• 検索結果がありません。

フ ラ ン ス 新 会 社 法 に お け る 取 締 役 等 の 報 酬 規 制

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "フ ラ ン ス 新 会 社 法 に お け る 取 締 役 等 の 報 酬 規 制"

Copied!
42
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)フランス新会社法における取締役等の報酬規制. はしがき. し. が. き. 金. 沢. 理. フランス新会社法における取締役等の報酬規制. 三三. を強く感じさせられる︒外国法のなかでもとくに︑最近改正されたフランス会社法は︑取締役・監査役等の報酬規制. 細な規定が設けられるに至ったことは︑この問題に関するわが商法の不備を一層目立たせており︑会社法改正の必要. あたり︑それぞれ規制の目的やポイントの置ぎ方を異にするとはいえ︑いずれも取締役・監査役等の報酬に関して詳. が少なからずみられるのが今日のわが国における実情である︒ことに最近の諸外国における相次ぐ新会社法の制定に. 例・学説に委ねられている︒そして︑具体的な運用の結果をみても︑必らずしも法理論上妥当であるといえない実例. わが商法はわずかに二六九条というただ一ヵ条の手続的規定を置いているにすぎないため︑その解決はもっぱら判. 株式会社における取締役の報酬規制については︑理論上・実務上間題とすべき点がぎわめて多いにもかかわらず︑. は. フラソス株式会社法における二種類の指揮および業務執行体制 在来型株式会社における取締役等の報酬 新型株式会社における監査役・理事の報酬 吾 す び. 五 四 三 二 一.

(2) 論. 説︵金沢︶. 三四. について組織的かつ詳細な規定を置いており︑わが国の現行法の解釈や将来の立法にあたって参考とすべき点が少な. くないように思われる︒もっとも︑新法施行後日も浅く︑参考とすべき判例も乏しい今目の段階において︑不充分な ︵一︶ 資料にもとづいてその解説を試みることは誤なきを期しがたいけれども︑この問題に関する文献がいまだ数少いおり. から︑ここに一つを加えることは決して無意味ではないと思うので︑あえて筆をとる次第である︒. フランスの商事会社に関する法制度は︑一九六六年七月二四日の法律︵以下﹁法﹂と略称する︶ならびにそれを改正. する一九六七年一月一二日の法律︑およびそれらを補完する一九六七年三月二三目の命令︵濠︒韓︶︵以下﹁令﹂と略称. する︶によってまったくそのよそおいを改めた︒これらの法律・命令によって設けられた新しい商事会社法の体系. は︑一八六七年七月二四日の会社法以来の伝統ある諸原則の多くを包摂しつつ︑時代の要請に即応して︑なお少なく. ない新設規定を加えている︒本稿でとりあげようとする取締役等の報酬規制に関しても︑新法は︑基本的には従来の. 体制を維持するとともに︑具体的な場合に応じ︑それぞれ個別的に規定を新設したうえ︑これらを相互に関連づけ体. 系的に組立てるという方法を採用した︒このような立法者の努力は︑学説上疑問とされうるいくつかの論点を残して はいるけれども︑一応の成功をおさめているように思われる︒. なお︑本稿では問題点を明確にするために︑その対象をわが国の株式会社における代表取締役・取締役に該当する. 者︑すなわち株式会社︵ω︒濠鼠き︒塁S︒︶の管理︵鷺畏呂︶︑業務執行︵毘ヨ芭鋒蝕8︶および指揮︵爵①&魯︶を担. 当する者の報酬に限定してこれを考察する︒具体的には︑在来型株式会社︵8象叡磐︒昌目︒似け暑︒︒蓼畳琴︶の取. 締役︵且巨り聾糞①ξ︶︑社長︵冥鐘号馨︶および総支配人︵爵8冨ξ魅菰邑︶︑ならびに新型株式会社︵8&叡き︒ξBΦ.

(3) ︵二︶. 似蔓需蓉薯8q︶の監査役︵目ゆ彰耳①号8霧亀号艶宅亀一き8︶および理事︵目①B耳︒量量88冨︶の報酬についての. ︵三︶ べ︑株式合資会社︵ω︒象鼠窪8ヨヨき舞①B茎&︒冨︶の役員︑および株式会社の会計監査役︵8導巨ωω葺︒臣轟8ヨ冥Φω︶ ︵四︶. 取締役の報酬規制に関する日仏会社法の比較については︑昭和四三年五月に︒ハリ大学の甘き鵠似旨弩血教授を迎えて行な. のそれについては他目を期したいと思う︒. ︵一︶. われたスタッフ・セミナーにおいてこの問題を担当された赤堀光子助教授の研究︵山本桂一編・フランスと日本の会社法. 近刊・商事法 務 研 究 会 に 掲 載 ︶ を 参 照 さ れ た い ︒. ︵二︶ 象お998については︑執行委員会︑総裁部︑都督府などの訳があるが︑ここでは&お993の歴史的な背景をはなれて︑. できるだけ現在の会社法上の他の用語と調和することを狙い︑あえて理事会という訳語を使用した︒したがってそのヨΦきぼo. 8Bヨ一器巴おωき図ooヨ宮のについても計算検査役なる訳語があるが︑註︵二︶と同様な理由で会計監査役なる訳語を使. は理事とした︒ ︵三︶. 用した︒. ︵四︶ 取締役等の報酬規制についてのべるにあたっては︑その前提として︑フランス新商事会社法上の会社の指揮および業務執. 行体制についてふれる必要があるが︑これについては別稿を予定しているので︵山本桂一編.フランスと日本の会社法に掲. 三五. 載予定︶︑以下に在来型株式会社と新型株式会社の指揮および業務執行体制についての比較対照表を掲げて︑これに代えた いと思う︒. ニ フランス株式会社法における二種類の指揮および業務執行体制 フランス新会社法における取締役等の報酬規測.

(4) (1)業務執行体制 type classique (在来型) conseil. (取締役会・取締役). 3〜12名〈L89〉. くL. 1341>. 左. 論. 〈L。88,7911,1341〉. 左 〈L.134>. 同. ①. ①刑法上の重罪,窃盗,詐. surveillance. 同左〈L129>. 同. 格. 定款,創立総会または株主総 会〈L88,7911,901> 法人・自然人を問わない。. de. (監査役会・監査役). 同. 任. 資. 合6年<L901>. くL911> 5。欠格事由. type nouveau (新 型) conseil. 定款による場合 3年 同 左 〃 創立総会・株主総会による場. 選. 4.資格. a(iministration. 説︵金沢︶. 数期. L乞. 人任. 3.選任. d. 左. 欺,背任,資金なしの小切 手の振出などの一定の犯罪 にっいて有罪判決をうけた 者は株式会社,有限会社の 業務執行および監督を行な うことはできない。〈1935.. 8。8のデクレ・ロワ6条〉 ② 会社破産の場合において ② 監査役への適用には疑問 重過失ありとして商事裁判 がある。 所により失権の宣告をうけ た取締役および業務執行者 はあらゆる会社の業務執行 権を失なう。く同10条>. ③ 一定の刑罰(体刑)に処 せられた者や罷免された公 務員など商人資格を有しな い者はあらゆる企業の業務 執行および監督を行なうこ. ⑧同左. とカミできないo〈1947・8.30. の法律1条・2条>. ④破産者および破産会社の. ④同左 三六. 業務執行者,取締役,総支 配人,清算人ならびに法律 上または事実上の指揮者で その者にっき破産宣告がな された者は復権しないかぎ り自然人として商業をいと なみまたは会社の業務執行 および監督を行なうことが.

(5) できないo<1967。7.13の法. クランス新会社法における取締役等の報酬規制. 律105条H> ⑤ 公証人,軍人,外交官な ⑤ 同 左 どの現職公務員は取締役に なれないo〈1946.10。19の 法律>. ⑥会計監査役は退任後5年 を経過しなければ取締役に 6.兼任制限. ⑥. 会計監査役は退任後直ち. に監査役になれる。. なれないo 〈L220,221> 〈L221> 8をこえる取締役の地位の兼 8をこえる監査役の地位の兼. 任禁止〈L・921> 定款の定める株数の保有 7.資格株. 任禁止〈L・136>. 同左〈L130>. 〈L951〉. 8.使用人と. の兼務. 使用人兼務取締役の人数は,. 取締役数の%をこえてはな. らないo〈L9311>. 9.欠員の 前任者の死亡または解任によ 場. 合. 監査役は使用人を兼務できな い。〈L1421>. る欠員の補充は取締役会で. 行ないうるoただし,法定. 同左. (ただし,取締役会を. 監査役会に読みかえる。) 〈L1371,II,皿,IV>. 最少限以下になつたとぎは ただちに総会を招集するこ とを要する。. 定款所定員数の最少限以下に. なったときは,3ヵ月以内 に取締役会で補充する。取 締役会で欠員を補充したと きは,次の株主総会で追認 をうけることを要する・ 〈L。941シIIシIII,r▽>. 10.解. 酬. によるo〈L9011> 総括規定〈L107> 出席手当<L.1081>. 賞. 与<L10811,352>. 特別報酬<L109>. 社. 同左〈L13411〉 左左左左. 株主総会(通常総会)の決議. 同同同同. 11.報. 任. 〈L142> 〈L.1401>. 〈L14011,352>. 〈L1411>. 長〈L.1101>. 総支配人<L115〉 七. 12.権. 労働契約を結ぶときは,取締 役の自己取引として規制さ れる。〈L101以下〉 限 取締役会はあらゆる状況にお 監査役会は理事会による会社 いて会社の名において行動 の管理につき常時的監督を 行なう。〈L.1281> するもっとも広汎な権限を 有する。取締役会は会社の.

