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博 士 ( 医 学 ) 皆 上 宏 俊 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 皆 上 宏 俊

学 位 論 文 題 名

尿 水  N‑acetyl‑ 8 ‑D‑glucosaminidase 0) 糖 尿 病 性 腎 症 診 断 指 標 と し て の 臨 床 的 意 義

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

I        

  糖尿病性腎症 は顕性化すると、回復、進行を停止させることは困難とされている。また、腎症 の発症には素因 があると考えられているので、治療・進行阻止のためには、早期の確実な診断指 標が求められて いる。本研究では尿中N―ace tyl ‑p―Dーglucosaminidase(NAG),rGTP活性、

微量蛋白、アル プミンおよび血中・ 尿中p2―microglobulin(BMG)を様々な段階の腎症を有す る糖尿病患者で 測定し、またNAG活性と腎症 の経過との関連を調 ペ、診断指標としての価値に ついて検討した 。

II  対 象 お よ び 方 法

  対象と した患者は、北大 病院第2内 科・苫小牧市立病 院・斗南病院・市立札幌病院に通院また は入院中 の糖尿病患者のぺ323例であ る。

  NAGはM−cresol sulfonーphthaleinyl−N−ace tyl ‑声一D−glucosa minideを基質としたMCP NAG法で 測定 し た。 同測 定 法の 基礎検 討ではintra一as sayおよびinter−assayで再 現性がよ

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く 、 希 釈 試 験 でも 尿 の 成 分 が 干 渉 しな い こ と 、 ま た 試料 の 保 存 性 も よ いこ と が確 認さ れた。r GTP は 、 血 清 と 同 様 にrgluta mylpnitroanilideを 基 質 と した 比 色 法 で 、BMGは 免疫 酵 素 測 定 法 で 、 尿 蛋 白 はCoomasie Brilliant Blue G250を 用 い た 色素 結 合 法 で 、 ま た 尿中 微 量 ア ル プ ミ ソ は 免 疫 比 濁 法で 測 定 し た 。

皿   結   果

  A)尿中NAGの糖尿 病性 腎症の 早期 診断指 標と しての 有用 性

  103例 の 糖 尿 病 者 で 、NAG、 尿 中 蛋 白 、 血 中 ・ 尿 中BMGを 測 定 す る と 、NAGは 健 常 者 3.31.6 U/g.cr. にた ぃし糖 尿病 者では 尿蛋 白陰性 者で も7.9士4.8U/g.cr. と高 値を示 し、

間 欠 性 蛋 白 尿 ・ 持 続 性 蛋 白 尿 と 腎 症 の進 行 に 従 い 上 昇 し た。BMGは 持 続 性 蛋 白 尿以 上 の よ り 進 ん だ腎 症の患 者で はじめ て上 昇した 。

  B) NAGと糸 球体 機能・ 尿細 管機能 との 関係

  NAGと 血 中 ・尿 中BMGと の 間 に は 、そ れ そ れr− −0.58(pO.01),r 0.47p〈0.01)の 正 相関 を認め た。

  C) 糖 尿 病 の コ ン ト ロ ー ル 状 態 がNAG値 お よ び ァ ル ブ ミ ン 排 泄 に 与 え る 影 響   NAGHbAIcと の 相 関 は 、 尿 蛋 白 陰 性 (20例 ) , 間 欠 性 蛋 白 尿 (26例 ) , 持 続 性 蛋 白 尿 (

25例) のすぺての群で、それそれr゜O.65,0.44,O.60で有意な正相関を認めた。また、入院治療を 行 っ た 初 診 糖 尿病 患 者14例 で は、1ケ月 間 にHbAIcは861士1.76ゲ 。か ら7.36士0.87%に改 善 す る と と も にNAG11666U/gcr. か ら8657U/gcr. に 改 善 し た 。   HbAIcと尿 中 ア ル ブ ミ ン 排泄 量 を 測 定 し た47例 で は 、 尿 蛋 白陰 性 の22例 で正 相 関 (r 0.51 p002) を 認 め る の に 対 し 、 す で に 顕 性 の 腎 症 を 認 め る 患 者 で は 相 関 は な か っ た 。   D)NAGと 尿中rGTPにつ いて

