量:416kg 推薬重量:3,925kg 最大推力:196kN(Vacuum)

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1.1.3 海上発射 海上発射は、浮上式のプラットフォームからロケットを打ち上げるもので、衛星の打上げ軌 道に有利な打ち上げ場所で打ち上げることができ、また安全な海上で打ち上げることから、地 上インフラを最小限にすることができる。 現在、商用打ち上げを展開している海上発射ロケットとして、米国の Sea Launch 社が運用す る Sea Launch が挙げられる。 「Sea Launch」 Sea Launch 社は、米国、ロシア、ウクライナ、ノルウェーの出資で 1995 年に設立された。 Sea Launch は、ロケットとして ZENIT-3SL(表 1.1.3-1)を使用し、衛星整備のための Payload Processing Facility と、組み立て/司令船(ACS)及び打ち上げのためのプラットフォームを 有している。(図 1.1.3-1) 衛星は米国カルフォルニアのロングビーチにあるペーロードプロセッシングファシリティ (図 1.1.3-2)に搬入され、衛星のための所要の整備が行われた後、フェアリングに収納され、 ロケット/衛星の組み立てが行われ、組み立て/司令船(図 1.1.3-3)に搬入される。 ACS は港に係留中はロケットの組み立て向上として機能する他、医療施設、ダイニング、レ クリエーション/エンターテインメントの施設を有し、宿泊施設(240 名:乗員を含む)及び打 ち上げ管制センタとして機能する。ACS は長さ約 200m、幅約 32m、34,000 トン、航続距離約 32,400km の船舶であり、貨物船をベースにスコットランドで製造された。 プラットフォーム(図 1.1.3-4)は、長さ約 131m、幅約 66m、重量 30,000 トンの、自走式の 海洋石油掘削プラットフォームである。ここにはロケットの格納庫、ロケット燃料庫、打ち上 げ施設、68 名の宿泊施設と医療施設、レクリエーション施設等を装備している。 図 1.1.3-1 Sea Launch の構成

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図 1.1.3-2 母港施設

図 1.1.3-3 組み立て/司令船(ACS)

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表 1.1.3-1 ZENIT-3SL 諸元 全長:59.6m 直径:3.9m 打ち上げ時重量:462.2 トン LEO:6,100kg GTO:5,250kg GEO:1,840kg 3 段ステージ φ3.7×4.9m 推薬:RP-1/LOX 推力:84.9kN 2 段ステージ φ3.9m×10.4m 推薬: kg、RP-1/LOX 推力:912kN 1 段ステージ φ23.9m×32.9m 推薬:kg、RP-1/LOX 推力:8,180kN 射点 大西洋

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1.1.4 その他 衛星打ち上げロケットシステムとして、船舶から引き出し海上に浮遊させたサイロから 打ち出すもの、潜水艦から打ち出すものなどがある。過去に商業打ち上げを行ったものと して、ロシアの SLBM がある。 「SLBM」 ロシア海軍では、原子力潜水艦(DELTA-Ⅲ級:図 1.1.4-1)から海中発射型弾道ミサイ ル(RSM-50)をベースに開発し、回収機能を備えた小型衛星打ち上げ用ロケット Volna を 使用し地球周回低軌道への商用衛星打ちあげを 1998 年から実施し、1998 年にベルリン工 科大学の通信衛星 TubSat-N(約 10kg)を打ち上げた。以降、ソーラーセール、再突入実験、 科学実験衛星等の打ち上げが行われている。これまでの全ての打ち上げは、バレンツ海で 行われている。 VOLNA の諸元を表 1.1.4-1 に示す。 図 1.1.4-1 原子力潜水艦からのロケット発射 図 1.1.4-2 回収機構

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表 1.1.4-1 VOLNA 諸元 全長:14.2m 直径:1.8m 打ち上げ時重量:35.4 トン ペイロード容積:1.3 m3 回収システム重量:720kg 以上 実験機器重量 400kg 以上 打ち上げ能力: 高度 400km 600km 800km 100kg 80kg 60kg ス テ ー ジ 3 段式 燃料 φ3.9m×10.4m 推薬:UDMH+N2O4 推力:912kN 射点 バレンツ海