(6) <L.1201>. 〈L.1581> ②. 株主総会議事日程の決定 ②. 〈L。1601>. 理事の報酬の決定. <L.123>. 論. 説︵金沢︶. 目的の限度内で,かつ法律 により株主総会に明示的に 与えられたものを留保して これを行使する。〈L981> 個別的権限 個別的権限 ① 株主総会の招集 ①理事の選任. 決算閉鎖後の計算書類の ⑧ 理事の解任の提案 作成 〈L3401,D.148> <L.1211> ④ 取締役または総支配人の ④ 理事長の選任〈L.12α1> 自己取引の承認 ③. 〈L101以下>. ⑤ 会社の与える保証,手形 ⑤ 総支配人の選任 保証,担保の提供の許可 〈L.12611> <L9811,D.891> ⑥ 理事または監査役の自己 取引の承認〈L.143以下> ⑥ 社長の選任・解任 <L。1101,III> ⑦ 会社の与える保証,手形 保証,担保の提供の許可 ⑦ 総支配人の選任・解任・ 権限の決定〈L115以下> <L.12811,D。1131>. 13.会議の. 招. 集. 14.定足数. ⑧本店の移転<L125>. ⑧ 本店の移転くL.99> 社長くL.11311>. 監査役会長または副会長が招 集する。<L.1381> ただし,取締役員の%以上に ただし,監査役会長は,理事 あたる者は,取締役会が2 ヵ月以上開催されないとき の1名以上,または監査役 員の%以上の者が理由を付 は,議題を示して開催を請 して開催を要求したときは 求することができる。 2週間以内に監査役会を招 〈D.8311> 集することを要する。ζれ らの請求者は招集が行なわ れないときは,自ら招集を. 取締役員の1/2以上<L. なしうるo<D。10711,III> loOI> 監査役員の1/2以上〈L1391〉. 115・多数 出席しまたは代表された取締 役員の過半数〈L10011> 定款で要件を加重しうる。. 匝6.可否同数 定款で反対の定めがないとき. の場合. は議長の票決による。. <L10. 01〉. 出席しまたは代表された監査 役員の過半数〈L13911> 同・左. 同左〈L.139m〉. 二. 八.

(7) (2)指揮の体制 type. classi(1ue. pr6sident. (社. 長). type nouveau (新 型) directoire (理事会・理事). 1.人数. 1名〈L.1101>. 2.資格. 自然人たることを要す。 取締役たることを要す。. 2〜5名,ただし,資本金25 万フラン以下の場合は1名. 〈L1101>. でょいo〈L.1191,II> 自然人たることを要す。 株主たることを要せず◎. <L120皿> 監査役との兼職禁止. 期. 3.任. 取締役としての任期と同じ。 (最高6年)〈L.11011>. 任任. 選解. 取締役会〈L.1101〉. 取締役会〈L110111>. 監査役会 <L.1201> 監査役会の提案にもとづき株. フランス本国内に本店を有す フランス本国内に本店を有す. る株式会社の2をこえる社 長の職の兼任禁止. <L1111>. 8.職. 〈L133,D.98> 4年〈L122>. 主総会が解任 〈L・1211> 取締役会が定める。〈L.1101〉 監査役会が定める。〈L・123>. 酬止 禁 職 報兼. へ5︒ す乳. フランス新会社法における取締役等の報酬規制. (在来型). 務. る株式会社の2をこえる理 事会のメンバーとなれな い。 〈L.1271>. 社長はその責任のもとに会社 理事会は,会社の名において あらゆる状況において行動 の総支配を確保する。法律 するもっとも広汎な権限を により明示的に株主総会に 有する。理事会は会社の目 および特別の方法で取締役 的の限度内で,法律が明示 会に与えられた権限を留保 に監査役会および株主総会 して,かつ会社の目的の限 に留保した権限を除き,そ 度内で,社長はあらゆる状 の権限を行なう。 況において行動する広汎な 権限を有する。. 〈L.1241>. 社長は第三者との関係におい 理事長または単独理事(総支 配人)は,第三者との関係 て会社を代表する。. 〈L1131,II> 三九. 9.責. で会社を代表する◎ <L.1261>. 任 会社の破産または司法的処理 理事会のメンバーの責任も同 左o くL.150> の場合には,重過失がない. ことを立証した場合を除 き,社長は商法典471条,. 472条の禁止・失権にした カミうo<L.1141>. 他の責任については取締役と 同じ。〈L.244〉.

(8) 10.代行者 社長の一時的故障または死亡 のときは,取締役会ほ1名 の職務代行者を取締役中よ 論. り選任しうる。〈L1121>. <L.. 説︵金沢︶. 11.総支配人 イ 選 任 取締役会は社長の提案にもと 定款の規定により,監査役会 に理事長以外の理事会メン づき 社長を補佐する総支 バーに会社代表権を与える 配人を選任しうる。 権限を授権しうる。この者 〈L.115> は総支配人とされる。 12611〉. ロ.資格 自然人。取締役でも第三者で 自然人。理事会のメンバーに あってもよい。 ハ.人. 〃. 二. 〈L115>. 数 資本金50万フラン未満 1名. 権. 限. 限るo 1名または数名. 〈L.12611> ぐL。12611〉. 50万フラン以上 2名以内. <L115〉 社長と同一の権限を有する 理事長と同一の権限を有する (対第三者関係)。. (対第三者関係)。. 〈L12611,III> 〈L,11711> ホ.解 任 社長の提案にもとづぎ,取締 監査役会と思われるが規定を. 役会はいつでも解任しう るo. 註1). 欠く。. <L116>. Lは,1966年7月24日の新商事会社法(10i)の条文をさす◎ (1967年1月4目および1967年7月12目法により改正後のもの). 2)D.は,1967年3,月23日の命令(d6cret)の条文をさす。. 四〇.

(9) ︵噺︶. 三 在来型株式会社の取締役等の報酬 旧法のもとにおける株式会社の経営機構と報酬の概観. 一八六七年七月二四日法のもとにおいては︑株式会社の経営機構はいまだ法律上組織化されておらず︑わずかにそ. の二二条において︑株主中より選ばれる一人または数人の︑有給または無給の︑任期の定めがありしかも解任可能な. 受任者︵ヨき量琶希︶によって業務執行がなされる旨を規定するにとどまっていた︒会社業務の実態を反映して社長. や取締役会制度を採用し︑現代的な経営機構が法的に確立されるに至ったのは︑はるかにくだって一九四〇年一一月. 一六日法の施行以後のことに属し︑とりわけ取締役の報酬規制に関しては一九四三年三月四日法が比較的詳細な規定. を設けていた︒以下︑新法の理解に必要な範囲で旧法上の経営機構とその報酬規制について略述する︒. 一九四〇年法によれば︑株式会社の業務執行について決定をするのは三名以上一二名以下の取締役によって構成さ. れる取締役会であり︵同法叫1︶︑その実際の指揮を担当するのは社長︵胃塗8箒欝8帯畦磯似泳巨︶であって︑これ. は法制上必要常置の機関であり︑同時に取締役会の議長をも兼任する︒法はさらに︑任意機関として︑社長を補助さ. せるため取締役または非取締役中より選ばれた社長補佐︵爵9富霞αq魯驚巴ρ&︒巨︶を置くことをみとめているほか︑. 社長が業務執行につぎ病気その他の理由で支障があるときは︑社長は特定の取締役に対し臨時にその職務の全部また. は一部の執行を委託しうる旨を定めており︑この者は社長代行者︵&巨募言富霞象一禽仁似︶とよばれている︒これ以. 四一. 外の取締役は︑その資格においては業務執行をなすことを禁じられているが︑例外として業務委員会︵8邑敏号 フランス新会社法における取締役等の報酬規制.

