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第 1 章 低コスト打上げシステムの事例調査・分析

1.5 空中発射システムに係わる法規制等

1.5.2 国内法の調査及び対応

空中発射システムの運用を検討するにあたり、関連すると考えられる国内法規制、届出 等につき以下に示す。

1.5.2.1 航空法

航空法とは、航空機の航行の安全を図り、航空機による運送事業の秩序確立・発展を目 的とする法律である。1950 年(昭和 25 年)に施行された。第 2 条にはこの法律における「航 空機」の定義が定められており、「人が乗って航空の用に供することができる飛行機」と ある。空中発射システムではロケットを搭載する母機が必要であり、この母機は本法律中 にある航空機を使用することが検討されていることから、空中発射システムの運用に際し ては航空法が適用されると考えられる。

航空法の総則を以下に示す。

第1条(目的) この法律は、国際民間航空条約の規定並びに同条約の附属書として採 択された標準、方式及び手順に準拠して、航空機の航空の安全及び航空機の航行に起因す る障害の防止を図るための方法を定め、並びに航空機を運航して営む事業の適正かつ合理 的な運営を確保してその利用者の利便の増進を図ることにより、航空の発達を図り、もっ て公共の福祉を増進することを目的とする。

第 2 条(定義) この法律において「航空機」とは、人が乗って航空の用に供すること ができる飛行機、回転翼航空機、滑空機及び飛行船その他政令で定める航空の用に供する ことができる機器をいう。

次に、空中発射システムの運用に際し航空法に抵触又はその恐れがあると思われる条項 を以下に示す。

(1) 爆発物等の輸送禁止 航空法第86条

一.爆発物又は易燃性を有する物件その他人に危害を与え、又は他の物件を損傷するお それのある物件で、国土交通省令で定めるものは航空機で輸送してはならない。

二.何人も、前項の物件を航空機内に持ち込んではならない。

⇒ 航空法施行規則(省令)第 194 条

法第八十六条第一項の国土交通省令で定める物件は次に掲げるものとする。

一 火薬類、火薬、爆薬、火工品その他の爆発性を有する物件 二 高圧ガス

三 引火性液体

四 可燃性物質類 (可燃性物質、自然発火性物質、水反応可燃性物質) 五 酸化性物質類 (酸化性物質、有機過酸化物)

六 毒物類

七 放射性物質等 八 腐食性物質 九 その他の有害物件

十 凶器 鉄砲、刀剣その他人を殺傷するに足るべき物件

2 前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる物件は、法第 86 条第1項の国土交通 省令で定める物件に含まれないものとする。

一 告示で定める物件

イ 告示で定める技術上の基準に従うこと。

ロ 告示で定める物件にあっては、その容器又は包装が告示で定める安全性に関する基 準に適合していることについて国土交通大臣の行う検査に合格したものであること。

ただし、当該容器又は包装が国土交通大臣が適当と認める外国の法令に定める基準 に適合している場合にあっては、この限りでない。

二 告示で定める放射性物質等であって次に掲げるところに従って輸送するもの 三 航空機の運航、航空機内における人命の安全の保持その他告示で定める目的のた

め当該航空機で輸送する物件(告示で定めるものを除く。)

四 搭乗者が身に付け、携帯し、又は携行する物件であって告示で定めるもの 五 航空機以外の輸送手段を用いることが不可能又は不適当である場合においても国

土交通大臣の承認を受けて輸送する物件

六 国土交通大臣が適当と認める外国の法令による承認を受けて、本邦外から本邦内 へ又は本邦外の間を輸送する物件

爆発物輸送の観点から検討が必要な事項

(a) 定められた容器にロケットを入れることにより航空機での輸送が可能となると考え られるが、空中発射用ロケットは規定の容器に入れるものではない。従って、現行の規 定のままでは航空機によるロケットの輸送は難しいと予想される。

(b) ただし、航空法施行規則 第 194 条 2 項の五 (航空機以外に輸送手段を用いることが 不可能又は不適当である場合において、国土交通大臣の承認を受けて輸送する物件) と みなすことは可能であると考えられる。

(c) そもそも、空中発射システムは危険物の「輸送」ではない。従って、航空法第 86 条の規定に制約されるのか検討する必要がある。

(2) 飛行に影響を及ぼすおそれのある行為 航空法第 99 条の 2

何人も、航空交通管制圏、航空交通情報圏、高度変更禁止空域又は航空交通管制区内 の特別管制空域における航空機の飛行の影響を及ぼすおそれのあるロケットの打ち上げ その他の行為(物件の設置及び植栽を除く。) で国土交通省令で定めるものをしてはなら ない。ただし、国土交通大臣が、当該行為について、航空機の飛行に影響を及ぼすおそ れがないものであると認め、又は公益上必要やむを得ず、かつ、一時的なものであると 認めて許可をした場合は、この限りでない。