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1.2 打上システムのトレードオフ 小型衛星の商業打上げを実施するための有効な手段の検討として、地上発射システム、海上 発射システム及び空中発射システムについて、射場関連施設/設備、打上能力、安全性、打上 環境、打上時期の自在性を評価し、空中発射システムの妥当性を確認した。トレードオフでは、 主に技術的な観点にとどめた。 検討結果を、表 1.2-1 に示す。 (1) インフラの整備 ロケットの打上げに当たっては、衛星整備、ロケット整備、ロケット打上げ射点等の施設及 び設備を有する射場が必要となる。我が国の衛星打上に供する射場は、JAXA が所有する種子島 宇宙センタと内之浦宇宙区間観測所の 2 ヶ所がある。我が国の射場は諸外国と比較し狭いとは 言われるものの、必要な施設の建設、安全のための保安距離等の確保等から、約 860 万平方メ ートルの種子島宇宙センタ、約 70 万平方メートルの内之浦宇宙空間観測所と広大な土地収容 を必要とする。また、その維持のための経費も発生する。 (2) 打上げ能力 空中発射システムは、陸上発射システム及び海上発射システムと比較し、高度 10km 以上の 高空から打ち上げることとなる。そのため空中発射システムは、ロケット点火時に航空機の初 速及び高度が与えられていることから、重力損失及び空気抵抗損失が小さくなる。また、高空 点火することから、地上発射に比較しノズル開口比の効率的な設定が可能となり、推力損失の 低減が図れる。 ロケットの飛行経路は、飛行安全の観点から飛行経路下に人口稠密地のない経路が設定され る。そのために、種子島宇宙センタ及び内之浦宇宙空間観測所からの極軌道への打上げは、東 方に打ち上げた後に軌道制御を行い極軌道への打上経路に修正することになり、制御損失が発 生する。しかし、海上の任意の位置に移動して打上げ可能な海上発射システム及び空中発射シ ステムでは、ロケットの飛行経路に適合する最適な打上位置を設定することができる。 (3) 安全 打ち上げ時の安全は、地上安全及び飛行安全と区分されて安全管理が行われている。地上安 全については、ロケット及び衛星の整備等の準備作業期間に適用され、飛行安全はロケットの 打上げ作業期間から適用される。このうち飛行安全は、ロケット打上げからロケット飛行中の 落下物及び不具合発生による推力中断、破壊に対して周辺地域及び飛行経路直下の安全確保で ある。海上発射及び空中発射では、公海上の安全な区域までロケットを移動させて点火、飛行 させることから、陸上発射に比較し安全確保が容易となる。

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(4) 打上げ環境 衛星の打上げにおいて、最も重要なチェック項目として打上環境の緩和が求められる。固体 ロケットは、液体ロケットと比較し大推力が得られる反面、衛星に与える振動環境(音響)が 厳しくなる。ロケットが衛星に与える振動環境のピークはロケットのリフトオフ時に発生し、 ロケットの燃焼によるプルームの反射が起因している。空中発射においては、反射による影響 が無いことから振動環境の改善が期待される。 (5) 打上げ時期の自在性 日本の射場からの打上げは、ロケットからの落下物(ロケットのステージ、フェアリング) が有数の漁場に落下することから、年間の打上げ時期及び期間が原則として制約され、また必 要な漁業保証金が支払われている。海上発射及び空中発射においては、打上場所の任意設定が 可能であることから、打上げ時期の制限を受けず、また保証金等の問題も発生しない自在性の 高い打ち上げ方式である。

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24 表 1.2-1 打上げシステムのトレードオフ 項 目 陸上発射システム 海上発射システム 空中発射システム 射場関連施設/設備 ・ロケット保管、整備のための施設 ・衛星の保管、整備のための施設 ・ロンチパッドの整備 ・事故発生時の安全確保 Ex.固体推進薬 10 トンの保安距離 - 整備段階:半径約 85m - 打上げ時:半径約 810m ・管制施設の整備 ・ロケット保管、整備のための施設 ・衛星の保管、整備のための施設 ・海上浮遊ドック等の専有 ・事故発生時の安全確保 Ex.固体推進薬 10 トンの保安距離 - 整備段階:半径約 85m - 打上げ時:公海上 ・管制施設の整備 ・ロケット保管、整備のための施設 ・衛星の保管、整備のための施設 ・航空機及び空港の借用 ・事故発生時の安全確保 Ex.固体推進薬 10 トンの保安距離 - 整備段階:半径約 85m - 打上げ時:公海上の高空 ・管制施設の整備 打上げ能力 種子島若しくは内之浦からの打上げ 速度損失 ・重力損失:大 ・空気抵抗損失:大 ・制御損失:大 ・大気圧による推力損失:大 公海上から打上げ 速度損失 ・重力損失:大 ・空気抵抗損失:大 ・制御損失:中 ・大気圧による推力損失:大 公海上の高々度から打上げ 速度損失 ・重力損失:小 ・空気抵抗損失:小 ・制御損失:小 ・大気圧による推力損失:小 安全 陸上でロケット点火が行われることか ら、広範囲な安全距離が必要 公海上でロケット点火が行われること から、近隣への影響はない 公海上の高々度でロケット点火が行わ れることから、近隣への影響はない 打上げ環境 リフトオフ時の音響振動が厳しい リフトオフ時の音響振動が厳しい 空中点火であることから音響振動緩和 打上時期の自在性 年間 190 日に限定 制限なし 制限なし 評 価 × ・広大な射場が必要 ・打ち上げ軌道に応じた制御が必要 ・年間の打上げ時期及び期間が制限 △ ・射場に替え専用ドックが必要 ・陸上発射に比較し制御損失が少 ・打上げの自在性が高い ○ ・射場に替え滑走路及び航空機が必要 ・陸上及び海上発射に比較し速度損失 が極めて少 ・打上げの自在性が高く大幅な打上げ 能力向上