(10) 論. 説︵金沢︶. 四二. α冨&自︶あるいは研究委員会︵8ヨま儀.ぴ9号︶のメンバーとして業務執行に関係することが許されている︵同法二︶︒ ︵一︶. また︑部長︵き8富彗§冨β諾︶を兼任するときは︑その使用人としての資格において業務に携わることが許される ことは判例のみとめるところである︒. フランス旧株式会社法の予定する取締役の報酬は二種類にわけられる︒第一のものは出席手当︵蒼︒霧倉冥診窪8︶. であり︑出席手当は株主総会によってその額が決定され︑一般経費として支弁される︵一九四三年三月四日法二Ii一. 九五三年九月三〇日のデクレにより改正︶︒第二のそれはわが国の役員賞与に類似する賞与︵什き移ヨ⑦豊二窃σ魯像凶8ω︶で. ある︒賞与の支給の方法および内容については法定の制限内において定款によってこれを規定する︒すなわち︑賞与. は︑毎決算期の純利益︵当該決算期の純収入から一般経費およびその他の会社の負担︑ならびに会社の積極財産に対するすべて. ③株主総会決議によって積立てられるべき準備金. ④当. ②定款に第一次配当についての規定があるときはその金額︑かかる規定のないときは払込. の償却︑および商工業上の危険についてのすべての引当金を控除した額︶から①法律または定款によって定められた準備金. の積立にあてられる金額. まれかつ償還されていない株金総額の五%に相当する金額. 期に発生した後期繰越剰余金︑を控除した残額の一〇%をこえてはならない︒さらに賞与は︑株主に対する利益配当. とともにでなければ行なってはならないとされている︵同法コnlv︶︒これらの固定給的性質の出席手当と歩合給. 的性格を有する賞与は︑取締役会の構成員たる各取締役に共通した通常の報酬であって︑定款に特別の規定のないか. ぎり︑取締役会の適当と判断したところにしたがい︑各取締役に分配される︵同法二W︶︒社長は︑その職務および. 責任の重大性にかんがみ︑他の取締役の二倍の日当および利益分配をうけるのが通例とされている︒.

(11) 右の二種類のものに加えて︑社長︑社長補佐︑社長代行者は定款の規定する条件にしたがい︑取締役会決議の定め. るところの報酬を別にうける場合が多い︒これらの者は第三の報酬を給与として受取るのであって︑それは企業の山. 般経費として支出される︒この給与は商慣習上妥当なも︑のでなければならないのであって︑もし右の金額が費肝にあ. たらないとすれば︑税法上企業利益に計上され課税の対象となる性質のものである︒この報酬は会社の業務執行の対. 価であり︑勤労所得税の対象と考えられている︒これに反し︑業務委員会もしくは研究委員会の構成員たる取締役 ︵二︶. は︑他の取締役より多額の出席手当ならびに賞与の分配に与ることはできるがΩ九四三年法一一W︶︑社長のような給. 与の形式での特別の報酬をうけることがでぎないものと解されていた︒なお︑部長兼務取締役は︑右の取締役として. Oo霞号8ωω辞一〇P9︒oヨω①oρ8ヨ琶.謡欲<. 一〇零︵ω︒一〇竃︒一●一ωO︶●. の報酬のほか︑部長としての給与をうけることができるものとされていた︒ ︵一︶. 新法における取締役報酬総説. ︵二︶ρ困需芦評三∪霞き匹g短鼠園o匡9曽巴件仏鰹仏BΦ簿巴お号母鼻8ヨヨR︒壁一蓉oヨ巴﹂30添①澄●︸層脇ρ鴇ρ蜜一・. ︵二︶. ︵一︶. ︵一︶. 新法は︑在来型株式会社の取締役報酬につき︑一〇七条において総則的規定を設け︑同条一項に限定的に列挙され. 四三. たもの以外の報酬の支給を禁止し︑これに反するすべての決定につき無効の制裁を課している︒同条がその支給をみ とめている報酬はつぎのとおりである︒ ①出席手当︵法一〇八﹂︶. フランス新会社法における取締役等の報酬規制.

(12) 論. 説︵金沢︶. ②賞与︵法一〇八皿︑三五二︶. ③特別の職務または委任に対する報酬︵法一〇九︶ ④社長報酬︵法一一〇1︶. ⑤社長代行者報酬︵令九四︶ ⑥総支配人報酬︵法一一五︶. ⑦使用人兼務取締役の使用人部分報酬︵法九三1︶. 四四. 取締役報酬の分類には各種の基準を考えることができるが︑決定手続によって分類すると︑取締役会のみの決定で. 足りるものとしては︑④⑤⑥および若干性格を異にするが⑦があり︑取締役会で決定するが株主総会が最終的に関与. するものとして⑧が︑また︑株主総会が直接に決定するものとして①があり︑さらに定款に規定する必要あるものと. して②がある︒また︑報酬の特殊性・一般性の観点からみると︑①②は取締役の通常の報酬であり︑すべての取締役. に与えられるのに反し︑④⑥および⑤は︑それぞれ定期的および臨時的な株式会社の制度上の指揮者という特別の地. 位にある取締役に対する職務給的性格を帯びるものであるといえよう︒本節では便宜上前記①1⑦の順序にしたが い︑検討を進めたいと思う︒. ただし令九三条二項は︑取締役会は取締役が会社のために負担した旅費や諸費用の償還をなしうる旨を規定しているo. ︵二︶ 法一〇七条に反する取締役会および株主総会の決議が無劾とされることは明らかであるが︑これに抵触する定款規定の劾. ︵一︶. 力については︑新法もまた旧法と同じく明言をさけている︒菊o冨辞↓8巨一貫冨99叶ぎ薫oき山8ω09蜂診8ヨ言零.

(13) ︵三︶. ①. o一巴①ωサ一〇〇8b︐o o 留二≦巽8一国餌導富9. 8ヨoH押一〇①ゆやoo一●. 取締役資格における報酬. 出席手当および賞与. ︸ 一〇一昌o①Ol㎝○○刈. い餌門驚Oべ目①山ΦののOO欲菰のoOヨe①噌O一巴Oω. αq虞㎞鼠一一①け一〇〇9. 新法のもとにおいても︑取締役は従来と同じく出席手当および賞与をうけることができる︒なお︑新法もまた︑実 ︵一︶. 際にはこれを無賃とする例はまれであるが︑法のたてまえとしては取締役に報酬を支給するか否かを会社の任意に委. 出席手当. 株主総会は取締役の活動に対する報酬として一定の金額を定め︑﹁出席手当﹂の名目でこれを取締. ねる旧法の立場を踏襲した︒. ㈲. ︵二︶. 役に与える︵法一〇八1︶︒出席手当は年俸の形式をとり︑その名称にかかわらず取締役会へ欠席した場合にも支給さ. れる︒出席手当として支出された額は会社の費用に計上される︒株主総会によって取締役会に対し総額のかたちで決. 賞与. 出席手当の支給が株主総会決議のみで決定しうるのと異なり︑取締役に対して賞与を支給するために. 定された出席手当の各取締役に対する個別的な配分は︑取締役会がこれを自由に決定することができる︵令九三1︶︒. ㈲. は︑あらかじめ定款にその旨を明示の規定をもって定めておかなければならない︵法一〇八豆︶︒定款に規定があると. ぎは︑新法三五↓条以下の規定する条件にしたがい︑株主総会の決議を経ることを要せず取締役会の決定にっよて︑. 四五. 当期純利益中より株主の利益配当と同様の一種の利益分配のかたちでこれを支給することができる︒したがってその フランス新会社法における取締役等の報酬規制.

(14) 払蔽. 説︵ 金 沢 ︶. 額は︑おのずから各営業年度の純利益に対応する変額のものとなる.. ︵三︶. 四六. 取締役に対する賞与は︑当該営業年度に利益が生じたとき︑また︑株主への利益配当が決議され︑かつ現実に支払 の提供がなされるまではこれを支給することがでさない︑︵法三五一︶︒. 賞与は︑以下の条件にしたがって算定された金額の一〇分の一をこえることができない︒. ①その営業年度の純利益︵営業年度の全収入から会社の一般費用ならびに一切の償却および引当金をふくむ会社のその他の負 担を控除したものー法三四四条︶︒. ②もし存するときは︑これに前期からの繰越利益︵程箸︒答げ伽鼠浮酵①︶を加算する︵法三四六丁︶︒. ③以下のものを控除する︒ ④もし存するときは過去の損失金の額︵法三四六1︶ ◎法定︵利益﹀準備金の積立てにあてられる額︵法三四五1︶ ︵四︶. ◎会社資本の払込まれかつ償還されない額の五%にひとしい額︑もしくは第一次配当の額がこの金額をこえると きは第一次配当の額︵法三五二11︶. e総会決議によって定められた任意準備金の積立てにあてられる額︵法三五二12︶ ㊥後期繰越剰余金の額︵法三五二13︶. 賞与の決定にあたっては︑さらに株主総会が処分権を有し︑将来社外に流出を予定されている積立金から支出され. る金額を考慮することができる︒換言すれば賞与は株主に分配される積立金の九分の一にひとしい額をもって増額す.

