博士(医学)竹川宏典 学位論文題名
Retention index of thallium‑201 single photon emlssion computerised tomography (SPECT) as a indicator of metastasisln adenocarclnoma of the lung
( 肺 腺 癌 に お け る 転移 の 指標 と し ての タ リウ ム201SPECTの 残存 指 数)
学位論文内容の要旨
I研 究 目 的
夕 リ ウ ム‑201シ ン チグ ラ フ イー は 、心筋梗 塞、心筋 虚血、甲 状腺腫瘍 に利用 さ れて い る。単純光 量子コン ピュータ ー断層法(SPECT)によりさ らに精度 が向上 し た た め 、 夕 リ ウ ム‑201 SPECTは肺 病 変の 検 索 に利 用 さ れ始 め 、ガ リ ウ ムシ ンチグ ラフイー より肺癌 病変検索に 優れてい るとの評 価を得ている。夕リウム・
201 SPECTで は経 時 的 なタ リ ウ ムの 取 り込 み の 違い を 測定 で き る。 そのた め、
利波ら は早期と 後期スキ ャンの取り 込みバタ ーンを測 定し、後期スキャンでのタ リウム .2 01残存の 指標とし て残存指数 を設定し 、悪性腫 瘍にて残存指数が高い こ とよ り 良悪 性 の 鑑別 に 有 用で あ った と報告し ている。 夕リウム‑201 SPECTの 取り込 み率は肺 癌の組織 型により異 なり、最 もりンバ 節転移をおこしやすい小細 胞癌の 残存指数 は肺癌の すべての組 織型の中 で最も高 い。このことより、残存指 数 は癌 細 胞が も つ 転移 能 を あら わ して いる可能 性が示唆 された。 腺癌はたと え 腫瘍径 が小さく ても広範 なりンパ節 転移や遠 隔転移を 認める症例が少なからず認 める。 腺癌にお いてそれ がもつ転移 能を予測 できれば 有用な予後の指標となるで あ ろう 。 そのため、 腺癌患者 をりンバ 節転移が あるかな いかによ り2群に分け 、 原 発部 位 にお け る タリ ウ ム‑201 SPECTの 残存指数 とりンパ 節転移の 状態を比 較 検討し、夕リウム残存指数が癌のもつ転移能の予測に利用できないかを検討した。
II対 象 と 方 法
1990年 から1993年 の 間に 北海 道大学医学 部附属病 院第一内 科に入院 した腺癌 の患 者43名(20名 の 男性 と23名 の 女性 , 平 均60歳 )を タ リウ ム‑201 SPECTで検査し た。
夕 リ ウ ム‑201 SPECTス キャ ン の方 法 は 、塩 化 夕リ ウ ム‑2 01を111 MBq投 与15分 後
(早期スキャン)と120分後(後期スキャン)の2度撮像した。病理所見を知らされてい ない、核 医学専門 医からなる カンフん ランスで 異常集積があるかないか判定された。
夕 リ ウ ム‑201 SPECTで 腺 癌 の 原 発 巣 に お け る 異 常 集 積 を 示 し た 時 、 異 常 集 積 内 と 対 側 正 常 肺 に 関 心 領 域 を 定 め 、 関 心 領 域 内 で の 平 均 カ ウ ン ト 数 を 測 定 し 、 対 側 肺 と 病 変 部 位 と の 比 を 算 出 し 取 り 込 み 率 と し た 。 病 変 部 位 で の タ リ ウ ム‑201残 存 の 程 度 を 評価するために残存指数を以下の様に求めた。
残存指数:(後期スキャン取り込み率ー早期スキャン取り込み率)/早期スキャン取り込み率 リ ン パ 節 転 移 を 評 価 す る た め にTNM分 類 を 使 用 し てN因 子 を 決 定 し た 。 リ ン バ 節 転 移 の 有 無 は 病 理 診 断 も し く は 画 像 診 断 専 門 医 に よ る カ ン フ ん ラ ン ス に お け る 胸 部 CT診 断 に よ り 決 定 し た 。N因 子 に よ り 腺 癌 患 者 を 、N=O群 ( リ ン バ 節 転 移 を 認 め な い群)とN−ー1,2,3群(リンパ節転移を認める群 )の2群に分けた。腫瘍の大きさを評価す る た め に 腫 瘍 の 大 き さ が 胸 部X線 写 真 上 平 均 腫 瘍 径 が3cm以 下 群 と3cm以 上 群 の2群 に 分 け た 。 統 計 学 検 討 はtテ ス ト に よ り 行 っ た 。 危 険 率 が0.05以 下 を 有 意 と し た 。
