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博 士 ( 医 鞘 大 滝 純 司

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 鞘 大 滝 純 司

    学 位論 文題 名

Specialty choiCeandunderstanmngofpnmarycare     amongJapaneSememCdStudents

( 日本 の医学生における進路 志望とプライマリ・ケアの理解に関する研究)

緒言

  日 本 のプ ライ マリ・ケア の大部分は、診療所の開業医によって行われてきた。こ れらの医 師の 大 半は 、も ともと各科 の専門医あるいは内科の臓器別専門医として養成され、 病院で専 門医 と して 活動 した後に開 業医となった例が多い。日本のプライマリ・ケアは「元 専門医」

によ っ て支 えら れてきたの である。プライマリ・ケアを担う専門医としての名称や 組織、す なわ ち 、英 国に おけ るgeneral practitionerや 、米 国に おけ るfamily physicianあるいは general internistに類するものは、日本には存在しない。 厚生省と日本医学教育学会は、す べて の 卒後 初期 臨床研修カ リキュラムに、プライマリ・ケアの研修を導入するよう 、繰り返 し勧告しているが、現在までに 目立った効果は認められていない。

  プ ラ イマ リ・ ケア医養成 の立ち後れについては、日本の医学生の大多数が専門医 を志向し てい る こと が原 因のーつに なっていると指摘されていた。しかし、その根拠となる 調査報告 は見 当 たら ない 。本研究は 、日本の医学生の進路志望の傾向を検証し、今後の日本 のプライ マリ ・ ケア 医養 成の 展望 を開 くこ とを 目指 して、全国7個所の医学部・医科大学で 行われた 調査研究である。

対象と方法

  日 本 の医 学部 ・医 科大 学の 中か ら7校 (国 公立3校 、私 立4校 )を 選び 、その全学生(473 3人 ) を 対 象 に 、1991年11月 か ら1992年1月 に か け て 、 進 路 志 望 と プ ラ イ マ リ ・ ケ アに 対 する 理解 について、 調査用紙を用いて調査を行った。進路志望の決定要因に 関する設 問で は 、13項目 から なる 独自 の評 価尺 度を 開発 して 使用 した 。 進路 志望の選択肢 のーつに

「プ ラ イマ リ・ ケア」とい う言葉を「地域医療・家庭医療・総合診療など」と付記 して用い た。 プ ライ マリ ・ケアに対 する理解を調べる方法のーっとして、日本のプライマリ ・ケア医 に期 待 され る機 能を7項 目提 示し 、 その 中か ら適切と思われる項目を全て選択する 形式の設 問を 開 発し た。 分析 には パー ソナ ルコ ンピ ュー夕(NEC PC‑9801)と統計ソフトウェ ア(SPSS) を使用し、平均値の比較はF‑testとt‑test、比率の比較はchi‑square testにより行い、Pvalue が0.05未満を有意とした。

結果

  3377人 ( 対 象 者 総 数 の71.4% ) か ら 回 答 が 得 ら れ た 。 進 路 に つい て「 もう 決め てい る」 あ るい は「 大体 は決 めて いる 」と 回答 した 学生 の割 合は 、1年 生か ら5年生ま では学年 全 体 の 約3分 の1で ほ ば 一 定 し て い た が 、6年 生 で は71.6% と 高 率 に な っ て い た 。 進 路 を決 定 する 際に 重視する要 因として選ばれた選択肢は、「自分の興味や適性」が最 も多く、

(2)

次いで、「指導者となる人の魅力」「その領域の発展性」「医局や研究室など職場の雰囲気」

「研修カリキュラムの内容」の順で多かった。6 4.3 %の学生が、進路を決める上で参考 になる情報の不足を感じていると回答し、その割合は特に5 、

6

年生で大きかった。大半(

8 9.8

%)の医学生が臨床医となることを志望していた。臨床医志望の学生が専攻したいと考 え ている診療 科は、「 内科全般 」

21

5

%、 「外科全 般」

11

6

% 、「脳外科・消化器 外 科など専門分化した外科」

ll

1

%、「消化器・循環器など専門分化した内科」

9.3

% などとなっており、「プライマリ・ケア」を選択した学生は

5.7

%であった。これらの診 療科別比率の学年間での有意差は認められなかった。臨床に携わる場合に志望する臨床医の タイプは、「専門的な医療に習熟したspecialist( 専門医)」14.9 %、「幅広く対応できる

generalist(‑

般医)」26.9 %、「generalist でなおかつ専門的医療ができる医師」

52

4

%であった。志望する診療科として「内科全般」あるいは「プライマリ・ケア」を選択し た学生群では、「一般医」を志向する割合が、有意に高かった。卒後臨床研修プログラムの 内容については、「ほぼ全科を研修するフル・口―テート方式」あるいは「内科・外科など いくっか主要な診療科を廻るセミ・ローテ―ト方式」を希望する学生が、臨床医志望者の7

8.5

% を占めてい た。全体 の過半数 (

54.9

%)の学生が、プライマリ・ケアに興味があ ると回答しており、その比率は6 年生で特に高く(6 3.8 %)なっていた。プライマリ・ケ アに含まれると思う活動として過半数の学生が選択した項目は「往診・在宅ケア」のみで、

