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第 1 章 低コスト打上げシステムの事例調査・分析

1.4 諸外国の空中発射システム検討動向

1.4.3 イスラエル

イスラエルは、小型・大型の空中打上げシステム構築を 2006 年 4 月に発表した。イスラ エルは宇宙開発予算規模が小さいことから、「マイクロ衛星」や「Aerial Launch」の開発 を進めて“affordable space”を目指すと発表している、また中東諸国に囲まれているこ とからイスラエルのロケットは地中海方面(西向き)打上げをしている。ロケットは、地 球の自転エネルギーを利用して軌道投入する方が打上性能向上するため、東向きに打上げ られる。しかし、イスラエルは中東諸国上空へ打上げることは、政治的に困難な事情があ る。この事情から、イスラエルでは、衛星打上げ用に Heavy Air Launch (HAL)と Light Air Launch (LAL)空中打上げシステム開発を発表した。

図 1.4-90 イスラエルの打上げ環境事情

(Source:Fisher Institute for Air & Space Strategic Studies, Israel)

Tactical Space(戦術宇宙)活動実施において、今後は「F-15」、「B-747」、「Gulf stream(G550)」を用いた空中打上システムを開発すると発表している。またこれに伴い、

小型衛星技術を追求すると発表、Optical(光学)・ SAR(合成開口レーダー)・ Commint

(通信傍受)・ Elint(電波傍受)・ Designated Communication(指名通信:光通信)を 目的とした小型衛星を開発すると発表している。マイクロ衛星技術については、フランス の CNES と IAI が共同で開発中である。フランス側は電気推進装置(SPT-100)を供与して いる。

空中打上げシステムの打上げ母機は HAL が B-747、LAL が F-15 か Mig-31 とすると発表し ている。ロケットは固体ロケットベースであり、HAL 用はイスラエルの Shavit 固体ロケッ トををベースとし、LAL 用は Rafael 社の“B” ミサイルか、Arrow 対弾道ミサイルをベー スにするとしている。また Gulf stream(G550)は、空中管制機としてロケットの追跡・管制 をする機体との定義をしている。

打上げ手法は、HAL、LAL 双方とも吊下げ方式であり、B-747 はエンジン輸送用パイロン 装置がは特殊装備してある機体を使用すると発表し、F-15 も吊下げ方式であり、ミサイル や燃料タンクを取り付けるパイロンに搭載すると発表している。

図 1.4-91 HAL 母機である B-747、エンジン輸送用パイロン

図 1.4-92 LAL 母機であるイスラエル F-15

図 1.4-93 空中管制機 or 母機 Gulf stream(G550)

(Source:Fisher Institute for Air & Space Strategic Studies, Israel)

また打上げは、インド洋上を計画している。打上げ時は発射母機及び空中管制機を展開す る必要があるため、インドとの協力関係を構築している可能性が考えられる。このインド 洋上打上げにより、LEO、SSO、GTO の軌道投入が可能となる予定だ。

光学:multi spactral EP:Hall Electric Propulsion

重量120kg以下 通信速度:2.5Gbps

図 1.4-94 インド洋上からの打上げ 図 1.4-95 イスラエル小型衛星開発

(Source:Fisher Institute for Air & Space Strategic Studies, Israel)

ロケットは、Heavy Air Launch(HAL)と Light Air Launch(LAL)を開発予定だが、HAL は 非常に重要という位置付けをしている。HAL では SAR(合成開口レーダー)や ELINT(情報 収集活動)の機能を備えた衛星を打上げるとしている。

また、LAL は F-15 の他に Mig-31 へも搭載可能ロケットを目指す方針である。このため、

ロシア・カザフスタンが開発を進めている「ISHIM」計画へも興味を指名している。LAL は、

「マイクロ衛星 1 機」か「複数の Nano 衛星」打上用という位置付けで行われており、Rafael のミサイルや BMD 用に開発中の Arrow ミサイルベースとしている。この Arrow-1 ミサイル は 1 段式固体である、寸法は 11m xφ2.1-0.8m、射程は 90km、速度は M9.0、重量は 2000kg ある。また Arrow-2 は 2 段式固体であり、寸法は 7mxφ2.1-0.8m、射程は 90km、速度は M9.0、

重量は 1300kg である。

図 1.4-96 Arrow ミサイル

(Source:Fisher Institute for Air & Space Strategic Studies, Israel)

イスラエルにとって、独自の打ち上げ手段を確保する事は、中東諸国に囲まれる同国に とって戦略上重要という位置付けがなされている。よって、米国の F-15 空中打上げシステ ムとの開発競争が進む可能性がある。