III結 果
残 存 指 数 は 腺 癌 患 者 でN‑l,2,3群 がN=O群 よ り 有 意 に 高 か っ た (pく0.01) 。 N=l.2,3群で の平 均 残存 指数 は0.11土0.12 (mean土S.D.) であ った 。残 存 指数 が零よ り 大 き い こ と は . 夕 リ ウ ム‑2 01の 取 り 込 み が 後 期 ス キャ ンで 増加 して い るこ とを 意味 す る.N―−0群での平均残存指数はー0.04土0.10 (mean土S.D.)であった。.残存指数が 零 よ り 小 さ い こ と は , 夕 リ ウ ム‑2 01の 取 り 込 み が 後 期ス キャ ンで 減少 し てい るこ とを 意 味 す る 。16例 の 手 術 し た 患 者(N因 子 が 病 理 学 的 に 確 か め ら れ て い る こ と を 意 味 す る ) で の 残 存 指 数 はN‑l,2.3群 がN‑O群 よ り 有 意 に 高 か っ た (pく0.01) 。 腫 瘍 径 が3cm以 下 の 患 者 に お い て 、N=l.2,3群 の 残 存 指 数 は 零 よ り 大 き く 、N=O群 よ り 有 意 に 高 か っ た (pく0.01) 。 腫 瘍 が3cmよ り 大 き い 患 者 で はNニニ0群で は1例 を除 くす べて の 例 で 、 残 存 指 数 は 零 以 下 で あ り 、 N=l, 2、3群 よ り 有 意 に 低 か っ た 。
1V考 案 な ら ぴ に 結 語
残 存 指 数 は り ン パ 節 転 移 が あ る 群 が な い 群 よ り 有 意 に 高 か っ た 。 残 存 指 数 は 腫 瘍 径 の 大 き い 腫 瘍 で も り ン バ 節 転 移 を 認 め て い な い 転 移 能 の 低 い と 考 え ら れ る 群 で 減 少 し て い た 。 一 方 、 腫 瘍 径 が 小 さ い に も か か わ ら ず り ン パ 節 転 移 を 認 め て い る 転 移 能 が 高 い と 思 わ れ る 群 で は 、 残 存 指 数 は 増 加 し て い た 。 病 理 学 的 に り ン パ 節 転 移 が 証 明 さ れ て い る 手 術 症 例 に お い て も 、 残 存 指 数 は り ン バ 節 転 移 と 相 関 し た 。 こ れ ら の 結 果 よ り 、 肺 腺 癌 の り ン バ 節 転 移 能 と タ リ ウ ム‑201 SPECTに お け る 残 存 指 数 は 有 意 な 関 連 が あ る と 考 え ら れ る 。
夕 リ ウ ム‑201 SPECTの 今 ま で 報 告 さ れ て い る 有 用 性 は 小 病 変 に お け る す ぐ れ た 感 受 性 ( 肺 癌 に お い てlcm大 の 小 病 変 で 取 り 込 む と 報 告 さ れ て い る ) と 鑑 別 診 断 で あ り 、 夕 リ ウ ム .201 SPECTに お け る 残 存 指 数 は 肺 癌 や 甲 状 腺 痛 に お い て 良 ´ は 腫 瘍 よ り 高 く 、 悪 性 腫 瘍 と 良 性 腫 瘍 の 鑑 別 の 指 標 と な る と の で あ っ た 。 夕 リ ウ ム ・201 SPECT の 残 存 指 数 と り ン パ 節 転 移 と の 関 係 を 検 討 し 、 両 者 に 有 意 な 関 係 が あ る こ と を 示 し た こ と は 我 々 が 初 め て で あ る 。 今 回 の 検 討 に お い て 、 夕 リ ウ ム201SPECTの 残 存 指 数 に て 腫 瘍 の も つ 転 移 能 を あ る 程 度 予 測 で き る こ と が わ か り 、 リ ン パ 節 転 移 す る か ど う か の