「ありふれた病気の治療」や「地域医療福祉資源の活用」を選んだ学生はそれぞれ31 .2 % と

2 6.7

%であった。「プライマリ・ケア」を志望する進路として選択した学生群では、

これらの項目を選択した者の割合が有意に高かった。ほぼ半数(

5 6.3

%)の学生が、「開 業医・診療所の医師」の仕事や生活について知識やイメ―ジを持っていると答えていた。こ の割合は学年間で有意差がなかったが、「大学病院の医師」と「大学での研究者」について は、

1

年生よりも6 年生の方が、知識やイメージがあると答えたものの割合が有意に高かっ た。

3 6.9

%の学生(大半は

5

6

年生)が病院実習を経験していたが、診療所実習の経験 があったのは6.0 %、往診や在宅ケアでは

3.8

%のみであった。

考察

  Zimuy

とSenturia (1974) や

Carline

Greer (1991)

などの縦断的な調査の報告では、学 生の進路志望は卒前教育の間に変化することが指摘されている。本調査研究は、横断的な調 査であり、個々の医学生の継続的な変化に関する資料は得られていない。しかしながら、今 回の調査から見る限りにおいて、日本の医学生の多くは最終学年になるまで、進路を決めな い傾向が伺えた。これには、臨床実習の多くが5 、6 年生の時期に行われていることが関係 し ていると思われ、米国の過去の調査研究報告とも一致する傾向であった。Savickas ら

(1986)

Primary Care Task Force(1992)

などの報告では、プライマリ・ケア医を増やすに は、プライマリ・ケアを専門分野のーっとして学生に提示することが重要だとの結果が得ら れている。また、卒前の臨床実習での経験が医学生の進路選択に大きく影響するとの報告も 数多く見られるが、日本の臨床実習の大半は大学病院の病棟で行われているため、診療所の 外来や在宅ケアの実習経験が乏しく、このことが、「開業医・診療所の医師」に対するイメ ージを持つ学生の割合が在学中に増えないという調査結果の一因になっている可能性がある。

「プライマリ・ケア」を進路として選択した学生は少数であったものの、プライマリ・ケア に興味がある学生、そして、幅広い研修を希望する学生は多数を占めており、これらの傾向 は 特 に 「 内 科 全 般 」 を 診 療 す る 臨 床 医 を 志 望 し て い る 学 生 で 顕 著 で あ っ た 。

  

今 回の調査は 、全国の 医学生約

47000

人のほぱ

1

割が対象 となった が、国公立と私立 の比率、プライマリ・ケア部門(総合診療部など)を有する大学の比率などについて、調査対 象 とした大学を抽出する段階でのバイアスが存在したため、母集団である全国80 の医学 部・医科大学の状憩を正確に反映しているとは言い切れない。しかし、これらのバイアスの

‑ 115

(3)

影 響 を 調 整 し た 後 も 、 前 述 の 分 析 で 得 ら れ た 傾 向 に 変 化 は 認め ら れ な か っ た 。

  

本研究によって、日本の医学生の専門医志向は顕著ではなく、多くの医学生は幅広い研修

を通じて幅広い研修能カを身にっけたいと望んでいること、進路選択に関する情報が不足し

ていると感じていること、プライマリ・ケアに対する興味はあるものの、理解が不十分であ

ることなどが明らかになった。今後、不足が懸念されるプライマリ・ケア医の養成を量的に

も質的にも高めていくためには、プライマリ・ケア医養成のプログラム作りや、口ールモデ

ルを含む進路情報の提供が重要になると考えられた。

(4)

主査 教授    阿部和 厚 副 査 教 授 加 藤 紘 之 副査教授櫻井´直太郎 副 査 教 授 前 沢 政 次

     学位論文題名

Specialty choCeandunderstanmngofpnmaryCare     amongJapanesenlemCmStudents

( 日 本 の 医 学 生 に お け る 進 路 志 望 と プ ラ イ マ リ ・ ケア の 理 解 に関 す る 研 究)

  日本の 医療体 制にお いてプライマリ・ケア医の養成が立ち遅れていることが指摘され、卒後研修にプライマ リ・ケ ア研修 を導入 するよ うに厚生 省から 繰り返 し勧告 されて いる。 しかし、目立った効果は得られていな い。日本のプライマリ・ケアは、一般に開業した専門医によって行われ、英国のgeneral pr.acnotioner、米国の famiIyphysicianあ るいはgener酎intemistの ような プライ マリ・ ケア専門医が存在しないことにもよる。ま た、日 本の医 学生が 専門医志向であるからともいわれる。しかし、これらに関する研究はない。この論文は、

日本の 医学生 が本当 に専門 医志向な のか、 プライ マリ・ ケアに 関心が あるか、プライマリ・ケアをどれほど 理解し ている か、こ の理解 が進路志 望にい かに影 響して いるか 、プラ イマリ・ケア医養成をどのようにした ら よ い か 、を 医 学 部 ・医 科 大 学 (国 公 立3校 、 私立4校) の4733人 を 対象 に 調 査 し、 社 会 科 学的 に 解 析 した 報 告 で ある 。 解 析 は、 回 答 を 得た3277人 ( 回 収 率71% ) であ っ た 。 その 結 果 、 (1)進 路につ いて

