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博士(農学)梅本清作 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)梅本清作 学位論文題名

ニホンナシ黒星病の発生生態と防除に関する研究

学位論文内容の要旨

  二 ホンナ シの黒 星病 はナシ の重要 病害で あるに もか かわら ず,十 分な研 究が行われておらず,

そ の防除 法も古 くなっ ている 。本 論文は 病原菌 の諸性 質を 調べ, 病気の 発生生態,ナシ品種の感 受 性 , 有 効 な 防 除 薬 剤 を 調 べ , 総 合 的 な 防 除 法 を 確 立 し た も の で あ る 。   本 病は, 干葉県 で通 常の管 理を行っているナシ園で,例年栽培面積の50%〜75%程度に発生し,

そ の被害 は少な い年は 栽培管 理や 天災も 原因に 含めた 全減 収量の 数%で あったが,多い年は20% 以 上であ った。

  本 研究で 調査対 象と し,ま た,接 種源と して用 いた 黒星病 菌は, 分生子 ,偽子のう殻,子のう 胞 子の大 きさが 近縁の セイヨ ウナ シ黒星 病菌と は統計 的に 有為に 小さく ,菌体内可溶性夕ンパク 質 のポリ アクル ルアミ ドゲル にお ける泳 動パタ ーンに も明 瞭な差 異が認 められ,さらに両黒星病 菌 を供試 したニ ホンナ シとセ イヨ ウナシ ヘの交 互接種 実験 でも病 原性に 明らかな違いが認められ た こ と か ら, 二 ホ ン ナ シ黒 星 病 菌 (Venturia nashicola)であ ると同 定され た。 その培 養的性 質 は従来 の報告 とほば 同じで あっ た。本 病菌の 分生子 は, 水に浮 遊する 性質が強いことから,懸 濁 液を単 に遠心 処理し ただけ では 濃縮効 率は低 いこと が明 らかに なった 。そこで,新たな濃縮法 を 模索し ,胞子 懸濁液 に薄い 寒天 液を小 量添加 後遠心 処理 を行う ことに より高率に濃縮でき,し か も,定 量的に 胞子数 を計濆IJできる方法を開発し,これを寒天液濃縮法と呼称することを提案し た 。 濃 縮 効 率 は ,10 mlの 懸 濁 液 に0.1% 寒天 液 をO.5mlを 添 加 した 場 合 ,41倍 で あ っ た 。   本 病には 二種類 の第 一次伝 染源が あり, そのー っで ある分 生子は ,発病 鱗片およびそれの進展 に 基づく 芽基部 の病斑 上に形 成されたものであ轟。落葉土に残存しているものは伝染源にならず,

越 冬後の 枝病斑 上には 形成さ れな かった 。鱗片 は秋季 に感 染し, 真冬か ら病斑が形成され始め,

3月上旬 には 未熟な 分生子 が一部 形成さ れは じめ, これら の胞子 は幸 水の開 花始め 頃から 雨水に 混 じ っ て 分散 し 始 め た 。そ の 分 散 距 離は8m以上 であ り,条 件が良 ければ16m以 上で あった 。分 生 子は3 ‑‑30℃の範 囲で発 芽した 。

  も うー の 第 一 次 伝染 源と なる 偽子の う殻は ,2月上旬 頃から ,そし て子 のう胞 子は3月中 旬か

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ら形成され始めた。子のう胞子は落葉面から最高わずかに7. 36mmの高さまでしか放出されなかっ たが,ナシ園の棚の高さよりもやや高い,地面から180cmの場所へも分散しているのが確認され た。子のう胞子の分散開始は,従来の報告よりかなり早く,幸水の開花始めの10〜 22日前で,分 散 の最盛期は4月中である場合が多かった。その分散距離は10m以上であった。子のう胞子は3