(15) ︵五︶. ることがでぎる︒ただし︑すでに資本に組入れられた利益および積立金︑ならびに株式の発行プレミアムは︑取締役 の賞与を増額するためにはこれを利用することはできない︵法三五二H︶︒. 賞与は総額として取締役会に対して支払われ︑各取締役に対する個別的な配分は取締役会がこれを自由に決定する ことができる︵令九三1︶︒ o謡ひ ℃●G. 09幻言①答曾幻Φ幕勾o窪9︸円遷一叡蝕似窮o暮巴お3繕o犀8営BR9鼻①︒仏ρ一800 8ヨ①一 や①お︒. ︵一︶ ↓嘆09一㌶ρo℃●o一け. ︵二︶. フランス法では︑定款上︑払込まれがつ償還されていない株金額に基いて算出された利息ともいうべき第一次配当︵震. o︒. ︵三︶ 園o鵬段9冒8まω一①一3≦ρい四泳8﹃ヨoα窃80欲まω8臼e巽9巴霧窪什昏5翌図榎辞β二〇ρ掌ooo. ︵四︶. $・. 旨一9蝕く箆窪8︶を株主がうけうる旨を規定することがみとめられている︵法三四九︶︒この部分をこえる追加配当︵霊℃R・ 島く箆曾号︶が第二次配当である︒肉首R什9国〇三90ワ鼠fや. すべての賞与の支払に先立つ最低を五%とする定款による第一次配当の控除は︑株主に対する利益配当と取締役に対する. 一九七〇年二一月三一日まで. 賞与の間に噌定のバランスを保つことを目的とする︒した溺って︑第一次配当額が巨大となると取締役は不利益をこうむる ことになるので︑準備金の資本組入れによって多額の資本増加を行なった会社については︑. 四七. は︑定款に定める第一次配当の額が五%を下廻る揚合であってもこの率をもって法三五二条一項一号の控除額とすぺき旨を 経過規定をもって定めている︵法四九三H︶︒ ︵五︶ い①8げ畦ρoマo一£すoo堕. フランス新会社法における取締役等の報酬規制..

(16) ②. 論. 説︵金沢︶. 研究委員会委員たる取締役の報酬. 四八. 一八六七年法のもとにおいては︑とくに明文の規定はなかったが︑大企業においては︑合議制による合理的な会社. 運営の必要上︑事実上の機関である取締役会が設けられ︑さらに取締役会はその下部機構として︑取締役会によって ︵一︶ 任命された取締役から構成される業務委員会︵8旨a号α冨&8︶を設ける場合が多かった︒. この制度は一九四〇年法二条三項の定める研究委員会︵8ヨまα︑蜂&Φ︶にうけつがれることになるが︑同委員会は ︵二︶. 社長によって任命される取締役および部長をもって構成され︑会社業務につき研究を行ない︑社長の諮問機関的役割. を果たすものとされていた点で日常の業務執行に直接に関与した前記の業務委員会とかなり性格を異にするといえよ. う︒これに関連して一九四三年法二条六項は右の研究委員会のメンバーに対する報酬について規定を新設し︑委員. である取締役は出席手当および賞与の分配にあたり︑他の取締役のうくべき金額をこえる報酬をうけうるものとし た︒. 新法においては︑研究委員会の設置は取締役会の専属権限に移され︑そのメンパーの範囲も︑取締役︑部長以外の. 者も加えう惹ことになった︵令九〇∬︶︒その報酬は︑取締役たるメンバーについては︑取締役会にょる出席手当およ. び賞与の分配にあたって他の取締役のうくべき額をこえる金額を与えうるものとし︵令九三1︶︑それ以外のメンパー についても取締役会がこれを決定しうるものとされている︵令九四後段︶︒. 一八六七年法における業務委員会はむしろわが国の常務会的であり︑これに対し旧法の研究委員会は諮問機関とし. ての性質が濃いものであったと考えられるが︑いずれにしてもその職務権限にあいまいな点があったため報酬との関.

(17) 連性は明確さを欠いていた︒そこで今回の改正では︑メンパーたる取締役の研究委員会における活動についてはいわ. ば委員手当として出席手当と賞与の分配の際に割増を行なうことによって報い︑それ以外に平常の職務以外の業務執 ︵三︶. 行的な特別の任務を委ねる場合には︑別途に法一〇九条の規定による特別報酬を与えることにしており︑両者を載然 と区別し職務権限と報酬を強く関連づけた点が特色といえよう︒. ︵一︶ρ出o唇ぎ魯串切oのく陶︒莫堕↓邑鼠αq魯警巴叶頴︒言ま9R蝕信︒号ωω8一似叡ω︒三一①の簿8ヨ目R︒芭①の9山霧 餌ωωoo凶暮一〇P①︒似α遭8ヨo員すま一︒. ︵二︶い国鋤き巴g9霊讐益p↓味m寂号R鼻8ききRo一98目︒ト這置唱●おo︒⁝串ω9β富菰ヨ§警蝕旨号の. 蝕邑鼠ω耳簿①貫ωヨ︒含再︒ω&8日まα.鰹鼠①嘆鍛α①暮一︒一しo霞蒙一号ωω8鄭診︒三一Φω卑8ヨヨR︒難︒ω㍉総ρP一①舘. 富§雰8霞伊O雲お号α目o濤8日ヨ震9鼻昌3︿色⑦畿・︾お鵠︾や99業務委員会と性格を同じくするとする説U魯昌 一3Go︸や一〇刈︒. oマo霊︸層o◎o G 旧菊首o昌9閃o乞o計oサ9fす0899. い80二斜℃鼠9ωαo繕o一けoo目目霧9巴︸OΦ似α. 国餌ヨ冨暮. 特別の職務または委任をうけた取締役の報酬. ︵三︶. ③. 新法一〇九条は︑取締役に委ねられた特別の職務や委任︵たとえば日本で見本市を開くなど特定の取引をなす権限をある. 取締役に与えることを指す︶について︑取締役会の定める例外的な報酬が与えられる旨を定めている︒この種の報酬は︑. 会社の営業上の経費として取扱われ︑会社と取締役または総支配人間の合意に関する法一〇一条以下の諸規定にした. 四九. がうべきものとされている︒この手続の要点を略述すると︑会社と取締役または総支配人の一人の間でなされる合意 フランス新会社法における取締役等の報酬規制.

(18) 論. 説︵金沢︶. 五〇. は︑すべて取締役会の事前の許可にしたがうことを要し︵法一〇一1︶︑社長は許可された一切の合意を会計監査役に. 通告し︵法一〇三H︶︑会計監査役はこれらの合意に関して株主総会に特別の報告を提出し︑総会がこの報告について. 判定をなすべきものとされている︵法一〇三皿︶︒ただし︑取締役会が同時に会社の有給職員である場合︑この者の有. する労働契約上の利益については︑法一〇七条が法九三条︵使用人兼務取締役︶の場合を報酬規制から除外しているか ︵一︶ ら︑法一〇一条以下の取締役の自己取引に関する規定は適用なぎものと解される︒. 使用人資格によらず︑特別の職務または委任をうけて臨時的に業務の執行にあたる取締役に対する報酬の支給を法. 一〇一条以下の巌格な手続に服せしめる︵法一〇二条の例外にあたらない場合において︶根拠は必らずしも明らかでない. が︑特別な職務または委任をうけた取締役に︑その職務または委任を理由として過大な報酬を与える途を閉ざすとい. う直接の目的とならんで株式会社における指揮の権限の分散をさけ︑これを社長および総支配人に集中するという経 ︵二︶ 営機構を堅持することに主要な目的があるのではないかと思われる︒. ︵一︶峯99号甘αq寓けg切窪厨eぎH竈畠什ρ9霞号身鼻8ヨ目R︒一貰曽ぎr一8刈も﹂ミ.. 社長の報酬. ︵二︶ 山本桂一﹁目仏会社法比較研究セミナー報告﹂商事法務研究四五七号四二頁金沢問1 2に対する国傷日巽q教授の解答参照︒. ︵四︶. 新会社法の制定にあたり︑議論の中心となったもっとも注目すべき点は︑社長の報酬である︒社長は取締役会によ. りその構成員中より選任されるから︑その取締役たる資格において出席手当および賞与の分配にあずかることがでぎ.

(19) ることはいうまでもないが︑これに加えて︑社長は︑旧法当時から︑その職務につき︑社長の資格において別途に報. 酬をうけうるものとされていた︒しかし︑会社法上これに関する明文の規定が置かれていなかったため︑この報酬の. 法的性質およびそれにともなう手続について︑学説・判例上︑ならびに新法の立法過程においてはげしい論争を招く ことになったQ. ① 旧法のもとにおける社長の報酬. 社長を法律上の必要常置の機関としていなかった一八六七年法のもとにおいてはもちろん︑株式会社企業の責任あ. る指揮者としての社長の制度を創設した一九四〇年二月一六日法および一九四三年三月四目法においても︑社長の. 報酬に関してはなんらの特別規定も置かれてなかった︒したがって︑社長は取締役としての資格において他の取締役. と同様に︑出席手当および賞与の分配に参加することができ︵その額は平取締役のそれよりも多額であるのをつねとした︶. ることは法律上明らかであったし︑それ以外にも社長が会社のために支出した実費の弁償︵お日ぎ霞器ヨΦ旨留ω坤器. ・砦8診︶をうけることは疑問の余地がなかったが︑このほか会社は︑日勤職である社長に対し︑この者が現実に毎日 ︵一︶. 提供する業務指揮という労務の対価として追加報酬︵叡箏琶驚9︒ぎ霧の唇b鼠馨旨璋霧︶を支給するのが実務上の慣行と されていた︒. この追加報酬は︑一九二六年以来︑税法上は使用人のそれと同様な給料とみなされており︑税務当局は︑これが過. 五一. 大である場合には過大部分を出席手当や賞与とみなして高率の課税をするという方法で抑制してきたが︑これが私法 フランス新会社法における取締役等の報酬規制.