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1.3 諸外国における空中発射システムの位置付け 近年、商業打上げ市場はロケット過剰供給状態にあり、その中では旧ソビエト連邦の ICBM 転用ロケットである、ROCKOT(SS-19)、Dnepr(SS-18)、Soyuz(8K74 or R-7a)等のコ スト競争力が高く、特に戦略兵器制限交渉の対象となる破棄ミサイル SS-18、SS-19 の転用 ロケットは、性能、信頼性、コスト競争力において他を大きく引き離している。諸外国で は、価格競争力のあるロケットを目指したコンセプトの検討が積極的に進められるように なり、空中発射システムは射場等のインフラ削減ができる等のコストメリットに加え、即 応性が高くまた再利用ロケットに繋がる技術として注目されている。イスラエル、中国、 韓国等では、空中発射システムはコスト低減に加え、地理的なハンディキャップを克服す る有効な手段として位置付けられている。使用する航空機としては、民間及び軍用輸送機 の DC-10、B-747、L1011、A340、C-17、C-5、C130、An-124、An-225 等があり、超音速機と しては戦闘機の F-4、F-14、F-15、F-16、MiG-31 の適用が検討されている。既存の航空機 を使用した空中発射システムは、航空機の搭載能力の関係から小型衛星に限定されるが、 諸外国では、軍事、災害監視、安全保障、ミッション実証、アイデア実証、技術者育成、 教育等への活用として、200kg 以下の衛星を高く評価していることから、即応性の高い空中 発射システムの有効性を評価している。 (1) 米国 1980 年代からの衛星の大型化が進んだことからロケットも大型化し、小型衛星の打ち上 げ手段が制約されていることから、打上げ価格の低減に向けた多くのコンセプトが提案さ れている。その中で、射場等のインフラ整備及びその維持を必要とせず、また再利用シス テムの構築に必要な技術の一つであること等の理由から、空中発射システムに係わる多く の提案が行われている。既存の航空機を適用したシステムは、航空機の搭載能力から打上 能力の制約を受けることから、将来構想として専用の無人航空機の開発、完全再利用シス テム等の検討も同時に行われている。 (2) 旧ソビエト連邦 旧ソビエト連邦のロシア、ウクライナ、カザフスタンでは、冷戦時代の ICBM の他、An-124、 An-225 等の軍用輸送機、ミグ戦闘機等の有効活用として、空中発射による衛星打上計画を 発表している。これらは自身の計画として検討を進めると同時に、宇宙開発の後進国、宇 宙予算規模の制約が大きい国である、豪州、インドネシア、ブラジル、イタリア、オラン ダ、スウェーデン等との共同開発による実施も検討している。 (3) イスラエル 宇宙及び軍事技術開発においては高い技術を有するイスラエルでは、予算上の制約及び 自国の地理的な制約(衛星打上に有効な東方、南方、北方が他国に隣接し、最も効率の悪 い西方にしか打上げられない。)から、低コストで機動的な空中発射システムを活用する ことを計画している。

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1.4 諸外国の空中発射システム検討動向 1.4.1 米国 米国における空中発射システムは Pegasus ロケットが 1989 年に実用化され、発射母機で ある NB-52 と L-1011 が合わせて 38 回打上げ(うち 6 回失敗)の実績を上げている。2006 年現在、衛星打上げ手段として実用化している空中打上げシステムは唯一 Pegasus となっ ている。 図 1.4-1 Pegasus(Orbital Science) 米国の空中打上げシステムの開発は、1974 年に遡る。当時は衛星打上げロケットとして ではなく、大陸間弾道ミサイル(ICBM)である Minuteman-3 を C-5A ギャラクシー輸送機か らミサイル架台ごと落下させ発射する試験を行っている。 図 1.4-2 Minuteman-3 空中発射実験(USAF) これら技術をベースとし、衛星打上げロケットとして Pegasus 開発が NASA を中心に 1980 年後半から始まり、1989 年に運用が開始されている。 この後も NASA や USAF 研究所内で、空中発射システムの研究は継続的に行われている。 それら研究には専用母機・既存機流用・既存機改造思想、固体・液体ベース等、様々な打 上げシステムが研究されているが、近年公表されている空中打上げシステムは、RASCAL に 代表されるような飛躍し過ぎたコンセプトを変更し、既存技術を流用し、その技術を段階 的に取り入れて、着実な空中打上げシステムを目指す方向性が提案されつつある。これは、 研究費を捻出している USAF や DARPA がコスト・性能を要求した研究テーマを与えているた めとみられ、後述する Spaceworks Engineering は米国内に存在し、信頼性の確立が見込ま れている技術で Pegasus 性能を上回る無人空中打上げシステムを提案している。