  NAGお よ びrGTPと 同 時 に 尿 中 ア ル ブ ミ ン ・ 血 中BMGHbAIcを 測 定 し た48例 の 糖 尿 病 患 者 で は 、NAGは そ加 そ れ とrー ーO.37,O55,0.43と正相 関を 示すの に対 し、rGTPはそ のいず れ と も 相 関 を 認 め な か っ た 。 ま た 、NAGrGTPと の 間 に 相 関 を 認 め な か っ た 。   比 較 の た め 腎 尿 細 管 障 害 性 の 明 ら か たCi8platinを 含 む 癌化 学 療 法 を 受 け た2症 例 でNAG rGTPを 同 時 に 経 時 的 に 測 定 し た 。 い ず れ の 症 例 で もNAGrGTPは 、Cisplatin投 与 日 か ら 教日 間平行 して 大量に 尿中 に排泄 され た。

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  E)NAGを目的変数とした重回帰分析

  糖 尿 病 患 者34例 を 対 象に 、NAGを 目的 変数 と し、 年令 ・ 罹病 期間 ・ 血中BMG HbAIc FBG.BUN. ク レ ア チ ニ ソ ・ 尿 中 ア ル ブ ミ ン .rGTPを 説明 変数 と して 重回 帰 分析 を行 た っ た。このうち偏相関係数でも有意な因子は、血中BMGとHbAIcであった。

  F)NAG高値が持続した患者の腎機能予後

  18ケ月間にわ たり定期的に通院 し経過観察し得た78例の患者を対象に、前後でのBMGの上昇、

即 ちABMGを 目 的 変 数 と し 、 全 測 定NAGの 平 均 値 (aveNAG) 、 全 測 定HbAIcの 平 均 値

aveHbAIc) と を 説 明 変 数 と し て 重 回 帰 分 析 を 行 な っ た 。ABMGaveNAGave ‑ HbAIcとの偏相関係数は、それぞれ0.512(p0.000),‑0. 272(p〈O017)と有意を示し、ave ‑ NAGはBMGの上昇と相関を認めた。

IV  考 案 お よ び 結 語

  糖尿病性腎 症は糖尿病の慢性合併症のなかで生命予後を左右する点で重要である。しかし、一 度蛋白尿など の出現をみ顕症となると不可逆的であり、その進展防止も困難である。この様な腎 症の 早 期発 見の た めにNAGTGTPBMG, 尿中 総蛋 白 、尿 中微量ア ルプミンぬどを様 々な段 階の腎症を有 する糖尿病患者で 測定し、その有用 性について検討した 。この中でNAGは、尿中 蛋白の排泄増 加に先行して異常を呈し、顕性腎症となるとさらに増加した。また、尿蛋白・アル プミン・血中BMG.尿 中BMGと梠尋を認めることから早期診断指標としての有用性が示唆された。

NAGは 近位 尿 細管 ライ ソ ゾー ムに 多 量に 存在 し 、腎 障害 の とき尿中に出現 するNAGア イソザ イムは、主と してB型 で尿細管に存在する ものと一致し、また糸球体で濾過される通常の蛋白よ り分子量が大 きぃことから、尿 中のNAGは 尿細管の障害により遊出したものが主と考えられる。

BMGは より 進 んだ 腎機 能 障害 を有 す る段階とな りはじめて異常を示 した。これに対しrGTP Cisplatinによる 腎障害ではNAGと同様に尿中 排泄が増加するのに 糖尿病性腎症では 診断価 値をもたなか った。rGTPは近位 尿細管細胞の刷子 縁に存在するとされており、尿細管障害でも 障害のされ方 に差異があるのか もしれなぃ。