〜28℃の範囲内で発芽した。

  分生子と子のう胞子のナシ葉 に対する病原性は,胞子濃度が1xi0゜/ml程度であればほぼ 一同であった。葉に分生子を接種した場合,9時間後頃から発芽し始め,その後時間の経過と共 に発芽率は高まり,発芽管の伸長および付着器の形成が認められるようになった。また,分生子 を葉に接種後の保持温度,濡れ保持時間と発病との関係から, 15℃で9時間濡れ状態に保持した 場合にわずかに発病し,それより濡れ保持時間が長くなると発病は激しくナょり,20℃で最も激し く発病し,15℃でもそれに近い程度発病した。黒星病菌の鱗片への感染機構は,いくっかの実験 の結果,秋季になると秋型病斑上に分生子が薄く一面に形成され,それが雨水と共に枝の表面を 流下し、枝の表面に突出している鱗片にその一部が定着し,主として一年生枝の下部や横に位置 する腋花芽の内側に定着した分生子が,雨後も比較的長時間濡れ状態に保たれた条件下で発芽し て ,露出している鱗片の生きて いる組織部分から侵入し, 感染が成立すると考えられた。

  殺菌剤の散布をできるだけ控えた条件下において各品種の葉および新梢の本病に対するか感受 性の差は大きく,幸水,豊水,長十郎,八幸が多発した。肥大後期における果実の本病に対する 感受性は,幸水が明らかに高かった。幸水果実の本病に対する感受性は,幼果期に高く,開花後 約2週間過ぎから急激に低下した,その後6月中旬頃から再び徐々に高まり,7月上〜中旬に最 も高くなった。また,本病の発生に伴って裂果する場合もあった。既に明らかにされている二種 類の第一次伝染源と初発生との関係を検討した結果,落葉上の子のう胞子が初期の発生と密接に 結びっいていた。

  ベンズイミダゾール系薬剤に対する黒星病菌の感受性を検定する方法として,発芽管における 隔膜形成の有無を顕微鏡下で調ベ,隔膜が形成されていない場合は,その濃度で薬剤の影響をう けているとして判定する方法を開発し,発芽管隔膜法と呼称することを提案した。この検定方法 は従来法である菌叢生育法と比べて検定感度は同一であり,簡易迅速に多数の供試菌を検定でき るところに特徴がある。この検定法を駆使し,耐性菌による防除効果の低下を証明し,また,県 内 に 耐性 菌が 非 常に 高率 に発 生し て いる こと を明 ら かに し, 耐性 菌対 策 を検 討し た。

  ナシ黒星病の防除に使用される薬剤は全てべンズイミダゾール系薬剤と交差耐性関係になかっ た 。これらの薬剤の黒星病に対 する効果を耐性菌発生圃場で検討したところ,偽子のう殻形

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成阻 止効果 はいず れの薬 剤も 実用的 には低 く,生 育期 の葉の 防除で は,工 ルゴステロールの生合 成 の 阻害 を 作 用 点 とす るDMI剤は , い ず れ も効 果が 極めて 高か った。 鱗片へ の黒星 病菌の 感染 時期 である 秋季に ,薬剤 を散 布して 感染を 防ぐ防 除法 を確立 した( 秋季防 除法)。その散布適期 間 は ,10月 中 旬 から11月 上旬 で あ っ た 。 幸水 果 実の防 除では ,DMI剤のへ キサ コナゾ ール剤 は 予防 および 治療効 果が高 く, ミクロ ブタニ ル剤は 予防 効果は それよ りやや 劣ったが治療効果は高 かっ た。耐 性菌発生圃場では当該薬剤の使用を中止し,耕種的防除を積極的(2)的に行うことによ り, 実用的 な効果 が得ら れた 。二種 類の第 一次伝 染源 の―方 である 発病鱗 片およびその進展に基 づく 芽基部 の病斑 の切除 は, 開花直 前まで に行え ば高 い効果 を得ら れるこ とが明らかになった。