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図 1.4-3 RASCAL(Space Launch)

Pegasus 以降の開発は、L-1011 の老朽化から B-747、DC-10 などを母機とするポスト Pegasus が Orbital Science と Boeing 社間で検討されたが、製造までに至っていない。ま た Pegasus よりも小型の打上げ手段として、1999 年に JPL と USAF-AFRL が F-15 空中発射ロ ケットの基礎研究を共同発表(SSC99-VII-1)している。これは、USAF が JPL との間で技術 的詳細を議論したもので、F-15 イーグル戦闘機を母機とする吊下げ式の空中打上げシステ ムを発表した。しかし USAF と JPL の共同研究はここで中止。2000 年からは USAF-AFRL 主導 に変更され、Orbital Science と Boeing で F-15 イーグルを発射母機とする空中打上げシス テムの研究は続けられている。

図 1.4-4 Pegasus 後継案(Boeing) 図 1.4-5 JPL-USAF の共同研究案(SSC99-VII-1) 2000 年初期から空中打上げシステムは、Pegasus のように技術開発の手段としてではな く、低費用ロケットとして注目されるようになった。それは、ICBM 派生型ロケットがロシ アで登場し、ドニエプル、ユーロコットらが小型衛星打上げ市場で圧倒的優位なポジショ ンを獲得、この低費用ロケットの登場で宇宙途上国・大学・企業らがこぞって衛星開発へ 参入、ロケットも市場競争が始まった。 この背景の中、米国は 2000 年初頭から、米国 ICBM をロシア同様にロケット化すべく、 USAF がジョージア工科大学へ研究を依頼、同大学は 2002 年に ICBM の有効活用研究の成果 を発表、地上・空中打上システムを発表(AIAA 2002-5854)している。そして価格的・性 能的に優位性が示せる空中打上げシステムへ注目、さらに研究を進め、2003 年に同大学は 「CHIMERA」コンセプトを発表(SSC03-VII-2)している。この論文によれば、母機は超音 速機の SR-71、ペガサスでも使用された NB-52、戦闘攻撃機 F-15E とし、ロケットはピース キーパーとミニットマン ICBM のロケットモータ及び、ATK サイオコール製モータを組み合

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わせた空中打上システムを発表した。この研究成果からロッキードマーチン社が C-5 ギャ ラクシー輸送機を母機とする ICBM ベースの空中発射システムを提案している。 図 1.4-6ジョージア工科大学「CHIMERA」コンセプト(SSC03-VII-2) これらと研究と平行しながら米国は、ロシアの ICBM ロケットに対抗し、Operational Responsive Space(ORC)という「ニーズに応じた即応型宇宙活動ビジョン」を掲げ、2003 年 DAPRA-FALCON 計画を立ち上げている。この計画は、高度 200km、傾斜角 28.5 度、重量 450kg の衛星を価格$5million(約 6 億円)以内で打上げられるロケットを製造せよという要求で、

Space Exploration Technologies Corporation(SPACEX)、Lockheed Martin、Airlaunch LLC 、 Microcosm の 4 社が開発フェーズまで勝ち残っている。SPACEX、Lockheed Martin、Microcosm は空中打上げシステムではなく、使い捨て式の地上発射型ロケットである。SPACEX は液体 酸素・ケロシンの低費用エンジン開発が注目され、Lockheed Martin は固体と液体ロケット の欠点を克服した概念のハイブリッドロケット、Microcosm は複合材軽量タンクを用いたク ラスター型液体ロケットを目標に開発されている。そして空中打上げシステムとしては、 Airlaunch LLC 社が液体酸素・プロパン燃料系でロケット(QuickReach)を開発中である。 2005 年・2006 年にモックアップ投下実験に成功している。また、エンジン開発も順調に進 んであり、2008 年か 2009 年には初打上げが予定されている。 図 1.4-7 Airlaunch LLC(QuickReach)

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米国における空中打上げシステムは、費用と性能を特に意識したものが近年研究される ようになり、2005 年には Northrop Grumman/Panaero が F-14、Space Launch が F-4 ファン トム、Boeing・Orbital Science が F-15 を母機とする、小型衛星ロケット開発を提案して いる。別途ロッキードマーチンの C-5 ベースが計画提案されている背景も合わせれば、小 型・中型とサイズは異なるが全ての米国大手宇宙メーカーは空中打上げシステム計画を発 表したことになる。この大手間競争の中、Boeing らは 2006 年 4 月に当初発表のコンセプト を変更。F-15GSE(Global Strike Eagle)の空中打上げシステムを吊下式から背負式へと 変更している。背負い式へ変更したことから打上げ性能が向上したとみられ、同様に F-15 を母機とした空中打ち上げシステム開発を進めるイスラエルへの対抗策とも見られる。

図 1.4-8 F-14 エアランチ(tour2space.com) 図 1.4-9 F-4(Space Launch)