  NAGぬ腎 症 の指 標と し て有 力視 さ れる 一方 、HbAIcとも よく相関 するため、その評 価には 糖尿病のコソ トロール状態も考 慮する必要かある 。尿中に排泄されるNAGアイ ソザイムを検討 し た 結 果 に よ れ ば 、NAGIB)は尿 細管 障 害を 反映 し 、NAGn(A) は高 血糖 を 反映 して ぃ る

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との報告もあり、アイソザイムを簡単に分別測定する方法を開発すれば、さらに尿中NAG測定 の臨床的意義は高まるものと思われる。

  18ケ月問NAG,BMG,HbAIcの経過をみた78例の糖尿病患者(うち3例は血液透析に移行)

で 、血 中BMGの 上昇 に関 す るNAGとHbAIcの寄 与 を重 回帰 分析 で 分析 する と、NAGは BMGの上昇に対し促進的に関与した。

  これらの結果は、腎尿細管障害が糖尿病性腎症の初期から存在し、NAG活性の測定が糖尿病 性 腎 症 の 早 期 診 断 指 標 と し て 有 用 で あ る こ と を 示 唆 す る も の と 考 え ら れ る 。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

尿中     N‑acetyl‑p ‑D‑glucosaminidase     (D 糖 尿 病 性 腎 症 診 断 指 標 とし て の 臨 床的 意 義

  糖 尿 病 性 腎 症 は 顕 性 化 す る と 、そ の 進 行 を停 止 さ せ るこ と は 困 難と さ れ て い る 。 そ の た め 、 早 期 治 療 に は 確 実 な診 断 指 標 が必 要 で あ る。 本 研 究 は、 腎 尿 細 管ラ イ ソ ゾ ーム に 存 在 し尿 中 に 逸 脱するN←acetyl‑8−D−glucosaminidase (NAG) を 中 心 と し て 、 尿 細 管 刷 子 縁 酵 素TーGTP、尿 中 蛋 白 ・ア ル ブ ミ ンお よ び 血 中・

尿 中82ーmicroglobulin(BMG)など を 様 々 な段 階 の 腎 症を 有 す る 患者 で 測 定 し、

ま た 一 部 の 患 者 で は 腎 症 の 経 過 と の関 連 を 調 ベ、 診 断 指 標と し て の 価値 に つ い て検討 したも のである 。

その結 果、

(1)103例 の 糖 尿 病 患 者 でNAG、 尿 中 蛋 白 、 血 中 ・ 尿 中BMGを測 定 す る と、NAGは 健常者3.3±1.6U/g.cr.に対し糖尿病者では尿蛋白陰性者でも7.9+4.8U/g.cr・ と 高 値 で 間 欠 性 蛋 白 尿 ・ 持 続 性 蛋 白尿 と 腎 症 の進 行 に 従 いさ ら に 上 昇し 、 糖 尿 病 性 腎 症 の 早 期 診 断 指 標 と し て の 有 用 性 が 示 唆 さ れ た 。 こ れ に 対 しBMGはNAG よ り 進 ん だ 段 階 の 腎 症 指 標 と 考 え ら れ た 。 可 逆 的 な 腎 症 の 範 囲 と 考 え ら れ る microalbuminuria(<30mg/g.cr.) とNAGとの 間には 正相関 を認め た(r=0. 40,p〈 O.05)。

一 雄

昌 輝

川 橋

中 石

授 授

教 教

査 査

主 副

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(2)NAGと血中・尿中BMGとの間にはそれぞれ=―O.58(p<0.01),r=0.47(p<0. 01)の 正相関を認め、NAGは糸球体機能・尿細管機能と相関する。

