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博 士 ( 医 学 ) 寺 坂 俊 介

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 寺 坂 俊 介

    学位論文題名

    Extended Transbasal Approach:

  Anatomy,Technique and Indications

(拡大前頭蓋底到達法:微小解剖,手術手技,手術適応)

    学 位 論 文 内容 の 要 旨

【 目 的 】1980年 代 に 頭 蓋 底 手 術 の 概 念 が 脳 神 経 外 科 領 域 に 導 入 さ れ て 以 来 、 か っ て 到 達 困 難 と さ れて い た 部 位 に も よ り 安 全 に 手術 治 療 が 行 わ れ る よ う に な っ て き た 。 最 近10年 間 で 数 多 く の 新 た な 頭 蓋 底 到 達 法 が 報 告 さ れ て き た が 、 こ れ ら の 手 術 の 遂 行 には 、 従 来 の 脳 神 経 外 科 の 手 術手 技 に 加 え 詳 細 な 頭 蓋 底 の 外 科 解 剖 に 習 熟 す る 必要 性 が 強 調 さ れ て い る 。 頭 蓋底 は 現 在 大 き く 前 頭 蓋 底 、 中 頭 蓋 窩 、 後 頭 蓋 窩 の3っ に 分 類 さ れ て い る が 、 前頭 蓋 底 へ の 到 達 法 の 代 表 と し て の 前 頭 蓋 底 到 達 法 (transbasal approach) は 、1973年 に 頭 蓋 顔 面 再 建 の 為 の 手 術法 とし て初 めて 報告さ れた 。そ の後 この到 達法 には 様々な 検討 、 工 夫 が な さ れ 、 現 在 は前 頭 蓋 底 の み な ら ず 、 中 頭 蓋窩 や 斜 台 部 へ の 到 達 法 と し て も 応 用 さ れ る よ う にな っ て い る 。 し か し な が ら これ ま で 報 告 さ れ た 検 討 、 工 夫 の 多 く は 開 頭 範 囲 や前 頭 蓋 底 の 再 建 に 関 す る も ので 、 こ の 到 達 法 に 必 要 な 微 小 解 剖 や 手 術 適 応 に 関す る 報 告 は ほ と ん ど さ れ て いな い 。 我 々 は 、 両 側 前 頭 開 頭 に 続 い て 両 側 眼 窩 上縁 を 摘 出 し 、 篩 骨 洞 、 蝶 形 骨洞 を 解 放 し 、 斜 台 部 へ 到 達 す る 方 法 を 拡 大 前 頭 蓋 底 到 達 法 (extended transbasal approach) と 命 名 し て 、 こ の 手 術 手 技 を詳 述 す る と と も に 、 手 術 の 指標 と な る 微 小 解 剖 の 呈 示 、 測 定 を 行 っ た 。加 えて 、従 来ま での前 頭蓋 底到 達法 との術 野の 比較 検討を 行い 、 手 術 適 応 に 関 して 考 察 し た 。

【 方 法 】 動 静 脈 に 着 色 シ リ コ ン を 注 入 し た20個 の 成 人 屍 体 頭 を 用 い て 外 科 解 剖 を 行 っ た 。 拡 大 前 頭 蓋 底 到 達 法 (extended transbasal approach) を1) 皮 膚 切 開 と 開 頭 ( 両 側 前 頭 開 頭 と 両 側 眼 窩 上 縁 の摘 出 ) 、2) 篩 骨 洞 、 蝶 形 骨 洞 の 解 放 、3) 眼 窩 先 端 部 と 海 綿 静 脈 洞 部 の 解 剖 、4) 斜 台 の 削 除 、5) 硬 膜 内 剥 離 の5つ の 段 階 に 分 け 、 臨 床 に 即 し た 解 剖 を 手術 顕 微 鏡 下 で 行 っ た 。 手 術 の 指 標 と し て 、 両 側 視神 経 間 距 離 、 両 側 内 頚 動 脈 間距 離 、 両 側 翼 突 管 神 経 問 距 離 、 両 側 舌 下 神 経 管 間距 離 、 前 頭 鼻 骨 溝 一 内 頚 動 脈問 距 離 、 下 垂 体 一 舌 下 神 経 管 間 距 離 、 下 垂 体 ー 咽頭 後 壁 間 距 離 の 測 定 を 行 っ た。 両 側 前 頭 開 頭 の み の 前 頭 蓋 底 到 達 法 、 部 分 的 眼窩 上 縁 の 摘 出 を 加 え た 前 頭 蓋底 到 達 法 、 両 側 眼 窩 上 縁 の