図 1.4-10 F-15(Boeing)

そして 2006 年、Orbital Science と Northrop Grumman と Lockheed martin が、USAF か ら HLV(Hybrid launch Vehicle)の技術検討コントラクトを受注した報道が流れている。こ の HLV の要求は、1 段目再使用、2 段目使捨ロケット。900kg~27t の間で打上げ能力を要求 し、48 時間以内に 2 回の打上げができるという事項が挙げられている。この HLV 要求から 分析すると、空中打上げシステムは、当初小型衛星打上げシステムだけだったものが、さ らに技術を伸ばして大型のものまで開発するビジョンを示した事になる。この背景には、 ロシア・ウクライナが母機を An-124 や An-225 とし、ロケットは Zenit や他の大型ロケッ トエンジンを使用した大型の空中打上げシステムを本格検討しているため、Airlaunch LLC の Quickreach が初打上げする頃にロシアは大型空中打上げシステムを保有している可能性 が高いと見られる。

また、Orbital Science と Northrop Grumman と Lockheed martin の他には Spaceworks Engineering 社が HLV 要求 と同様の ARES( Affordable REsponsive Spacelift Hybrid

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Operational System)を 2006 年 11 月に発表している。

図 1.4-11 Lockheed Martin の HLV 案 図 1.4-12 Orbital Science の HLV 案

図 1.4-13 Northrop Grumman の HLV 図 1.4-14 Spaceworks Engineering の HLV

空中発射ロケット検討企業一覧 ¾ Orbital Science/Boeing(F-15、DC-10、B-747、L-1011、NB-52、専用機:固体、液体ロケット) ¾ Airlaunch LLC/T/SPACE(C-17、B-747:液体ロケット、有人宇宙飛行用も検討中) ¾ Lockheed Martin(C-5,専用機:ハイブリッド・固体ロケット) ¾ Northrop Grumman(F-14 、専用機:液体ロケット) ¾ Space Launch(F-4、専用機:固体ロケット及び液体ロケットベース) ¾ XCOR Aerospace(専用機:固体ロケット、Sab-orbital飛行の際に打上げ)

¾ RocketPlane(リアジェット25型を改造:ハイブリッドロケット、Sab-orbital飛行の際に打上げ)

¾ SPACEWORKS Engineering (C-5を2機使用:大型液体ロケット、無人機ベース、コンセプト提案のみ)

これらの一方で、民間ベースの空中打上げシステムを開発する動向も見られる。その企 業 は XCOR Aerospace ・ T/SPACE ・ RocketPlane&HASTIC ・ Scaled Composites (Sub-Orbital)である。これら企業は DARPA/USAF が研究開発の名目で支援している。米 国は民間の宇宙旅行事業について「国家予算だけに依存しないことを条件」に支援する方 針を示している。

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以下に米国で公表された空中打上げシステムの過去・現在・将来を示す。

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1.4.1.1 Orbital Science/Boeing

Pegasus を有する Orbital Science は、Boeing と共に F-15 を用いた小型衛星打上げロケ ットの開発を USAF から受注している。この F-15 打上げロケットの研究は 1999 年に遡る。 これら研究は 1999 年の「13th Annual AIAA/USU Conference on Small Satellites」にて 発表された。発表者は Aerospace Corp、JPL、Air Force Research Laboratory である。こ の時点では、吊下げ式の空中発射ロケットが発表された。この初期研究は 1999 年に終了、 その後は Air Force Research Laboratory を中心に研究を進めたとされている。そして 2003 年には F-15 MSLV(MICROSATELLITE LAUNCH VEHICLE)として発表され、これらコンセプトは Pegasus ロケット重量 23,000kg で衛星 340kg が軌道投入できる能力に対し、F-15 MSLV は、 ロケット重量 4550kg で衛星 100kg が軌道投入できると論文発表されている。ロケット重量 に対するペイロード比率が Pegasus の 2.6%に対し、F-15MSLV はロケットのみで 18% (AIAA-LA Section/SSTC 2003-9002)である。費用は Pegasus の$20 Million(24 億円)に 対し、F-15MSLV は$5 Million(6 億円)と発表している。 しかし、イスラエルが同様に F-15 イーグルを使用した空中打ち上げシステムを検討して いる情報から 2006 年には大幅に設計案を変更し、[吊下げ式]から[背負い式]へと変更して いる。この結果、F-15MSLV の LEO100kg と比較して背負い式では 270kg と打ち上げ能力が向 上している。そのコンセプト図を示す。 図 1.4-16 2006 年発表の F-15 コンセプト図(Source:AIAA-RS4-2006-2001) F-15 については、F-15C/D 型ではなく、F-15E 型でエンジンを強化した F-15GSE をベース にしている。