(3)糖尿 病のコン 卜ロー ル状態とNAGとの関連を検討すると、NAGとHbAlcとの間 には尿蛋白陰性(20例)、間欠性蛋白尿(26例)、持続性蛋白尿(25例)のすべての 群で、それぞれr=0.65,O.4410.60で有意な正相関を認めた。また、初診糖尿病 患者14例では1ケ月の教育入院中にHbAlcが8.61il.76%から7.36+0.87%に改善 すると同時にNAGも11.6+6.6U/g.cr.から8.6+5.7U/g.cr.に低下し、NAGは糖尿 病のコン卜ロール状態も反映し変動する。

  HbAlcと尿中アルブミンとの間には、尿蛋白陰性の22例では正相関(r=0.51, p<0.02)を認め たが、 すでに顕性腎症となった患者では相関を認めなかった。

(4)NAGおよぴ尿中T―GTPと同時に尿中アルブミン・血中BMG ‑ HbAlcを測定した 48例の糖尿病患者では、NAGがそれぞれとr=0.37,O.55,0.43の有意な正相関を 認 めるの に対し、7−GTPはそ のいずれとも相関が無かった。比較のため腎尿細 管 障 害性 の明らか なシス プラチン を含む癌 化学療 法を行な った2症例でNAGと T―GTPを経時 的に測 定すると 、両者は平行して尿中に出現した。糖尿病性腎症 と 薬物性腎障害でのNAGとTーGTPの結果の違いには、両者の局在部位の違い、障 害 の さ れ 方 の 違 い が 関 係 し て い る 可 能 性 があ る が 、詳 細 は 不明 で あ る。

(5)糖 尿病 患 者34例 を 対象 に 、NAGを 目的変 数、年令 ・罹病 期間・血 中BMG. HbAlc.FBG. BUN・クレアチニン・尿アルブミン.T→GTPを説明変数として重回 帰 分析を 行なった 。この 中で偏相関係数でも有意な因子は血中BMGとHbAlcのみ で 、この 結果から もNAGは腎障害 と同時 に糖尿病 のコン卜口ール状態も反映し 変化することが示された。

(6)18ケ月 聞にわた り定期 的に通院 し経過 観察し得 た78例の患者を対象に、前 後でのBMGの上昇・即ち幺BMGを目的変数(Y)とし、NAGの平均値(ave―NAG;Xi). HbAlcの平均値(ave−HbAlc;X2)を説明変数として重回帰分析を行なった。ABMG

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とave―NAG,ave―HbAlcとの偏相関係数は、それぞれO.512 (p:ニO.000),→O.272(p――

O.017)で 有 意 を 示 し 、 回 帰 式 はY=O.0548 Xi―O.1065 X2+O.2009で 示さ れ

、 重 相 関 係 数RはO.5360 (p=0.0000),寄 与 率O.2873と なっ た。 この 結 果はNAG 高値の続いた患者ではBMGも上昇すること示す。

  以 上 の 結 果 か ら 、 腎 尿 細 管 障 害 が 糖 尿 病 性 腎 症 の 初 期 か ら 存 在 し 、 尿 中NAG 活 性 の 測 定 は 糖 尿 病 性 腎 症 の 早 期 お よ ぴ 予 後 診 断 指 標 と し て も 有 用 と考 えら れ た。

  試 問 に 際 し 石 橋 教 授 よ り 尿 中NAGのisozyme型 、 試 料 の 測 定 の 前 処 置に つい て

、 小 林 教 授 よ り 糖 尿 病 性 腎 症 で の 糸 球 体 病 変 と 尿 細 管 病 変 と の 関 係 お よ びBMG 測 定 の 意 義 に つ い て 質 問 が あ っ た が 、 申 請 者 は 概 ね 適 切 な 答 弁 を し た。 また 副 査 の 石 橋 教 授 、 小 林 教 授 に よ る 本 研 究 に 関 し て の 審 査 と 面 接 を 受 け 、合 格と 判 定された。

  以上により、本論文は学位授与に値するものと判定した。

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