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摘 出 を 加 え る 拡 大 前 頭 蓋 底 到 達 法 の 3 法で 術 野 の 比 較検 討 を 行 っ た。

【結果】拡大前頭蓋底到達法にて得られる術野の露出は側方は視神経、海綿静 脈洞部内頚動脈、舌下神経管によって制限された。最深部は大孔部まで到達可 能であったが、トルコ鞍背を露出する事はできなかった。前頭蓋底部の術野と しては、両側視神経を斜辺とする逆台形型が蝶形骨洞への入口部となっており、

その最短部は平均 13 . 2 土 2.9 mm であった。蝶形骨洞内では骨性隆起として 内 頚動脈 隆起を 72 %、 上顎神 経隆 起を 39 %、翼 突管神 経隆 起を 44 %の標 本で認めた。海綿静脈洞部内頚動脈はC5p 〇rtion で最も左右の動脈が近接し て おり、 その平 均は 17.6 土 3.4 mm であっ た。海 綿静脈 洞部 内頚動脈: C5 portion 部が この到 達法での最狭部であった。左右海綿静脈洞部内頚動脈

( C5 portion )と下垂体―咽頭後壁間(平均19.9 土4.0 mm )で形成される術野 が斜台部への入口部となっていた。斜台部の骨削除では術中指標となるような 解剖学的構造物は認められなかった。術野の下側方に存在する両側舌下神経管 の間隔は平均25.8 土 2.2 mm であり、下垂体下面から両側舌下神経管までの 深さは平均41.1 士4.0 mm であった。脳幹前面の硬膜を切開することにより、

両側椎骨動脈、脳底動脈、前下小脳動脈、外転神経、舌下神経等を露出できた。

両側前頭開頭のみの前頭蓋底到達法では、鼻腔や蝶形骨洞へは前頭葉の過度の 圧排なく到達できたが、斜台部に到達するには部分的眼窩上縁の摘出を加えた 前頭蓋底到達法が適していた。しかしながら本到達法では側方の展開が制限さ れた。海綿静脈洞を露出する為には両側眼窩上縁の摘出を加える拡大前頭蓋底 到達法が有用であった。

【結語】拡大前頭蓋底到達法にて上方は第3 脳室から下方は大孔部までの広い

術野を展開することができた。手術の指標となる解剖学的構造物を確実に把握

することが本到達法を安全に遂行する為に極めて重要であった。斜台部では手

術の指標となる解剖学的構造物に乏しく、計側値が有用であった。到達法の選

択に関しては、病変が鼻腔もしくは副鼻腔に存在する場合には両側前頭開頭の

みの前頭蓋底到達法が、病変が斜台部ヘ進展している場合には部分的眼窩上縁

の摘出を加えた前頭蓋底到達法が、病変が海綿静脈洞へ進展している場合には

両側眼窩上縁の摘出を加える拡大前頭蓋底到達法が適応になると考えられた。

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学位論文審査の要旨

     学位論文題名

  Extended Transbasal Approach:

Anatomy ,Technique and Indications

(拡大前頭蓋底到達法:微小解剖,手術手技,手術適応)