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図 1.4-17ロケット搭載の様子(Source:AIAA-RS4-2006-2001) 図 1.4-18機体構造の設計変更(Source:AIAA-RS4-2006-2001) ロケットが背負い式となたため、空力の関係からロケットは可能な限り機体に寄せてあ り、その関係からキャノピー(風防)も変形させている。また機体上部にロケットを搭載 することから、構造強化及びロケット搭載アタッチメントの設計変更が求められる。2006 年の発表では、その設計変更案が発表されている。また、超音速飛行における熱流体解析 も実施したと公表している。

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図 1.4-19 2006 年発表のロケットの仕様(Source:AIAA-RS4-2006-2001) 表 1.4-1 打上げニーズ(Source:AIAA-RS4-2006-2001) ロケットは、ミニットマン弾道ミサイルのロケットモータ及び Pegasus ロケットモータ を組み合わせた既存モータ流用型ロケットである。従来のロケットは、専用ロケットを新 造する計画であったが、既存モータを組合せて F-15 搭載重量の上限を視野に開発費低減を ねらった設計手法と見られる。また、イスラエル・露・ウクライナが戦闘機ベースの空中 打上げシステムを開発中であることから、競合国より強力な打上げシステムを目指し、打 上げ能力は LEO200km へ 270kg となっている。また、将来的には液体ロケット化も述べてい る。液体ロケットの中で比較的安価な“圧力フィード型”のロケットエンジンを採用し、 固体ベースは 270kg としているが、液体ロケットでは 800lbs(360kg)、1200lbs(540kg)、 1800lbs(810kg)と徐々に打上げ性能を上げる開発ビジョンを掲げている。 打上げニーズでは、ナノ衛星(0.5-49kg)、マイクロ衛星(50-449kg)、ミニ衛星(450kg 以上)に技術試験・科学・商用衛星のニーズがあるとしている。

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以下に打上げ時の飛行プロファイルを示す。ロケットは高度 14km、速度 M1.35 で仰角 40.4° で切離している。

図 1.4-20 F-15 フライトシーケンス(Source:AIAA-RS4-2006-2001)

図 1.4-21 ロケット飛行プロファイル(Source:AIAA-RS4-2006-2001)

また Orbital Science では、2006 年に Hybrid Launch Vehicle(HLV)研究として USAF か ら研究を受注している。この HLV の要求は、1 段目が再使用、2 段目が使捨ロケット。打ち 上げ能力は 900kg~27t の間としている。さらに 48 時間以内に 2 回の打上げを要求してい る。この要求事項に基づき、Orbital Science は数の HLV コンセプトを発表している。もし

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このコントラクトが進めば、オービタルは固体ロケットから液体ロケット分野への進出が 起きると考えられる。

図 1.4-22 Orbital Science HLV 案(Source: Orbital Science) 1.4.1.2 Airlaunch LLC

DARPA(防衛高等研究計画局)による低価格・即時型・小型衛星打上げロケット開発計画 で あ る FALCON 計 画 は 、 Airlaunch LLC の 他 に 、 Lockheed Martin 、 Microcosm 、 Space Exploration Technologies Corporation(SPACEX)の 4 社が開発を行っている。そのイメ ージ図を示す。

Lockheed Martin SPACEX Microcosm Airlaunch LLC 図 1.4-23 DARPA-FALCON ロケット開発プログラム

これら 4 社ロケットは、高度 200km、傾斜角 28.5 度、重量 450kg の衛星を価格$5million (約 6 億円)以内で打上げられる要求に基づいて製造されている。しかし SPACEX が開発す る FALCON-1 は、$5mil は達成できず、$6.7mil となっている。FALCON-1 は液体系エンジン で燃料はケロシン/液体酸素である。Lockheed Martin はハイブリッドロケットを計画して いるものの、開発進捗は公表されていない。また Microcosm はロシアの SOYUZ を意識した 設計思想にて複合材タンクを使用した液体ロケットを開発中である。4 社ともにロケットの 仕様が全く異なるため、DARPA が性能・コスト要求を設定して“どの技術が廉価ロケットと

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して達成できるのか?”を実験した計画であると推察される。

ネバタ州リノにある Airlaunch LLC は他のロケットとは違い空中打上げシステムを開発 中である。ロケットは液体エンジンであり、燃料は液体酸素とプロパンを使用している。 プロパンは扱いが容易という利点がある。

Airlauch LLC の開発は、2004 年から Phase 2A($11mil)として 2005 年 9 月までに 4 回 の地上燃焼試験、地上投下実験、切離試験を完了している。2007 年初頭現在、Phase 2B ($17.8mil)進行中であり、燃焼試験、フェアリング試験、落下実験を重ねている。空中 打上用航空機(母機)は C-17 である。特徴はトラックに搭載された「ロケットと架台」を C-17 後部扉から差込む方式のため、C-17 自身は改造の必要がないことである。専用母機を 有さない思想から、ランチ費用ダウンを視野にしていると思われる。Airlaunch 社の打上げ 需要は DoD、NASA、商用(イリジウムやグローバルスター)、大学や研究機関の Mini 衛星 を期待する一方、2006 年 7 月、NASA Ames の宇宙探査計画に小型宇宙機打上機としてパー トナー関係を確立している。NASA Ames 長官は AFRL 出身者である。