残存指数 のカットオ フ値は零 であった 。
悪性腫瘍 における後 期スキャ ンでのタ リウム,201が残存する機序としてはニつ考えら れる 。 一っ は 病 変部 位 から のタリ ウパ ‑2 01のク リアラン スの低下 とニつ目 はNa.K. ATPaseと の関 連 で ある 。 タリウ ム‑201の半減 期は血中 で1分で、 投与後10分 で最高血 中 濃度 に 達し 、 血 中か ら のク ラ ア ラン ス も 早い 。 投与 後120分の 後 期ス キ ッ ヤン で のタ リウム‑2 01の 残存は病変 部位からのタリウム‑2 01のクリアランスの減少によるかもしれ ない。Na.K‑ATPaseは腫瘍細胞 へのタリ ウム‑2 01の能 動輸送に 関係して いる。Na,K. ATPase活 性 は 原 発 部 位 で の 腫 瘍 細 胞 より 転 移細 胞 の 細胞 膜 の 方が 高 い。 転 移 細胞 で Na.K‑ATPaseの活性 が増加して いること は細胞膜 の流動性 と転移能 とに関係 がある。よ って転移 能が高い腫 瘍で、後 期スキャ ンにおけ る残存が 増加して いることは 、高い転移 能をもっ た腫瘍細胞 ではNa.K‑ATPaseの 活性が増 加し、夕リウム‑ 201の細胞内への流入 が増加し ていること を反映し ているか もしれな い。
非小細胞 肺癌での予 後因子の ーつにり ンバ節転 移がある 。もし残 存指数によ り腺癌の 転移能を 予測できれ ば、予後の評価と補助療法の有無を選択するときの判断基準になる。
V結 語
1) 肺 腺癌 に おいてタ リウム‑201 SPECTの残 存指数と りンバ節 転移能に 有意な関 連を 認 め た 。
2) 夕 リ ウ ム‑201 SPECTの 残 存 指 数 は 肺 腺 癌 の 予 後 の 指標 と な る可 能 性が あ る 。
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
Retention index of thallium‑201 single photon emission computerised tomography (SPECT) as a indicator of metastasisln adenocarcinoma of the lung
( 肺 腺 癌 に お け る転 移 の指 標 と して の タリ ウ ム201SPECTの残 存 指数 )
目 的 :夕 リ ウ ム‑201シ ン チグ ラフイー は、心筋 梗塞、心筋 虚血、甲 状腺 腫瘍 に 利 用さ れ 、単 純 光 量子 コ ン ピュ ー ター 断 層 法(SPECT)によりさ らに 精度 が 向 上し 、 夕リ ウ ム‑201 SPECT|ま肺病 変の検索 に応用され ている。
利 波 ら は タ リ ウ ム‑201残 存の 指 標と し て 残存 指 数を 設 定 し、 悪 性腫 瘍 に て残 存 指 数が 高 いこ と を 報告 して いる。最 もりンパ節 転移をお こしやす い 小細 胞 癌 の残 存 指数 は 肺 癌の すべ ての組織 型の中で最 も高いこ とより、 残 存 指 数 は 転 移 能 を あ らわ し てい る 可 能性 が 示唆 さ れ た。 腺 癌 患者 を りン バ節 転 移 があ る かな い か によ り2群 に分 け 、 原発 部 位 にお ける タリウム . 201 SPECTの 残 存 指 数 と り ン バ 節 転 移 に つ き 比 較 検 討 し た 。 対 象 と 方 法 :1990年 から1993年 の間 に 北 海道 大 学医 学 部 附属 病 院第 一 内科 に 入 院し た 腺癌 の 患 者43名(20名 の 男性 と23名 の 女 性, 平均60歳) を 対象と した。塩 化夕リウ ム・2 01を111 MBq投 与15分後( 早期スキャ ン)と 120分 後 ( 後期 ス キャ ン ) の2度撮像し た。異常 集積内と対 側正常肺 に関心 領域 を 定 め、 関 心領 域 内 での 平均 カウント 数を測定し 、対側肺 と病変部 位 と の 比 を 算 出 し 取 り 込み 率 とし た 。 残存 指 数を 以 下 のよ う に 設定 し た。