    本研究 では両側前 頭開頭に続 いて両側眼 窩上縁を摘出し、篩骨洞、蝶 形 骨洞 を 解放し、斜 台部ヘ到達 する方法を 拡大前頭蓋 底到達法(extended transbasal approach)と命名レて、この手術手技を詳述するとともに、手術 の指標となる微小解剖の呈示、測定を行った。加えて、従来までの前頭蓋底到 達 法 と の 術 野 の 比 較 検 討 を 行 い 、 手 術 適 応 に 関 し て 考 察 し た 。     動 静脈 に 着色 シ リコ ン を注 入 した20個の 成人屍体頭 を用いて外 科解 剖を行 った。拡大 前頭蓋底到達法(extended transbasal approach)を1)皮 膚切開と開頭(両側前頭開頭と両側眼窩上縁の摘出)、2)篩骨洞、蝶形骨洞 の解放 、3) 眼窩尖端部と海綿静脈洞部の解剖、4)斜台の削除、5)硬膜内 剥離の5つの段階に分け、臨床に即した解剖を手術顕微鏡下で行った。手術の 指標として、両側視神経間距離、両側内頚動脈間距離、両側翼突管神経間距離、

両側舌下神経管間距離、前頭鼻骨溝一内頚動脈間距離、下垂体‐舌下神経管間距 離、下垂体‐咽頭後壁間距離の測定を行った。両側前頭開頭のみの前頭蓋底到達 法、部分的眼窩上縁の摘出を加えた前頭蓋底到達法、両側眼窩上縁の摘出を加 え る 拡 大 前 頭 蓋 底 到 達 法 の 3法 で 術 野 の 比 較 検 討 を 行 っ た 。     拡大前 頭蓋底到達 法にて得ら れる術野の 露出は側方は視神経、海綿静 脈洞部内頚動脈、舌下神経管によって制限された。最深部は大孔部まで到達可 能であったが、卜ルコ鞍背を露出する事はできなかった。前頭蓋底部の術野と しては、両側視神経を斜辺とする台形型が蝶形骨洞への入口部となっており、

その最 短部は平均13.2士2.9 mmであった。 蝶形骨洞内では骨性隆起として 内 頚動 脈 隆起 を72% 、 上顎 神 経隆 起 を39% 、翼突管神 経隆起を44% の標

弘郎 樹       芳平 部上 原 阿井 杉 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

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本で認めた。海綿静脈洞部内頚動脈はC5 portionで最も左右の動脈が近接し て おり、その 平均は17.6土3.4 mmであった。左右海綿静脈洞部内頚動脈(C5 portion)と下垂体‐咽頭後壁間(平均19.9土4.0 mm)で形成される術野が斜台 部への入口部となっていた。斜台部の骨削除では術中指標となるような解剖学 的構造物は認められなかった。下垂体下面から両側舌下神経管までの深さは平 均41.1土4.0 mmで あった。脳幹前面の硬膜を切開することにより、両側椎 骨 動脈、脳底 動脈、前下 小脳動脈、 外転神経、 舌下神経等を露出できた。

    拡 大前 頭蓋底到達 法にて上方 は第3脳 室から下方 は大孔部ま での広い 術野を展開することができた。斜台部では手術の指標となる解剖学的構造物に 乏しく、計側値が有用であった。到達法の選択に関しては、病変が鼻腔もしく は副鼻腔に存在する場合には両側前頭開頭のみの前頭蓋底到達法が、病変が斜 台部上方2/3ヘ進展している場合には部分的眼窩上縁の摘出を加えた前頭蓋底 到達法が、病変が海綿静脈洞もしくは斜台部下方1/3ヘ進展している場合には 両側眼窩上縁の摘出を加える拡大前頭蓋底到達法がそれぞれ適応になると考え られた。

    公開発表において、井上芳郎教授より拡大前頭蓋底到達法の臨床応用、

画像との対比に関する質問があった。っづいて、杉原平樹教授より前頭蓋底の 再建方法、嗅覚温存に関する質問があった。さらに阿部教授より経上顎洞法な ど他の到達法との比較検討が必要とのコメントがあった。いずれの質問に対し ても申請者は自らの研究に基ずく経験や過去の論文の結果を引用し、明確に解 答した。

    本 研究により 鼻腔、副鼻 腔、海綿静 脈洞、斜台部の微小解剖が明らか になるとともに、拡大前頭蓋底到達法の手術適応が呈示された。今後本研究め 成果は拡大前頭蓋底到達法の適切な手術適応や安全な手術遂行に役立っものと 期待される。審査員一同はこれらの成果を高く評価し、また研究者として誠実 かつ熱心であり、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有す るものと判定した。

参照

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