落 葉 の 処 理 お よ び 発 病 鱗 片 の切 除 と い っ た総 合 的 な 耕 種的 防 除 の 効 果は か な り 高 か った 。   以 上 の 結 果 に 基づ い て , ベ ンズ イ ミ ダ ゾ ール 系薬 剤耐性 ナシ黒 星病菌 対策お よびDMI剤 耐性 菌発 生回避 対策を 含めた 本病 の防除 におい ては, 薬剤 防除の 開始は ,従来 より早めて催芽期から と し ,春 の 重 要 防 除時 期 で あ る 鱗片 脱 落 直 前 時 と満 開 後7日 頃に ,DMI剤を薬 害が 無く作 用機 作の 異なる 薬剤( ただし ,ベ ンズイ ミダゾ ール系 薬剤 は除く )と混 用し, 果実の重要防除時期で あ る 了月 上 旬 頃 に ,DMI剤 の ヘキ サ コ ナ ゾ ール 剤ま たはミ クロ ブタニ ル剤を 保護剤 と混用 して 使用 すると 共に, 耐性菌 発生 圃場でも効果の高いキャプタン.ベノミル剤をこの前後頃に使用し,

そ の 他の 時 期 に は べン ズ イ ミ ダ ゾー ル 系 薬 剤 およびDMI剤 とは 作用機 作の異 なる薬 剤を防 除歴 に従 ってて いねい に散布 し, 特に秋季防除は必ず実施すると共に,落葉の処分,発病花叢基部の切 除, 一年生 枝の強 めの剪 定等 の耕種的防除を積極的に取り入れて防除すべきであると結論される。

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    生 越    明 副 査    教 授    木 村 郁 夫 副査    教授、喜久田嘉郎

  本 論 文 は 和 文 で 記 さ れ , 図26, 表 39, 図 版6を 含 む 総 頁 205か ら な る 。   ニ ホンナ シの黒 星病 はナシ の重要 病害で あるに もか かわら ず,十 分な研究が行われておらず,

そ の防除 法も古 くなっ ている 。本 論文は 病原菌 の諸性 質を 調べ, 病気の 発生生態,ナシ品種の感 受 性 , 有 効 な 防 除 薬 剤 を 調 べ , 総 合 的 な 防 除 法 を 確 立 し た も の で あ る 。

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  本病 は干葉 県で は例年 面積率 で50% 〜 75%程度 発生し ,その被害の全減収量に占める割合は数

%‑ 20% 以上 であっ た。

  本研 究で調 査対 象とし ,また ,接種 源とし て用 いた黒 星病菌 は,菌 学的 および病理学的検討の 結 果 ,二 ホ ン ナ シ 黒星 病 菌 (Venturia nashicola) である と同定 された 。その 培養 的性質 は従 来の 報告と ほぼ同 じであ った 。本病 菌の生 態を研 究す るため ,胞子 懸濁液 に薄い寒天液を少量添 加 後 ,濃 縮 す る 方 法を 確 立 した( 寒天 液濃縮 法)。 濃縮効 率は,10 mlの懸濁 液に0.1%寒 天液 をO.5 mlを添 加 し た 場 合, 従 来 の 方 法の41倍 で あり, しかも 定量的 に胞 子数を 計測で きた。