(20) 論. 説︵金沢︶. 五二. 上かなる性質を有するかが学説・判例上の議論の焦点となった︒しかし︑もともと︑出席手当が取締役会への参加と. いう特殊な知的労働の対価であり︑また︑賞与がいわゆる獅子の分け前︵σ冨旨号ぎ昌︶︑つまり︑取締役に対する ︵二︶. 特別利益の分配であると説明しうるとしても︑慣行の産物として生成されてきたこの両者を区別すべぎ必然性すらな. いのであるから︑追加報酬の性質を理論的に深く追求することは無意味である︒そして︑事実この問題は︑より実際. 的な意義を狙う特殊な角度からとりあげられたのである︒すなわち︑株主はその会社の社長報酬につき︑監督するチ. ャンスを持つべきであり︑すくなくとも知らされる必要があるのではないか︑という問題提起がなされた︒. これをより具体的にのべると︑社長の追加報酬について︑わが商法二六五条に相当する取締役・会社間の取引の規. 制に関する一九四三年法によって改正された一八六七年会社法四〇条を適用すべぎか否かということである︒すなわ. ち︑社長は︑株主総会によって選任された取締役によって構成される取締役会の互選にもとづいて︑会社の機関とし. て会社の経営全般について受任者として責任を負う反面︑右の地位と併行して会社との間に労務提供契約を締結し︑. 勤労者の一人として会社より金銭の給付をうけているのであるから︑これは会社と取締役間の﹁合意﹂に該当する︒. したがって事前に取締役会の承認をうけることを要し︑また会計監査役にその旨を通告しなければならず︑さらに会. 計監査役は︑取締役会によって承認された契約の報告書を株主総会に提出し︑その承認を要するものとする同法四〇 条の適用があるのではないか︑という問題である︒. 学説のうち︑困需芦頃簿ヨ色などは適用否定説を有力に唱えたが︑この説の根拠は︑第一に︑社長の地位は株式会社. 法上必要常置の機関であり︑その報酬は社長の選任に当然随伴するものであって︑いわば制度上のものであるから︑.

(21) ︵三︶. ﹁合意﹂には該当しないし︑第二に︑もし社長がその提供した労務についてなんらの報酬請求権をも有しないとすれ. ︵五︶. ば会社は不当利得を生ずることになり︑第三に︑条文の体裁からして︑四〇条が規制の対象にしているのは︑会社と ︵四︶ 外部の取引関係であって︑会社と会社機関あるいは会社機関相互の関係を規制しようとするものではない︑という点 に置かれていた︒. これに対し︑国o且Pω霧餓きなどは適用肯定説の立場をとり︑つぎのように主張した︒利益分配は定款によって. ︵つまり株主総会の特別決議を経て︶定められ︑また目当は定時株主総会によって決定されるので︑いずれも四〇条の適. 用をうけないことはいうまでもないが︑これ以外に取締役会の決定によって社長に与えられる追加報酬については問. 題はおのずから別である︒第一に︑社長に対する追加報酬の支給は法の予定している義務的なものではなく︑第二. に︑少なくとも定款によって与えうる報酬額に枠のはめられていない場合には︑利害関係人たる社長が事実上大きな. 影響力を有する取締役会において︑現在および将来のすべての社長の職務に普遍妥当する金額を客観的に決定するこ. とはきわめて困難であり︑第三に︑四〇条は︑株主の利益が不当に侵害されることを防止する目的にいでたものであ. ︵六︶. るから︑そのおそれがある以上︑対外的取引であると対内的醸合意であるとを問わずすべての契約に適用さるべきで. ある︒社長はそれがたとえ誇大でない場合でも︑株主や従業員の批判をおそれ︑みずからの報酬を匿そうとする傾向. があるが︑取締役に対する日当や利益分配が株主に知らされるべぎであると同様これ以外の追加報酬についても株主 ︵七︶ は知る権利があり︑その明示こそ︑社長の会社への忠誠を担保するものである︒. 五三. 右のような学説の対立をうつして︑判例もかならずしも一貫した態度を示しているとはいいがたいが︑傾向として フランス新会社法における取締役等の報酬規制.

(22) 論. 説︵金沢︶. 五四. ︵八︶ は第二説の支持のもとに︑四〇条の適用を肯定する方向を打出しているといえよう︒同条の適用の有無が争われたも. 一九五三年に出席手当. っとも典型的なケースは︑一九六二年一一月二三日のω巴導−≧峰5琴商事裁判所の判決を維持した一九六三年コ. 月二〇目の冒98Φ田R控訴院判決にあらわれた事案である︒すなわち某社の取締役会は︑. および賞与以外に社長および他の数人の取締役に対し売上総利益︵漂叡浄霧専暮ω︶に対する歩合給のかたちで追加報. 酬を与える旨決議したが︑この決議は︑一九六一年に至るまで︑会計監査役にも通知されず︑株主総会の承認をもう. けなかったので社長の給与が株主の知るところとならなかった︑というのである︒この事案につさ︑同控訴院は︑会. 社法四〇条は︑それが民事のものであると商事のものであるとを問わず︑例外なしにすべての契約に適用さるべきも. のであり︑会社と取締役の一員との間に締結された労務提供︵δ量αq︒号ω①三8︶契約は︑新たな債務の発生を目的. とするものであり︑既発生債務の履行にも債務の承認にもあたらないので︑その重要性にかんがみ︑法定の手続を践. むべきものであり︑また︑社長の出席手当および賞与以外の給与は︑法律上不可欠とされている訳ではなく︑その金. 額と計算方法は契約によってどのようにも決定でぎるのだから︑株主が社長の報酬の詳細について知るチャンスをも ︵九︶. ︵一〇︶. たなければ報酬が社長の提供する労務や会社の資産状態とアンバランスに定められ︑株主の利益を害するおそれがあ ︵扁一︶. ︵一二︶. る︑と判示している︒なお︑同趣旨の判決としては︑一九五五年一二月一四日の閃簿言ま民事裁判所判決および一 ︵一三︶. 九五九年四月二日のωoぎΦ民事裁判所判決を維持した一九六〇年二月二四日の評器控訴院判決があり︑一九. 六三年二一月一一日の破穀院商事部判決も︑直接にではないが︑ほぼこの線上にあるものといえよう︒. ︵一︶Oξく①旨︒pい①冥似匿窪&ぎgΦ貫ひ亀魯似琶αき巴︒ωの8鄭仏ω弩o身導βω︒ω︒び凝蝕oβω①⑦酵o募る①似ρ一雷︒︒.

(23) づ●一〇 〇刈︒. ︵二︶<醇8p8﹄Fやお趣旨9. 8ヨ①一﹂①舞も︒脇舎O︒匹需誉β︒8u毘oN一雷︒︒﹂・. oき律這璋・ 霊①霞Φ掛℃ざい四鼠目qp驚暮δ昌血q嘆診箆o旨鉱胃①9Φ霞ひqぴ昌吟巴9一︑舘ぼ9Φ ρい餌註①坤きゆ曽置漁No. ︒O脚覆づ①芦U貫きαg閃oげ一〇ρβ簿. ︵三︶田幕一︸い︑農●き魁Φ冨一︒こΦ一︒︒︒刈Φ叶一ミ爵§曾&︒昌&蜜似隆gこ①ω・︒一鍮磐︒塁導pgN・窒・﹂38Nh︒︒叶旨︒. ︵四︶. ︵五︶ =o岳P幻薯二Φ霞一目窃霞一〇=Φ号警o詳8き目輿息巴︾一霧食昌︒ρ層ω島9ω引国零舘冨oけ閃帥三ρピ窃ω8菰鼠ω8ヨー. OO旧頃Oq一POPO凶けJb●ωF㎝①什ω. b●NO縛NO. ヨ震︒芭①ω蓉︒e︒一くも﹄︒︒g碧評ぎ8﹄︒$u●一︒①い︒謹脚野呂き﹄︒一︒一●ρ℃﹂8一﹂一︒一一︒認︸い︒蜜器①鎧9. 国ωO㊤吋吋帥①け国曽q一∬O℃・O犀. ︶. 昌9①U︒一〇①鼻藤ooω︐. ︵六︶. 国〇三Poや9 o︒. ︵七︶. 否定説の立揚をとる少数判決として↓ユび仁昌鎮富8唐目R8号一帥ωΦぎρお旨巴おqoo︵ゆ巳一・ωoρ一300︶戸辰ooソ. マoo僻o. ︵八︶. o●昌o$ド竃震$qα︸9ρ型お罐・戸器$①︶・ ︵九︶ Oo霞α.昌bo一号鼠o口80田oお一〇 〇昌o︿●ご留︵U︒一8卜窃G. ︵一〇︶↓き毒巴︒三こ︒頴浮琶ρ辰薮︒﹂︒緕︵o﹂︒㎝9①刈9園●臼u︐O︒ヨ5一38℃●一G︒的︶・. ︵コ︶↓旨§巴︒三こ巴餌ωΦぎ①﹂一㊤琶一一︒$︵野Fω︒︒﹂8︒も●︒︒︒一y. 五五. ︵一二︶O︒霞畠︑巷需こ・評器るFぎ<﹂8久U﹂8一.雪ぎ帯評ぎ8乙6︐勺﹂8ピ目﹂5蚕88ω婁冨黛塑↓・U・ Oo目謹﹂8押やo︒8︶噂. ︵二二︶9ξ留8ωω妥︒p38旨3・二翫p這8︵︸︒霞p89る黛や8N①︒ω冨8︶.. フランス新会社法における取締役等の報酬規制.