「も う 決 め ている 」ある いは「 大体は 決めてる 」と回 答した 学生の 割合は 、1年生 から5年 生まで は学年 全 体の 約3分 の1で ほ ぽ 一定 し て い たが 、6年 生 で は71.6% と 高 率に な っ て いた 。 (2) 進路を 決定す る際 に重視 する要 因とし て選ば れた選択 肢は、 「自分 の興味 や適性 」が最 も多く、次いで、「指導者となる人の 魅力」 「その 領域の 発展性 」「医局 や研究 室など 職場の 雰囲気 」「研 修カリキュラムの内容」の順で多かっ た。(3)4.3% の学生 が、進 路を決 める上 で参考 になる情 報の不 足を感 じてい ると回 答し、 その割合は特 に5、6年 生で大 きかっ た。(4)大半 (89.8% )の医学生が臨床医となることを志望していた。(5)臨床医 志 望 の 学 生が 専 攻 し たぃ と 考 え てい る 診 療 科は 、 「 内 科全 般 」21.5% 、 「 外 科全 般 」ll.6% 、 「 脳 外科 ・ 消 化 器外 科 な ど 専門 分 化 し た外 科 」11.1%、 「 消 化 器・ 循 環 器 など 専 門 分 化し た内科 」9.3% など と な っ ており 、「プ ライマ リ・ケ ア」を選 択した 学生は5.7%で あった 。これ らの診 療科別 比率の 学 年間で の有意 差は認 められ なかった 。(6) 臨床に携わる場合に志望する臨床医のタイプは、「専門的な医療 に習熟したspecialist(専門医)」14.9%、「幅広く対応できるgeneralist(一般医)」26.9%、「generalist でな お か つ 専門的 医療が できる 医師」52.4%で あった 。(6) 志望す る診療科 として 「内科 全般」 あるい は「プ ライマ リ・ケ ア」を 選択した 学生群 では、「一般医」を志向する割合が、有意に高かった。(7)卒後

117ー

(5)

臨床研修プログラムの内容については、「ほぽ全科を研修するフル・ローテート方式」あるいは「内科・外 科などぃくっか主要な診療科を廻るセミ・ローテート方式」を希望する学生が、臨床医志望者の7 8.5% を占めていた。(8)全体の過半数(54.9%)の学生が、プライマリ・ケアに興味があると回答しており、そ の比率は6年生で特に高く(6 3.8%)なっていた。プライマリ・ケアに含まれれると活動として過半数の 学生が選択した項目は「往診・在宅ケア」のみで、「ありふれた病気の治療」や「地域医療福祉資源の活用」

を 選んだ学 生はそ れぞれ3 1.2%と26.7%であった。「プライマリ・ケア」を志望する進路として選 択した学生詳では、これらの項目を選択した者の割合が有意に高かった。(9)ほぽ半数(56.3%)の学生が、

「開業医・診療所の医師」の仕事や生活について知識やイメージを持っていると答えていた。この割合は学 年間で有意差がなかったが、「大学病院の医師」と「大学での研究者」については、1年生よりも6年生の 方が、知識やイメージがあると答えたものの割合が有意に高かった。3 6.9%の学生(大半は5、6年生)

が病院実習を経験していたが、診療所実習の経験があったのは6.0%、往診や在宅ケアでは3.8%のみ であった。これらの結果から、日本の医学生の専門医志向は顕著でなく、プライマリ・ケア医志望者を増や す方策として、(1)在学中にプライマリケア医の活動に接する機会の増加、(2)プライマリ・ケア医養成のた めの研修医プログラムの増設、(3)専門的概念としての学生向けプライマリ・ケア教育の充実が必要である と結論している。

  公開発表では、OHPを使用しての発表の後、1時間にわたる討論が行われた。加藤紘之教授からは、調査 対象とした7校の選抜方法、プライマル・ケアの概念等、櫻井恒太郎教授からは、結果に大学としての差が 余りないのは何故か、研究重視の大学ではどうかなど、前沢政次教授からはアンケートの設問、プライマリ・

ケアの指導医・専門医について、フロアの菅野盛夫教授から、回答の時代のバイアス、外国との比較につい て、寺沢浩一教授から教育方法としてのロールモデルについて、また、その他、研修医にアンケートをした らどうか、主査から、学生が学年を追ってフル.ローテートからセミ.ローテト志向に変化していく理由等 の質問があったが、発表者は研究課題に関する深い背景をもって適切かつ明解に回答した。また、回答でも OHPを周到に使用した。

  この論文は、本医学研究科では初めての医学教育に関する研究である。プライマリ・ケア医養成に関する 現実的医学教育の問題の解決を厖大な調査結果の慎重な解析からさぐったもので、これを論拠として医学教 育の改善に現実に結びっくものであった。地域性さらに世界における位置づけにも発展することが期待され る。

  審査員一同はこの研究の成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有す るものと判定した。

‑ 118

参照

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