第 1 章 低コスト打上げシステムの事例調査・分析
1.5 空中発射システムに係わる法規制等
1.5.1 宇宙法の調査及び対応
【宇宙物体登録条約】
宇宙物体の識別を目的としたもの。打上げ国は登録簿への記載、国連事務総長への情 報提供が義務づけられる。
(5)月その他の天体における国家活動を律する協定
(1979 年 12 月 14 日採択、第 34 会期国際連合総会決議 A/Res/34/68、1984 年 7 月 11 日 発効)
【月協定】
天体の利用、開発には人類の共同遺産の原則が適用されるとし、国家や私人の領有を明 確に否定。また天体での活動における諸原則を再確認している。
批准・署名国はごく少数にとどまっている。
★日本は月協定を除く 4 協定に加盟している。
上記条約には以下のように、ロケットを打ち上げる際の国際的責任についての規定がある。
●条約の当事国は、月その他の天体を含む宇宙空間における自国の活動について、それが 政府機関によって行われるか非政府団体によって行われるかを問わず、国際責任を有し、
自国の活動がこの条約の規定に従って行われることを確保する国際的責任を有する。月そ の他の天体を含む宇宙空間における非政府団体の活動は、条約の関係当事国の許可及び継 続的監督を必要とするものとする。国際機関が、月その他の天体を含む宇宙空間において 活動を行う場合には、当該国際機関及びこれに参加する条約当事国の双方がこの条約を遵 守する責任を有する。 (宇宙条約第 6 条)
●条約の当事国は、月その他の天体を含む宇宙空間に物体を発射し若しくは発射させる場 合又は自国の領域若しくは施設から物体が発射される場合には、その物体又はその構成部 分が地球上、大気空間又は月その他の天体を含む宇宙空間において条約の他の当事国又は その自然人若しくは法人に与える損害について国際責任を有する。 (宇宙条約第 7 条)
●打上げ国は、自国の宇宙物体が地表において引き起こした損害、又は飛行中の航空機に 与えた損害につき無過失責任を負う。 (損害責任条約第 2 条)
★「打上げ国」の定義
「打上げ国」とは次の国をいう。
1)打上げを行う国
2)打上げを行わせる国 (打上げ委託国、打上げ調達国)
3)自国の領域から打上げが行われる国 4)自国の施設から打上げが行われる国
2)項の「打上げを行わせる国」については不明確な部分がある。例えば、民間企業が国のプ ロジェクトとは全く関係なく、外国の打上げ機を使ったり、外国領域から打ち上げた場合
に、その民間企業の国籍国が打上げ国として損害責任を負うのか、民間企業が他国の企業 で衛星製造を行い他国で打ち上げた場合は発注元企業の国が打上げ国となるのか等明確 となっていない。宇宙活動国は自国の立場を明確化する国内法の策定することが期待され ている。
したがって、私企業の活動であっても、国家機関の活動と同一に扱い、国際法違反の行 為があった場合には国家が対外的に責任を負うこととなる。
これに対し、次項に述べるように、日本を除く各国においては、私企業が打上げを行う ための免許制度を規定する国内法が制定されている。
なお、宇宙条約では、弾道ロケット打上げと軌道周回衛星用ロケット打上げを区別して いない。
1.5.1.2 国内宇宙法
前項に示したように宇宙条約では、私企業が行ったものであっても国家が直接に国際責 任をもつと規定する。私企業の行為に国家機関に対するのと同じ責任を負わなければなら ないため、条約の当事国は「許可及び継続的監督」という方法を用いて私企業が国際宇宙 法の基準に合致した活動を行うように仕向ける義務がある。
1980 年代末期以降、各国では私企業の活動が活発となり、国内法制定について考慮され るようになってきた。また、宇宙関係条約で不明瞭な部分を国内法により埋めるという目 的もある。
宇宙活動法の制定は、宇宙産業促進のため、宇宙活動に私人が参加する基準や条件を明 示して参入手続きを明確にすることにより、国内企業が参加しやすくなる。また、外国資 本導入のための手続きが透明化されるという利点がある。
(1)宇宙活動法制定国
宇宙活動法が制定されている国は以下のとおりである。
ノルウェー:ノルウェー領域から宇宙空間への宇宙物体の打上げについての法律、1969 年 スウェーデン:宇宙活動に関する法律、1982 年
米国:陸域リモート・センシング商業化法、1984 年 米国:商業宇宙打上げ法、1984 年
英国:宇宙法、1986 年
南アフリカ:宇宙事業法、1993 年 ロシア:ロシア連邦宇宙活動法、1993 年 ウクライナ:宇宙活動法、1996 年 香港:宇宙条例、1997 年