(24) 論. ② 立法経過. 説︵金沢︶. 五六. 社長の報酬についての問題は︑法案の国会審議においても大いに論じられた︒国民議会の審議の際に司法大臣. 男薯震氏は︑社長の報酬について一八六七年法四〇条の適用に反対の見解を主張し︑その理由をつぎのようにのべて. いる︒すなわち︑社長の報酬の決定は通常の行為であるのに︑同法四〇条は例外的な合意についての許可を目的とす. るものであること︑さらに株主は会社の経理について自由に知ることがでぎ︑この点に関するあらゆる説明を請求し. うるので︑つねに社長の報酬を知りうるチャソスを有する︒それゆえ︑株主総会の社長報酬について事前審議を要す. るか否かの問題は政策的なものにすぎない︒また︑比較法的にみても各国の法制はまちまちであって︑ドイッ法は株. 主総会の決議を要するものとしているのに反し︑イギリス法はこれを要求していない︒したがって︑問題は社長の報 ︵一︶ 酬の開示の是非について焦点を合せるべきであろう︑と︒. 報酬の公開に関し園o鼠霞o<窪氏はつぎのように主張した︒株主に対して社長報酬を開示することそれ自体には. 問題がないが︑その会社が相当以上の規模であるときは︑事実上株主総会は公開の場所であるから︑そこで社長の報. 酬を当該特定人について開示することは不適当である︒今日までフラソスの国会は個人収入の公開にはっきり反対の. 意思を表明している︒それ故︑株主総会がこの当否を判断しうるよう取締役員全員に対する報酬総額が株主に開示さ. れ︑しかも各人別の報酬は秘密とされるイギリス法の制度が妥当と考えられる︒さらに︑なぜ社長の報酬だけが問題 ︵二︶. とされ︑社長と同一もしくはほとんど同一の待遇をうけている他の取締役や技師長のそれが論じられないのか理解に くるしむ︒.

(25) しかし︑このような主張にもかかわらず︑国民議会の第一読会は﹁社長の報酬については株主総会の承認を要す. る﹂旨の委員会修正案を採択した︒これに対し上院法律委員会は︑﹁社長の報酬は取締役会がこれを決定する﹂とい う政府草案の当初の形式に戻ることを提案した︒. 上院法律委員会の意見書の要旨はつぎのとおりである︒. 株主があらゆる時点において社長の得た報酬について情報をうける可能性をもつことは必要であり︑株主はまた株. 主総会において自らが有用であると判断したあらゆる提案を自由に行なうことができる︒しかし︑社長報酬の株主総. 会による承認︑すなわち︑その最終決定権を株主総会に与えることは不適当である︒フランスの立法︵府︶はつねに. 個人収入の公開を拒否してきたが︑この原則に対する例外を設ける理由はまったく存在しない︒また︑もし国民議会. 案にしたがわねばならないとすれぼ︑報酬は一定のピラミッドをかたちづくっているから︑社長のみでなく︑部長な ︵三︶ どの選任・報酬決定も同様に株主総会の決定を要するものとすべきことになろう︒. 結局上院は﹁社長の報酬は株主総会の承認を経るものとする﹂との文言を削除することになったが︑これについて. 上院の報告者卑一窪まU巴ξ氏はつぎのように説明している︒社長の報酬に関する諸問題を株主総会において系統. 的に審議するという見解は支持しがたい︒毎年容易に想像しうるような扇動的な議論が展開される株主総会という公. 開の場所において︑社長報酬の開示を求めることは妥当でない︒そのような事情のもとでは会社の適切な業務執行. ︒α巨幕馨喜︶は期待しがたいし︑相当多数の会社においては充分な報酬が支給されているとはいいがたいか ︵ぎ暮Φ9. 五七. らである︒そして株主が社長を信頼し業務執行を一任することが︑社長に株主の期待にこたえる経営をさせることに フランス新会社法における取締役等の報酬規制.

(26) ︵四︶. 論 なるのである︒. 説︵金沢︶. ︵一︶ 類薗導一蝉暮︾oP9∫やoo伊. ︵二︶ 国曽ヨ冨暮 oやユ 層oo㎝︸o 層oo曽︒ o 9↓8三一﹃ρoマo霊. o9 ︵三︶ 国帥ヨ貯葺℃oマ9 ℃●o. 現行法のもとにおける社長報酬の決定手続. 甘一一一〇什一〇〇ρ一〇〇凶b●一ρ一ご=mヨご暮︸ob●o凶εやo o9↓8三一一餌計oやo一8℃●認oo. 五八. ︵四︶ 団R昌巽ユ臣蝕o一欲≦ρω一霊暮δ昌冒ユ象ρ琴9お聲op器窪一一叡α8&ユαq9暮の留80欲叡の餌昌o昌︾目霧四℃臓のご一9α二曽. ⑧. 新法一一〇条一項は取締役会が社長の報酬を定める旨を明定しているけれども︑この解釈についてはなお三つの見 解が存在する︒. 多数説である第一説は︑社長の報酬は︑法が社長に与えたところの機関としての地位の一部をなし︑いわば制度上. のものとなったのであり︑もはやそれは﹁合意﹂とは考えられないこと︑また︑立法過程において︑長い論争のあと. で株主総会の承認を要する旨を定める国民議会の提案が否決され︑株主総会での審議をさけようとする上院案が採択 ︵一︶ されたことを理由として︑取締役・会社間の自己取引について適用される一〇一条以下の規定の適用を斥けている︒. これに対し第二説は︑法一一〇条の新設後もなお従来の判例の見解を正当とする立場をとる︒すなわち新法の条文. は簡略にすぎたため︑社長の報酬決定について株主総会が関与しうるか否かについて曖昧さを残している︒社長の報. 酬非公開の根拠とされている﹁業務上の秘密﹂は︑株主の安全と情報の確保を実現するための株主による会社の監督.

(27) の必要性の前に譲歩しなければならず︑ま9冒器$且氏の主張するごとく︑﹁会社という建物は透明な建物でなけ. ︵二︶. ればならない﹂のであるから︑新法のもとにおいても︑社長の報酬は株主総会の承認にしたがわねばならないとす る︒. 第三説は︑右の両説の折衷的見解であり︑社長の報酬は︑それが新法一〇二条の﹁通常の条件で締結される日常の. 取引を目的とする合意﹂にあたる場合には同条の規定により一〇一条以下の規定の適用はないが︑それ以外の場合に. は︑一〇一条以下の規定の適用をうけ︑したがって︑株主総会の審議に附されるべぎものと解する説である︒この説. によるときは︑いかなる場合が一〇二条の﹁通常の取引﹂にあたるかが問題となるが︑既定の賃金表︵貫議︶にもと ︵三︶ づく報酬の支給などは一〇二条該当の取引とされるもののごとくである︒. 以上三説のうち︑いずれの説を採るべきかは速断しがたいが︑新法が社長の機関的地位の確立を意図していること. ①①曾空澄oまくお℃8●o凶け. b﹂ρ目.. 五九. ℃︒一ωo o 一冒笹曽昌曾ぜも○一一8. が明らかであり︑また︑前記のような立法経過からみるとき︑第一説の見解が法コ○条のもっともオーソドックス な解釈ではないかと考えられる︒. b.置o o一困需洋oδ幻o窪o計ε︒〇一f℃.臼N. ︵輔︶ 一〇き切震鵬震9U騨8二〇⇒職鼠轟一9島おo識○β80げ巳ρまq①ののOo欲鼠ω四poロ︾旨①ω導一800 o℃●o一什. oP息£やoo㎝・. 山本・前掲商事法務研究四四頁の赤堀助教授の問6に対する頃ぴヨ胃血教授の解答参照Q. ︵二︶ 自m唐貯q. ︵三︶. フランス新会社法における取締役等の報酬規制.