  本病 の第一 次伝 染源に はニっ あり, そのー っは ,発病 鱗片お よびそ れの 進展に基づく芽基部の 病斑 上に形 成され た分生 子で あった 。鱗片 は秋季 に枝 を流下 してき た分生 子の発芽・侵入により 感 染 し,真 冬から 病斑が 形成 され始 め,3月上 旬には 未熟な 分生子 が一 部形成 されは じめる 。こ れ ら の胞 子 は 幸 水 の開 花 始 め頃か ら雨 水に混 じって 分散し 始めた 。そ の分散 距離は8m以上 であ り , 条件 が 良 け れ ば16m以 上であ った。 分生 子は3〜30℃ の範囲 で発芽 した 。もう ーっの 第一次 伝 染 源とな る子の う胞子 は, 落葉上 に3月中旬 頃から 形成さ れ始め た。 子のう 胞子は 落葉面 から 最高 わずか に7. 36mmの高さ まで しか放出されなかったが,ナシ園の棚の高さよりもやや高い地面 か ら180cmの 場所へ も分 散して いるの が確認 された 。子 のう胞 子の分 散開始 は, 従来の 報告よ り か な り早く ,幸水 の開花 始め の10〜22目 前で ,その 最盛期 は4月中で あるこ とが 多かっ た。そ の 分 散 距 離 は10cm以 上 で あ っ た 。 子 の う 胞 子 は3〜28℃ の 範 囲 内 で 発 芽 し た 。   分生 子と子 のう 胞子の ナシ葉 に対す る病原 性は ,ほぼ 同一で あった 。葉 に分生子を接種した場 合 ,15℃で9時間 濡れ状 態に保 持し た場合 にわず かに発 病し ,それ より濡 れ保持 時間が 長く なる と発 病は激 しくな り,20℃で最 も激し く発病 した 。二種 類の第 一次伝 染源 と初発生との関係を検 討 し た 結 果 , 落 葉 上 の 子 の う 胞 子 が 初 期 の 発 生 と 密 接 に 結 び っ い て い た 。   本病 に対す る各 品種の 葉や新 梢の感受性の差は大きく,幸水,豊水,長十郎,八幸が多発した。

肥大 後期に おける 果実の 本病 に対す る感受 性は, 幸水 が最も 高かっ た。。 幸水果実の本病に対す る感 受性は ,幼果 期から 肥大 後期ま での間 に大き く変 化した 。また ,本病 の発生に伴って裂果す る場 合もあ った。

  ベン ズイミ ダゾ ール系 薬剤に 対する 黒星病 菌の 感受性 を検定 する方 法と して,発芽管における 隔膜 形成の 有無で 判定す る方 法を考 案した (発芽 管隔 膜法) 。この 検定方 法は従来法である菌叢 生育 法と比 べて検 定感度 は同 一であ り,簡 易迅速 に多 数の供 試菌を 検定で きた。この検定法を駆 使し て,耐 性菌に よる防 除効 果の低 下を証 明し, 県内 に非常 に高率 に耐性 菌が発生していること を 明 らか に し た 。 本病 の 防 除に使 用さ れる薬 剤は全 て当該 薬剤と 交差 耐性を 示さな かった 。こ

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れ ら の 薬剤 の 中 で エ ルゴ ス テ ロ ー ルの 生 合 成 阻害 を作用 点とす るDMI剤はい ずれ も効果 が極め て高 かった 。鱗 片への 黒星病 菌の感 染時 期であ る秋季 に薬剤 を散布 して 感染を防ぐ防除法を確立 した (秋季 防除 法)。 その散 布適期 は,10月中旬 から11月上旬 であっ た。第一次伝染源のーっで ある 発病鱗 片お よびそ の進展 に基づ く芽 基部の 病斑の 切除は ,開花 直前 までに行えぱ高い効果を 得ら れるこ とが 明らか になっ た。ま た, 落葉の 処理お よび鱗 片発病 芽の 切除といった総合的な耕 種的 防除の 効果 はかな り高か った。

  以 上の結 果から ,本病 の防除 に当 たってfま ,薬剤 散布の開始は催芽期からとし,防除暦に従つ てて いねい に散 布し, 特に, 秋季防除は必ず実施すると共に,落葉の処分,発病花叢基部の切除,

一 年 生 枝 の 強 め の 剪 定 等 の 耕 種 的 防 除 を 積 極 的 に 取 り 入 れ る べ き で ある と 結 論 さ れ た。

  以 上の成 果は, ニホン ナシ黒 星病 にっい て基礎 的知見 を得 るとと もに, 効果的な防除法を示し たも のであ り, 高く評 価され る。よ って 審査員 一同は ,別に 行った 学力 確認試験の結果と合わせ て , 本 論文 の 提 出 者 梅本 清作 は博士 (農学 )の学 位を受 ける のに十 分な資 格があ るも のと認 定 した 。

参照

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