オーストラリア:宇宙活動法、1998 年
ブラジル:打上免許規則に関するブラジル勅令、2001 年 韓国:宇宙開発振興法、2005 年
ベルギー:打上げならびに宇宙物体の飛行操作及び誘導についての活動法、2005 年
その他、ドイツ、フランス、インドネシア等が法制定に向け活動中。
(2)各国の宇宙活動法の概要
各国の宇宙活動法には主として以下の項目が規定されている。
・宇宙活動の実施についての免許交付(許可)
・第三者に対する損害賠償として、国が「打上げ国」として支払った賠償を企業に求償す る条件や国と企業の賠償責任の配分、第三者損害賠償保険の付保
・宇宙物体の登録
以降に各国の宇宙活動法の例を示す。
①スウェーデンの宇宙活動法
スウェーデンの宇宙活動法を表 1.5.1-1 に示す。
表 1.5.1-1 宇宙活動に関する法律(スウェーデン、1982 年、法律第 963 号)
第 1 条 この法律は宇宙空間における活動(宇宙活動)に適用する。完全に宇宙空間におい て行われる活動に加えて、宇宙空間への物体の打上げ及び宇宙空間に打ち上げられ た物体を操作し又はその他の手段によって影響を及ぼすすべての措置もまた宇宙活 動に含めるものとする。
宇宙空間にある物体からその他の形で単に信号又は情報を受信することは、この 法律に基づく宇宙活動とはみなさない。ゾンデロケットの打上げもまた宇宙活動と はみなさない。
第 2 条 スウェーデン国以外の当事者は、免許なくして、スウェーデンの領域から宇宙活動 を行うことができない。スウェーデンの自然人又は法人は免許なくしてその他の場 所で宇宙活動を行うことができない。
第 3 条 政府は宇宙活動を行う免許を与える。免許は状況に関して適切と考えられる方法で 制限することができる。免許はまた活動の管理に関する又はその他の理由での必要 な条件に従うものとする。政府が決定する機関が免許所持者の宇宙活動の監督を行 う。
第 4 条 免許の条件が無視されている場合又はそのための他の特別な理由がある場合には、
免許を取り消すことができる。
政府は、宇宙活動を行う免許の取消しを決定する。取消しに関する最終決定までに、
免許を一時的に取り消すことができる。
第 5 条 故意又は不注意により、必要な免許なく宇宙活動を行う者は、罰金又は最高 1 年の 禁固刑に処すものとする。これは、免許を得るための前提条件として課された条件 を故意又は不注意によって無視する者に対しても適用する。
国外で前項にいう罪を犯した者は、この国にある場合には、たとえ同刑法第 2 章第 2 条又は第 3 条が適用できないとしても、かつ、同刑法第 2 章 5a の第 1 及び第 2 項 にかかわらず、この法律及びスウェーデン刑法に従って、スウェーデン裁判所にお いて裁判を行うものとする。第 1 項にいう犯罪についての法的手続 は、政府の同意 によってのみ行われるものとする。
第 6 条 スウェーデン国は、国際協定における誓約のためにスウェーデン国以外の者が行っ た宇宙活動の結果生じた損害について責任を有する場合には、これに反する特別な 理由がなければ、当該宇宙活動を行った者が国家に対して、前記の誓約のために支 払われた額を償還するものとする。
②米国の宇宙活動法
米国の宇宙活動法を表 1.5.1-2 に示す。
表 1.5.1-2 米国改正商業宇宙打上げ法
(米国、1984 年公法第 98-575 号制定、1988 年公法第 100-657 号により、及び、1994 年 公法第 103-429 号により改正、現状の最新版は 2004 年改正)
第 70101 条 認定及び目的 第 70102 条 定義
第 70103 条 一般的な権限
第 70104 条 打上げ及び運用の制限 第 70105 条 免許の申請及び要件 第 70106 条 監視活動
第 70107 条 有効期間、及び免許の修正、停止、及び取消し 第 70108 条 打上げ並びに打上げ場の運営の禁止、停止及び終了 第 70109 条 予定された打上げの先買権
第 70110 条 行政的聴聞及び司法上の再審理 第 70111 条 合衆国政府の財産及び業務の取得 第 70112 条 責任保険及び財政上の責任の要件
第 70113 条 賠償責任保険及び財政上の責任の要件を超える請求の支払 第 70114 条 情報公開
第 70115 条 執行及び処罰 第 70116 条 協議
第 70117 条 他の行政機関、法律、及び国際的義務との関係 第 70118 条 使用料
第 70119 条 歳出許可
これらの例として第 70104 条、第 70105 条を表 1.5.1-3、表 1.5.1-4 以下に示す。