(28) 塾醐. 説︵金沢︶. ㈲ 社長資格における報酬の態様. 六〇. 社長は他の取締役と異なり︑取締役会議長としての職務と︑会社の総支配人としての地位を兼併する︒取締役会に. おいては︑社長は他の取締役と同様︑会議体の一構成員であると同時に︑議長としての職務をも行なうが︑これらは. いずれも取締役会内部における活動であるから︑新法一〇八条の文言にしたがい出席手当と賞与をもって報いらるべ. き性質のものであるといえる︒ただし︑旧法のもとにおいて︑社長にその議長資格を理由として︑出席手当および賞 ︵一︶ 与につき他の取締役の倍額を与えていた慣行は︑新法のもとにおいても継続されることになろう︒. これに対し会社指揮の責任者︑つまり総支配人としての地位に対しては︑特別の能力と不断の努力を必要とする職. 務の性質と社長に課せられる重い責任にかんがみ︑特別報酬の支給が正当化されることになる︒この報酬は固定給︑. 売上総利益または純利益もしくは売上高に比例する歩合給︑あるいはこの両者の併用という方式で支給される︒しか. =鐙o頴霞ρoやo一fりる旧ω琴晦貰90やo一£や富卜. Oo瑛q.巷℃o一号頃麩置Oすp這器︵U●一3ドωGo曾いρ即ご鵠. 囲一●8きy. し売上高に比例する歩合給の方式を採用するときは︑報酬の増加をはかるために不正または不当に売上高を増加しよ ︵二︶ うとする社長があらわれるおそれがあるから︑もっとも適切な方法は︑固定給と業績にともない増減する会社の純利 ︵三︶ 益に比例する歩合給との組合せであるといわれている︒ただし︑特別報酬は金銭以外の方法でも支給することができ るから︑この場合には別途の配慮が必要となる︒. ︵二︶. ︵一︶ 幻一需嵩9男o匡o oやo罫 や8藤︒. ︵三︶.

(29) ⑤ 社長報酬の開示. 社長報酬については︑自己取引に関する新法一〇一条の適用は排除され︑取締役会かぎりで決定しうと解するの. が︑多数説であることは︑すでにのべたとおりであるが︑この立場をとると︑株主は株主総会において社長報酬を知. る可能性を閉されてしまうことになる︒そこで社長報酬を株主総会の審議事項から除外する代償として︑国民議会修. 正案の支持者を納得させるための妥協案として上院で新たに挿入されたのが新法一六八条四号である︒すなわち同号. によれば︑株主は従業員の実数が二〇〇名をこえるか否かにしたがい︑一〇名また五名の最高額の報酬をうける者に ︵一︶ 麦給された報酬総額につき︑︵会計監査役の正確である旨の証明のある︶情報をうけることができるものとされている︒ ︵二︶. ︵三︶. この表示自体から︑さらにこれと前期までの数字との比較によって︑会社指揮を担当する人々の報酬について大よそ. の見当をつけることはできるけれども︑しかし︑この一〇または五名のうちに社長が入っているか否か︑また︑たと. え入っているとしても︑それぞれの個別的な金額はもとより順位ごとのそれすらも明らかにされていないから︑結局 ︵四︶. 同号の規定はこれを社長報酬の開示という観点からみるかぎりきわめて不充分で︑株主に社長報酬についての単なる 憶測を行なう材料を提供するにとどまるものといえよう︒ ︵五︶. それでは︑株主にとって社長報酬の開示を求める道はまったく開かれていないのであろうか︒問題となるのは︑社 ︵六︶. 長報酬の開示に関する↓九五↓年五月二嚇日のξ9控訴院判決である︒同判決は︑一九三七年八旦三日の法律統. 令によって改正された一八六七年法三五条一項末段を根拠として︑株主に通知される損益計算書は充分に明細なもの. 六一. であることを要し︑かつすべての株主をして企業指揮者に関する詳細な知識︑とくにこの者のうける各種の報酬に関 フランス新会社法における取締役等の報酬規制.

(30) 論. 説︵金沢︶ ︵七︶. 六二. するそれを求める途を開くものでなければならないと判示している︒もっともこの判決は︑一九六三年一一月二〇日. の竃自8①罠R控訴院判決と同じく︑社長をはじめとする企業指揮者のおのおのがうける報酬の明細を損益計算書. に明記すべぎ旨を判示しているわけではないが︑株主は損益計算書を手がかりとしてこれを知りうることは明らかで あるo. 重要なポイントは︑右のい巻昌控訴院判決が新法のもとにおいてもなお命脈を保っているか否かであるが︑旧法. 三五条一項に対応する新法三四〇条および三四一条からこの趣旨の規定が削除されている点︑ならびに新法コ○条. 企業の課税に関する一九六五年七月一二日法二七条は︑会社は︑最高額の給与をうける者の費用の償還を含む直接.問接. および一六八条四号の新設の趣旨から考えて︑これを否定的に解するのが妥当であると思う︒ ︵一︶. の報酬︑これらの者の旅費接待費などの経費が大蔵省令の定める額をこえるとぎは︑これを税務署に対し明細表を附して申. 告することを要し︑かかる支出があるのに明細書に記載されておらず︑あるいはそれが過大で会社の直接の利益のために使. 用されたものでないことが証明された結果課税利益に算入されるなどの税法違反があったときは︑これらの金額の各項目ご. との合計額は︑会計監査役の責任において直近の株主総会に報告されることを要する旨を定めており︑法一六八条四号は右. o︒. の規定にならったものであるといわれている・↓8二籠38・oF層ω鵠・ωoo曽 ︵二︶ ω仁茜畦90や9ダ層おo. 技師長などの高級職員の方がより多額の報酬をうける揚合がある︒類餌ヨ壁葺. マo︒9. ︵三︶. 報酬の開示という点では︑むしろ商法二六九条で取締役員に対する報酬総額を株主の前に明確にさせ︵賞与の総額につい. oや9. ︵四︶. ては株主総会における利益金処分案において明らかとなる︶︑商法二九三条ノ五で単独株主権として附属明細書の謄写・閲.

(31) o.8εU巴霊8yなお︑この判決は破殿院によって維持されてい Oo霞α.巷℃o一号U巻P曽唐巴お巴︵ω・お鴇・ド一刈G. 覧権を与えている日本法のほうが一歩先んじているといえようo ︵五︶. ρ賢お璋●目Oo8冷昌9Φω曽馨す昌y. ﹁損益計算書は︑各種の事由より生ずる利益および損失を︑それぞれの項目にわけて表示しなければならない︒﹂. るOOOq吋山①8ωω緯δPO78ヨヨ謬O隷く9お簿︵一 ︵六︶. Oo霞α.碧℃o一血①竃o昌6①三R︸NOづ○<.一〇8︵冥似o一鼠y. 社長代行者. ︵七︶. ︵五︶. 社長に一時的な故障がある場合︑または社長が死亡したとぎは︑取締役会はその構成員中より一名の職務代行者を. 選任し︑この者に社長の職務を臨時に代行させることができ︵法一一二1︶︑この者の報酬については︑取締役会がこ れを決定すべぎものとされている︵令九四前段︶︒. ところで新法一〇七条は︑取締役は九三条︵使用人兼務取締役︶︑一〇八条︵出席手当と賞与︶︑一〇九条︵特別報酬︶︑. 一一〇条︵社長︶︑二五条︵総支配人︶の定めるものを除ぎ︑定期的であるか臨時のものであるかを問わず︑いかな. る報酬をも会社からうけえない旨を定めている︒デクレ九四条の規定はこの原則に抵触するものとは考えられないか. ら︑社長代行者の報酬は︑結局右に列挙されたうちのいずれかに該当すると解するほかはない︒社長代行者の職務に. 着目してこれを取締役に委ねられた特別の職務または委任の一種とみるときは︑取締役の自己取引の許可に関する手. 続︵法一〇一以下︶の履践が必要となるが︵法一〇九︶︑これに反して︑代行される社長という地位に重点を置くなら. 六三. ば︑右の手続は不要とされる︵法一一〇︶︒この点に関しては︑その職務の臨時性︑例外性を理由として前者の如く解 フランス新会社法における取締役等の報酬規制.

(32) 論. 説︵金沢︶. ︵一︶ する立場が有力に主張されている︑. 六四. ︵一︶甘§頴慕旦寄き曾ω凝ま9浮臣客畳螺矯9慾︒§︒8霧︒薮野8菖ヨ§芭β頴︒韓ロ︒①下旨①3器 ヨ巽の一〇①8一〇①凶マooO.. ︵六︶ 総支配人の報酬. 取締役会は︑取締役またはそれ以外の第三者︵自然人たることを要する︶の中から︑社長を補佐する一名または一.一名. の総支配人を選任することができ︑その報酬は取締役会が定めるものとされている︵法二五︶︒. 総支配人が取締役中より選任されたとぎ︑もしくは総支配人がのちに取締役に選任されたときは︑取締役たる資格. において︑株主総会の定める出席手当および定款の定める賞与の分配に参加しうることは明らかである︒この場合︑. 総支配人に対し社長と同様に出席手当・賞与を割増して配分しうるか否かが問題となるが︑割増分を社長の取締役会. 議長としての役務に対する報酬とみるならば︑総支配人が議長の職責を果していない場合には︑消極に解すべぎもの と思うo. 総支配人の選任は︵それが取締役であると第三者であるとを問わず︶有賞の委任を構成し︑その報酬は︑社長の場合と. 同じく︑固定給または利益もしくは売上高に対する割合により︑あるいは︑この両者の併用の方式で与えられる︒総. 支配人の報酬についても︑新法一〇一条以下の規定の適用をうくべき取締役また総支配人と会社間の合意にあたるか. 否かが問題となるが︑法一一五条が法一〇一条以下手続の適用についてなんら言及していないのみならず︑上院の本.