このロケットは Quickreach と呼ばれ、全長:66 feet(19.8m) 、直径:7 feet(2.1m) 、 重量:72,000 ポンド(32.4t)としている。開発実験ではロケット 1 機が C-17 に搭載されて いるが、C-17 のカーゴ・コンパートメント幅は 5.48m あり、ロケット直径は 2.1m ある。搭 載重量も C-17 搭載上限が 170,900 ポンド (76,644 kilos)に対しロケットは 72,000 ポンド であることから、寸法的、重量的にも 2 発が搭載可能である。 Phase 2A($11mil)として 2004 年末から 2005 年 9 月までに実施した項目を下図へ示す。 この Phase2A では、C-17 からフルスケールモデルで落下実験を実施している。 図 1.4-24 フェーズ 2A 実施事項(費用 $11 million)(Source: AIAA-RS4-2006-2003)

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Quickreach エンジンは費用を下げるため、ポンプフィードではなく、圧力フィード型エ ンジンで構成され、スラスト制御をする TVC はインジェクション型でアクチュエーターを 使用しないシステムである。バルブ以外は動作するパーツを取り入れていないとしている。 ロケットの特徴と飛行プロファイルを示す。C-17 後部扉からの落下開始高度は 29000 フィ ート(8700m)である。

図 1.4-25 Quickreach の特徴(Source: AIAA-RS4-2006-2003)

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図 1.4-27 フェーズ 2B 実施事項(費用 $17.8 million)(Source: AIAA-RS4-2006-2003)

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1.4.1.3 Airlaunch LLC / Transformational Space Airlaunch LLC のロケット技術を使い、それを大型化させて有人宇宙飛行を提案する Transformational Space(T/space)がある。2005 年 6 月、ノースロップグラマンからスケ ールドコンポジット社が設計・製造した複合材料機体の“PROTEUS”をレンタルして実験し ている。 図 1.4-29 PROTEUS 落下実験(source:T/space) また、2005 年 8 月にはフルスケールのカプセル落下実験を行った。その後の発表では、 Airlaunch LLC のプロパン/液体酸素ベースのロケットをスケールアップする計画を発表し、 発射母機はスケールド社が開発 VeryLargeAircraft (VLA)、もしくは B-747 の脚部を改造 した機体を使用すると発表している。 図 1.4-30 Quickreach の大型化(source:T/space)

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図 1.4-31 VLA(source:T/space) 図 1.4-32 B-747(source:T/space) しかし T/space は、NASA の COTS(Commercial Orbital Transportation Services)の入札 競争に敗れ、その後の進捗はない。一部ではボーイングや Orbital Science が会社の買い 取りを考えているとの情報もあり、2007 年初頭現在ではスポンサー探しをしている。 1.4.1.4 Lockheed Martin

Lockheed Martin は大型ロケット Atlas-V を保有し、ILS(International Launch Services) では Proton も自社製品化している。また DARPA-FALCON 計画では地上打上型ハイブリッド ロケットを開発している。その一方、C-5 ギャラクシー輸送機を用いた空中打上げシステム や 2006 年に Hybrid Launch Vehicle(HLV)の研究を行っている。

C-5 ギャラクシーにおける空中打上げシステムは、ジョージア工科大学が 2003 年に発表 した CHIMERA コンセプトをベースに ICBM ピースキーパーを使用したロケットを打上げる計 画を提案している。ライバルの Boeing や Northrop Grumman らが空中打上ロケット開発を 積極的に行う中で、その流れに対抗する手段として提案している。DARPA-FALCON 計画のハ イブリッドロケットや Atlas-V は、地上打上として最適設計されているため、空中打上を 行うロケットとしては構造強度不足といわれている。もともと構造強度の高い固体ロケッ トであるピースキーパーを使用することにより、低費用打上げ手段としての可能性を見出 そうとしている。 図 1.4-33 ピースキーパーICBM のロケット化と C-5(Source:ジョージア工科大) また、長期的計画として、米空軍から HLV(Hybrid Launch Vehicle)研究予算を 2006 年

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5 月に受けている。研究費用は$2.5 million(3 億円)。HLV 要求は、1 段目再使用、2 段目 使捨ロケット。900kg~27t の間で打上げ能力を要求し、48 時間以内に 2 回の打上げができ るという事項が挙げられている。HLV は Orbital Science、Lockheed Martin、Northrop Grumman、Spaceworks Engineering が研究コントラクトを受けている。

図 1.4-34 HLV 案(Source:Lockheed Martin)

Lockheed Martin では、短期的には C-5&ピースキーパー、長期的には HLV を掲げ、ハイブ リッドロケットを開発しながら Atlas-V よりも小型ロケットを模索している。