二 前項の空域以外の空域における航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為

(物件の設置及び植栽を除く。) で国土交通省令で定めるものをしようとする者は、国土 交通省令で定めることろにより、あらかじめ、その旨を国土交通大臣に通報しなければ ならない。

⇒ 航空法施行規則 第二百九条の三

法第九十九条の二第一項 の航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為で、国土交 通省令で定めるものは、次の各号に掲げる行為とする。

一 ロケット、花火、ロックーンその他の物件を法第九十九条の二第一項 の空域

(当該空域が管制圏又は情報圏である場合にあつては、地表又は水面から百五 十メートル以上の高さの空域及び進入表面、転移表面若しくは水平表面又は法 第五十六条第一項 の規定により国土交通大臣が指定した延長進入表面、円錐表 面若しくは外側水平表面の上空の空域に限る。)に打ちあげること。

二 気球(玩具用のもの及びこれに類する構造のものを除く。)を前号の空域に放 し、又は浮揚させること。

三 模型航空機を第一号の空域で飛行させること。

四 航空機の集団飛行を第一号の空域で行うこと。

五 ハンググライダー又はパラグライダーの飛行を第一号の空域で行うこと。

2 法第九十九条の二第一項 ただし書の許可を受けようとする者は、次に掲げる事項を 記載した申請書を国土交通大臣に提出しなければならない。

一 氏名、住所及び連絡場所 二 当該行為を行う目的

三 当該行為の内容並びに当該行為を行う日時及び場所 四 その他参考となる事項

⇒ 航空法施行規則 第二百九条の四

法第九十九条の二第二項 の航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為で、国土交 通省令で定めるものは、次の各号に掲げる行為とする。

一 ロケット、花火、ロックーンその他の物件を法第九十九条の二第二項 の空域 のうち次に掲げる空域に打ちあげること。

イ 進入表面、転移表面若しくは水平表面又は法第五十六条第一項 の規定により 国土交通大臣が指定した延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上 空の空域

ロ 航空路内の地表又は水面から百五十メートル以上の高さの空域 ハ 地表又は水面から二百五十メートル以上の高さの空域

二 気球(玩具用のもの及びこれに類する構造のものを除く。)を前号の空域に放 し、又は浮揚させること。

三 模型航空機を第一号の空域で飛行させること。

四 航空機の集団飛行を第一号の空域で行うこと。

五 ハンググライダー又はパラグライダーの飛行を第一号イの空域で行うこと。

2 前項の行為を行おうとする者は、あらかじめ、前条第二項第一号、第三号及び第四

号に掲げる事項を国土交通大臣に通報しなければならない。

検討が必要な事項

空中発射システムが上記規定中の「航空機の飛行に影響を及ぼす行為」であるかどう か、詳細な打上げシーケンスに沿って検討することが必要である。

一方で、宇宙開発委員会安全部会は「ロケットによる人工衛星等の打ち上げに係る安 全評価基準」にて航空機に対する事前通報としてノータム(注)を規定している。これ は航空法第 99 条の 2 第二項に沿った措置であり、空中発射システムにおいても同様の措 置を講ずることにより航空機の安全運行を確保することができると考えられる。

(注)ノータム (NOTAM / notice of airmen)

安全運航のために航空局から運航関係者に出される情報で、一時的なもの、あるい は緊急を要するもの。内容は、飛行場、航行援助施設、運航に関連のある業務方式の変 更、軍事演習のように空中の危険状態に関するものなど。

(3) 耐空証明、修理改造検査 航空法第10条

国土交通大臣は、申請により、航空機(国土交通省令で定める滑空機を除く。以下こ の章において同じ。)について耐空証明を行う。

航空法第11条

航空機は、有効な耐空証明を受けているものでなければ、航空の用に供してはならな い。ただし、試験飛行等を行うため国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでな い。

2 航空機は、その受けている耐空証明において指定された航空機の用途又は運用限界の 範囲内でなければ、航空の用に供してはならない。

3 第 1 項ただし書の規定は、前項の場合に準用する。

航空法第16条

耐空証明のある航空機の使用者は、当該航空機について国土交通省令で定める範囲の修 理又は改造(次条の予備品証明を受けた予備品を用いてする国土交通省令で定める範囲 の修理を除く。)をする場合には、その計画及び実施について国土交通大臣の検査を受 け、これに合格しなければ、これを航空の用に供してはならない。

2 第10条の2第1項の滑空機であつて、耐空証明のあるものの使用者は、当該滑空機 について前項の修理又は改造をする場合において、耐空検査員の検査を受け、これに合 格したときは、同項の規定にかかわらず、これを航空の用に供してもよい。

3 第11条第1項ただし書の規定は、第1項の場合に準用する。

4 国土交通大臣又は耐空検査員は、第1項又は第2項の検査の結果、当該航空機が、国 土交通省令で定めるところにより、第10条第4項各号の基準に適合すると認めるとき は、これを合格としなければならない。