(33) 会議において︑国民議会の第一読会によって可決された総支配人の報酬を株主総会の附議事項とする旨の原案が︑社 ︵一︶. 長の報酬のとりあつかいとバランスをとるため廃止されている点からみて︑法一〇一条以下の手続は不要と解するの. 唱●鳶◎. 使用人兼務取締役の報酬. 国絵o一欲叢ρo℃︒9. が妥当である︒ ︵一︶. ︵七︶. 一九四三年法により修正された一九四〇年法二条二項は︑社長︑社長代行者︑総支配人以外の取締役会構成員が会. 社の指揮︵舞①鼠9︶をなすことを禁じていたため︑取締役が部長職︵量8$霞器畠巳B①︶を兼任しうるか否かが学 ︵一︶. ︵二︶. 説上大いに争われたが︑今目では多数説は両者の兼務を肯定している︒判例も当初は肯定説と否定説の問を大きくゆ. れ動いていたが︑一九六二年三月二二目の破殿院社会部判決および最近のパリ控訴院の二判決により判例の態度は肯 定説の立場にかたまったといえよう︒ ︵三︶. 立法過程においても︑取締役の使用人兼務については反対がないわけではなかったが︑新法は︑一定の制限のもと. に︑すなわち︑有給職員の労働契約が取締役選任より少なくとも二年以前より存続し︑かつ現実の職務に対応するも. のであること︑そして使用人兼務取締役の数は現在の取締役員数の三分の一以下たるべきことを条件としてこれをみ. とめた︵法九三︶︒使用人兼務取締役は︑取締役としての報酬のほか︑労働契約にもとづく給与を取得しうることは新. 六五. 法の明認することであるが︵法一〇七1︶︑この労働契約には新法一〇一条以下の取締役の自己取引の規制に関する規 フランス新会社法における取締役等の報酬規制.

(34) 払翻. 説. ︵金沢︶. 六六. 定の適用の余地がないから︑それぞれの資格における報酬および総額についての開示ならびに規制については︑法は ︵四︶. 一六八条四号にかかげる場合のほか特別の配慮を払っていない︒使用人兼務取締役の制度は︑それ自身矛盾を包蔵す. るだけではなく︑使用人部分報酬を増額することによって︑取締役の報酬規制に関する諸規定を潜脱するために利用. される可能性が充分予想しうるので︑フランス新会社法の今後の運用の結果に注目する必要があろう︒ ︵一︶ Oo自α①8ωω鉾ごPo巨ω8遥認目㊤議一〇8︵一9ρ型一8N︒一一●一曽嵩︶︒. ︵二︶Ooξα.碧℃o一α①評冴︶O首昌ご① ︵窪茜餌昼○や鼻●も﹂Oq︶馴G︒欲〜一〇〇㎝︵U﹂8q●謡ε9ρ℃・一8㎝︸目︒置ωOo︒︶■. 一. ︵三︶ 労務溺無償で提供されるときは判例は労働契約の存在を否定する︒Oo貫留8ω銘江oPooき律お島︵U.︾ごおH一ど. 一$旨勺巴一ぎのω9Fい餌のoo欲鼠帥βo昌気βρ富魯巳ρqoα.o茜餌艮舞江05α①一.窪霞8ユのρ一8ざや旨S. ︵四︶ ω霞αq弩90や息f℃﹂oo一似500旧℃毘ε霧窪FoやoF℃﹄謡・なお金沢・中村︵真︶︒商法︵会社法︶︵税務大学校︶. 輔○頁参照︒. ︵八︶ 社長・取締役の退職金. ︵一︶. わが国においては︑退任取締役・監査役に対する退職慰労金は報酬のあと払い的性質を帯有し報酬規制に関する商. 法二六九条の対象となると解するのがほぼ通説といってよい︒フランス法においても従来から法はまったく退職金 ︵二︶. ︵聾琶邑について規定していないが︑判例は︑長期にわたりもしくは重要な義務を実際に提供した社長や取締役に対. し退職金を支給する慣行を容認してきた︒この退職金の支給は新法のもとにおいてもなしうるか︑またどのような規 制にしたがうべぎかが問題となる︒.

(35) まず退職金の支給自体の可否については︑社長や取締役たる総支配人などは退職にあたり加入している社会保障金 ︵三︶. 庫︵8酵︒留雅︒§叡ω8一㊤一︒︶や私的な制度である退職金金庫︵8一ω.⑦号H︒冨冨︶からの退職年金などのほか︑報酬. の間接的な追加部分を構成する退職金を会社から支給される場合が多いが︑退職金は社長などに対する取締役会の感. ロ. 謝の念の表明であり︑また︑会社を指揮するという重責ある地位にある者の負担した危険に対する対価でもあると考. えられるから︑会社の財務状況が思わしくないような場合を除いては︑このような慣行自体は適法と思われる︒. そこでこれに対する規制がどのようにあるべきかが問題となるが︑すでに社長や取締役が退任したのちに退職金が. 支給されるとぎは︑取締役の身分を喪失しているから︑取締役の自己取引に該当しないことになり︑直接には法一〇 ︵五︶. 一一九頁︒大野実雄.. 一条以下の適用を5けるものではない︒しかし︑退職金は株主総会に提出される計算書類において明らかにすべきも. 石井照久・会社法上︵商法∬︶︵一九六七︶三コニ頁︒大隅健一郎.新版会社法概説︵一九六七︶. のであり︑結果として株主総会の承認を経ることになるものと考えられる︒. ︵一︶. 商法講義上巻︵一九六七︶二七一頁︒鴻 常夫・ジュリストニ〇七号七八頁︑商事法務研究四四九号三頁︒田中誠二.最新. 会社法論上巻︵一九六三︶三五三頁など︒反対︑鈴木竹雄.新版会社法︵一九六八︶一四六頁︒ 山本・前掲商事法務研究四四頁の赤堀助教授の問9に対する国似旨霞山教授の解答参照︒. フランス新会社法における取締役等の報酬規制. 六七. 前掲註二の=仙目四巳教授の解答参照︒なお︑旧法時代の同旨の判決として︑↓同凶びq5斡一︒一く目q︒ω象び二ま・鼠&Ω這脇. 勺一似αΦ一歓くべρO鴬鼠fや一らゆ. ℃巴一ξωω①餌Foや9fつNωoo.. (((( 五四一一 一 べ一 )))).

(36) ︵∪.. 説︵金沢︶ 一〇q9欝O︶⁝Oo貫α.巷℃o一αo℃m臨ρ認︐昌o<●一80︵∪. ご①一●O刈恥yがあるo. 四 新型株式会社の監査役・理事の報酬 監査役の報 酬. 六八. 監査役会は︑そのメンパーが会社のために支出した旅費などの費用について贋還することがみとめられている︵令. 同条適用の余地がないことは明らかである︒. め︑法一四一条の適用の有無が問題となるが︑右の職務給が出席手当および賞与の割増の方法で処理されるかぎり︑. する︵法一四一︶︒監査役会長および副会長︵法一三八1︶の職務に対する報酬については︑これに関する規定がないた. ことができるが︑この場合には︑会社と監査役または理事との間の合意に関して適用される手続にしたがうことを要. 隔監査役会はまた︑その構成員に対し︑それらの者に特別に委託された職務または委任につき︑特別の報酬を与える. ︵令=五︶の委員である監査役に対しては︑他の監査役より多額の分配をなすことができる︵令一一八︶︒. れる出席手当および賞与をその構成員に自由に分配することがでぎ︑とりわけ︑監査役会内に設けられる研究委員会. 席手当と︑定款の定める賞与をうけることができる︵法一四〇︶︒監査役会は全構成員に対する総額のかたちで与えら. 監査役会の構成員は︑その活動に対する報酬として︑取締役会の構成員と同様に︑株主総会によって与えられる出. を禁じられている︵法二二三︑令九八︶︒. 監査役は︑株主総会により株主中より選任され︑会社の指揮にあたる理事会を監督する職務を有し︑理事との兼任. ︵閣︶. 論.

参照

関連したドキュメント

 第一の方法は、不安の原因を特定した上で、それを制御しようとするもので

取締役会は、事業戦略に照らして自らが備えるべきスキル

第14条 株主総会は、法令に別段の 定めがある場合を除き、取 締役会の決議によって、取 締役社長が招集し、議長と

 食品事業では、「収益認識に関する会計基準」等の適用に伴い、代理人として行われる取引について売上高を純

3 当社は、当社に登録された会員 ID 及びパスワードとの同一性を確認した場合、会員に

 当社は取締役会において、取締役の個人別の報酬等の内容にかかる決定方針を決めておりま

2 当会社は、会社法第427 条第1項の規定により、取 締役(業務執行取締役等で ある者を除く。)との間

※調査回収難度が高い60歳以上の回収数を増やすために追加調査を実施した。追加調査は株式会社マクロ