残 存 指 数 ( 後 期 ス キャ ン 取り 込 み 率ー 早 期ス キ ャ ン取 り 込 み率 ) /早 期スキャン取り込み率
N因子により腺癌患者を、N=O群(リンバ節転移を認めない群)とN二=ニ1,2,3 群(リン バ節転移 を認める群)の2群に分けた。腫瘍の大きさを評価するため に 腫 瘍 の 大 き さ が 胸 部X線写 真 上平 均 腫 瘍径 が3cm以 下 群 と3cm以 上群 の2 群に分けた。
和 男 康 義 和 富 上坂 山 川宮 小 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副
結果 : 残 存指数は 腺癌患者でN 1.2,3群 がN=O群より 有意に高 かった
(pく0.01)。N 1,2.3群での平均残存指数は0 .11土0.12 (mean土S.D.)であっ た。N ̄O群 での平均 残存指数 は 0.04土0.10 (mean土S.D.)であった。16 例の 手 術 した 患 者(N因 子が 病 理 学的 に 確か められ ているこ とを意味 する)
での残存指数はN一ー1 2,3群がN ̄O群より有意に高かった(pく0.01)。腫瘍 径が3cm以下 の患者に おいて、N ̄1,2,3群 の残存指 数は零より大きく、N=O 群よ り 有 意に 高か った(pく0.01) 。腫瘍が3cmより大き い患者で はN=O群で は1例を 除 く すぺて の例で、残 存指数は 零以下で あり、N=l.2,3群より有 意 に低かった。
考 案 :夕 リ ウ ム. 201 SPECTに お け る残 存指数は 肺癌や甲 状腺癌に おい て良 性 腫 瘍よ り 高く 、 悪 性腫 瘍 と 良性 腫 瘍の鑑 別の指標 となろと されてい る。 タ リ ウム . 201 SPECTの 残 存指 数 とり ンバ節 転移との 関係を検 討し、
両 者 に 有 意 な 関 係 が あ る こ と を 示 し た こ と は 我 々 が 初 め て で あ る 。 悪性 腫 瘍 にお け る後 期 ス キャ ン で のタ リ ウム‑201が 残存する 機序とし ては ニつ考え られる。 一っは病 変部位か らのタリ ウム.2 01のクリアランスの低 下とニつ 目は腫瘍 細胞への タリウム .2 01の能動 輸送に関与しているNa,K・ ATPaseが関連していることが推測される。
非小 細 胞 肺癌 で の予 後 因 子の ー つ にり ン バ節転 移がある 。もし残 存指数に より 腺 癌 の転 移 能を 予 測 でき れ ば 、予 後 の評価 と補助療 法の有無 を選択す るときの判断基準になる。
口 答 発表 に あ たり 、 宮坂 教 授 よル リ ンバ 節転移 の診断に ついて、Tl‑201 SPECTの り ン パ 節 転 移 の 診 断 率 に つ い て 、 小 山 教 授 よ りTl‑、01とNa.K ATPaseと の 関係 に つい て 、 内野 教 授 より 残存 指数と血 行性転移 、分化度 、 DNAindexと の 関 係 に つ い て 、 北 畠 教授 よ り残 存 指 数と 血 流と の 関 係に つ いて、斎 藤教授よ ルリンノ ヾ節転移 のCT診断に ついて質問 があったが、申請 者は概ね妥当に答えたと思う。
ま た 、宮 坂 教 授、 小 山教 授 よ り個 別 に審 査を受 け、合格 との御返 事をい ただぃている。
こ れ ま で に 肺 腺 癌 に お い てTI゛201SPECTと 転移 能 と の関 係 は明 ら か に さ れ て お ら ず 、Tl・201SPECTの 残存 指 数が 転 移 能の 指 標 とな る こと を 示 した こ と は意 義 ある も の と考 え ら れ、 よ って本 論文ぼ博 士(医学 )に相当 するものと認めた。