1.4.1.5 Northrop Grumman/Panaero

Northrop Grumman の関連会社でフロリダ州にある Panaero では、退役した F-14 戦闘機を 用いた空中打上げシステムの提案をしている。PANAERO は、Grumman 社 F-14 開発技術者と NASA 元職員で構成されている。F-14 の大半は退役しているため、その F-14 の譲渡を国防 総省へ依頼した経緯がある。PANAERO の空港はフロリダ州ケープカナベラル基地のレンタル を想定している。 しかし Orbital Science/Boeing 陣営の空中打上システムよりも高費用であると見込ま れたため、提案止まりとなる可能性が高いと見られている。そのコンセプト 2 案を示す。 図 1.4-35 F-14 コンセプト案1 図 1.4-36 F-14 コンセプト案 2 (source: http://www.tour2space.com/archives/f-14lv/f-14-st.htm)

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短期ビジョンとして F-14 空中打上げシステムを提案する一方、2006 年には USAF の HLV 研 究予算( $1.5 million, 14-month )を受け、この HVL 計画に人的リソースを投じている。 研究結果次第では、さらなる契約延長もあるとしている。Northrop Grumman の HLV 計画は 6,800kg のペーロードを低軌道へ投入する能力を提示している。 2010 年か 2011 年には「4 分の 1 スケール」ででも実験したいとの意向を発表している。その概要図を示す。 図 1.4-37 Northrop Grumman の HLV 案 1.4.1.6 SpaceWorks Engineering, Inc

宇宙エンジニアリング会社である SpaceWorks Engineering は、大手宇宙企業のリタイア 組や宇宙機関職員にて構成されている。NASA や USAF-AFRL、DARPA などからエンジニアリン グ契約を受注しているものと見られる。しかし USAF-AFRL や DARPA から受けている研究内 容は不明である。また NASA からはコントラクトを受けて月・火星探査計画における費用計 算を清水建設と共に実施した経緯がある。近年では、空中打上げシステム・Hybrid Launch Vehicle・フライバックブースタ・スペースプレーンのコンセプト研究が発表されている。 近年発表された空中打上げコンセプトは、C-5 ギャラクシー輸送機を用いた、比較的大型 の空中打上げシステム、ARES(Affordable REsponsive Spacelift Hybrid Operational System)及び、大型フライバックブースタ、Air-breathing Rockets(往還機)などがある。 C-5 ギャラクシーを使用した空中打上げシステム図を示す。これは、空中発射母機を既存 機で大型化した場合、C-5 ギャラクシーを 2 機使用した[ツインギャラクシー]ものが最大積 載重量であるという論理スと、打上げロケットは既存米国ロケットで検討しているものと 見られる。大型既存ロケットで空中打上げシステムに適しているロケットは、構造強度が アトラスと比較して強いデルタロケットと考えられ、一段目エンジンは Rocketdyne の開発 する RS-68 かシャトルエンジンというフライバックに対応した再使用エンジンが考えられ、 2 段目エンジンは Pratt & Whitney の RL-10 エンジンが使用されるものと予測される。RL-10

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は、液体酸素/液体水素もしくは液体酸素/ケロシンという 2 種類の燃料系統を有してお り、第一段目が RS-68 かシャトルエンジンであるならば、2 段目エンジンも液体酸素/液体 水素になると予測される。

図 1.4-38 C-5 ギャラクシーによる空中打上コンセプト(Source:SpaceWorks) 次に ARES(Affordable REsponsive Spacelift Hybrid Operational System)が 2006 年 後半に発表された。ARES は、先の C-5 ギャラクシーコンセプトとは違い、完全無人の打上 げシステムを提案している。その概要を示す。

図 1.4-39 ARES コンセプト(Source:SpaceWorks)

公表された資料によれば、第一段目は高速無人機(フライバックブースタ)として垂直打 上げされ、マッハ数 7、高度 167000ft(50km)まで上昇、上段の使い捨てロケットを切離

表 1.1.3-1  ZENIT-3SL 諸元  全長:59.6m  直径:3.9m  打ち上げ時重量:462.2 トン  LEO:6,100kg  GTO:5,250kg  GEO:1,840kg  3 段ステージ  φ3.7×4.9m  推薬:RP-1/LOX 推力:84.9kN  2 段ステージ  φ3.9m×10.4m  推薬: kg、RP-1/LOX 推力:912kN  1 段ステージ  φ23.9m×32.9m  推薬:kg、RP-1/LOX  推力:8,180kN  射点  大西洋
図 1.4-4 Pegasus 後継案(Boeing)  図 1.4-5 JPL-USAF の共同研究案(SSC99-VII-1)
図 1.4-8 F-14 エアランチ(tour2space.com)    図 1.4-9 F-4(Space Launch)
図 1.4-13 Northrop Grumman の HLV        図 1.4-14 Spaceworks Engineering の HLV
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